1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。 「花まる学習会」とは…「数理的思考力」「読書と作文を中心とした国語力」に加え、「野外体験」を三本柱として、将来「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾。代表は、数多くのメディアでも紹介された高濱正伸さん。
「その子自身の成長に着目してあげると、学習意欲と向上心が育ちます」と言うのは、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。失敗を「今、できないこと」と考えたら、「明日には、できるかもしれない」と、目線が未来に向かいます。 そうはいっても、そもそも「失敗するのが嫌」とトライする前にフリーズしている場合は、どうしたら良いのでしょうか? 引き続き西郡さんにお話を伺いました。 「Vol.1 “良い大学”では生き抜けない時代。子育ての新しい道筋は?」 「Vol.2 なぜ親は子どもが失敗することを恐れるのか?」 の続きです。 「教育現場だけではなく、親も、知らず知らずのうちに、子どもを失敗から遠ざけようとしている」と話す花まるグループの西郡さんは、「わからないからおもしろいんだよ」と子どもに教えて欲しいと話します。 ■「失敗するのが怖い」と思う人に伝えたい言葉 失敗するのが嫌だから、絶対にやりたくない。正解はわからないけれど、自分自身で何らかの判断を下さなければいけない…。 そんな状況は、大人になってからもたくさんあります。そんなときに、背中を押してくれるフレーズを、西郡さんに教えていただきました。それは、 「まぁ、なんとかなるんじゃない?」 「どんな状況でも、人の背中を押してくれるのは、『まぁ、なんとかなるんじゃない?』という根拠のない自信、いわば 自己肯定感 なんです」(西郡さん) ■「失敗しないでね」と言いがちな親に必要なこと 自己肯定感。この言葉も、教育の取材をしていると必ずといっていいほど出てきます。では、自己肯定感は、どうすれば育つのでしょうか? 「自己肯定感。いわば自分の芯とも言える部分をしっかり育てていなければ、人は自分自身を認めることはできません。その芯とは、 親からの絶対的な愛情 です。親からの惜しみない愛情が、人生を生きていく上での拠り所となるのです」(西郡さん) 「子どもを絶対的に愛する」ということ。 そんな境地に強い憧れは、あります。けれども、自分が想定する「枠内」に子どもが入ってくれていれば愛せるけれど、そうでなければそこまで言い切ることはかなり難しい…。正直に言ってしまえば、筆者は「その程度」をウロウロしている母です。 そして、それは、そのまま「失敗しないでね!」「そんなことしちゃダメでしょ」という子どもへのメッセージに繋がっていくということに気がつきました。このあたり、どんなふうに考えていけば良いのでしょうか? ■正解のない世界を生きるための「自分軸」とは 西郡さんは言います。「自分だけの基準がなければ、判断はすべて世間的な価値基準に従うものになってしまいます。これからは、 自分自身で何が正しいかを選ぶ軸 が必要です」 そのために必要なことは、 「感覚」を蓄積していくこと だと言います。 「『感覚』とは、外から与えられた知識や世間的な価値基準などとは別のところで判断を下すための 絶対的な自分自身の基準 ともいえます」(西郡さん) 「『感覚』という、一見捉えどころのないものを言語化できるようになることで、ただ感じるだけではなく、自分のなかに哲学を蓄積していくことができるようになります」とも西郡さんは言います。 「行動して、感じて、考えて、言葉にする。その連続が自分の哲学となり、 正解のない世界を生きていく上での自分なりの基準 になるのです」(西郡さん) ■世界的に重視されてきていること 実際のところ、欧米では「感覚を磨く」という意味でアートの重要性が高まっているといいます。かつてビジネスの世界で重視されていたMBA(経営学修士)を持っている人よりも、MFA(美術学修士)を持っている人の方が評価されるようになってきているそうです。 たしかに、いままでの教育のなかでも、「感覚」を養う勉強はありました。わかりやすい例としては、図工や音楽、美術です。 「それだけではなく、じつは国語や算数の中にも感覚を磨く要素が潜んでいるんですよ」(西郡さん) ●算数で「感覚」を磨く 平行四辺形を見たとき、その中に二つの三角形をつくる補助線がパッと浮かぶ ●国語で「感覚」を磨く 小説などを読んで、主人公に感情移入したり、細かな描写に自分と近い感覚を見出す ■普段の生活でできる「感覚」の磨き方 「感覚を磨くことが、これからは大切」と言われても、従来の教育で育ってきた筆者には、正直ピンときません。どうしたら良いのでしょうか? 「子どもの感覚を磨くためのひとつが 『つくる遊び』 です」(西郡さん)。とりわけ自然の中で日が暮れるまで遊ぶような「外遊び」の経験が、何より子どもたちの「感覚」を磨くそう。 