怒鳴るコーチとのサッカーが嫌だけど6年生だし移籍は迷う、負け犬の遠吠えになりかねないので相談もできない問題
上手くできないと名指しで怒鳴るコーチ。できても褒めないどころか「調子に乗るな」と言い、コーチの好むスタイルと合わないとすぐ交代。サッカーが年々嫌いになる。
ほかのコーチに相談したいけど親は練習や試合への口出しを禁じられているし、怒鳴るコーチ派が多くて、負け犬の遠吠えになりかねない。こんな状況でも卒団まで居続けるべき?と悩むお母さんからのご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<サッカーママからのご相談>
初めてご相談させて頂きます。
小6(12歳)の息子が今所属しているクラブは市内でもかつては強豪と言われていたクラブです。
ですので全面的にコーチに任せていれば良いのだと思っていました。ところがその指導は子ども達の個性を伸ばすのではなく練習中、試合中うまく出来なかったプレーに対しての名指しで怒鳴ります。
逆にうまく出来たと思ってても褒めたりはしませんし、たまたま出来たから調子にのるなと言う始末です。成功体験どころか自信もなくしますし年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカーになり始めてきています。
息子はチーム以外にスクールにも通い、子どもなりに上手くなりたい気持ちで練習を重ねています。
ですが、好きなタイプの子どもには同じミスでも言い方が変わります。そのことが最近多くなり、息子はコーチとのサッカーが嫌になってきています。
卒団まであと残り半年以上。チームのユースに行くつもりはないのですがこの時期に移籍するべきなのか我慢して卒団まで頑張らせるのか迷います。
同じ考えの親御さんもいますが怒鳴るコーチ派が多く負け犬の遠吠になりかねません。はっきり言って今の時代ではパワハラです。
それでも居続けるかどうかの判断を子どもに任せるのが良いのでしょうか?
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
息子さんのコーチの姿を実際見てはいませんし、その指導がパワハラだと言い切れるかどうかまでは判断できません。
ただし、お母さんが書かれているように「たまたま出来たから調子にのるな」と言ったり、出てもすぐ交代させられ「お前は駄目だ」とけなされることが日常的であれば、お母さんの「サッカーを楽しめる指導から完全に逸脱している」との指摘はごもっともです。間違いなく不適切な指導と言えるでしょう。
一方で、ご相談文だけではわからないことがたくさんあります。そのコーチの指導を受け始めたのはいつからなのでしょうか?自宅が近く強かったから通い始めた、とあるので、低学年の頃から指導を受けていたということでしょうか?コーチの態度や不適切な指導にずっと我慢してきたというわけでもなさそうです。
わが子がレギュラーのときは不適切指導を「できない子に発破をかけている」と受け止め、メンバーから外されると「パワハラだ」という見方になるのはよくあることです。
その点から考えると、お母さんの「年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカーになり始めてきています」「息子はコーチとのサッカーが嫌になってきています」という言葉が気になります。
つまり低学年や中学年では試合に出られていたのに、最上級生になって出場時間が削られるようになったという背景もあって「年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカー」になっているのでしょうか?
さらにいえば「負け犬の遠吠になりかねません」とも書かれていて、「負け犬」イコール「補欠」といった意味に受け取れます。そうなると、お母さんも息子さんも、試合に出られていたときは他の子どもがこのコーチから否定されていたことについてはどう受け止めていたのかなと気になりました。
以上はあくまでも私の予測ではありますが、どんな指導が子どもを伸ばすのかを整理できたことは良かったのかもしれません。
例えば、以前は暴力や暴言が当たり前に存在していました。が、2013年に運動部活動の現場で高校生が自死した事件などを踏まえ、日本のスポーツ界では「暴力等根絶宣言」が行われ、そこを節目に日本サッカーも指導環境の正常化に粛々と取り組んできました。
私も多くの本を書きましたし、セミナーもしました。
しかしながら、暴言や強い言葉に頼らずに子どもを伸ばす「新しい指導スタイル」を身につけているコーチは、まだ決して多くはありません。残念ながら、お母さんが考えたように「全面的にコーチに任せていれば良い」状況ではないのです。
さて前段が長くなりました。お母さんの「それでも居続けるかどうかの判断を子どもに任せるのが良いのでしょうか?」という質問にお答えします。
再三申し上げているようにご相談文だけでは判断しかねますが、ここは息子さんに任せていいかと思います。息子さんはすでに小学6年生です。
逆にお母さんが「このチームに行ったら?」と勧めて、実はそちらのチームのコーチのほうがよろしくない指導だったり、試合に出られなかったり、いじめに遭ったりすれば「お母さんの言った通りにしたのに」と自分の身に起きたことに向き合えなくなります。
お母さんは「卒団まであと残り半年以上」と書かれましたが、長いサッカー人生を考えるとわずか半年ともとらえられませんか。
