作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂を経て独立。鋭い視点から「コミュニケーション」「人間関係」を分析し、そこから導き出す実践的なアドバイスは高い評価を受けている。「コミュニケーションのプロ」としてメディア出演多数。 著書にベストセラーとなった『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
■前回のあらすじ 「一番下」ポジションを演じるのがうまい末っ子夫の太一。姉の家で「料理は得意な人がやればいい」と言ったとたん、姉にすごい勢いで怒られて…。 共働きにも関わらず、弟の太一が“家事はすべて妻任せ”という事実を知った義姉の真理は、まだ息子さんが小さく大変だったころの自分自身と私を重ね合わせていたのです…。 7年前、育児に家事に仕事にと大忙しだった真理さんは、心も体も疲れ切っていました。そんな妻の思いに気づかず、なんでも妻に任せきりだった夫に、本音をぶつけたことがあったのです。 真理さんが太一にピシャリと説教したことで、私の心はスカッと晴れやかでした。一方、尊敬する姉に怒られた太一も心を入れ替えたようで…。 子どもが生まれて、わずか1年。夫婦のスタートは始まったばかりです。 ここからは、心理カウンセラーの五百田達成さんに今回紹介した理子と太一の行動や発言を振り返りながら、「生まれ順でまるわかり!」なポイントを教えてもらいます! 心理カウンセラーの五百田さん、教えて! こんにちは、心理カウンセラーの五百田達成です。毎話ごとにストーリーを振り返りながら、生まれ順による特性をお伝えすることで、夫婦関係を円満にしていくポイントなどをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いします! 末っ子ってどんな特性があるの?? 前回同様、まずは末っ子の特性を振り返ってみましょう。末っ子にはこのような特性があります。 (1)「末っ子のモットーは「きっと誰かがやってくれる」」 (2)「できないことは、人に任せよう」と思っている (3)「“頼りにならない存在”でいさせてほしい」 (4)「 あらゆることを なぁなぁにしていきたい」 (5)「平和に楽しく 適当にやりたいんだってば!」 これらをふまえて、今回のご夫婦を見てみましょう。 「頼りにならない存在でいさせてほしい」と思っている末っ子に響く叱り方は? 最終回を迎えた今回のストーリー。「戦いを共有してくれる戦友がほしい」というお義姉さんのセリフ、長子らしさが全面に出ていましたね。前回お話したように、良くも悪くも長子は意外と弟や妹のことを自分の付属品=支配下としか思っておらず、やさしい“おせっかい”をやいてくれます。 「あなたは自分の子どもにも『誰かが何とかしてくれる』人に育って欲しいの!? いつまでも末っ子やってんじゃない! あなたの家族なんだから、いい加減自分で考えて動きなさい」と、お姉さんが言っています。しかしこれ、末っ子は「いや、誰かがなんとかしてくれるならそれでいいんじゃない?」と思ってしまう可能性が…! 末っ子夫に響く要件の伝え方って? では、どう叱ったら末っ子の太一さんに響くのでしょうか。それには、2話でもお話ししたように、 太一さんにとって「メリット」があるかどうか。 「熟年離婚されたらどうするの? あなたが手伝えば理子さんもその方が笑顔でいてくれるし、捨てられないわよ〜!(笑)」 といった言い方がおすすめです。 奥さんである理子さんからアプローチするのであれば、 「あなたがやってくれたら私もいつもニコニコしてあなたも嬉しいと思うな〜!」などと言っても良いかもしれません。 また、叱られても萎縮するか開き直るか、 行動の変化にはつながらない末っ子には「次から気をつけて」というフレーズも最適。 ガツンと言いたくなる気持ちは分かりますが、効果は一時的なものに過ぎません。むしろ “起きてしまったことは仕方がない”というスタンスの方が、聞く耳を持ってくれますよ。 とにかくノリ良く!ハッピーな雰囲気を盛り込んで 最後に、新たな一歩として、太一さんが料理にチャレンジしようとしていますよね。レシピを送ってやり方をしめして効率的に導くのはいいですね! ただ「期待してるよ!」というメッセージは、末っ子には少々気が重いかもしれません(笑)。 ここで大事になってくる 最後のポイントは「末っ子はシリアスな雰囲気がとにかく苦手。とにかくノリがいいのが一番」 ということです。とにかくハッピーな雰囲気が大事です! 例えばですが、太一さんが「野菜炒め作ってみるよ!」という一言に「期待しているよ!」ではなく、 「いけるいけるー!大丈夫大丈夫ー!」「なんだって食べれるし! 大丈夫!」「お腹空かせて帰るねー!」「楽しみ!」 など、ノリよく、楽しい返事ができたらバッチリです。 なんせ末っ子は責任をとるのが大っ嫌い! それがゆえに、責任感を感じさせすぎず、妻もネタで持ち上げ冗談めかして明るくアプローチするのがおすすめです。ぜひ試してみてくださいね。 こちらもおすすめ 生まれ順"でまるわかり! 末っ子ってこんな性格。 ※この漫画は実話を元に編集しています 原案・ウーマンエキサイト編集部/イラスト・ ユキミ