「できあがった施設のなかで、用意された遊具を使って遊ぶことよりも、何もない野原で拾った棒切れ一本を使って、どんな遊びをしようかと考えることのほうが、子どもの『感覚』を磨きます」(西郡さん) クリエィティブともいえる遊び。「 自分で考えて遊びを『つくる』 という試行錯誤を繰り返すことによって、『感覚』は磨かれていくのです」(西郡さん) ■子どもが楽しく遊んで入ればOK 遊びが、感覚を磨く。こんなふうに書くと、「子どもを思いっきり遊ばせなきゃ!」と、何やら焦りにも似た気持ちになってしまうママもいるかもしれませんね(私も焦ります)。 「『遊ばせなきゃいけない』と考えすぎずに、 『子どもが楽しく遊んでいるのであればそれでいい』 という姿勢で良いと思います。ただ、その遊びが、ゲームなどに偏り過ぎないように注意してあげてください」(西郡さん) ■子育ては、「子どもを信じる」から始まる 本連載第1回目の冒頭にも書きましたが、西郡さんは「完璧に正しい子育てなどありません」と繰り返し言います。 「子どもに少しばかり間違ったことを教えてしまったとしても、それが子どもの未来を奪うことにはなりません。親が心配するまでもなく、子どもたちは自分で考え、人生を切り拓いていくことができます」(西郡さん) 「私が少しくらい間違えたって、大丈夫!」そんなふうにママがふっと肩の力を抜くことができたなら、「ちゃんと失敗する子」を育てるスタート地点に立てたのかもしれませんね。 「子どもはいずれしっかりと自立していく。そう信じることから子育ては始まります」(西郡さん) <「失敗する子」の育て方> 1)「まぁ、なんとかなるんじゃない?」が、人の背中を押す 2)「つくる遊び」が「感覚」を磨く 3)子どもはいずれしっかりと自立していく。そう信じることから子育ては始まる ■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著 『ちゃんと失敗する子の育て方』 高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き) ●高濱 正伸さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。 花まる学習会公式サイト: ●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。 高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。
2019年08月20日「これからの時代を生き抜くための力を育てるには、 『失敗』が不可欠 なんです」と言うのは、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。 そう言われても、そもそも論として、 「失敗が怖い」 筆者は、わが子に失敗をさせてあげる胆力(心の余裕)がありません。どうしたら良いのでしょうか? 「Vol.1 “良い大学”では生き抜けない時代。子育ての新しい道筋は?」 の続きです。 「いまの学校教育が育てているのは、“受験に合格する力”です」と語る「花まる学習会」グループの西郡さん。AIが進化して答えのない時代に、いま、子どもに、本当に必要な力を、どう育てていけば良いのでしょうか? ■“成長”の前には、必ず失敗や困難がある 「みなさんも、自分の人生を振り返ってみれば、『自分が成長したな』『壁を乗り越えたな』と感じたときには、その前に必ず失敗があったのではないでしょうか?」と西郡さんは言います。 たとえば、部活動で試合に負けて、その悔しさをバネに練習をがんばったとき、大人になってからは、お客様に叱られる、大きなミスをする。そうしたことを乗り越えて、何かを成し遂げたとき。「そんなとき、自分の成長を感じた方も多いのではないでしょうか?」(西郡さん) 成長は、失敗や困難の先にある 。失敗ではなく、その先にある成長の方に意識を向けられるようになってくると、いま、目の前にある「失敗」は、成長のためのジャンプ台に見えてくるのかもしれませんね。 …と、そんなことを書いてみてはいる筆者ですが、じつは最近、仕事で大失敗をして、ただいま激しく落ち込んでいます。そんななか、「失敗は、ジャンプ台」なんていう気分には、じつは、まったくなれません(涙)。 ■「失敗」を避ける日本の教育 失敗恐怖症ともいえる筆者。「なぜ、自分はこれほどまでに失敗が怖いのか?」ということを理論的に知ることも、失敗恐怖症を和らげるのに役立つかもしれません。 従来の日本の教育では、なるべく 「失敗」を避けて効率的に生きること が良しとされています。良い大学に入れるように、テストで良い点を取るための勉強をする。「成功の方法は教えてもらえますが、 失敗したあとの方法 は教えてもらえないのです」(西郡さん) そこには、「失敗」をして遠回りする時間の余裕がないという、致し方ない側面もあります。