東大生の8割が「リビング学習」だった。でも本当の理由は、机の場所じゃなかった

東大生の8割が「リビング学習」だった。でも本当の理由は、机の場所じゃなかった

「子ども部屋で勉強させたほうがいいのかな。それともリビング?」
入学や進級のたびに、机の置き場所で悩んだことはありませんか。「東大生はリビング学習が多い」という話を聞いて、うちも真似したほうがいいのかと、少し焦った方もいるかもしれません。

でも、リビング学習を調べていくと、東大生の家庭に共通していたのは「机の場所」ではなく、もっとシンプルなことでした。この記事では、リビング学習のデータと、子どもがそばに親がいると集中できる理由を研究から読み解き、今日から足せるひとつの工夫をお伝えします。

「リビングで勉強させたほうがいいの?」その迷いは、正しい感覚です


夕方のリビング。夕食の支度をしながら、テーブルで宿題を広げる子どもをちらちら見る。「なんで消しゴムで遊んでるの」と言いたくなるのをこらえる。
あの時間は、お母さんにとっては落ち着かないものですよね。

一方で「自分の部屋でやらせたら、もっと集中できないかも」という不安もある。どちらにしても心配になるのは、それだけ子どものことを見ているからです。

じつは、その「そばで見ていたい」という気持ちこそが、リビング学習の効果の正体だと考えられます。順番に見ていきましょう。

東大生の8割が「リビング学習」だった。でも本当の理由は、机の場所じゃなかった


東大生の8割がリビング学習。でも、数字より大事なこと


まず、話題になっているデータを整理します。東大生を対象にした調査では、83%が小学生時代にリビングで勉強していたと報告されています。*1また、現役東大生・大学院生249人へのアンケートでは、リビング学習派が54.2%、自室学習派が39.4%でした。
*2

調査リビング学習の割合東大生への調査 *183%現役東大生・大学院生249人へのアンケート(2021年) *254.2%(自室学習は39.4%)
調査によって数字に幅はありますが、東大生の半数から8割ほどが、小学生のころにリビングで勉強していたことが分かります。

ただ、ここで見落としたくないのは、「リビングで勉強した」という結果より、「リビングに親がいた」という環境のほうです。子どもがリビングにいるとき、たいてい近くにお母さんやお父さんがいる。実際、リビング学習をしていた東大生の体験談では「親の気配を感じながら安心して勉強できた」という声が多く聞かれます。つまり、机の場所そのものより、「そばに安心できる大人がいた」ことが本質なのかもしれません。この点は、発達心理学の古典的な研究が裏づけてくれます。

子どもが集中できるのは「安心基地」があるから


子どもは、安心できる相手がそばにいるときほど、外の世界を探索できる。これは「安心基地(secure base)」と呼ばれる考え方です。


1歳前後の子ども56人を対象にした観察研究では、母親がそばにいるときに子どもの探索行動(おもちゃに手を伸ばす、部屋を動き回る)が増え、母親がいなくなると探索が減って、母親を求める行動が強まる傾向が示されました。(ジョンズ・ホプキンス大学、発達心理学者メアリー・エインズワース教授ら)*3


研究メモ|安心基地とは

安心できる大人がそばにいると、子どもは「何かあっても戻れる場所がある」と感じて、外の世界に向かっていける。この「戻れる場所」が安心基地です。乳幼児期の研究が出発点ですが、「安心があるから挑戦できる」という構図は、幼児期や小学校低学年の学習にも通じると考えられています。


この研究は1歳児が対象なので、そのまま小学生に当てはめることはできません。ただ、「安心があるから、目の前のことに向かえる」という構図は、幼児期から低学年の子どもにもよく見られます。

たとえば、はじめて宿題を持ち帰った1年生。分からない問題があったとき、隣の部屋に誰もいなければ、そこで手が止まりがちです。
でも、キッチンにお母さんがいれば「これ、どうやるの?」と聞ける。「聞けばいい」と分かっているだけで、子どもは安心して問題に向かえるのです。


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そばにいる「だけ」でいい。口を出しすぎないほうが伸びる、という研究