2021年09月04日■前回のあらすじ 末っ子夫に苦手な家事を頼むときには、「メリットがある」を打ち出すことが大事。しかし理子さんの家では家事をしない夫に怒りモードになると、夫は逃げてしまい…。そんなある日、義姉の家に遊びに行くことに…。 夫が尊敬している姉・真理の新居に遊びに行くことになった私たち。弁護士として共働きしている義姉の真理さんの家はピカピカの新築で、まさに憧れそのものでした。 苦笑いする私を見て、真理さんは太一が何も手伝っていないことを察しました。そして…。 実は真理さん自身も、過去に同じような経験をしていて…。忙しく働くのはお互い様なのに、自分にばかり家事や育児の負担がかかっていることに対して、ツラい思いをしていた過去があったのです…。 ここからは、心理カウンセラーの五百田達成さんに今回紹介した理子と太一の行動や発言を振り返りながら、「生まれ順でまるわかり!」なポイントを教えてもらいます! 心理カウンセラーの五百田さん、教えて! こんにちは、心理カウンセラーの五百田達成です。毎話ごとにストーリーを振り返りながら、生まれ順による特性をお伝えすることで、夫婦関係を円満にしていくポイントなどをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いします! 末っ子ってどんな特性があるの?? 前回同様、まずは末っ子の特性を振り返ってみましょう。末っ子にはこのような特性があります。 (1)「末っ子のモットーは「きっと誰かがやってくれる」」 (2)「できないことは、人に任せよう」と思っている (3)「“頼りにならない存在”でいさせてほしい」 (4)「 あらゆることを なぁなぁにしていきたい」 (5)「平和に楽しく 適当にやりたいんだってば!」 これらをふまえて、今回のご夫婦を見てみましょう。 夫が末っ子“らしく”なってしまうのには理由が… 成人した大人でも、実家の家族の前では、子どものころの素の自分が出てしまうもの。 弟の太一さんは姉の真理さんの前に出ると、過剰に弟になるはず。昔から食事の支度などを積極的にしてくれる母、姉たちに囲まれて育った太一さんが末っ子らしくなるのは必然でしょう。 しかも、末っ子は一番下のポジションを“演じる”のがうまいので、姉の前では過剰に頼りない弟になりがちです。奥さんの立場からしたら若干気持ち悪く感じる部分もあるかもしれません(笑)。でもしかたがないのです。 「えー、わかんない、えへへ」と家族の前で振る舞って“飯食ってきた”のですから…。 もしこれが、友人の家を訪れた場合であれば、「太一さんは家事とかやってるの?」と友人家族に聞かれても「意外とやってますよ」なんてお決まりのセリフを言うかもしれませんが、今回は姉の前だから油断して「やってないよー」と素直に言えてしまったのでしょうね。 「うちの弟ちゃんとやってる?」と聞くのは長子ならでは…その理由は? 一方、姉の真理さんは長子ならではの真面目さがあって、何事もしっかりやり過ぎてしまう。 とはいえ良くも悪くも、意外と長子は自分の弟や妹を自分の付属品と思っていがちです(笑)。 「弟ちゃんとやってる?」と聞くのもしっかりものの姉ならではの質問ですが、自分の支配下の弟に干渉しているだけのこと。おそらく末っ子たちが「うちの姉・兄しっかりやってます?」と兄妹の配偶者に聞くことはあまりないでしょう(笑)。 次回は、育児、家事、仕事に追われてボロボロになってしまった、真理さんの壮絶な体験が出てくるようですよ。それでは、第4話でお会いしましょう。 次回に続く(全4話)毎日10時更新! こちらもおすすめ 生まれ順"でまるわかり! 末っ子ってこんな性格。 ※この漫画は実話を元に編集しています 原案・ウーマンエキサイト編集部/イラスト・ ユキミ
2021年09月03日■前回のあらすじ 「きっと誰かがやってくれる」という特徴がある末っ子夫婦の理子と太一。しかし、育児と家事はほとんど妻の担当。「俺にはわからない」を貫き通し、協力しないマイペースな夫・太一にイラッとした理子は…。 少しの残業を終え、家に向かっていた私。この日は、リモートワークの太一が保育園に娘の智香をお迎えに行く日でした。 夕飯の材料を買ったことを自慢げに話す上に、料理や娘の保育園の準備はやらないものと決めている太一に、仕事から疲れて帰ってきた私はブチ切れる寸前でした。 結局、太一と智香がお風呂に入っている間にご飯を作っていると…。 小学生の子どもがいる太一の姉・真理さんは、気さくで話しやすく、私も頼りにしている存在でした。 私自身、義姉のからの誘いを負担に感じたことはありませんでした。来月遊びに行くことになりました。しかし、そこでまさかの展開が待っていたのです。 ここからは、心理カウンセラーの五百田達成さんに今回紹介した理子と太一の行動や発言を振り返りながら、「生まれ順でまるわかり!」なポイントを教えてもらいます! 心理カウンセラーの五百田さん、教えて! こんにちは、心理カウンセラーの五百田達成です。毎話ごとにストーリーを振り返りながら、生まれ順による特性をお伝えすることで、夫婦関係を円満にしていくポイントなどをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いします! 末っ子ってどんな特性があるの?? 前回同様、まずは末っ子の特性を振り返ってみましょう。末っ子にはこのような特性があります。 (1)「末っ子のモットーは「きっと誰かがやってくれる」」 (2)「できないことは、人に任せよう」と思っている (3)「“頼りにならない存在”でいさせてほしい」 (4)「 あらゆることを なぁなぁにしていきたい」 (5)「平和に楽しく 適当にやりたいんだってば!」 これらをふまえて、今回のご夫婦を見てみましょう。 「誰かがやってくれる」と思っている末っ子夫に響く言い方って? 末っ子は喧嘩をするのが大嫌い。できるだけ事を荒立てたくないのです。また、空気を察する能力が強いのは末っ子の特技。 いつも長子(兄や姉)が親に怒られている姿を見て、「あれはやらない方がいいんだな 自分はしないようにしよう」と学んでいたはず。 そのため、太一さんも食事を作らないことに対して妻が怒りモードになると、空気を察してとっさに娘さんとお風呂に入ると言って逃げていますよね。 では、リモートワークで家にいた太一さんは、どうしたら嫌な顔せず苦手な料理を作ってくれたのでしょうか。 末っ子夫に響くキーワードは「効率的」「メリットがある」ということです。 たとえば「私がお迎えに行ってる間あなたがご飯を作ってくれたらすごく効率的!」「便利、楽ちん!」「この方がはかどる」「無駄がない!」