食卓をつなぐ会代表、H-table料理教室代表。 空間デザイナーとして、日本中を走り回り、子育てと日々の行事に追われて寝る間もなく働いていた頃、「そんなおばあさんの知恵袋みたいなこと、だれもやらないよ」というパートナーの一言で食の道へ。 日本料理店で修行を積み、自宅で料理教室を開く。料理の素晴らしさはもちろん、幼い頃から慣れ親しんで来た、日本の行事をつなぐ活動をしている。 COOK COOP BOOKにて「ニッポンの12ヶ月」講座も開講中。「食べることをきちんとすれば、生きることが整う」が座右の銘。
冬至 といえば、柚子湯に入ることは知っていても、いったい何の行事かわからない方も多いですよね。今回は知っておきたい「冬至」の由来と、冬至にいただきたい美味しい かぼちゃのレシピ をご紹介します。 冬至は「運気が上昇する日」?! 冬至とは、北半球において太陽の位置が最も低くなり、日照時間が一年で 最も短く なる日のこと。日照時間が一番長い「夏至」の頃と比べると、4時間から6時間ほど差があります。日が短いと、暗い時間が長くて寂しい印象を持つ方も多いと思いますが、 “一番短い” ということは翌日からは日がどんどん 長く なっていく、ということでもあります。 古来から中国や日本では、この日を境に太陽の力が強くなっていき、再び陽に戻るため 「一陽来復」 と呼ばれ、 運気が上昇する日 と言われてきました。 冬至の現象はもちろん日本だけではありません。世界各地でも冬至を機に、 太陽が新しく生まれ変わる日 として、いろいろなお祭りが行われてきました。みなさんが楽しみにしているクリスマスも、このお祭りとキリストの生誕が結びついたものだと言われているのです。 「運」のつく食べもので、縁起をかつぐ 運気が上がっていく冬至の時には 「運」 のつくもの、ということで 「ん」 のつく食べものを食べて縁起をかつぎます。例えば、 にんじん、だいこん、れんこん、なんきん(かぼちゃ)、ぎんなん、きんかん、いんげん などですね。 「ん」は「いろは」の最後でもあり、太陽の生まれ変わる最後「一陽来復」に通ずるとされています。もちろん運を呼び寄せるという意味もありますが、これらの根菜は 身体をあたため 、これから来る厳しい冬に耐えるだけの 身体を作る という知恵でもありました。 冬至にはかぼちゃの他、 小豆 を使った 冬至粥 や、小豆とかぼちゃを一緒に煮た いとこ煮 などがあります。小豆は平安の昔から 邪気を払い、穢れを祓う 食べものとされ、身を清めて明日へ向かうために食べられてきたのでしょう。 たくさんの野菜を用意しなくても、南瓜だけでも簡単に美味しい料理が作れます。今回はお鍋ひとつで作れる「かぼちゃ煮」をご紹介します。ほっこりとしたやさしい味で、お弁当にもぴったりですよ。 冬至に食べたい「かぼちゃ煮」のレシピ <作り方 4人分> ・南瓜 1/4個(約400g) ・出汁(水+昆布5cmでもよい) 300cc ・砂糖 大さじ2 ・淡口醤油 大さじ1と1/2 ・酒 大さじ1 ・みりん 大さじ1 1)南瓜は洗って種とワタをスプーンでとり、食べやすい大きさに切って、面取りをする。 面取りはピーラーでやると簡単です。 2)鍋に南瓜、出汁を入れて火にかけ、沸いたらすぐに弱火にして、砂糖、酒を加え3分煮る。 3)3分たったら淡口醤油を加えてペーパーで落としぶたをして、やわらかくなるまで火を通し、最後にみりんを加える。※このみで七味や豆板醤を加えるとよい。 血行促進・美肌効果も期待できる「柚子湯」で身を清める 冬至といえば、 「柚子湯」 も欠かせません。