支援から漏れる「境界知能」と「軽度知的障害」。必要なのはポイント支援と〇〇? 【古荘純一先生(青山学院大学・昭和医科大学)講演レポート】

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数字によって「制度の谷間」におかれる子どもたち


IQ71〜85の「境界知能」や、IQ50〜70の「軽度知的障害」に該当する方々は、ストレスへの脆弱性などを抱えながらも、一見すると定型発達の人と変わらないように見えることが多くあります。そのため、周囲からは「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすく、公的な支援の対象から漏れてしまうケースも少なくありません。本講演では、こうした「制度の谷間」に置かれやすい子どもたちや当事者が抱える実態と、それを乗り越えるための具体的なアプローチ、そして社会の新しい動きについて語られました。

ライフステージごとの困難。必要なのは「常に」ではなく「ポイント支援」


境界知能や軽度知的障害のある方は、幼児期には「発達がゆっくりめ(様子を見ましょうと言われる程度)」であっても、学童期以降、学習のつまずきや対人関係の複雑化に伴って困難が顕在化しやすくなります。

支援から漏れる「境界知能」と「軽度知的障害」。必要なのはポイント支援と〇〇? 【古荘純一先生(青山学院大学・昭和医科大学)講演レポート】

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適切な理解と配慮が得られないまま社会に出ると、自信を失って引きこもったり、優しく近づいてくる不適切なコミュニティに依存してしまったりするなどの二次障害のリスクが高まります。

しかし、古荘先生は「常に支援が必要というわけではなく、ポイントごとに適切な支援があれば、良い結果や良い生活に結びつく」と強調されています。

社会に出るために最も必要な「ライフスキル」


これまでは、IQなどの認知機能に課題がある場合、一般的なSST(ソーシャルスキルトレーニング)の獲得には限界があると考えられてきました。そこで現在注目されているのが、「ライフスキル(生活技能)」をアセスメントして支援するという実践的なアプローチです。


ライフスキルとは、日常生活のさまざまな課題に対して建設的かつ効果的に対処するための能力です。当面の目標を「生活上のスキル獲得」に絞ることで、子どもたちが社会で自立していくための土台を作ることができます。

具体的には、以下のスキルを少しずつ身につけていくことが推奨されています。

  • セルフケアスキル:自分で起きる、身だしなみを整える、季節に応じた服を選ぶなど
  • 時間管理スキル:時間を守る、休憩後に遅れずに持ち場に戻るなど
  • 金銭管理スキル:無駄遣いをせずに貯金する、計画的に買い物をするなど
  • 移動スキル:交通機関を利用して目的地へ安全に移動するなど
  • コミュニケーションスキル:職場の同僚や上司と適切にやり取りをするなど
  • ストレス対処スキル:適切な休息をとる、自分なりのリフレッシュ方法を持つなど

これらに加えて、特に重要視されているのが「人の援助を受ける・相談する」というスキルを教えることです。

「どうしていいか分からない」「失敗してしまった」というときに、一人で抱え込まずに信頼できる大人や支援機関に「助けて」と言えること。過去に叱責された経験から相談を諦めてしまっている当事者に対して、「あなたには支援を求め、質問する権利がある」と伝え、具体的なSOSの出し方を練習することが、将来の大きなセーフティネットになります。

今後の展望と新学会の設立への思い


講演の最後には、当事者やご家族にとって非常に希望の持てるニュースが発表されました。

境界知能や軽度知的障害の方が生涯にわたって抱える困難に対し、医療・教育・福祉・就労などの多職種が連携し、社会や行政へ提言を行うことを目的とした「境界知能・軽度知的障害学会」が新たに設立されました。


2026年12月4日・5日には青山学院大学にて第1回学術集会が開催される予定であり、専門家たちが集結して実態解明と支援策の構築に乗り出しています。

境界知能や軽度知的障害のある方々は、「IQの数値」という一律の基準だけで判断されるべきではなく、実際の生活上の困難さ(適応行動)を含めた柔軟な理解と配慮が必要です。

「すべてを公的な制度に結びつける」というだけでなく、家庭や学校、地域社会全体でライフスキルを育むサポートをし、彼らが安心して働き、生活できる社会を作っていく動きが、今まさに力強く始まっています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

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