というアプローチが効果的なのです。 頼み方次第! 自発的にはやらないけど言われたらやる末っ子夫 太一さんはお姉さんを尊敬している末っ子がゆえに、「俺をたててくれ!」などという気持ちがない反面、家庭の方針を誰かに考えて欲しいと思っているはず。自発的にやらなくとも、言われたことをやるのは嫌じゃないはずです。 できることなら理子さんも力を抜くべきだけれど、母になるとそう簡単ではありません。 太一さんからすると、子どもができるまで楽しく過ごしていた妻が母になったとたん「どうして豹変しちゃったの?」と思っているのかもしれません。だからこそ、理子さんも母になって心境の変化があった事実を説明することも大切です。 そもそも子どもが生まれ、家族が1人増えるということは、家庭内が緊急事態になるということ。それをお互いに理解した上で夫婦が協力し合っていきましょう、と事前に約束しておくことが重要です。 しかし、こんな約束を事前にできている家庭はなかなかありませんよね。であれば、お互いの特徴を知って、相手に合ったアプローチを考えみたらよいのではないでしょうか。 次回は、長子でもある太一さんのお姉さんが登場するみたいですね。ストーリーを進めながら長子と末子、生まれ順によって変わる特性を見ていきましょう。 次回に続く(全4話)毎日10時更新! こちらもおすすめ 生まれ順"でまるわかり! 末っ子ってこんな性格。 ※この漫画は実話を元に編集しています 原案・ウーマンエキサイト編集部/イラスト・ ユキミ
2021年09月02日私は理子。結婚した太一とは私は、お互い末っ子同士の夫婦。 5年間の交際期間を経て結婚し、日ごろから仲の良い夫婦だったのですが、子どもが生まれ、さらには私が仕事復帰すると途端に状況が変わっていきました。 これは、いつも平日休みの太一が、たまたま土曜休みだった日のことです。 基本的に太一は、家事にも育児にも手を出そうとしません。たとえば料理に関しても、幼いころから「危ないからキッチンには入らないこと」と母と姉から注意を受けていたらしく、大人になってもその名残が抜けない様子…。 家族の中で末っ子だった夫は、姉たちを見て「勝手にやったら怒られる」「失敗してダメ出しされるのはイヤ」というメンタリティをすっかり根付かせてしまったのです。 それに加え、太一の姉は2人ともテキパキと要領よく物事をこなすタイプ。太一には“女の人は全員、姉のようになんでもできるもの”という思い込みもあって…。 結局今日も、バタバタと私がひとりで準備をして、外食しに出発することに…。 そして、ようやく到着した中華料理屋さん。そこでも、やっぱり智香のお世話をするのは私の役目でした。 子どもが生まれる前は、休みが合うたび一緒にライブなどに出かけて、アクティブに過ごしていた私たちですが、今は1日、いや1時間でもいいからひとりでゆっくりする時間がほしいと思っていました。 ところが太一は、子どもが生まれてからも、休みのたびに夫婦や家族で何かをしたり、出かけたりしたがります。せめて、その準備を率先してやってくれるならいいのですが、準備するのはすべて私。モヤモヤとした不安が生じるのは当然のことでした。 ここからは、心理カウンセラーの五百田達成さんに今回紹介した理子と太一の行動や発言を振り返りながら、「生まれ順でまるわかり!」なポイントを教えてもらいます! 心理カウンセラーの五百田さん、教えて! こんにちは、心理カウンセラーの五百田達成です。毎話ごとにストーリーを振り返りながら、生まれ順による特性をお伝えすることで、夫婦関係を円満にしていくポイントなどをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いします! 末っ子ってどんな特性があるの?? 実はイラストにあるように、末っ子にはこんな特性があります。 (1)「末っ子のモットーは「きっと誰かがやってくれる」」 (2)「できないことは、人に任せよう」と思っている (3)「“頼りにならない存在”でいさせてほしい」 (4)「 あらゆることを なぁなぁにしていきたい」 (5)「平和に楽しく 適当にやりたいんだってば!」 これらをふまえて、今回のご夫婦を見てみましょう。 末っ子同士の夫婦は末っ子のポジション争いしてる!? 実は今回登場した夫の太一さんは、お姉さんがふたりいる末っ子の中でも、取り扱いが難しいタイプ。 家族の中で初めて生まれた男の子というだけあって、末っ子だけど長男として大切にちやほやされたところも。末っ子ならではのドライさ、クールさにかけてる部分があります。家族の中でも末っ子なのに地位が高いところにいたという可能性があります。 責任感の強い長子(1番目の子)は、「何ごともちゃんとやるべきだ」と考えるのに対して、末っ子は自分のモットーでもある「きっと誰かがやってくれる」という考え方が根底にあります。 今回登場している妻の理子さんも末っ子で、根本的には「きっと誰かがやってくれる」と考える傾向にあるのですが、 親になった以上、子どものお世話や教育をしないわけにはいかないので、常に焦っています。 本来ならば夫の太一さんと同じように気楽に暮らしたいはずですが、理子さんは「育児」という要素が加わったことで、「慣れないことをしている」と日々ストレスを感じながら子育てをしているように思います。 本心としては「私だって末っ子やりたいのに!」と思っているのです。 結局のところ、末っ子のポジションをお互いに取り合ってしまうからイライラしてしまうのです。 兄や姉に命令や頼みごとをされていた末っ子も育児の丸投げは辛い! 最後のシーンで理子さんがつぶやいていた「どうせ準備をするのは私でしょ?」という一言。末っ子は幼少時代、兄や姉からの理不尽な要求に慣れていることもあり、黙って受け入れる体質。多少イライラしても「なんとかごまかして楽しく過ごしたい」スタイルを貫きがちです。 しかし、慣れない育児は簡単にこなせるものではなく、理子さんが昔お兄さんに頼まれていたような「リモコン持ってきて」のレベルではないのです…。 今回は末っ子の特性を中心にお話しました。次回はストーリーを進めながら、末っ子にはどんなアプローチが効くのかを考えていきましょう。 次回に続く(全4話)毎日10時更新! こちらもおすすめ 生まれ順"でまるわかり! 末っ子ってこんな性格。 ※この漫画は実話を元に編集しています 原案・ウーマンエキサイト編集部/イラスト・ ユキミ
