NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。
子どもは、親の言うことはもちろんですが、「夫婦」の会話もよく聞いています。 パパとママがけんかをしていたら、誰よりも悲しい気持ちになるし、楽しそうに会話をしていたら、それだけで安心するもの。 子どもの心の成長にも大きく影響を与える夫婦の会話。ちょっとした「言い換え」のテクニックで、もっと成長させてみませんか? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)著者の天野ひかりさんに、夫婦の会話を成長させるテクニックをうかがいました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■「夫や子どもは今日一日どう過ごしてた?」想像力が家族を育てる ――前回までで、日常の夫婦の会話が子どもにも影響を与えるということがよくわかりました。 天野ひかりさん(以下、天野さん):夫婦の会話は、家族をプロデュースします。この会話がいい方向に向かうには、なにより「お互いを認める」ことが大切ですよね。それがないと、口論や堂々巡りにおちいってしまいがちです。 ――とはいえ、相手を認めるということは、とくに夫婦だとなかなか難しいのが現状ですよね。 天野さん:わかります(笑)。でも、これは「そうではなくて、私の言うとおりにしなさい」「お前の意見は聞いていない」…こんなことを言われ、親や先生や上司の言うことを素直に聞いて育ってきた背景があるのです。これが、今の子どもの親世代なんですよね。 でも、これからは、自分で考えて行動できる子に育てることが求められる時代。誰かを認めることに慣れていない私たち親世代も、協力し合って、認めて、子どもを育むことが大切になるでしょう。そこで、家庭での夫婦の会話が、大きなポイントになるんですね。 ――うう、なんだかハードルが高そうです。 天野さん:大丈夫ですよ! まずは、「相手の立場に立って物事を見る」ことを意識してみましょう。これは、もうトレーニングと思いましょう。 つい、自分のことだけに目がいってしまいがちですが、今日一日、相手はなにをしていたか、どんな時間を過ごしていたかなど、相手の「見えない部分」に思いをはせるのです。 たとえば、仕事や子どもの学校のことなど、外でものすごく忙しい一日を送って家に帰り、「やっとソファに座れる~!」とほっと一息ついたときに、帰宅した夫が「ごはんは?」なんて言ってきたらムッとしますよね。 夫や子どもも、同じことなのです。顔を見るなり「また手伝ってくれない」とか「宿題はやったの?」と言う前に、ちょっとひと呼吸置いて、相手の見えない部分を思いやってみましょう。 夫は外で一日忙しい思いをして働き、子どもは学校で勉強を頑張ってきたのですよね。こうしてみると、相手の悪いところばかり目についていたのが、いい面や大変だった面もきちんと見えてきます。ここが見えると、相手のすべてを含めて認められるようになってくるのです。 ■イラッとくる物言いから脱却! スムーズな言い足し術・言い換え術 ――相手を認める、相手の立場に立って物事を考えてみるということは、なんとなく自分を抑えるようで「損してる?」と思ってしまうのですが……。 天野さん:とんでもない。相手を認められる力がつくと、夫や子どもにいい影響を与えるだけでなく、自分のコミュニケーション力を格段に上げることができるんです。自分にもいい効果があるんですよ! まずは、修行と思って、日々「相手の立場に立つ」ことを意識してみましょう。すると、今までの夫に対する言葉かけも自然と変わってくるでしょう。たとえば… 夫「買い物してきたよ」 妻「ああ、そこに置いておいて」→ 「重かったでしょ、ありがとうね」 妻「脱いだら洗濯機にいれておいてよ」→ 「脱いだものを洗濯機に入れておいてくれたら、明日着ていくのに間に合うよ!」 夫「ああ、疲れた」 妻「私だって今日一日、会議続きでへとへとだよ!」→ 「今日は一日、蒸し暑かったしね。私も会議続きで疲れちゃったの。ご飯はデリバリーにしてもいい?」 夫「ああ、大変だったね。そうしよう」 上記のように自然と変わってくるわけです。 ――ほんのひと言、相手のことを考えた言葉を加えるだけで、グンとやわらかくなりますね。いつもなら「その言い方はなんだよ!」「だって…!」と堂々巡りになっていたかもしれません。 天野さん:そうなんです。私がこの本でお伝えしたかったことに「夫婦の会話の大切さ」ともうひとつ、「お互いを認めること」があるのです。すべてを含めて相手を認めることができれば、会話は必ず変わってくるんです。 「早く起きてよ!」といった指示や「いい加減ゲームやめて!」という禁止のことばも、「昨夜は遅かったから眠いよね。でも、もう起きる時間だよ」「明日は早いんでしょ? もうゲームはやめたら?」と、一方通行からコミュニケーションに変わります。 子どもは、パパとママの会話を聞くことで、コミュニケーションの方法を知らない間に学んでいきます。「こういう言い方をするとけんかにならないんだな」「この言い方は相手を不機嫌にさせるんだな」と、ことばの選択や会話の流れを考えられるようになるんですね。 ――夫婦が互いを認めて、話し合ったりゆずり合う会話は、学びが大きいのですね。 天野さん:また、これからの時代は、多様性が求められます。日常、何気ない話題から、環境問題やLGBTといった議論をするようなことまで、夫婦の間でも価値観に違いを感じることはあるものです。 でも、この会話が子どもに影響を与えていくんですね。さまざまな考え方があって、それを尊重して受け止めることができることは、これからの時代にとても大切な力となるでしょう。 子ども自身の価値基準を広げ「こんな意見もあれば、こういうこともある」と、多様なものの見方ができるようになりますよ。 夫婦の会話は、子どもをどんどん育てます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月24日夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を与えるもの。さらには、家庭そのものを左右するもの。 でも、夫か妻のどちらか一方だけが「今日から変わるぞ!」とひとりで意気込んでも空回りしがちです。どうしたらいいのでしょう? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)著者の天野ひかりさんに、夫婦のコミュニケーションをもっとらくにするヒントを教えていただきました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■「夫婦の会話がない」という悩み、実は思い込み? ――忙しい夫が夜遅く帰ってきて、せいぜい言葉を交わすのは5分程度…。そんなふうに感じている人は多い様子です。 天野ひかりさん(以下、天野さん):「夫婦の会話がない」と悩んでいる方は確かに多いですね。でも、本当にそうでしょうか? よくうかがってみると、なぜか子どもに関することは“夫婦の会話”ではない、と思い込んでいる方も多いのです。 たとえば、「夫婦で話すことといえば、子どものことくらいです」という方がかなりいらっしゃいますが、いえいえ、子どもの話題も立派に夫婦の会話なんですよ。 「今日、こんなことが学校であったんだって」「へえ、頑張ってるね」…これも立派に夫婦の会話。恋人時代のような甘い内容だけが夫婦の会話とは限りません。夫婦になって子どもができたら、会話が変わるのは当然なのです。 ――なるほど…。子どものことなら、けっこう話しているかもしれません。 天野さん:「夫婦で共通の話題がない」「夫婦の会話が盛り上がらない」といった言葉もよく耳にしますが、なにもきちんとした“お題”がなくてもいいのです。 日本人は律儀なところがあるので、会話には「目的」や「お題」があってしかるべき、と思いがちです。 でも、「今日は蒸し暑かったね~」「明日はちょっと涼しくなるみたいだよ」…こんな、何気ない言葉のやりとりも会話。なにか話さなくては、話題を提供しなくてはと意気込む必要はないのです。 ――意気込まずに、夫婦の会話を変えるヒントって、あるのでしょうか。 天野さん:まず、あらためて「家族になっていこう」という意識を再確認しましょう。