加えて「我慢して卒団まで頑張らせるのか迷う」の一文も気になりました。親が子どもを「頑張らせる」ことは、決していいことだと思えません。
受験などで親に厳しく言われて頑張って合格した話は美談として伝わりますが、主体的に取り組んで手にした成果のほうが後の人生の実りにつながります。
また、チームに息子さんのお気に入りのコーチがいるようです。担当コーチではないようですが、こんなことで悩んでいるという話はして良いと思います。スクールも通っているということなので、そのスクールを運営している方などに話してみても良いでしょう。
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(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
最後にもうひとつ。
彼は今、試合でミスすれば交代させられる状況のようです。要するに所属するチームのコーチに話を聞いてもらえず、急がされ、待ってもらえない。そうであればなおさらお母さんが息子さんの気持ちや意思を聞くことが重要です。
ゆっくり急がず、否定せず、彼の話をよく聞いて「君の思う通りにすればいいよ」と決めさせてあげてください。決めるまでも、ゆっくり、急がず、否定せず。待ってあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「ファジアーノ岡山「地熱」の奇跡 親会社なき市民クラブがどうやってJ1昇格を遂げたか 」(竹書房)
ほかのコーチに相談したいけど親は練習や試合への口出しを禁じられているし、怒鳴るコーチ派が多くて、負け犬の遠吠えになりかねない。こんな状況でも卒団まで居続けるべき?と悩むお母さんからのご相談。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
<サッカーママからのご相談>
初めてご相談させて頂きます。
小6(12歳)の息子が今所属しているクラブは市内でもかつては強豪と言われていたクラブです。
練習量、試合数も多くユースもあります。練習場所が自宅から近いし強いチームだからと入部させました。基本姿勢としては親は練習、試合に関しては口出しは一切許されていません。
ですので全面的にコーチに任せていれば良いのだと思っていました。ところがその指導は子ども達の個性を伸ばすのではなく練習中、試合中うまく出来なかったプレーに対しての名指しで怒鳴ります。
逆にうまく出来たと思ってても褒めたりはしませんし、たまたま出来たから調子にのるなと言う始末です。成功体験どころか自信もなくしますし年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカーになり始めてきています。
息子はチーム以外にスクールにも通い、子どもなりに上手くなりたい気持ちで練習を重ねています。
ただ、今のコーチの理想とするサッカーのスタイルに合わないと試合も出れない、出てもすぐ交代させられます。そして「お前は駄目だ」とけなされます。
ですが、好きなタイプの子どもには同じミスでも言い方が変わります。そのことが最近多くなり、息子はコーチとのサッカーが嫌になってきています。
卒団まであと残り半年以上。チームのユースに行くつもりはないのですがこの時期に移籍するべきなのか我慢して卒団まで頑張らせるのか迷います。
同じ考えの親御さんもいますが怒鳴るコーチ派が多く負け犬の遠吠になりかねません。はっきり言って今の時代ではパワハラです。
子どもを指導することは難しいとは思いますが基本的なサッカーを楽しめる指導から完全に逸脱しています。親としては辛いです。
それでも居続けるかどうかの判断を子どもに任せるのが良いのでしょうか?
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
息子さんのコーチの姿を実際見てはいませんし、その指導がパワハラだと言い切れるかどうかまでは判断できません。
ただし、お母さんが書かれているように「たまたま出来たから調子にのるな」と言ったり、出てもすぐ交代させられ「お前は駄目だ」とけなされることが日常的であれば、お母さんの「サッカーを楽しめる指導から完全に逸脱している」との指摘はごもっともです。間違いなく不適切な指導と言えるでしょう。
■今回の経験から「どんな指導が子どもを伸ばすのか」を整理できたのは良かった
一方で、ご相談文だけではわからないことがたくさんあります。そのコーチの指導を受け始めたのはいつからなのでしょうか?自宅が近く強かったから通い始めた、とあるので、低学年の頃から指導を受けていたということでしょうか?コーチの態度や不適切な指導にずっと我慢してきたというわけでもなさそうです。
わが子がレギュラーのときは不適切指導を「できない子に発破をかけている」と受け止め、メンバーから外されると「パワハラだ」という見方になるのはよくあることです。
その点から考えると、お母さんの「年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカーになり始めてきています」「息子はコーチとのサッカーが嫌になってきています」という言葉が気になります。
つまり低学年や中学年では試合に出られていたのに、最上級生になって出場時間が削られるようになったという背景もあって「年代が上がるほど楽しいサッカーが嫌いなサッカー」になっているのでしょうか?