2021年09月01日日々、心にチクチク刺さる言葉にモヤモヤしながら、何も言い返せずに我慢しているママ。特に、夫や義両親、実両親など、一生付き合わなければいけない相手だと、なおさら何も言えないでしょう。 でも、そのモヤモヤを放っておくと、だんだんイライラに変わり、ついには子どもに当たってしまうことも…。そんなうつうつとしているママたちのための書籍 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 が発刊されました。著者は、作家でありカウンセラーの五百田達成さん。 角が立たず、良い関係をキープしつつ、夫や義両親、実両親に言い返す方法はあるのでしょうか? 五百田さんにお話をうかがいました。 五百田達成(いおた・たつなり)さん プロフィール 作家・カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂を経て独立。鋭い視点から「コミュニケーション」「人間関係」を分析し、そこから導き出す実践的なアドバイスは高い評価を受けている。「コミュニケーションのプロ」としてメディア出演多数。著書にベストセラーとなった『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。 HP: 五百田達成オフィシャルサイト ■姑、実母、夫…一生付き合う相手からの「悪気のない言葉」 ――夫や義両親、実両親からの悪気のない言葉に傷つくことがあります。でも、一生お付き合いする相手なので、何も言い返せないママがほとんどだと思います。 五百田達成さん(以下、五百田さん):第2回でもお話ししたように、「Yes,but」で答えるのはどうでしょうか。「最近は紙おむつなのね〜」と言われたら、「昔は布おむつだったんですよね」と相手の言葉に一旦、イエスを言って、「でも、うちはこれなんです」とノーを言う。 「これがうちのルール、スタイルなんです」と言うのは、上手な自己主張の言葉かと思います。さらに、「私がこうしたいんです」より、「どうしてか、こうなってしまうんです」のほうが、責任転嫁できる言い方になりますね。暗に「私がコントロールできるものではないんです」という意味を含ませるんです。 ほかには、最近の若い子の間で流行っている「あ〜、ね」という言葉はどうですか? 差し障りなく受けとめている「フリ」をする。 これは、女性の生きる知恵、コミュニケーションだと思います。男性にはなかなかできないこと。もし義母が「おむつは布が良いわよ」と言ったとしたら、夫は「古い常識を持ち出すな。母さん、黙ってろ」とけんもほろろに言い返す。で、シュンとする義母の隣で妻が胸を痛めてる…よくある風景ですよね(笑)。 ■毒親「実の親からの言葉が一番きつい」理由 ――最近は、実両親に言われた言葉のほうが傷つくというママの声が多いんです。 五百田さん:問題は、義両親よりも毒親ということですね。さらに、昔と比べて今のおばあちゃんは元気。手も口も出してくるわけです。 基本的には、先ほどお話しした「Yes,but」の対応でいいと思います。例えば、子どもを叱っている時に「あなたも昔はそうだったわよ(だから、しかる資格はない)」と実母が口をはさんでくる時がありますよね。 おばあちゃんからしたら、孫に好かれたいから味方をしてしまうんです。でも、そのために親の立場をなくす、親の権威を落とすことを言ってしまう。でも、そういったことをすればするほど、孫に会わせてもらえなくなるのにね(苦笑)。 実両親の場合は、強めに言い返してもいいと思います。相手もそこまで傷つかないし、こちらもあまり自己嫌悪におちいらないでしょう。このシチュエーションで僕がおすすめするのは、「今はわたしの話はしていない」。ぎりぎり実用的だと思うんですけど、いかがですか? 実両親は意識してか無意識かはわかりませんが、わざと子どもの前で言っている可能性がありますから、「子どもの前だから、そんなことを言うのはやめて」というのはあまり効果がありません。「今は私の話じゃない、この子の話をしているから」と言うのがいいかと思います。 あとは、「お母さんがそうだったから、私もこうなっちゃったのね」「お母さんも私をガミガミしかっていたじゃない」って言えばいいんです。なら「まあ、そうね」ってなるかもしれない。それは対等でフェアな言い分ですよね。 ただし、実の母に家事育児を手伝ってもらっているのであれば、ある程度、口を出されるのはしょうがないと思わなければいけません。 例えば、子どもを預かってもらったり、ごはんを作ってもらったりしているのであれば、実母は会社で言うところの「株主のひとり」、口を出す権利があります。それが嫌なら、お金を払って外部の育児サービスに頼むべきです。 実母に手伝ってもらう以上、いろいろカチンとすることを言われるのは当たり前だと思ってください。でも、そこで我慢する必要はなくて、言い返せばいいんです。それがコミュニケーションですから。 ――「自分は親のようにはなりたくない」と思いながらも、同じように毒親になってしまうのではないかという不安を持つママもいます。それを断ち切る方法ってあるのでしょうか? 五百田さん:母と娘の結びつきは本当に強すぎるので、どこかで断ち切らないとだめですよね。結論から言うと、ちゃんと母にピシャリと言い返すのは良いと思います。 母にはやさしくしなくてはとか、私がいるのはこの人のおかげだから尊敬しなければとか、無理にそう思う必要はありません。