「こうしてほしい」という要求や不満ばかりを相手に押しつけるのではなく、「もっと家族になりたい」という気持ちを相手に対してもてれば、会話が弾もうが盛り下がろうが、どちらでもいいかなと私は思っているくらいです。 たとえば、2人でなにかを食べながら「このアイス、すごくおいしいね」といった「共有」もすてきですよね。肩に力をいれず、自然に会話を楽しめばいいのです。お互いの根底に「家族」という意識があれば、さり気ない会話でも気持ちに深みが増すものなのです。 ■口を開けばけんかばかり…夫婦で楽しく話す3つのヒント ――でも、会話のつもりがいつのまにか口論に…。そんなつもりはないのに、なぜかいつもけんかになってしまう。こんなケースも多々あります。 天野さん:お母さん向けの講座でお話をうかがうと、「夫は私の話を聞いてくれない」「夫は文句しか言わないから、話すのがイヤなんです」「何度言っても手伝ってくれないから、あきらめました」といった声が本当にたくさんあがるんです。 対して、お父さん向けの講座では「家に帰ると、妻は文句ばかりで、ついこちらも頭にきてしまう」「手伝うとダメ出しされるからやる気が出ない」という意見が多数あります。 でも、よーく双方の話を聞いてみると、この不満の底には、夫婦お互いの「もっと自分のことをかまってほしい、もっと頼ってほしい」という気持ちが隠れているんですね。この点をうまく出せると、夫婦の会話のとげとげしさもグンと減るのです。 つい「相手はわかっていて当然」という前提で話を切り出しがちですが、まず、この常識を自分の中から捨てることから始めましょう。これをふまえて、次の3つのヒントを実践してみましょう。夫婦の会話が少しずつ、変わってきますよ! ヒント1:主語を「YOU」から「I」に変換する 天野さん:会話を増やすことより、自分の理想とする家族像を思い出してみましょう。あなたは、どんな家庭が理想でしょうか。平日はお互いに助け合って家事をこなし、休日はのんびり、二人で散歩…? もしそうなら、これを言葉にして話してみましょう。 かんたんに話せるコツは、主語を「I」にしてみることです。「あなたは、ゴロゴロ寝てばっかりだよね!」ではなく、「私は、いっしょに散歩に行きたいんだけどな」という具合です。 ついけんかになってしまうのは、ひと言めが、つい“相手への要望”で始まってしまうから。これは、裏を返すと相手への非難につながりますよね。 YOU(あなた)を主語にして話し始めると、相手を責めたり、勝手に相手を「○○な人」と決めつけてしまいがち。当然、相手もいい気持ちがしないので、要望も伝わりにくくなるのです。 日常から主語を「I」にするよう意識していれば、子どもも「自分の気持ちを素直に人に伝えられる」ようになります。 ヒント2:大変なときは頼る 天野さん:忙しいときは、ひとりで抱え込まずに「手伝ってほしい」と素直に頼るのが正解。我慢したり、あきらめていては、自分の不満も募る一方です。 ただし、気をつけたいのは「私だって忙しいんだから、お皿くらい洗ってよ」という主張や要求だけの一方通行になってしまうこと。これではなんの進展も見られません。 そこで「今日は早く出なくてはいけないから、これをひとりで全部こなすのは、つらい。手伝ってほしい」と自分の大変さを話して「頼る」ことができるといいですね。相手に「いっしょに協力して乗り越えよう」と思えるようにすることです。 こんな夫婦の会話を見ていれば、子どもも「困ったときは人を頼っていい、人に話していいんだ」と実感することができますよ。 ヒント3:相手が「言われたい言葉」を会話に盛り込む 天野さん:私が5万人を超える親子と接して、たくさんの夫婦から聞いた「うれしかった言葉」「言われたい言葉」。中でも、夫が妻から言われてうれしい言葉をピックアップしました。これを会話に取り入れてみましょう。 ●「今日もお疲れさま」 なんと、夫が妻に言われたい言葉のナンバーワンです。しかし、これは妻だって同じですよね。夫も大変だったけれど、私だって大変だった。 でも、自分が言えてないのに、相手にだけ求めていませんか? こちらから声をかければ、相手も同様に返しやすいものです。夫婦はお互い様。「自分の要求は相手の要求と同じ」だということを思い出してみましょう。 ●「毎日ありがとう」 「私は言われないのに、自分だけ言うのはしゃくにさわる!」という妻の意見もあります。でも、妻のこのひと言で、夫の仕事のパフォーマンスが格段に上がるという研究結果も出ているんですよ! ●「やっぱり頼りになるね」 妻にこそ、いちばん認めてほしいと夫は思っているのではないでしょうか。「後片づけありがとう。やっぱり頼りになるね」など、“あなただから”いう特別感を日ごろから伝えてみましょう。これはうれしいし、頑張りがいもあるものです。 そして、このような言葉を普通に交わしている家庭で育つ子どもは、きっと誰に対しても「素直に感謝を伝えられる」ようになるでしょう。 ほんのひと言を変えるだけで、夫婦の会話がステップアップ。それが夫婦だけではなく、そばで聞いている子どもにもいい効果を与えます。 最終回は、夫婦の会話で陥りがちな「堂々巡り」から脱出するテクニックをうかがいます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月23日どんなに小さくても、子どもは親同士の会話をいちばんよく聞いています。そして、いちばん影響を受けます。 これをパパとママが自覚すると、「夫婦の会話」は自然といい方向に変わってくるのでは? そして、子どもの成長にもいい効果が表れるのでは…? 『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)の著者であり、「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げ、親子のコミュニケーション力をのばす講座や講演を全国で開く天野ひかりさんにお話をうかがいました。 お話をうかがったのは… 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表 天野ひかり(あまの・ひかり)さん NHK「すくすく子育て」元キャスター、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで子育ての重要性を認識。 「NPO法人親子コミュニケーションラボ」 を立ち上げ、子どもの自己肯定感を育むための、親子のコミュニケーションを力をのばす講座や講演を全国で行う。ベストセラー『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)著者。 天野ひかり公式サイト ■手のかかる子ども、夫婦の会話が原因だった? ――世の中には、「親が子どもにかける言葉」による、子どもへの影響について書かれた本はたくさんあります。では、日常の「夫婦の会話」は、どんなふうに子どもを変えるのでしょう? 天野ひかりさん(以下、天野さん):私は、講座などを通してこれまでに5万人を超える親子と接してきました。 印象的なエピソードは数えきれないほどあるのですが、まずこんなお話をしましょう。以前、私の教室に通ってくださっていたあるママのお話です。 そこのお宅のお子さんは、大人の言うことをちっとも聞かないだだっ子で、ママは日々手を焼いていました。そんなわけで、仕事から帰ってきた夫に、毎日のように「今日はこんな悪いことをした、言うことを聞かなかった」ととうとうと話していたのだそうです。 それは、パパに話すことで、子どもに自分が悪い子であることを自覚してほしいという気持ち、パパには自分がいかに大変かをわかってほしいという気持ちもあったそうです。 でも、子どもの態度は一向に改善しませんでした。そこで、このママはある日一大決心をしたのです。「子どものいい面を見よう」と。 ――それまで「この子ったら、超だだっ子!」と思っていたものを、「よし、この子のいい面を見つけよう」と切り替えるのは、なかなか至難の技ですよね。 天野さん:そうですよね。つい「言うことをきかない」ことばかりに目がいってしまいますが、ちょっと視点を変えてみると、できていることや成長していることも必ずあるものです。そのママは、そこに気がついたんですね。「私が変わってみよう」と。 その夜から、夫婦の会話が変わりました。毎日、夫には「今日は片づけを自分からできたのよ」という具合に、子どものいい面を伝えるようにしたのです。 