融通がきくようにと言われていますが、もともとは菖蒲湯と同じで、 身を清める ための儀式のひとつです。柚子の強い香りが、穢れや鬼を払うと思われていたようです。 柚子の効果はそれだけでなく、 血行促進、冷え性にも効き、風邪予防や美肌効果、精神の安定 にもつながります。今年は柚子が豊作のようですので、多めにいれてお湯を楽しんでみるのもいいかもしれません。 2015年の冬至は22日。かぼちゃや柚子湯を楽しみ、翌日から来る新しい日を新しい気持ちで迎えてみてください。
2015年12月19日この時期になると、着物をきたかわいい子供たちの姿が、神社でも見られるようになってきます。七五三、みなさまもご両親に祝ってもらった記憶があるのではないでしょうか。この時期に七五三を行うのは一体なぜなのでしょう? 今回はいまさら聞けない日本の伝統行事「七五三」のことと、伝統的な「祝い膳」についてご紹介します。 七五三は、11月15日の「鬼宿日」に行う 穏やかな晴れの日が多い10月中旬ごろから11月中旬に七五三を行う方が多いようですが、本来は 11月15日 に行います。それはこの日が 鬼宿日 にあたり、婚礼以外はなにをしてもよい日、 吉日 とされているからです。 「鬼宿日」とは日の吉凶判断などに使われる日の二十八宿の一つで、二十八宿中の最良の日とされています。江戸時代の占い方では、11月15日が必ず 鬼宿日 と決まっていたため、将軍家の七五三にはこの日が選ばれるようになりました。鬼宿日がめでたいのは、お釈迦様の誕生日がこの日だったと信じられているためです。 七五三の行事自体は室町時代には始まっていました。江戸時代に五代将軍綱吉のご子息のお祝いをこの日に行ったことから、関東の武家社会を中心に七五三が定着したと言われています。 昔は子どもの死亡率が高かったため、 無事に成長してくれたお祝い 、そしてこれからの 長寿 を願って、その子の生まれた土地の神様に 感謝とこれからの加護 をお願いする儀式として現在にいたっています。 3歳:「髪置」ようやく髪がそろい髪を伸ばす頃 5歳:「袴着」初めて袴をつける 7歳:「帯解」歯もはえ揃い、紐付き帯ではなく本仕立ての着物と丸帯を 七五三といえば「千歳飴」と「祝い膳」 七五三といえば 「千歳飴」 。これは延寿、 長く 生きて欲しいという願いを込めて、めでたい 紅白 で色づけられています。今でも伝統を重んじる和菓子屋では、一度神社で お祓い を受けた物を店頭に並べています。 家庭では 「祝い膳」 を作り、家族や親しい人と食卓を囲みます。生まれて100日(もしくは110日、120日)に「一生食べ物に困らないように」との願いを込めて行う「お食い初め」をはじめとし、御節や、七五三、結納、 結婚式、賀寿(還暦や喜寿、米寿など)など、折りにふれて お祝いのお膳 をいただく習慣があります。 人生の節目にいただく、伝統的な食文化を大切に 現在では洋食の結婚式がほとんどとなってしまいましたが、結納などでは、このような伝統的な食事をすることがまだあるでしょう。 割り箸は使わず 「柳の丸箸」 を使い、めでたいにかけた 「お頭付きの鯛」 を用意します。献立は 一汁三菜 で お赤飯 や季節のご飯もの、椀物、季節の焚き合わせ、香の物や酢の物、紅白餅などが主流です。 人生の節目節目に訪れるこういった料理は、本来は 家庭 で作っていたものです。ホテルや仕出しの豪華さがなくても、育った家庭で折にふれ食べてきた料理が一番ありがたいもの。