母と自分は別人間、同様にお子さんとママも別人間なんですから。 「親の愛は何よりも深く、親は私を絶対的に愛していて、だからあんなことを言われてもこんなことをされてもすべては愛だから我慢しなければいけない」なんて考えていると、不幸の連鎖です。自分の子どもにも同じことをしてしまうかもしれません。 ■夫の悪気ない一言…うまい撃退法は? ――ママたちが夫に言われてイライラモヤモヤする言葉に「手伝ってあげる」というのがあります。 五百田さん:「手伝う」もダメだし「あげる」もダメで、二重にNGな言葉です。そういう言葉には、おうむ返しがいいかもしれないですね。 絶妙に間をあけながら「手伝って…あげる?」と言うのはどうでしょうか? 間をとって聞き返せば、夫もまずいこと言ったなってわかるでしょう。「子どもを静かにさせろよ」と言われたら、「子どもを…静かに…させろよ?」とかね。 「あなた今、何言ったかわかってる?」と夫に言い返したり、無視するよりはいいでしょう 。お互い冷静に対応できます。そう言って、夫の出方を見た方がいいですね。ママも少しは胸がすくのではないでしょうか。 ――夫は、家事育児を他人事のようにとらえていますよね。それは、どうしてでしょうか? 五百田さん:妻が「家事育児は自分が取り仕切る場所」と思っているのなら、夫の主体的な参加を期待するのは厳しいでしょう。 家庭は自分のフィールドで、家事育児を自分の想い通りにしたいと思っている妻は、言わば「社長」的な立場。すると、夫は「バイト」的な意識しか持てないので、「もっとちゃんと子どものことを考えて」といったざっくりとした指示では動けません。 妻が仕切っているので、夫はついていくしかないんです。夫も夫で「何言ったって、この会社(家)の方針は変わらないだろう」と思っていますから。 夫婦で一緒の歩みをしたいのなら、自分も折れなくてはいけません。子どもの教育方針も家事の仕方も、夫の意見を取り入れて進めて、そこでようやく社長と係長くらいにはなれるんじゃないでしょうか。家庭といえども、まさに仕事のパートナーシップと同じですよね。 ですから、妻は夫を「子どもを20歳までなんとか育てようプロジェクト」のパートナーとして、どういった分担ができるかを考えるべきです。プロジェクトマネージャーの視点が必要ですね。 ■良好なコミュニケーションでは愛情が邪魔になる? ――家事、育児にもビジネスの視点が必要ということですね。 五百田さん:そこに、家族愛や子どもへの愛情といった感情を持ち出すとややこしくなります。「あなた、子どもがこういう風になっているのに、なんとも思わないの?」といった感情論になって解決の糸口が見えなくなるんです。 コミュニケーションがうまくいかない、言い返せずにモヤモヤする理由のひとつに、「なんでも愛でひっくるめようとする」感情が邪魔をしているのかもしれませんね。「おむつは布がいいと思うのよね」の義母の言葉に何も言い返せないのも、孫愛で言ってくれているのがわかるから。 でも、言葉によるコミュニケーションを1つ挟むと、自分の感情をフィルタリングできる。言葉ってそのためにあると思うんですよ。ムカッとしても、いったん頭をやわらかくして「言い返す」技術でうまく伝えられたら、感情の処理ができるようになるでしょう。 大人でも、言葉が出ないとイライラがたまるし、泣きたくなるし、時には手が出るし、子どもと一緒です。だから、コミュニケーションの専門家としては「みんな、ちゃんと言葉使おうよ。うまく言えないなら、うまく言えるようになろうよ」と声を大にして言いたい。今からでも遅くないと思います。 あとは、ズボラなお母さんになりましょう。女性は、汚れた家を見せるのが恥ずかしいから、家事代行サービスは頼めないという人が多いですよね。頼んだとしても、その前に下掃除をするとか聞きます。それは、とても女性的だし、人間的だし、日本的ですよね。でも、男性は逆で、どうせきれいにしてもらえるんだからと汚しまくります。 そこまではできないにしても、それくらい割り切って、家のことは細やかにできないお母さんになるべきです。特に息子を持っているママは。 例えば、ついつい夫には「おかずをもう一品増やしてしまう」「お風呂の時はタオルを用意する」という妻がいますが、子どもはそれをよーく見ています。そして真似をするんです。「ママ、ごはん」「ママ、タオルは?」って。 そして将来、育児や家事でへとへとの妻に「おかず、これだけ?」とか「お風呂入るからタオル出しといて」とか言う夫になってしまうわけです。 ですから、息子のために将来のお嫁さんのために、涙をのんでわざとやらない(笑)。子どもには手をかけ過ぎない。愛との戦いですね(笑)。 世の中にあふれる、モヤモヤ言葉、イライラ言葉、ムカムカ言葉…。「事を荒立てたくない」「私さえ我慢すれば」の気持ちで、言われっぱなしだったママさんも多いでしょう。 でも、「言い返すことも一つのコミュニケーション。繰り返すことでうまくなります」と五百田さん。イライラモヤモヤをため込まない技術を。 参考図書: 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 (徳間書店) 突然キレてくる人。怖いパワハラ。気持ち悪いセクハラ。遠回しに悪口ばかり言ってくる人…。そんなムカつく相手にスパッと言い返す超簡単テクを大紹介! 事を荒立てたくはない。でも、言われっぱなしはイヤだ。あっちに「すみません」と反省させ、こっちもスカッと気持ちが晴れる。そんな魔法のような「言い返し方」を教えてくれる1冊。