試験で点数を取るためには、知識を効率よく詰め込む必要があります。 「そのため、自分のやり方ではなく、『正しいとされている』やり方を教えられるのが日本の教育なのです」(西郡さん) 現在の教育のあり方そのものが、 「失敗」を排除する方向にいきがち である。そういった認識を持っておくことが、子どもの失敗を許容できる母への第一歩なのかもしれませんね。 ■なぜ、うちの子は「失敗」を嫌がるのか? しかし、西郡さんは「『失敗』を奪っているのは教育現場だけではありません。親も、知らず知らずのうちに、子どもを失敗から遠ざけようとしています」とも、言います 「親の接し方で、子どもは違ってきます。たとえば、子どもに対して『これはこうでしょ!』と上から目線で伝えるのではなく、『もっとよく見て、 これはどうなると思う? 』と、示唆的に考えさせるような会話をすることが大切です」(西郡さん) 問題を解けなければ、叱る。正解すれば、褒めるという教え方では、子どもはできないことに焦りや不安を感じてしまいます。 「失敗をした上での成功体験を持っている子どもは、わからないことそのものを楽しく感じます。その差が、将来の学力の差になるのだと思います。 『わからないからおもしろいんだよ』 と、繰り返し伝えてあげてください」(西郡さん)。 ■「できちゃった」が「またやりたい」を生む 西郡さんがおっしゃる、「わからないからおもしろいんだよ」と子どもに言える母である、という境地。母であるなら、ぜひとも辿り着いてみたいものです。けれども、現在の筆者は辿り着けていません(涙)。どうしたら良いのでしょうか? 「そもそも、学習とは、ひと言で表せば、『できなかったことをできるようにすること』なんです。『できなかったこと』が、『できちゃった』とき、子どもは大きな快感を味わいます。 そして、より勉強をおもしろいと感じるようになり、明日もやりたいという『学習意欲』が生まれます」(西郡さん) やはり、その根底には、『失敗』があります。たとえば、問題が解けなかった。その後、どうすれば解けるようになるか考えて試行錯誤し、最終的に正解を導き出すことで、「やった!」「解けた!」という 大きな達成感 が生まれるのですから。 「その感覚が楽しいから、また勉強をがんばります。そして、もっともっと学びたい、いろいろなことを知りたいという『向上心』が生まれるのです」(西郡さん) ■子どもが「明日またがんばろう」と思えるためには 「『学習意欲』と『向上心』。この2つを得ることができれば、どんな子も伸びていきます」(西郡さん)。 「学習意欲」と「向上心」と書くと難しく感じるかもしれませんが、要するに「明日またやろう」「より良くしよう」という気にさせることだそうです。 そのために大切なことは、大人が「できなかったことができるようになっているか」という部分に着目してあげること。「つまり、他人ではなく、 以前のその子自身と比べて 伸びているかどうかが重要なのです」(西郡さん) 昨日の自分にはできなかったことができちゃった。それが楽しいから明日もまたやりたい。「この連鎖が、何よりも子どもを成長させていくのです」(西郡さん) <「失敗する子」の育て方> 1)これからの時代を生き抜く子を育てるためには、「失敗」が不可欠 2)「できちゃった」が「またやりたい」を生む 3)その子自身の成長に注目してあげると、学習意欲と向上心が育つ ■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著 『ちゃんと失敗する子の育て方』 高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き) ●高濱 正伸さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。 花まる学習会公式サイト: ●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。 高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。
2019年08月19日「 現在の教育は、なるべく失敗を避けて、効率的に生きること が良しとされている」と語るのは、 「花まる学習会」の西郡文啓 (にしごおり ふみひろ)さん。 「完璧に正しい子育てなど、ありません」と話し、花まるグループ「西郡学習道場」代表を務める西郡さんは、「花まる学習会代表」高濱正伸さんの高校の同級生です。創立時から二人三脚でやってきて、初期の頃は、2人で牛乳配達をされていたこともあったそう。 そんな西郡さんに、 これからの時代を生きるために必要な力 について、お話を伺ってきました! 西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。 「花まる学習会」とは 「数理的思考力」「読書と作文を中心とした国語力」に加え、「野外体験」を三本柱として、将来「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾。代表は、数多くのメディアでも紹介された高濱正伸さん。 ■子どもに求められる能力が変化してる! 西郡さんは言います。「これから先、子どもたちが生きていく社会は、目まぐるしい速さで変化していくことでしょう」 人口知能(AI)の進化と普及は、人の働き方を大きく変えていくといわれています。今後10年~20年のうちに、今ある仕事の半分近くが、自動化によって代替されていくとさえ予測されています。 10年後は、どのような世の中になっているのか? それは、現時点では誰にもわかりません。そんな 「変化が激しく、答えのない時代」 を生きる子どもたちに対して、いま、親は子どもにどんな力をつけてあげれば良いのでしょうか? ■「受験に合格する力」では、生き抜けない 「いまの学校教育が育てているのは、 “受験に合格する力” で、いわば“対策力”(知識を体系的に得る力)です」(西郡さん) 対策力というのは、「こういう問題が出るから、こういう勉強が必要だ」という、前提ありきの力です。しかし、2020年度からは大学入試センター試験が廃止され、新しい共通テストが始まることが決まっています。 大学入試そのものを、 “新しい時代を切り拓くための力” が身についていなければクリアできないものに変える。そうすることによって、高校以下の教育もその方向に向かわせる。今回の大学入試改革には、そうした狙いがあると考えられています。 ■「良い大学」に変わる、新たな指標とは? ママたちも、 「良い大学に入るための学力」 と、 「社会で生きていく力」 が、違うことには何となく気がついているはず…。でも、「良い大学に入れば、良い会社に入れて、良い生活ができる」という幻想を手放せるほど、明確に「次なる指標」は見えていません。 だから、つい、従来の「良い大学に行くために、テストで良い点を取れればそれでいい」という価値観に拠りどころとしてしまう…という堂々巡りを繰り返してしまっているのではないでしょうか? でも、前述のとおり、「これからは、大学に入ることそのものにも、いままでとは違う力が求められるようになっていくのです」(西郡さん) ■「失敗が怖い母」は、どうしたらいい? 従来の勉強だけでは受験も勝ち抜けない時代になっているいま、子どもに、本当に必要な力を、どう育てていけば良いのでしょうか? 西郡さんは言います。「これから先の時代を生き抜くための力とはどんな力なのか、どのようにして育てていけば良いのか。本連載を通じてお伝えしますが、そこには、 『失敗』が不可欠 なんです」 「お子さんには、失敗をさせてあげてください」 これは教育関係の取材をすると、必ずといっていいほど出てくるフレーズです。けれども、「失敗をしてはいけない」という教育を受け、「失敗は、よろしくない」という社会で仕事をしている筆者自身、失敗が怖くて仕方ありません。おのずと、自分の子どもに対しても、「失敗しないように」という思考回路で接してしまうのです。 ■失敗しない人は、いない 「大切なのは、子どもに『転ばぬ先の杖』を渡してあげることではありません。転んだ後、どうにか 自分の力で立ち上がる 。そのための方法を自分でつくりあげていくことができるように、大人たちが導いてあげることです」(西郡さん) そもそも、「失敗をしない人」は、いません。 だれもが東大に合格できるわけではありませんから、どんなに勉強をしても東大に入学できない人は必ずいます。だれもがプロスポーツ選手になれるわけではありませんから、どんなに練習をしてもスポーツ選手になれない人もいます。仮に東大に合格しても、また、スポーツ選手になれたとしても、そのなかではさらに厳しい競争が待っています。 つまり、仮に、何かで「一番」になったとしても、裏には数えきれない失敗や挫折があるはずです。それを乗り越えたからこそ成長がある。「『成功者』や『一流』といわれる人ほど、多くの 『失敗』を経験している のです」(西郡さん) <「失敗する子」の育て方> 1)知識を体系的に得る力(対策力)のみでは、これからの時代は生きていけない 2)大学に入ることそのものにも、今までとは違う力が求められる 3)これから必要なのは、「ちゃんと失敗する力」である ■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著 『ちゃんと失敗する子の育て方』 高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き) ●高濱 正伸さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。 花まる学習会公式サイト: ●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。 高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。
2019年08月18日