ルールを守りたい特性が「チクリ」と誤解され…「学校に行けているから大丈夫」じゃなかった、発達障害の息子が6年間耐え続けた同級生トラブル【読者体験談】

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お子さんのプロフィール
  • 年齢:14歳
  • 診断名:ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向あり
  • 診断時期:10歳
  • エピソード当時の年齢:7~12歳


1学年1クラス、6年間同じメンバーで過ごした小学校


息子が通っていた小学校は、1学年1クラスでした。クラス替えはなく、6年間ずっと同じメンバーで過ごす環境です。そのクラスの中に、低学年の頃から少し気になる男の子がいました。

彼は基本的には明るく元気で幼いところもある子でした。ただ、年の離れたお兄さんがいるそうで、青年向けの漫画などに出てくるような、強い言葉や刺激の強い表現を使うことがありました。

小1のある日、息子が驚いた顔で帰ってきて、こう言いました。
「今日、学校ですごいこと言われた」
息子から聞いた言葉は、息子を罵倒する言葉だったのですが、小1の子どもが使うにはかなり強い表現でした。私は正直、びっくりしました。
少なくとも、子どもには聞かせたくない言葉でした。

息子に聞くと、その同級生は息子にだけでなく、ほかのクラスメイトにも同じような言葉を言っているとのこと。迷いましたが、連絡帳で先生に「本日息子はこのように言われたそうなのですが……」と相談をしました。するとすぐ先生からお電話をいただきました。

「申し訳ございません。その生徒は強い言葉を使ってしまう傾向があって……。息子さんがおっしゃるように、特定の誰かだけではなく、クラスの子たち全員に言っている状況です。それも問題ではあるのですが、学校とご家庭で対応しているところです」

息子個人が狙われているわけではないこと、息子自身もその時点ではそこまで気にしていないように見えたこともあり、私はひとまず様子を見ることにしました。


ルールを守りたい息子と、強い言葉を使う同級生


学年が上がるにつれ、その同級生と息子は少しずつ衝突するようになりました。息子はいわゆる「チクリ魔」と言われやすいタイプでした。ルールを守らないことがとても気になるのです。

「廊下を走っていた」
「掃除をさぼっていた」
「いけないことを言っていた」

そうしたことを、頻繁に先生に言っていたようです。息子にはASD(自閉スペクトラム症)傾向もあり、融通が利きにくいところがあります。本人にとっては「悪いことは悪い」「先生に伝えるべき」という感覚だったのだと思います。一方で、周りの子どもたちからすると、それが「すぐ先生に言う」と受け取られてしまうこともあったのかもしれません。

息子は休み時間は一人教室で読書をしているタイプでした。
のちに知ったことですが、この頃からその男の子や周りの生徒たちが、息子の席の近くに来て、はやし立てるようなこともあったようです。

ただ、当時の私は、家で息子から詳しい話を聞けていたわけではありませんでした。
息子は学校のことをあまり細かく話すタイプではありません。嫌だったことを聞いても、すぐ忘れてしまうのか、言葉にするのが難しいのか、あまり話が出てこないのです。
私は「学校には行けているし、大丈夫なのかな」と思っていました。

小5でほかの保護者から聞いた「最近、息子くんが……」


本格的に「これは親が介入したほうがいい」と思ったのは、小5のときでした。
ある日、ほかのお母さんから、こんなふうに声をかけられました。
「うちの娘から聞いたんだけど、Aくんが息子くんをいじめているって……」
私は驚きました。

家に帰って息子に聞くと、息子は「あきらかに僕に絡んでくることが多い」と認めました。
「どんなことをされるの?」と聞くと、息子が触ったものを汚いもののように扱われたり、息子に向けて強い言葉を何度も言ってくるとのことでした。

聞いていくと、思っていた以上にしんどい内容でした。
私は「これは学校に相談したほうがいい」と思ったのですが、息子は嫌がりました。
「先生の前でもやられてるし、先生が『やめなさい』って言ってもやめてくれないから、意味ないよ」
「むしろ、言ったら余計にいじめられるから嫌だ」
そこまでの状態だったのかと、私はショックを受けました。

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「学校に行きたくないと思うことはないの?」と聞くと、息子はこう答えました。
「行きたくないけど、まあ、ずっと関わっているわけじゃないし」