2019年09月07日子ども連れだと、公共の場や乗り物であからさまに嫌な顔をされたり、「うるさい! 子どもを泣きやませろ」「ベビーカー、邪魔だな」など、ママの心にチクチク刺さる言葉を投げかけられることがあります。 「私の方こそ泣きたい…」と、モヤモヤ・ウツウツするママは少なくないはず。そんなママたちの心を軽くしてくれる書籍 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 が発刊されました。著者は、作家でありカウンセラーの五百田達成さん。 公共の場での心ない言葉に、ママはどう対応したらいいのでしょうか? 五百田さんにお話をうかがいました。 五百田達成(いおた・たつなり)さん プロフィール 作家・カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂を経て独立。鋭い視点から「コミュニケーション」「人間関係」を分析し、そこから導き出す実践的なアドバイスは高い評価を受けている。「コミュニケーションのプロ」としてメディア出演多数。著書にベストセラーとなった『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。 HP: 五百田達成オフィシャルサイト ■公共の乗り物で「うるさい!」と言われたら? ――子ども連れだと、通りすがりの人に乱暴な言葉を投げかけられることも少なくありません。こういった時のモヤモヤは、どう解決していけばいいんでしょうか? 五百田達成さん(以下、五百田さん):知らない人から「うるさい」とか「子どもを泣かせるな」とか言われる時ですよね。 そういう人に対して、「あなただって小さい頃があったでしょ」と注意する人がいますが、実は相手の心には1mmも響かないんですよ。「確かに! 俺も小さい頃があった」って気づいて反省するような人は、最初からそんなこと言いませんから(笑)。 ――そういう言葉をかけられて、公共の乗り物に乗るのが怖くなったというお母さんもいます。 五百田さん:どう言い返すかはさておき、楽になる考え方として「いろいろな人が乗る公共の乗り物は、うるさい・くさいは当たり前」があります。運賃を払っている以上、みなさん利用する権利があって、公平なはずなんです。 公共交通機関なんですから、子どもが泣いているのも当然で、それが気になる人は車両を変える、降りるなどの対応をすればいいと僕は思います。 でも、女性はそうスッパリとは割り切れないですよね。良い人、良いお母さんにならなきゃいけないと考えている人がほとんどで、他人に迷惑をかけたくないと思ってしまうでしょう。 でも、そんなの無理。ですから「子どもが泣いてもそれほど迷惑なことではない。良いお母さんでいる必要はない」くらいの心構えで良いと思います。 ■通りすがりの人からの暴言、3つの対処法 ――もし、そういった暴言に何か言えるとしたら、どういう風にしたらいいでしょうか? 五百田さん:言われたことに感情的にならず、冷静に言い返すっていうのが基本です。静かな声、静かな対応をしたもん勝ちだと思います。 「大きな声、出さないでください」とか「次の駅で降りますから」とか。何を言い返すにしても、静かな声がいいかなと思います。 あとは「困っているんですよね、全然泣きやまなくて」と他人事のような返しをするのもいいかもしれませんね。そう言うことでママの気持ちも少しはすっきりするし、事も荒立たないですよね。 相手は食い下がってくるかもしれませんが、何を言われても「ですよね〜、そうですよね〜」を繰り返す。すると、攻撃がきかないと思い相手もあきらめるでしょう。 子ども連れのママに暴言をはく人って、周囲からも軽蔑されますよね。周りは「そんなこと言わなきゃいいのに」「なんて心の狭い人だ」と思っているでしょうから、その人たちを味方につけるのも有効でしょう。 ほかの人に「うるさいですか?」って聞いて周りを巻き込み、味方につけるのもアリだと思います。 ■子育ての大先輩からの「余計な一言」どう切り返す? ――年配の女性から話しかけられる何気ない言葉でも傷つくことがあります。「母乳なの?」とか「最近は紙おむつなのね〜」とか。 五百田さん:そういう言葉には「Yes,but」で答えるのはどうでしょうか。「最近は紙おむつなのね〜」と言われたら、「昔は布おむつだったんですよね」と相手の言葉に一旦、イエスを言って、「でも、うちはこれなんです」とノーを言う。 これは義両親からイライラする言葉をかけられた時にも使えるテクニックです。 ――「まあ、こんなに泣かせて」「私たちが子育てしていた時は…」といった言葉にも、どう対処したらいいかわからない時があります。 五百田さん:そういう時は「どうすればいいですか?」って聞いてみるといいかもしれないですね。 あとは、暴言を受けた時と同じように「ね~、困っちゃいますよね。泣きやんだらいいですけどね」って受け流す。 ■心ない言葉の予防法「言われる前に言う」 ――そういった傷つく言葉をあらかじめ防ぐ方法はあるのでしょうか? 五百田さん:僕が小さい頃、母がやっていたことは有効な方法かもしれませんね。 ある日、満員電車で小さい僕をすみっこに座らせたんです。子どもで小さいから、立たせているより座らせたほうが安全だったと思うんですけど、母は周りに聞こえるように「すみっこに座らせてもらいなさい、危ないからね」って僕に向かって言ったんです。 その時の僕は「どうしてお母さんはわざわざ声に出して言ったんだろう」って不思議に思っていたんですが、今から思えば、それは周りに対してのアピールだったんだなとわかります。そういうコミュニケーションもあるなと思いました。 ですから、暴言を投げかけられる前に子どもに向かって「周りに迷惑がかかるから良い子にしてようね」と言ったり、「すみません、うちの子うるさくないですか?」と周囲に声をかけて先手を打つのは効果的だと思います。 公共の場や乗り物などで投げかけられる心ない言葉には、「冷静に静かな声」「他人事のように受け流す」「そうですね、でも…のYes,butテクニック」「周りを味方につける」などの対応策を教えていただきました。 次回 は、長い付き合いになるからこそ、関係を悪くしたくない夫、両親へはどう言い返せば? 引き続き五百田さんにお話をうかがいます。 参考図書: 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 (徳間書店) 突然キレてくる人。怖いパワハラ。気持ち悪いセクハラ。遠回しに悪口ばかり言ってくる人…。そんなムカつく相手にスパッと言い返す超簡単テクを大紹介! 事を荒立てたくはない。でも、言われっぱなしはイヤだ。あっちに「すみません」と反省させ、こっちもスカッと気持ちが晴れる。そんな魔法のような「言い返し方」を教えてくれる1冊。