「そばにいるのが大事なら、隣に座って教えたほうがいいの?」と思うかもしれません。ここで参考になるのが、親の関わり方を分けて調べた研究です。

小学3年生から6年生の子どもをもつ母親64人、父親50人への面接調査では、親の関わりを「自律性を支える」「関与する」「枠組みをつくる」の3つに分けて分析しました。その結果、子どもの自主性を尊重する関わり方(自律性支援)ほど、子どもが自分で学習を進める力や、教師が評価する適応力、成績と結びつく傾向が報告されています。(ニューヨーク大学、心理学者ウェンディ・グロルニック氏、ロチェスター大学 リチャード・ライアン教授)*4

さらに、親の学習への関わりに関する研究をまとめたレビュー論文では、関わりの「量」より「質」が重要で、子どもの自主性を尊重する関わりはプラスに働く一方、答えを教え込んだり、細かく指示したりする関わりは、かえって意欲を下げる場合があると整理されています。
(イリノイ大学、エヴァ・ポメランツ教授ら)*5

「そばにいる」と「見張る」は違う。東大生の親が特別だったとすれば、隣に張りつくのではなく、気配だけを置いていた、そのゆるさなのかもしれません。


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今日からできる「なんとなくそばにいる」3つの工夫


机を買い替える必要も、間取りを変える必要もありません。いまの生活に、少し工夫だけで充分です。


1. 宿題の時間は「キッチンにいる」と決める

教える必要はありません。洗い物でも、夕食の下ごしらえでもいい。「お母さんはここにいるよ」が伝わる距離にいるだけで、子どもの安心基地になります。


2. 「分からなかったら呼んでね」を先に言う

始める前のひとことで、子どもは「聞けばいい」と分かって手が止まりにくくなります。呼ばれたら、答えを教える前に「どこまで分かった?」と聞いてみてください。

3. 終わったら「見せて」と言う

丸つけでも評価でもなく、「へえ、こんな問題やってるんだ」と眺めるだけ。「見てもらえた」という感覚が、明日もリビングで広げようという気持ちにつながります。


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***

「リビング学習がいいらしい」と聞くと、机の場所や間取りに目が向きがちです。でも、データと研究が示していたのは、子どもの隣に「安心して戻れる大人」がいたということでした。

いま、夕食の支度をしながら子どもの様子を気にしているその時間は、もう安心基地として機能しています。
あとは、口を出したくなる気持ちを少しだけ胸にしまって、「呼んでね」のひとことを加えてみる。それくらいの気軽さで、いいのだと思います。

FAQ(よくある質問)
Q. リビングにテレビがついていても大丈夫?

A. 宿題の間だけは消しておくのがおすすめです。安心基地に必要なのは「親の気配」であって、音や映像ではありません。生活音や料理の音は気にしなくて大丈夫です。


Q. 子どもが「自分の部屋でやりたい」と言ったら?

A. その希望を尊重してあげてください。自分で場所を選べること自体が、自律性を支える関わりです。ドアを少し開けておく、終わったら見せに来てもらうなど、気配がつながる工夫を足せば充分です。


Q. 共働きで、宿題の時間にそばにいられません。

A. 帰宅後に「見せて」と眺める時間を5分つくるだけでも、「見てもらえた」という安心は届きます。安心基地は「常にそばにいる」ことではなく、「戻れば受け止めてもらえる」と子どもが感じられることで育ちます。


(参考)
*1 瀧靖之(監修)|『東大脳の育て方』主婦の友社
*2 プレジデントFamily(2021年3月)|現役東大生・大学院生249人へのWebアンケート
*3 Ainsworth, M. D. S., & Bell, S. M. (1970)|Attachment, exploration, and separation: Illustrated by the behavior of one-year-olds in a strange situation. Child Development, 41(1), 49-67.
*4 Grolnick, W. S., & Ryan, R. M. (1989)|Parent styles associated with children’s self-regulation and competence in school. Journal of Educational Psychology, 81(2), 143-154.
*5 Pomerantz, E. M., Moorman, E. A., & Litwack, S. D. (2007)|The how, whom, and why of parents’ involvement in children’s academic lives: More is not always better. Review of Educational Research, 77(3), 373-410.
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