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物価高、エネルギー高騰。でもお給料はあがらず、老後不安はますばかり。そんな閉塞感を抱えてるママたちに、家計のプロが今すぐできる対策を教えます。
時代が大きく変わっている今、「見えない学力」を身に着ければ「見える学力」も上がると話すのは、映画『みんなの学校』で「不登校ゼロ」の公立小学校として話題となった大空小学校初代校長・木村泰子先生。「母親としてここだけは外さないポイント」を聞きました。
「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前」と話すのは花まる学習会の高濱先生。家事や育児の負担がのしかかるママたちに今だからできることを教えていただきます。
コロナ禍で収入が減って、これからの家計が心配という声が聞かれます。教育費、老後のお金を我慢や無理をせずに貯めたい、毎日の家計を黒字にしたい…そんな方法をFPの横山光昭さんに教えていただきます。
昨年の「老後2000万円問題」は、マネー史に残る「事件」でした。でも「老後不安」で終わってしまうのはもったいない。「老後に2000万円足りないって、本当?」「いくら貯めればいいの?」必要な情報を知ることから始めてみませんか?
■前回までの話 家計が厳しくて教育費を削るべきかどうか…で悩むママたちは多くいます。そんな時に考えたい「習い事の始める時と辞め時」について。また子どもとお金の話をするときに「うちはお金がない」と言ってしまってもいいのか? という問題も横山先生が回答します。 >>1話目を見る 「節約は得意だけれど、投資は怖い…。でも、最近、 「つみたてNISA(ニーサ)」や「iDeco(イデコ)」 という言葉をよく聞くから、やっぱり投資はしておくべき?」 そんなママたちを代表して家計再生コンサルタントの横山光昭さんにお話しを伺ってきました。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■「投資はすべきか?」プロの驚くべき回答は? 楢戸 :直球で聞きます。投資ってするべきなんですか? 横山 :「するべきか?」というよりも、 「しなければマズい!」という人たちが多い のが現実です。「怖い」といった感情的な判断軸で、判断している場合ではないというか…。正直なところ、極論を言ってしまえば、「やらなければ、アウト」な人が多いんです。 楢戸 :え!? それって「貯金」というペースだけでは、必要な老後資金を貯められないという意味ですか? 横山 :そうですね。 「老後資金を、公的年金だけで十分賄えます」という人はレアケース だと思います。そうなると、ある程度は自分で用意しておく必要があります。 私たちは、 ライフプラン表 を使って、具体的に計算をします。そうすると「この貯金ペースだけでは、必要な老後資金を貯められない」という人が、大半なんです。 ■投資が初めての人におすすめの「パッチテスト」 楢戸 :厳しい現実ですね…。でもお金のことを、「ライフプラン」という長い時間軸で考えられる人は、まだ少ないと思います。 「節約を頑張れば大丈夫なのでは?」という目線の方に、「ライフプラン的に見て、投資をしなければ間に合わない」という話をしても難しい…。この目線の切り替えは、どうしたら良いでしょうか? 横山 :よくある話ですけど、 「投資を少額からやってみる」 というのは、王道だと思います。「つみたてNISA」や「iDeco」は、税制の優遇制度なのはご存知ですか? 入口としては、「つみたてNISA」の方が入りやすいですね。こういった制度を使って、まずは投資を少しだけ始めてみるんです。 楢戸 :NISAは「少額投資非課税制度」の愛称です。この制度には 「少額投資を、税金の優遇制度を使って推奨します!」 という国からのメッセージが込められています。 「少額の投資を体験する」という意味で、いわば 「投資のパッチテスト」 です。自分が投資に対して、どんな反応をするのか? それを知ることから始める…くらいのテンションだったら、「やってみようかな?」と思える人もいるかもしれません。 横山 :パッチテストいいですね! うちでも使います(笑)。本格的な投資を始める前に、まずはパッチテストで体験予想をしておくと心理的なハードルは下がります。 ■リアルに投資を始めた人の実感は? 