すると、夫も子どもに対して「おっ、がんばったね」「えらいなあ」とうれしい声がけができるようになりますよね。 パパからしてみれば、毎日、妻から子どもの悪い面ばかり聞かされていたら、正直うんざりすることもあるはず。でも、自分の子どものいい面やできたことを聞けば、子どもへの気持ちはもちろん、頑張っている妻への感謝が自然と口に出始めたそうです。「ありがとう」と。 そこからです。あんなに言うことをきかなかった子どもが、どんどん変わって、いろいろなことを自分からやるようになったそうです。 「それまで、子どもは“叱られる人”になっていたんですね。でも、今はのびのびとして、その様子が愛おしく感じられるんです」とママはうれしそうに話してくれました。 ■夫婦けんかは見せてもいい? 仲直りで「議論」を学ぶ ――自分のことについて話している夫婦の会話を、子どもが聞いていたのですね。 天野さん:直接言われるよりも、誰かが自分に関することを話している言葉のほうが、ずっと心に残りますよね。子どもだって同じなのです。 まして、いちばん大切なパパとママが自分のいいところを話し合ってくれていたら…。それは子どもにとって、大きな励みに、支えになるのです。 このご家庭には、さらなるうれしい変化があったといいます。子どものことはもちろん、日常のささいなことでも、夫婦の会話がグンと増え盛り上がるようになったと…。 ――たしかに、夫婦の会話が弾んでいると、そばで聞いている子どもも安心するのでしょうね。 天野さん:子どもが出合う最初の“社会”が家庭です。夫婦の会話を育み、大切にすることで、子どもはもちろん、家庭そのものも成長するんですね。こんなふうに夫婦のやりとりを聞いて、子どもは自己肯定感を育むことができるんです。 ――では、子どもの前で夫婦げんかなんて、もってのほかですね。 天野さん:いえいえ、子どもの前での夫婦の口論もときにはあっていいと思います。ただしきちんと「仲直り」するところまで見せてあげましょう。 子どもは、そこから「議論」を学ぶことができるからです。勃発した口論に「どう決着をつけるか」を見せることで、「ああ、こんなふうに仲直りすればいいのか」と、子どもは解決の方法を知るのです。 でも、子どもが寝たあとに夫婦だけで仲直りをして、翌朝はケロッとしていると、子どもは「あんなに言い争っていたのに、いつ、どうやって仲直りしたんだろう?」とモヤモヤしてしまいますね。すると、自分にはわからない世界に対して不信感を抱いてしまいます。 ですから、夫婦げんかをしたら、ちゃんと話し合って解決に導き、仲直りをする決着まで見せてあげましょう。「言葉のやりとり」を聞かせることも大切なのです。子どもは、「聞いて」学びます。夫婦のような対等な立場同士の議論を見て、結論を出す過程を聞かせてあげましょう。 こうすることで、いつか子どもが議論をしなくてはいけない場面がきたときに、暴力ではなく、言葉できちんと解決する術やコミュニケーションの術を学ぶことができるでしょう。 ――毎日、なにげなく交わしている夫婦の会話ですが、実はそれが子どもに与える影響がどんなに大きいかを実感するお話ですね。 天野さん:今は、共働きの家庭も増えて、パパもママも日々をこなすだけでいっぱいいっぱい、というケースも多いでしょう。自分のこと、子どものことだけで精いっぱいで、夫婦はお互いへの不満も募りがちです。 でも、それぞれによくお話を聞くと、夫婦として「なんとかしたい」「助け合いたい」という思いは皆さんもっているんですよね。この思いをもっと出すことができれば、夫婦のコミュニケーションももっとラクになり、子どもを伸ばすことにもつながるのです。 もっと、夫婦の会話を増やして充実させたい。そう思っているパパやママは多いはず。まして、子どもの成長につながるのならなおのことです。 第2回では、夫婦の会話が変わる、3つの心得をうかがいます! 参考図書: 『賢い子を育てる 夫婦の会話』 (あさ出版) 天野ひかり 著/汐見稔幸 監修 夫婦の会話は、子どもの成長に大きく影響を受けている! 「夫婦の会話」で磨かれる子どもの「5つの力」と「夫婦の会話」の心得とコツについて、わかりやすく解説した一冊。
2019年06月22日