想いをこめて、感謝の気持ちを込めて作ることがなによりも大切だと思います。 お赤飯の作り方 お赤飯 はそんなに難しいものではありません。吉事に食べるお赤飯は少し高価でも「小豆」ではなく 「ささげ」 を使います。小豆は蒸すと、豆が割れて壊れてしまうので、この時だけは割れないささげを使いましょう。 <材料>(4人分) ・もち米 2合 ・ささげ 2/4カップ分 ・黒ごま 小さじ1 ・塩 小さじ1/2 <作り方> 1. もち米はといでおく。黒ごまと塩はまぜておく。 2. ささげは洗って水3カップを入れて、中火強にかけて10分ほど茹でる。茹で汁とささげにわける。茹で汁が冷めたら、もち米を3時間ほどつける。 (一晩つけるとよい赤になる)この茹で汁は手水で使うのでとっておく。 3. ささげを鍋に戻し、新たに水300ccを加えて少し柔らかくなるまで煮る。(新しいものは10分、去年のものなら30分くらい) 4. 蒸し器に蒸し布巾を敷き、もち米を入れて強火で30分蒸す。10分ごとにしゃもじで天地を返すように混ぜ、2の手水を回しかける。2回目の天地のときにささげを加え、3回目の天地返しで火を止める。 5. 蒸し器から出して飯台やおひつにうつし、ごま塩をふる。 ※炊飯器の餅米モードでも炊くことができます。2 のささげの茹で汁を使って炊きましょう。 いつも見守ってくれている人々や、氏神様、お天道様への感謝の気持ちを込めて、この祝い膳のお赤飯や子供の歳の数の千歳飴を、縁起のよい袋や容器に入れて親戚や周りの方々に 感謝のしるし としてお届けします。 これらは、知っている人であっても無縁の人でも 「自分の成功や吉事は、たくさんの人の恩恵の上に成り立っている」 と考える日本人の 「おかげさま」精神 の表れのひとつなのです。
2015年11月03日お月見といえば「十五夜」(旧暦8月15日の中秋の名月)ですが、実はもう一つのお月見 「十三夜」 があることをご存じでしょうか? 2015年の十三夜は 10月25日 となります。日本人が愛してやまない「月見」と、十三夜にいただきたいお料理をご紹介しましょう。 そもそも「月見」とは? 月見は、もともとは中国から伝わった「望月」という月を見る行事と、豊作祈願や芋の収穫祭などが元になったと言われていますが、正確な起源はわかっていません。秋の月は空気の状態や月の高さから考えて、1年で月が最も美しく見える時期です。美しい月を見て、宴をするのは自然の流れだったのかもしれませんね。 日本での月見のはじまりは、醍醐天皇の月見の宴と記されています。日本や中国だけでなく、ヨーロッパでも秋分の日に近い満月を 「収穫月」 と呼んで祝う風習もあり、秋の収穫にあわせてお祝いするのは万国共通のようです。 「十五夜」と「十三夜」の違いとは? 世界では美しい 丸い月 を見て祝うのが普通ですが、日本では十五夜だけを見るのは 片お月見 といって、縁起が悪いこととされ、翌月旧暦9月13日の 「十三夜」 もお月見をするものとされてきました。これは 日本独自の風習 で、少し欠けたところのある十三夜の月を、 不完全な美しさ として愛でてきたものです。 十五夜は別名「芋名月」と呼ばれ、すすきや秋の七草とともに、お団子や収穫された芋を供えて月を眺めますが、十三夜は 「栗名月」 と呼ばれ、そのときどきに獲れた収穫物をおそなえしました。地方によって、団子の形や数はさまざまなようですが、軒先や玄関など子供が入りやすい場所にお供えし、団子を盗んで食べさせ、多く盗まれた方が、神様が召し上がった事になり、縁起がよいものとされています。 