楢戸 :以前、ウーマンエキサイトの連載で、横山さんの 「貯金感覚で始める3000円投資生活」 を特集したことがありました。特集を担当した編集者さんが、この特集を機に投資を始めたそうなんです。 その編集者さんは「最初は全然増えずに、放ったらかしにしていました。ある時、フッとみたら上がっていて、そこから勉強を始めました」と、おっしゃっていました。 投資に対して、頭で「減った時のこと」を考えるのではなく、行動を起こして、「増えた」というプチ体験をすると、投資をスムーズに始められると思います。いい意味での「欲」を持てるようになれば、興味も沸きますしね。 横山 :好奇心ですよね。 楢戸 :好奇心という言葉、いいですね! ▼「貯金感覚で始める3000円投資生活」 ■投資の「値動き」に一喜一憂しないためには? 横山 :私が推進している投資は、 「インデックスファンドを長い時間をかけて積み立てする」 というもので、そんなに怖くはないと思っています。 「家訓として言われているので、僕は絶対に投資はできません!」と、おっしゃる方も、一定数いらっしゃいますが…。そういう方は、「投資」と「投機」を混同されているのかもしれませんね。 楢戸 :インデックスファンドを長期で積み立てするというのは、世の中のお金の流れに乗り遅れない、最も手軽な方法だと私は思っています。 横山 :ただ、コロナショックもそうでしたが、「半年」「1年」といった短いスパンで見てしまうと、値下がりをすることもあります。投資に慣れていないと、この最初の値動きのアップダウンで、「やっぱり投資は無理」と思ってしまう人がいるのかもしれません。 繰り返しになりますが、私が推奨しているのは、 10年単位で保有をする「長期投資」 です。10年単位のスパンで見れば、値動きしつつも、資産は増えていくとは思います。今、個人投資家の数は日本の人口の6分の1くらいかな? もう少し増えてもいいと思います。 ■夫に「お金の話」をどう切り出すか?の大問題! 楢戸 :最後にひとつ聞いていいですか? 投資に対しての価値観の擦り合わせにも繋がると話ですが、結局のところ「お金の話」は、ママひとりでは、解決できないと思うんです。 でも 「お金のことを、夫にどう切り出すか?」 。このハードルは、とてつもなく高いと思うんです。そんなママたちに、アドバイスをお願いします! 横山 :とても難しい問題ですね。旦那さんにお金の話をする際に、私がお勧めしているのは 「実際の数字を見せる」 ということです。 「今月の収入は〇〇円で、支出の内訳はこうでした」みたいな一覧表を作るのです。具体的な数字があると、男性はイメージが沸きやすいと思います。 楢戸 :感情に訴えるのではなく、相手が理解しやすい資料を用意するということですね。あとは、 「ひとりで不安にならない」 ってことですかね? 横山 :それは、大いにあります。それから、子どもにも一緒に話に参加してもらう。 楢戸 :子どもに「わが家のお金の話」をすることは、 「自分は、この家の大切な構成員なんだ」 という子どもの自尊感情を育てることにも繋がると思います。 横山 :そうですね。私自身も、子どもたちに対して、「みんなが『株式会社 横山』のメンバーなんだ!」という気持ちで接しています。大人は固定概念に囚われがちなので、子どもからお金について新鮮な目線を教えてもらうこと、今でもありますよ。 【この記事のまとめ】 投資をしないと、アウトな人が多い。横山さんの言葉は、かなり衝撃でした。でも、お金を「ライフプラン表を使って人生の最後まで考えてみる」という視点は、大切ですね。 昨年(2022年)12月には、NISAの制度改正も発表になり、これから投資分野はますます熱くなりそう…。ひとりでお金のことを悩むのではなく、家族でお金の話を共有しつつ、具体的な行動ができると良いですね! ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月12日■前回までの話 家計のプロである横山光昭さんによると、「家計費でここはまだ削れる」というところが2つあるといいます。ひとつは携帯代金。もうひとつは保険。どこに、どうやって情報を取りに行けばいいかが、わからない…。そんな方はどうすればいいのでしょうか? >>1話目を見る 「これからどんどん教育費かかるよね…でも少しでもお金削りたいなんて親失格かな…」そんな風に悩むママが多くいると聞きます。 