さらにいえば「負け犬の遠吠になりかねません」とも書かれていて、「負け犬」イコール「補欠」といった意味に受け取れます。そうなると、お母さんも息子さんも、試合に出られていたときは他の子どもがこのコーチから否定されていたことについてはどう受け止めていたのかなと気になりました。
以上はあくまでも私の予測ではありますが、どんな指導が子どもを伸ばすのかを整理できたことは良かったのかもしれません。
■暴力指導は減っているが、強い言葉に頼らず子どもを伸ばす指導を習得している指導者はまだ少ない
例えば、以前は暴力や暴言が当たり前に存在していました。が、2013年に運動部活動の現場で高校生が自死した事件などを踏まえ、日本のスポーツ界では「暴力等根絶宣言」が行われ、そこを節目に日本サッカーも指導環境の正常化に粛々と取り組んできました。
私も多くの本を書きましたし、セミナーもしました。
少しずつグッドコーチが増え、この13年間で大きく変容しました。今では少年のカテゴリーで暴力を振るうコーチがいるとはほぼ聞かなくなりました。
しかしながら、暴言や強い言葉に頼らずに子どもを伸ばす「新しい指導スタイル」を身につけているコーチは、まだ決して多くはありません。残念ながら、お母さんが考えたように「全面的にコーチに任せていれば良い」状況ではないのです。
■もう小6、居続けるかどうかは本人に任せていい。自分で選ぶからこそ責任が取れる
さて前段が長くなりました。お母さんの「それでも居続けるかどうかの判断を子どもに任せるのが良いのでしょうか?」という質問にお答えします。
再三申し上げているようにご相談文だけでは判断しかねますが、ここは息子さんに任せていいかと思います。息子さんはすでに小学6年生です。
これから思春期に入り大人の階段を上る季節に入ります。保護者がああしろ、こうしろと進路を示すのではなく、自分で選ばせてあげてください。自分で選ぶからこそ、その行動に責任がとれるはずです。
逆にお母さんが「このチームに行ったら?」と勧めて、実はそちらのチームのコーチのほうがよろしくない指導だったり、試合に出られなかったり、いじめに遭ったりすれば「お母さんの言った通りにしたのに」と自分の身に起きたことに向き合えなくなります。
お母さんは「卒団まであと残り半年以上」と書かれましたが、長いサッカー人生を考えるとわずか半年ともとらえられませんか。
■「好き」「楽しい」そういった環境であれば子どもは勝手に頑張る
加えて「我慢して卒団まで頑張らせるのか迷う」の一文も気になりました。親が子どもを「頑張らせる」ことは、決していいことだと思えません。
受験などで親に厳しく言われて頑張って合格した話は美談として伝わりますが、主体的に取り組んで手にした成果のほうが後の人生の実りにつながります。
息子さんの場合、その環境や、仲間、コーチが好きで、やっているサッカーが楽しい。そんな心理的安全性が確保された環境であれば、子どもは勝手に頑張ります。
また、チームに息子さんのお気に入りのコーチがいるようです。担当コーチではないようですが、こんなことで悩んでいるという話はして良いと思います。スクールも通っているということなので、そのスクールを運営している方などに話してみても良いでしょう。
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■今お母さんにしてほしいこと
最後にもうひとつ。
彼は今、試合でミスすれば交代させられる状況のようです。要するに所属するチームのコーチに話を聞いてもらえず、急がされ、待ってもらえない。そうであればなおさらお母さんが息子さんの気持ちや意思を聞くことが重要です。
ゆっくり急がず、否定せず、彼の話をよく聞いて「君の思う通りにすればいいよ」と決めさせてあげてください。決めるまでも、ゆっくり、急がず、否定せず。待ってあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。新著は「ファジアーノ岡山「地熱」の奇跡 親会社なき市民クラブがどうやってJ1昇格を遂げたか 」(竹書房)