お月見にはお団子の他、収穫にあわせて 「芋」「枝豆」「栗」「葡萄」 などを供えます。お月見らしく丸く愛らしい食べ物もよいとされています。 簡単に里芋や葡萄、栗をお供えするだけでもかまいませんが、お赤飯に栗の甘露煮を入れた 「栗お赤飯」や「衣被ぎ」 もこの時期ならではのお供えです。普段使っている食材でも作ることができる 「鶏つくね」 や 「ゆで卵」 でもお月見らしさを演出できます。 では、十三夜にいただきたい「味玉」と「鶏つくね」のレシピをご紹介しましょう。 「味玉」と「鶏つくね」の作り方 ▼味玉 <材料> ・卵 4個~6個 ・出汁 3カップ ・酒 50cc ・みりん 1カップ ・醤油 1カップ <作り方> 1.水に冷蔵庫から出した卵を入れ、沸騰したら6分ほど茹で、ゆで卵を作り殻を丁寧にむく。 2.鍋に出汁、酒、みりんを入れて沸かし、沸いたら5分ほど沸かしアルコール分を飛ばす。 3.醤油を加えて、ゆで卵を入れ、落としぶたをして、弱火で2分ほど煮る。 4.そのまま冷えるまで冷ます。 ▼鶏つくね (4人分) <材料> ・鶏ももひき肉 300g ・塩 小さじ1/2 ・胡椒 適宜 ・水 大さじ2 ・蓮根のすりおろし 大さじ2 ・片栗粉 大さじ1 ・葱みじん切り 1/2本分 ・生姜みじん切り 大さじ1分 ・醤油 大さじ2 ・みりん 大さじ2 ・砂糖 大さじ1 ・水 大さじ2 <作り方> 1.ひき肉に塩、胡椒をしてねばりが出るまでしっかりまぜる。 2.水、蓮根、片栗粉、葱、生姜を加えてしっかり混ぜ、8等分にして丸める。 3.フライパンに油少々(分量外)をひいて焼き色がつくまで両面を焼き、取り出してフライパンをふきとる。 4.醤油、みりん、砂糖、水を入れて沸かし、とろみがついてきたら 3 のつくねを戻してからめる。 お月見に供えたすすきを一年間軒につるしておくと、病気をしないとも言われています。すすきや秋の草花を飾り、来る十三夜をお酒とともに味わってみてはいかがでしょうか。
2015年10月24日8月下旬ぐらいからスーパーの店頭に並ぶ 「菊花」 。あまり馴染みがないかもしれませんが、栄養価に優れ、 アンチエイジング食材 としていま注目を集めています。また、9月9日は 「菊の節句」 といわれ、菊花酒を飲んで穢れを祓う風習があります。知られざる「菊花」の栄養と「菊の節句」についてご紹介しましょう。 不老不死の薬として伝来した「菊花」 菊はもともと不老長寿の薬として中国から伝来しました。 ビタミンE や 食物繊維 、 ミネラル なども豊富に含まれ、 コレステロール や 中性脂肪 を下げる効果があると言われています。 シンプルな調理法でいただくのが美味しい! 花びらだけをちぎって洗ったあとに、たっぷりのお湯に少量の酢を加えて茹でて、冷水にとります。シンプルに「おひたし」にしていただくと、なんとも言えず美味しいものです。 このほか、ごはんに混ぜたり酢の物やお吸い物に加えるだけでもOK。手軽で見た目も美しく、美味しくいただくことができます。 9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」 五節句の「節句」とは “季節の変わり目” を表します。中国の暦の中では、奇数の重なる日は陽と陽が重なり「陰」になるといわれ、 邪気 を祓う儀式が行われていました。これに由来して日本独自の節句が形成されました。 お正月や3月3日の桃の節句、5月5日の菖蒲の節句、7月7日の七夕も五節句のひとつですが、なかでも 9月9日 は一番大きな奇数(陽数)が重なるので、 「重陽の節句」 と呼びます。 