息子は、気持ちの切り替えがとても早いところがあります。さっきまで泣いていたのに、次の瞬間にはけろっとしていて、親がびっくりすることもしばしばです。
その切り替えの早さが、息子が学校に通い続けられた理由のひとつだったのかもしれません。
でも、それは平気だったということではなかったのだと思います。
今振り返ると、息子が学校へ行けていたことで、私も周囲も、息子のつらさを少し軽く見てしまっていたのかもしれません。

学校に相談。先生は把握していたけれど、根本的な解決には至らず……


家族で話し合ったとき、夫が息子にこう言いました。
「これは親としては見過ごせないよ。このままだと、君が傷つき続けるのを受け入れることになってしまう。先生に相談してみよう」
息子はしぶしぶでしたが、学校に伝えることを承諾しました。
私から先生に連絡しました。


先生は、状況をある程度把握しているようでした。
「はい、現場は見ております。注意もして、その場ではやめているのですが、すべてに目が行き届いているわけではなく……。申し訳ありません。もっと注意して見るようにします」
先生は謝ってくださいましたし、気にかけてくださっていたのだと思います。
ただ、先生からはこんな言葉もありました。
「一度、もう息子さんが学校に来なくなるのではと思ったことがあったのですが、翌日来ていて、強いなと思いました」
その言葉を聞いたとき、私は複雑な気持ちになりました。

息子が翌日も学校に行ったことは、確かにすごいことだったのかもしれません。
でも、だからといって、その状況を本人の“強さ”で乗り越えさせていいわけではないのではないか。
そう思いました。

その後も学校側は対応しようとしてくれていたのだと思います。けれど、実際には相手の子の態度が大きく変わることはなかったようです。

「嫌なら休もう」と伝えながら、卒業まで過ごした日々

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その後、わが家では息子に「なるべく関わらないようにしよう」「嫌だったら学校を休んでいいよ」と伝えながら、5年生、6年生を過ごしました。
息子がこのことで学校を休んだのは、1回だけでした。
ある日、「今日はどうしても嫌だ」と言ったので休ませました。翌日、息子は特に何事もなかったように学校へ行き、帰ってきました。
その切り替えの早さに助けられた面もあります。けれど同時に、息子の切り替えの早さが、周囲に「大丈夫そう」と思わせてしまった面もあったのかもしれません。
結局卒業まで、このような状況が続きました。

息子とその同級生は中学で別になり、もう会うこともありません。今は物理的に距離ができたことで、問題は終わったように見えます。
でも、私の中には今も、「あれでよかったのだろうか」という思いが残っています。
学校にもっと強く伝えるべきだったのか。
相手の保護者にも伝えてもらうよう、もっとお願いすべきだったのか。
息子が嫌がっても、もっと早く介入すべきだったのか。
それとも、本人の気持ちを尊重して、あの対応でよかったのか。
今でもはっきりとした答えは出ていません。

ただひとつ思うのは、息子が学校に行けているからといって、困っていないとは限らないということです。
発達特性のある子の中には、自分のつらさをうまく言葉にできなかったり、その場では受け流してしまったりする子もいるのだと思います。息子も、嫌なことがあってもすぐ切り替えられる一方で、その分、周囲からは困りが見えにくかったのかもしれません。

結果的に、息子が耐えることで終わってしまった友だちトラブルでした。
それが息子にとってどれほど負担だったのか、親である私にもいまだに分かりきれません。
もしこれから同じようなことがあったら、もう少し早く、具体的に状況を聞き取っていきたいです。
そして、本人の気持ちを大切にしながらも、必要なときには大人が一緒に動くことをためらわないようにしたいと思っています。

イラスト/マミヤ
エピソード参考/もも

息子さんにとっても、ご家族にとっても、本当につらいご経験でしたね。
ご本人が「先生には言わないでほしい」とお話しされているときに、親としてどこまで介入するのかは本当に難しいことですよね。本人の思いを聞きながら、それでも「あなたが傷つき続けることをそのままにはできない」と伝えた言葉には、ご両親の息子さんを守りたいという思いがあふれているように感じます。
問題そのものをすべて解決することはできなかったとしても、「困ったときには自分の味方になって、一緒に考えてくれる家族がいる」と感じられることは、お子さんにとってとても大きな支えだったのではないかと思います。そうした安心感は、これから先、困ったときに誰かに助けを求めたり、自分の気持ちを伝えたりする力にもつながっていくことと思います。(監修:小児科医室伏佑香先生)

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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