全然、親失格なんかじゃありません! かえって「どんなに家計が苦しくても、教育費だけは削らない」などと、ママがひとりで節約を抱え込んで頑張る時代は終わりました。 今後、教育費のことをどんなふうに考えていけばいいのか? 6人のお子さんがいる「お父さん」でもある家計再生コンサルタントの横山光昭さんにお話しを伺いました。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■習い事の辞め時シグナルを見逃さないためには 楢戸 :教育費について、横山さんはどんなお考えなんでしょうか? 横山 :わが家の指針として間違いなくやっていることは、教育費について子ども自身とよく話し合って、 子どもの意向を聴く ということです。 たとえば、大人もそうかもしれませんが、習い事は「やりたい!」と思った時点が、「やりたい気持ちがMAX」なんです。けれども半年くらい経ってみると、「思っていたほど、面白くないな」といったことってありませんか? 「習い事に、少し遅れて行く日がチラホラでてきた」…。そんなところに、 「習い事、辞め時のシグナル」 は出ています。子ども側としても、「あれだけ『やりたい!』と言った手前、すぐに辞めたいとは言い出せないな…」と、思っている可能性もあります。「習い事の辞め時シグナル」を見逃さないためにも、子どもの意向を聞くことは大切です。 ■習い事を始める前に親が覚悟すること 楢戸 :今の話のポイントとして「やりたい気持ちがマックスなら、やらせてみてもいい」というのは、ひとつ、ありますか? 横山 :ただ親の都合で「お金がないから、途中で辞めさせる」というのは違うと思います。習い事を始める時には、親は 「月謝を払い続けられるかどうか?」 をよく考えて、覚悟を持って通わせ始めないといけないと思います。 楢戸 :そういった「家計の舞台裏」を、実際に子どもに話してみるというのはどうですか? たとえば「うちの家計は、〇〇円です。あなたの習い事代は〇〇円、1ヶ月の食費の1/4と同じくらいの金額がかかっています。お母さんも節約を頑張って月謝を払っているので、あなたの気持ちが変わったら早めに言ってね」といった感じです。 横山 :いいですね! お金の話を家庭内でする習慣 があると、子どもの視点が違ってきますよ。たとえば、うちの中学生の子は、自分からこんな提案をしてきました。 「A塾は16,500円で、B塾だと19,000円くらいかかる。内容的にはB塾の方がいいので、少し高いけどお願いだから通わせて」と。本人が、塾の内容と金額の両方を見て、自分で選んでくれるのは助かります。 楢戸 :子どもが 「自分で考え、選択をする」 という場面は、尊重したいですね。そのためにも、「わが家のお金の話」を、幼い頃から子どもに話していく必要があると思います。 ■「うちはお金がない」と言っていいの? 横山 :子どもにお金の話をする時に注意して欲しいのは、 「ネガティブな言い方をしない」 ということです。「うちはお金がないから、〇〇できない」といった言い方だと、子どもは心配になってしまいます。 わが家でお金の話をする時には、「〇〇をするためにはどうしたらいいかなぁ? みんなで一緒に考えようぜ!」という“ノリ”で話をします。 楢戸 :なるほど。ネガティブなトーンではなく、 「これを達成するために、みんなでやろう!」 という明るいトーンで話をするのですね。「お金の話」をする時の大事なポイントです。 横山 :子どもたちに家計をオープンにした副産物として、「いくら言っても水をジャージャー使っていた子が、歯磨きをする時は蛇口を締めるようになる」みたいな循環が、わが家では生まれています。 ■子どもの前でお金の話をするのは悪いこと? 楢戸 :そうは言っても、家庭内で「お金の話」をすることに、抵抗がある人もいると思います。 横山 :たしかに少し前の日本では、「お金のことを話すことは、はしたないこと」といった価値観がありましたから…。でも、家庭内でお金の話を聞かずに育った大人は、今、困っていると思うのです。 楢戸 :この記事を読んでくださっているママは、もしかしたらひとりで「教育費を何とかしなきゃ!」と思っていらっしゃるかもしれません。 横山 :ひとりで抱え込むのは、よくないですね。 楢戸 :「子どもにお金の話をするのは、子どものためでもある」ということを、今日は知って欲しいと思います。横山さんに教えていただいた「お金の話の伝え方のポイント」に注意しながら、少しずつ、子どもに「わが家のお金の話」をしていけると良いですね。 