この日は 菊花酒 を飲んで穢れを祓い、詩歌を詠んで宴を開いて 長寿 を願います。このため、別名 「菊の節句」 とも呼ばれています。天武天皇の時代から「重陽の節句」の宴が行われていたようですが、日本独自の形になったのは平安時代以降と考えられています。 また、節句前夜に菊の花の上に真綿をかぶせ、夜露と香りをうつした「着せ綿」で身体をぬぐい穢れを落とす、という日本独自の風習も広まりました。庶民の間では 「栗の節句」 とも呼ばれ、秋の収穫を祝う収穫祭のような意味合いもあったようです。 「菊花」レシピで季節の変わり目を味わう 茹でた菊花を日本酒に浮かべて菊花酒を飲むだけでも、季節の区切りを感じることができますが、簡単で美味しい 「菊花としめじのおひたし」 をご紹介しましょう。 「菊花としめじのおひたし」 <材料> (4人前) ・食用菊 1pac ・春菊 1pac ・しめじ 1pac ・柑橘汁 大さじ 1 ・淡口醤油 大さじ 1 と 1/2 ・出汁 大さじ 1 と 1/2 <作り方> 1)菊花は水洗いして、水気を取って花弁をばらす。春菊は葉の部分を使う。しめじは小房にわけ、1/2 の長さに切る。 2)熱湯で春菊を茹でて冷水にとり、3cmに切る。菊花は酢、塩少々を入れて茹で、冷水にとる。しめじはさっと煮てざるにあげる。 3) 柑橘汁、淡口醤油、出汁をあわせて加減酢を作り、菊花、春菊、しめじを混ぜ合わせる。 忙しい日々に追われていると、いつの間にか変わってしまう季節。意識的に季節の変わり目を感じることで、前の季節に区切りをつけて、新たな気持ちで次の季節を迎えてみてはいかがでしょうか。
2015年09月01日東京都心や一部の地域では 7月 にお盆を行いますが、多くの地域では旧暦7月15日 (8月) に行います。仏様が帰ってくる期間は、肉や魚を使わずに野菜や果物、海藻などを使った 精進料理 をいただくのが日本の習わしです。 忙しくて精進料理だなんて…という方でも気軽にトライできる 「ひじき煮」 のレシピを、お盆の基礎知識とともにご紹介します。 知っていますか?「お盆」の意味 お盆は 「盂蘭盆会」 という言葉からきています。これは サンスクリット語「ウラバンナ」 から来ていて、逆さ吊りのことを言いました。自分の亡き母が逆さ吊りにされて苦しんでいる夢をみたお釈迦様の内弟子の一人が、どうしたら供養ができるかと、お釈迦様に相談したところ、お供えをして神様に祈りなさい、ととかれたことから現在の行事となっていきます。 この盂蘭盆と先祖崇拝が融合したものが、現在のお盆の形となったと言われています。先祖や故人を偲び、今ある自分を省みることが根幹にある考え方です。 お盆には、一汁五菜の形式の「精進料理」を お盆は13日から16日までの 4日間 をいい、13日には迎え火をしてご先祖様をお迎えし、16日には送り火を炊いてお帰りいただきます。この期間には 「桃、スモモ、杏、ナツメ、栗」 を供えて、身を清めてお迎えし、仏様の帰ってくる期間は殺生をせず精進料理をいただくのが昔からのならわしです。お供えのお膳には 「九重椀」 という漆器を使います。 精進料理といっても難しく捉える必要はありません。肉や魚を使わずに 野菜 や、 果物 、 海草 などを使う料理でよいのです。仏教が伝わる以前の神道においても、精進料理のような考え方はありましたが、現在の形式は鎌倉時代の禅宗で確立し 一汁五菜の形式 となったようです。 