ワークライフバランスってなに? 議員には労働基準法がない!?【親子で学ぶ 政治の話】
「”馬車馬のように働く” って、高市早苗新総裁が言ってたけど……それってどういう意味?」「ワークライフバランスってなに?」
確かに、最近よく聞く「ワークライフバランス」という言葉。でも実際、政治家ってどんな働き方をしているのでしょう? しかも「議員には労働基準法がない」って本当……?
今回は、「親も子も学べるシリーズ」として、ニュースで聞いた言葉から、”仕事と生活のバランス” や “政治家の働き方” を、子どもにも簡単にわかりやすく解説します。
<--[IMAGE-002]--> 「馬車馬のように働く」ってどういう意味?
2025年9月、高市早苗新総裁が誕生しました。自民党は現在、国会で多数を占める与党のため、今後の首相指名選挙で高市氏が内閣総理大臣に選ばれる可能性が高いと見られています。
(関連記事)「総理大臣が変わるとき、どうやって決まるの?」【親子で学ぶ 政治の話】
総裁選の演説で注目を集めたのが、「馬車馬のように働く」という言葉です。
「馬車馬」とは、昔、荷物を引いて休まず働いた馬のこと。つまり「一生懸命、全力で働く」という意味のたとえです。
もちろん、国を動かすリーダーとしての決意の言葉ですが、SNSでは「休みなしで大丈夫?」「そんなに働くのがいいことなの?」という声も多く見られました。
いまの社会では「がんばること」だけでなく、「休むこと」や「バランスをとること」も大切だと考えられるようになっています。ここで登場するのが、「ワークライフバランス」という考え方です。
【子どもへの説明例】
「馬車馬のように働く」っていうのは、昔の馬が荷物を運ぶためにずっと走り続けたみたいに、休まず一生懸命働くっていう意味なんだよ。
<--[IMAGE-004]--> 「ワークライフバランス」ってなに?
「ワークライフバランス」とは、英語でwork(仕事)+life(生活)+balance(バランス)のこと。「仕事」と「生活」どちらも大切にしよう。働きすぎず、家族・健康・自分の時間を大事にしよう。
という考え方を指します。
日本では、2000年代から政府が「働き方改革」を進め、長時間労働の是正やテレワークの導入など、社会全体で “バランスのとれた働き方” を目指しています。
たとえば会社員なら、「1日8時間」「週40時間」など、働く時間の上限が法律で決められています。これは、働く人の健康と生活を守るための労働基準法(ろうどうきじゅんほう)という法律です。
でも——じつは、政治家にはこの法律が「適用されない」のです。
【子どもへの説明例】
ワークライフバランスっていうのは、「仕事」と「自分の時間や家族との時間」のバランスを大切にしようっていう考え方だよ。どちらも大事にすることで、元気で幸せに暮らせるんだ。
<--[IMAGE-006]--> 「議員には労働基準法がない」って本当?
本当です。国会議員には、労働基準法は適用されません。
その理由は簡単。
議員は「会社に雇われて働く人」ではなく、「国民に選ばれて国を動かす人」だからです。
労働基準法は、会社などに “雇われて働く人” =労働者を守るための法律です。
けれど、国会議員は「国民の代表」という立場であり、雇用契約を結んで働いているわけではありません。つまり、“労働者”ではなく、“公職(こうしょく)”にあたるのです。
そのため、
- 労働時間
- 休日
- 残業
- 有給休暇
といった決まりが法律で守られていません。
議員の報酬(歳費)や活動費は、「歳費法」という別の法律で定められています。また、勤務日や勤務時間は「国会法」によって、国会の会期や委員会の予定に合わせて決まります。
つまり、議員の”働き方”は、自分たち(国会)が決めるルールのなかで動いているということになります。
【子どもへの説明例】
国会議員は、会社で働く人みたいに「1日8時間まで」っていうルールがないんだ。なぜなら、議員は国民に選ばれた特別な仕事で、会社員とは違う立場だからなんだよ。
<--[IMAGE-008]--> 実際の議員の働き方は?
では、法律に「労働時間」が書かれていない議員たちは、実際どんなスケジュールで動いているのでしょうか。
国会が開かれている「会期中」は、
- 朝から晩まで委員会や本会議が続く
- 間の時間には取材対応や政務打ち合わせ
- 夜は地元団体の会合や勉強会
- 土日は地元に戻って演説や挨拶まわり
……と、ほぼ休みがない状態です。
スマートフォンやSNSの普及で、夜中でも情報発信や対応を求められることも増え、実際には「労働基準法があっても守れないような働き方」になっているのが現状です。
<--[IMAGE-010]--> 世界の政治家たちはどうしてるの?
日本だけでなく、世界でも「政治家の働き方」は議論されています。
たとえば、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、「メンタルヘルスを犠牲にしてまで続ける仕事はない」として、自ら辞任を表明しました。「リーダーだって人間。
休む勇気が必要」と語った姿勢は、世界中で共感を呼びました。フィンランドやアイスランドでは、国のトップが育児休暇を取ることもあり、 “家庭も仕事も両方大切にする政治” が注目されています。
一方で、日本の国会では「居眠り議員」が問題視されることもあります。会議中に眠っている姿が報道されると、「働きすぎ」とは逆に「きちんと仕事をしているのか」という批判の声が上がることも——
政治家にとっても、今後の「ワークライフバランス」と「責任ある働き方」の両立が大切なテーマになるかもしれません。
親子で話してみよう!対話のヒント<--[IMAGE-012]-->
ニュースで聞く「ワークライフバランス」や「働き方」は、じつは大人だけの話ではありません。子どもにとっても、「どう生きたいか」「どんなバランスを大事にしたいか」を考えるきっかけになります。
親が「政治や働き方って、こういう仕組みなんだね」と説明できると、子どももニュースを “自分ごと” として捉えられるようになります。
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「ワークライフバランス」という言葉は、働く大人のためだけのものではありません。
政治家の働き方を知ることは、 “仕事とは何か” “生きるとは何か” を学ぶきっかけでもあります。
国会議員には労働基準法がなくても、私たち一人ひとりには、自分の「働き方」や「暮らし方」を選ぶ自由があります。ニュースをきっかけに、「働くってなんだろう」「バランスってどう取るんだろう」そんな会話を、今日から家庭でも少しだけ始めてみませんか?
(参考)
VOUGE|「心配性でも、繊細でも、泣き虫でも、リーダーになれる」──NZ元首相ジャシンダ・アーダーン、最後のスピーチと数々の名言をプレイバック