【この記事のまとめ】 子どもは、大人が思っているよりずっと、 「自分の家のこと」に敏感 だと思います。家族の一員として、習い事代といった「自分に関係のある話」あたりから、少しずつ、「家のお金の話」に触れていく…。そうすると、子どもは、実感を持ってお金に慣れていけるのではないでしょうか? 次回は、「節約は得意だけれど、投資は怖い…」というママに向けた投資のお話。お金のプロであるFPの横山先生に直球で「投資ってするべきなんですか?」と聞いてみました。すると返ってきた答えは衝撃の一言でした。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月11日■前回までの話 マネーライターである楢戸さんは以前収入減に陥った過去が…。そんな家計のピンチに初めて家計管理と向き合うことに。そんなピンチがあったからこそ、自信につながったという。そんな楢戸さんが「子供が10歳になるまでに、一度、真剣に家計と向き合うことは、おすすめです!」と話す。 >>1話目を見る 節約の記事は、よく見かけます。試しに、今、「家計 節約」と検索してみたら、節約案の筆頭に「スマホを格安スマホに乗り換える」とありました。 でも、実際の多くの人は「知ってはいるけど、行動に移せない」という段階なのではないでしょうか? そこで、どうしたら実際の行動に移せるのか? を中心に、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、お話しを聞いてきました! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■携帯代金は半分の人が見直す余地がある!? 楢戸 :今、家計が不安な人は多いと思うんです。家計のプロから見て、「ここをチェックしてみて!」という部分は、どこでしょう? 横山 :筆頭は、 携帯代金 です。ここ2、3年で、携帯費用を抑えられている方も増えてはいますが、まだ半分くらいの方は見直す余地があると思います。 楢戸 :携帯代金は、どんなふうに見直せば良いのでしょう? 横山 :(自分が入っている)大手キャリアに「携帯代金の割安プラン」を相談に行っても、料金はそう大きくは変わりません。まずは、家電量販店の「格安携帯」というコーナーに行ってみて下さい。 楢戸 :家電量販店に行って、「格安携帯かどうか」というのは、わかるものですか? 横山 :最近は、コーナー自体が目立つようになっています。担当者の方が「格安」という法被を着ていたり、旗が立っていたりするんです。 ■携帯を変更する「心理的ハードル」が高い人は? 楢戸 :なるほど、そうなんですね…。削りどころを質問しておいてナンですが、やっぱり「携帯を変える」という心理的なハードルは、かなり高いような気もします…。 横山 :そんな方は、こんなふうに考えてください。 「家電量販店には、現状を相談に行く」 と、思ってみるんです。最初から「携帯を変えるぞ!」と思っていると、お店に行くこと自体が億劫になります。 たとえば、買い物に出たついでに、ふらっとお店に寄ってみる。そこで、「私は、こんなふうに携帯を使っているけれど、どんなプランがありますか?」と、話を切り出します。 ギガ数が多い方がいいのか、通話があった方がいいのか…。人によって携帯の使い方は違いますから、自分にとってベストな使い方と、それにかかる料金を聞いてみましょう。 楢戸 :「携帯を変える」ではなく、「まずは相談する」で、良いんですね。安心しました。 ■お得情報はアップデートしないともったいない! 横山 :最初の一歩は、「携帯料金が、安くなるんだ」ということを「知る」だけでも充分です。「料金が安くなる可能性がある」と 「知る」 だけで、気持ちや意識は変わってきますから、キャッチする情報も違ってくるんです。 相談に行った際には、 「デメリット」 も、一緒に聞いておきましょう。デメリットを聞いて、「相談はしたけれども、変更しない」という結論でも大丈夫です。 大切なのは、「格安携帯って、繋がらないんでしょ」などと、頭の中のイメージだけで判断をしないことです。実際に足を運び、具体的な料金を知り、メリットとデメリットを比較検討しながら、自分で考えてみるということが重要です。 楢戸 :お得情報はアップデートされているので、「知らない」のはもったいないですね。