五味、五色、五法を用い、素材を使いきること 精進料理では、 五味 (甘い、酢っぱい、苦い、辛い、塩辛い) 、 五色 (赤、緑、黄、黒、白) 、 五法 (煮る、焼く、蒸す、揚げる、生) を用い、素材は余すとことなく使い切ることが大切です。 曹洞宗の開祖である道元禅師が記した「典座教訓」という 精進料理の教科書 には、 「喜心、大心、老心」 の 三つの心 が要であると説かれています。喜んで料理をし、細やかな心配りをもち(老心)、バランスを考えて冷静に(大心)料理をする、ということです。 簡単な精進料理でお盆を過ごす 精進料理の技法や食材は、庶民の食事にも影響を与え成長しました。ふだんみなさんが食べている、 蒟蒻 や 高野豆腐 、 ひじき も、精進料理の材料のひとつであったと考えられています。 では、蒟蒻とひじきを使ったかんたん精進料理のひとつ「ひじき煮」のレシピをご紹介します。 手軽に作れる「ひじき煮」レシピ <材料> ・ひじき …30g ・人参 …4cm分 ・油揚げ …1枚 ・蒟蒻 …1/2丁 ・枝豆 …ゆでてむいたもの(好みで) ・水 …150cc ・砂糖 …大さじ2 ・酒 …大さじ1 ・醤油 …大さじ2と1/2 ・ごま油 …大さじ1と1/2 <作り方> 1.ひじきは水でさっと洗い、5倍のぬるま湯で30分ほどもどし、ざるにあげておく。 2.油揚げは熱湯でさっと茹でて油をおとし、5mm幅に切る。人参、蒟蒻は2cm長さの拍子木きりにする。枝豆は皮をむいてさやから出しておく。 3.鍋に油を熱し、蒟蒻、人参、ひじき、油揚げの順で、しっかり炒める。 4.水を加えて中火で煮る。砂糖、酒、醤油の順で調味料を加えていき、その都度水分がなくなるくらいまで炒める。 お盆だからといって、正式な形の精進料理を作るのは大変かもしれませんが、ほんの少しの工夫で精進料理にすることができます。命に感謝して、自分を省みるよい機会かもしれませんね。
2015年08月12日日本には四季や旬があり、季節や人生の節目ごとに「行事」があります。食卓には、それらを通じて受け継がれてきた「文化」があります。 多忙な日々の中で忘れてしまいがちな 「ニッポンの食卓文化」 を、食卓をつなぐ会の料理伝承家hanaが、シンプルなレシピにしてご紹介します。今回は 七夕と素麺 のおはなし。 五色の短冊は、習い事の上達を願った「願掛け」 幼い頃はワクワク楽しみだった 七夕 、いまはどうでしょう? また、そもそもどんな由来があるかご存知でしょうか。七夕は五節句のひとつで、平安時代に宮中行事として行われるようになりました。元々は日本の神事であった 「棚機(たなばた)」 という禊の行事と、 織り姫と彦星の伝説 、中国の「乞巧奠(きっこうでん)」という風習があわさってできたもののようです。 織り姫と彦星の伝説 は、みなさんもご存じの通りですが、織り姫(琴座のベガ)は裁縫の仕事を、彦星(鷲座のアルタイル)は牽牛星という農業の仕事を司る星と考えられていました。この2つの星は、旧暦7月7日に最も光輝いているように見えることから、中国ではこの日を一年に一度の巡り会いの日と考え、この伝説が生まれました。(夏の大三角形) 乞巧奠(きっこうでん) とは中国で行われた行事で、織り姫にあやかって 機織り や 裁縫 が上達するようにと、お祈りをする風習が生まれました。針や裁縫道具を供えて上達を願うのですが、やがて 芸事や書道 などの上達を願うようになったといわれています。 これらのはなしが日本に伝わって、七夕行事が行われるようになり、宮中ではこの時期の旬のもの、桃、梨、瓜、茄子、大豆、アワビなどを供えて星を眺めるようになりました。