2019年09月06日「うるさい! 子どもを泣きやませろ」「ベビーカー、邪魔だな」といった通りすがりの人からの言葉や、「まだおむつなのね」「母乳じゃないの?」といった身近な人からの言葉など、ママの心にチクチク刺さる言葉は世の中にたくさんあふれています。 「言い返せないけど、モヤモヤウツウツする…」 そんなママたちの心を軽くしてくれる書籍 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 が発刊されました。著者は、作家でありカウンセラーの五百田達成さん。 ママはどうして言い返せないのか? もし言い返すとしたら、どんな言葉がいいのか? 五百田さんにお話をうかがいました。 五百田達成(いおた・たつなり)さん プロフィール 作家・カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂を経て独立。鋭い視点から「コミュニケーション」「人間関係」を分析し、そこから導き出す実践的なアドバイスは高い評価を受けている。「コミュニケーションのプロ」としてメディア出演多数。著書にベストセラーとなった『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。 HP: 五百田達成オフィシャルサイト ■「言い返す」技術は大切な人を守るママの強い味方 ――五百田先生の新刊『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』は、タイトルから心惹かれました。 五百田達成さん(以下、五百田さん):編集者と最初に話していたのが、「最近みんな、イライラがたまっているよね」ということ。そこから企画が始まりました。相手をムカッとさせることを口にする人がいて、その言葉に傷ついてイライラして、まさに負の連鎖です。 僕の専門は、「どう言うか」によって人間関係を良くする、言葉を使って人間関係をまろやかにするコミュニケーションです。そこで、今のみんながイライラしている時代にフィットするような、むかつく相手を一発で黙らせる、スパッと「言い返す」技術を紹介する本を出したいと思ったわけです。 一部の女性からは、「私は言い返せません」という意見もいただいています。ズバッと言い返してことを荒立てたくない、しこりを残したくないと。かといって、黙って我慢しているだけでは、ウツウツとしたものがたまって、夫や子どもに「今、機嫌悪いの!」と当たってしまうかもしれません。 大切な人とのコミュニケーションは、大切にした方がいいと思うんですが、逆に、心ないことを言ってくる人とのコミュニケーションは、手を抜いてもいい。時にはバッサリ言い返してもいいんじゃないでしょうか。 どうでもいい相手には、いちいち胸を痛めないで、サクッとストレスなく言い返せるようになれたらいいですよね。書籍で紹介している中には、ママにとって現実的ではない言い回しもありますが、そこは「ふふふっ」と笑いながら読んでもらえれば。そうやって、うまくガス抜きをして昇華できるママの味方、お助けグッズになればいいなと思いますね 。 ■女性でもできる「事を荒立てない」うまい言い返し方 ――女性は何か言われてムッとしたりイライラしても、事を荒立てたくないので言い返さない、言い返せない人が多いと思います。それは、女性特有のものでしょうか? 五百田さん:そうでしょうね。事を荒立てたくない、平和主義、それが第一という気持ちは、女性の方が男性より強いでしょう。それは裏を返すと、みんなに好かれたい、嫌われたくないという「全面外交」だと思うんです。 でも、それがストレスをためる原因になる場合もあるわけですよね。ママ友や夫、義両親、通りすがりの人にまでいい顔をして、ストレスがたまる。一方、男性はそこまで周囲に気をつかいません。 ――そんな「事を荒立てたくない」女性特有の気持ちを踏まえて、うまい言い返し方はあるのでしょうか? 五百田さん:例えば、荷物を置いて席をとっていたのに、戻ってみたら知らない男性が席を横取りしていたとしましょう。 男性を直接注意したり、隣の人に「私、この席とっていましたよね?」と周りを巻き込んで、その男性と争って席から立ち退かせる方法もありますが、それは「言い返す」技術ではなくて「やり返す」技術。 おそらく女性の場合、そこまでして立ち退かせようとする人は少ないと思うんです。最終的にはゆずるんでしょうけど、なんだかモヤモヤするから、その気持ちはスッとしたいですよね。 でも、男性のように「チッ」て舌打ちするのはスマートではないので、「あー…、ちゃんと荷物を置いていたのに、見えなかったんですね」と言いながら席を移動するのはどうでしょうか。その一言で、少しでもイライラやモヤモヤをガス抜きできたらいいなと思うんですよ。 人に迷惑がかかることを女性は気にしますが、何もせずに「ちゃんと荷物を置いとかなかった自分が悪いんだ」と自分を責めたり、「ああいう時は強く出ないといけないなって思いました」と自己否定をブログに書き込んだりするのは、女性特有の悪い癖だと思います。 男性より女性の方がコミュニケーション力に長けているのですから、何か言葉を使って解決できたらいいですよね。「そうだ、こう言えば良いんだ」という言い返し方を知ってほしい。 ■言い返す技術の向上は「反復練習、無感情、得意技」 ――私自身、出産後のほうが、人から言われたことにモヤモヤしたり過敏に反応したりすることが多くなったような気がします。