また里芋の葉にたまった夜露を 天の川のしずく と考えて、その水で 墨 をとかし、神聖な梶の葉に歌を書いて願いごとをしました。それが江戸時代に庶民の間に伝わり、人々は野菜や果物を供えて歌を詠み、 習い事の上達 を願って書いた 短冊 を笹竹につるして、 手習い事の願掛け として星に祈るようになったのです。 五色の 短冊 は 五行説 にあてはめた 五色 で、青(緑)、紅、黄、白、黒(紫)をあらわし、 この世のすべて 、という意味になっています。七夕飾りは「吹き流し」「網」「折り鶴」「神衣」「巾着」「くずかご」などが主なもので、6日の夕方には飾り付け、翌日7日の夜にははずします。 千年以上前から、七夕の行事食は「素麺」! この時期には 素麺 を食べるのが、千年以上前からの行事食となっています。もともとは中国の「索餅」という小麦料理だったようですが、日本ではいつの頃からか 天の川 に見立て、この時期に食べやすい素麺を食べるようになりました。 色つき素麺 もここからきています。 七夕の当日でも手軽に作れる、簡単素麺レシピをご紹介しましょう。 「七夕素麺」のつくり方 素麺に好きな具材をのせて、いつもより少し豪華に、七夕をイメージして美しく盛りつけてみてください。いろいろな具材を一緒に食べても、素麺と絡めて一種類ずつ食べても美味しくいただけます。麺つゆを作っておくとなにかと便利ですので、冷蔵庫にストックしておきましょう。 <材料 2人分> ・素麺 2把分 ・出汁 2カップ程度 ・麺つゆ 約1/2カップ分 【麺つゆ】※作りやすい量 ・みりん 大さじ2 ・酒 大さじ4 ・砂糖 大さじ2 ・醤油 180cc 【具材】※お好みで ・白葱 5cm分 小口切り ・茗荷 2個 細切り ・蟹 適宜 ・鶏ささみ 1本 ・胡瓜 1本 細切り ・錦糸卵 1個分 ・蒸し茄子 1本 <作り方> 1. 麺つゆを作る 鍋にみりん、酒を入れて沸かしアルコール分が飛ぶまで3分ほど加熱する。同じ鍋に砂糖と醤油を入れて、砂糖を溶かしながら沸かし、沸いたら火をとめてあら熱をとり、密閉瓶に入れて保存する。 2. お好み具材を準備する・・・鶏ささみ、蒸し茄子 鶏ささみは耐熱容器に入れ、少量の酒と塩(分量外)をふってラップをする。茄子はヘタを切り落として、水洗いし、そのままラップをする。ささみと茄子をレンジで800Wで2分加熱し、食べやすい大きさに割いておく。 3. お好み具材を準備する・・・錦糸卵 卵1個に対し、小さじ1の砂糖を入れてよく混ぜ、熱したフライパンに油少々をひき、卵液を流し入れて薄く広げる。菜箸を使ってひっくりかえし、裏面はさっと焼いて取り出す。冷めたら細切りにしておく。 4. 素麺を茹でる 大きめの鍋にたっぷりの湯を沸かし、素麺をぱらぱらと入れて2分ほど茹で、ざるにあげて、 しっかりともみ洗い する。 5. 盛り付け 具材を綺麗に飾り、素麺と麺つゆを盛る。 ★ポイント★ 具材は好みでよいですが、細切りや小さめに切る方が素麺とからみやすくなります。全部の具材がなくても大丈夫です。錦糸卵を作るときは、フライパンが熱くなっていないと失敗します。卵液を多く入れすぎた場合は戻してよいので、薄めに焼きましょう。 家族に「食文化」の楽しさを伝えていくのは、アラフォー世代の役割です。日々の食事を大切に、暮らしを丁寧に、を意識するだけで心が豊かになるもの。麺つゆは、家にある調味料で気軽に手作りすることができるので、お好み具材をたくさんのせて、七夕の夜は素麺料理と星空を楽しんでみてはいかがでしょうか?
2015年07月06日