それは、どうしてなのでしょう? 五百田さん:母になった瞬間、女性は守るべきものが増えるんです。子どもというのは、母にとって自分の手足、分身みたいなもので、攻撃から守るべきものが広がって増えるわけです。 さらに、防衛本能も強くなり、危険を感知するセンサーが研ぎ澄まされます。何か自分たちを阻害するものがないかといつもピリピリしてしまうわけですが、良く言えば感受性が豊かになる。望まないタイミングでつい泣いてしまったりしませんか? それは、モヤモヤがたまりやすくなっているからです。 一方、夫は、妻ほど子どもを自分の分身だとは思っていないでしょう。そのうえ、たまに事を荒立てることをしてしまう(笑)。例えて言うなら、我が国(ママと子ども)は平和主義で丸く収めようとしているのに、同盟国(パパ)が戦争を始めてしまうようなことです。 すると、防衛したかったママはさらにストレスがたまりますよね。平和主義のママという国と同盟を結んだ以上、パパは子どもがいない頃よりも慎重な外交をしなければいけません。そのために、男性は女性のような言語能力を身につけたほうがいいんです。 ――確かに、「どうして家庭の平和を壊すの?」と妻から言われる夫は少なくないようです(笑)。書籍の中で、試してみたい言い返し方がたくさん紹介されていますが、女性の中には言い返したことで自己嫌悪に陥るタイプもいます。 五百田さん:ここで紹介する「言い返す」というのはあくまで技術なので、繰り返すことでうまくなっていきます。言い返すこと自体、女性には現実的ではないかもしれませんが、できるところからやっていけば技術は磨かれていきます。 それに人間ですから、繰り返すことによって良い意味で麻痺します。例えば、思春期に初めて好きな人へ告白というのはとてもドキドキしたものですよね。でも5回、6回と繰り返すとドキドキは薄まってきます。 そして8回、9回となってくると上手になり、タイミングも見計らえるようになります。言い返すことも同じで、言葉によるコミュニケーションは技術なので、 理論と反復練習でうまくなるんです。 「コミュニケーションは真心」と思っている方も多いでしょうが、僕はそこまで感情や気持ちをこめる必要はないと考えています。そういった気持ちを言葉にのせて、渾身の力を込めて言い返すから、相手が反応したら「やりすぎたかな…」と反省したり、効果がなかったら「ああ~、うまくいかなかった…」と落ち込むわけです。 言い返して自己嫌悪になるっていうのは、そこに感情をのせているからなんですね。女性はもっとドライになってもいいと思うんです。そして、これならできるかな? ってところから始めてみて、100回すれば慣れますし技術も向上します。 それに、できないと思うことはやらなくていいと思います。サッカー経験のない人が突然、オーバーヘッドシュートができないのと同じで、コミュニケーションにもできる・できないがあるのは当然です、技術ですから。 そこで、自分ならできる言い返し、自分の得意技というのを持つといいかなと思います。書籍にはいろいろな言い返し方を相手別、シチュエーション別で紹介していますが、自分で「これならできるんじゃないかな」という得意技を見つけるといいかと思います。 ■ママにおすすめ! うまい言い返し4つのテクニック ――ママにおすすめの言い返し方には、どんなものがありますか? 五百田さん:鈍感な人を装う言い返し方というのがあって、「わからないですね」「どうでしょう…」を得意技にしている女性は強いですね。うちの妻はそういうのがうまい人で、僕が無理難題な相談をすると「どうだろうね~」って(笑)。 でも、そう言われると僕も気づくんです。「無理難題を言いすぎた」って。だから、「これとこれだったらどっちが良いと思う?」とか、逆に「アドバイスはいらないから聞くだけ聞いてほしい」という言い方をします。 この「どうだろうね〜」「あまりよくわからない」は、人の悪口や噂話をされた時にも有効です。僕もよく使いますね。 ――それも言い返す技術ですね。 五百田さん:そう! これも言い返す技術なんですよ。「言い返す」というと、はねのけるような印象を受けるかもしれませんが、そらす、かわす、避ける、素通りするというのもある意味、言い返す技術だと思います。 カウンターパンチを相手に食らわす方法もありますけど、それは女性にとって現実的ではありませんよね。そうやって、スッスッとかわす。 そういう意味で、うちの妻は天才かも知れません。昔、僕が初めて念願の著作本を出した時、大学の友人がしれっと「俺も本、書こうかな〜」と言ったんです。そこで僕はちょっとモヤモヤしたんですよね。なんだか、自分が大切にしているものを軽んじられたような気がして。 それを妻に相談したら、「『じゃあ、書いたら?』ってそのまま言い返せば良かったのに」と言われたんです。あー、そうだなって! それも、事を荒立てない言い返す技術ですよね。だから、うちの妻は最高なんです(笑)。 子どもを持ったからこそ、事を荒立てず、平和に過ごしたい。心ない言葉にも言い返せず、モヤモヤ・ウツウツとしてしまうことも多いママ。 五百田さんの「言い返すのも、技術。繰り返すこと、必要以上に感情を込めないことがコツ」というアドバイスが胸にスッと響いたママも多いのではないでしょうか。 次回 は、公共の場や乗り物で「うるさい、子どもを泣きやませろ!」とどなられたら? とっさの「言い返す」技術について、引き続き五百田さんにお話をうかがいます。 参考図書: 『「言い返す」技術 ムカつく相手にスパッと言い返す』 (徳間書店) 突然キレてくる人。怖いパワハラ。気持ち悪いセクハラ。遠回しに悪口ばかり言ってくる人…。そんなムカつく相手にスパッと言い返す超簡単テクを大紹介! 事を荒立てたくはない。でも、言われっぱなしはイヤだ。あっちに「すみません」と反省させ、こっちもスカッと気持ちが晴れる。そんな魔法のような「言い返し方」を教えてくれる1冊。
2019年09月05日