「情報をチェックに行く」、それくらいだと気が楽です。 横山 :わが家は今、携帯を7台使っていますが、7台で、月額料金は、8000円弱だったと思います。 楢戸 :7台で、8000円弱!? 横山 :ここが、 「工夫」 なんです。たとえば、家や会社にWi-Fiがあれば、ギガ数がかかるものは、そこで使うようにする。そうすると、「毎月、私は10ギガ使うかな?」という自分に対しての問いが生まれます。こんなふうに、節約は、情報力と自分なりの工夫で何とかなる部分もあることを知って欲しいですね。 ■1回頑張るだけで効果が持続する費目は? 楢戸 :携帯料金の次にチェックする費目はありますか? 横山 :次に検討して欲しいのは、 保険 です。保険は、「固定費」の代表格ですから。保険の見直しは労力かかりますが、 「1回だけ」頑張ればいい んです。 楢戸 :1回だけ!? 横山 :固定費の見直しは、1回見直しさえすれば、あとは気を抜いていても効果は持続します。そういう 「面倒だけれど、確実に効果がある」 という節約を、意外と皆さんやってないんです。 楢戸 :なるほど! では、「保険の見直し」は、どのようにすればいいのでしょう? 横山 :携帯の見直しと似ていますが、プロに聞くのが早くて楽です。信頼のおけるファイナンシャルプランナーに相談に行くのが近道だと思います。 楢戸 :皆さんのニーズとして、「自分が入るべき保険って、本当にこれでいいのかな?」というのはあると思うんです。けれども、どこに、どうやって情報を取りに行けばいいかが、わからない…。そんな「保険難民」の方、多いと思います。 横山 :うちは、「金融商品のセカンドオピニオン」サービスもしています。「提案されて保険に加入したものの、どうも腑に落ちない」といったモヤモヤを一人で抱えている方って、思っている以上に多いんです。 たとえば… 横山さんのところで、保険の見直しの相談は1回5,000円。死亡保障、医療保障の内容チェック、貯蓄性のある商品の整理整頓などをしてもらえます。 楢戸 :そういった方たちも、ある意味「保険難民」ですね。 横山 :少し暑苦しいのですが、私は、「そもそも、どこに保険をかけるべきなのか?」という「『保障を買う』という根本の考え方」をお伝えする資料も渡すようにしています。 「加入している保険の意図」と「自分の意図」が合っているかどうか? を、御自身で考えてみるために、最低限の基礎知識は必要だからです。 楢戸 :普通の人が、「保険証券を見て、保障(補償)内容を読み解き、自分に合っているか判断する」というのは、難易度が高すぎですね。 横山さんは、保険証券とその方との「通訳」をしてくださっているんですね。たしかに、保険の見直しは、プロ(通訳)なしだと厳しいのかもしれません。 【この記事のまとめ】 家計が不安だと、とっつきやすい節約として、やみくもに「買い物を控える」という選択をしがちです。けれども、それが守れなくて落ち込んでしまうことはありませんか? 今回、横山さんに教えていただいた節約のキーワードは、 「自分で考えてみる」 だと思います。もちろん、必要に応じて、プロの手を借りてOK! まずは、「家計について、ゆっくり考える時間を作ること」から始めようと思います。 次回は、教育費のお話。「教育費を削りたいなんて親失格かな…」そんな風に悩むママが多くいると聞きます。ひとりで節約に悩むママに向けて、家族で取り組む方法を教えてもらいます。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月10日物価は高くなるし、エネルギーも高騰。それなのに、お給料は全くあがる気配がない…。そんな閉塞感の中で、将来への不安を感じている人は、多いのではないでしょうか? でも、大丈夫! ピンチは、チャンスでもあるんです。これまで、「ちゃんとしなきゃ!」と思いながらも、何となく先送りにしていた「お金のこと」と、今、向き合ってみませんか マネーライターである私・楢戸ひかるがお金のプロである横山光昭先生に今のこの時代をどう乗り切っていけばいいのか、直球質問した対談をお送りしていきます。 ■マネーライターなのに家計がヤバい! まず最初に私自身のことを少しお話させてください。 じつは、私自身、30代の時に、 「毎年、世帯年収が減り続けた時期」 がありました。理由はふたつあって、夫の会社が、「3年間で社員の年収を5%引き下げる」と決めたこと。加えてフリーランスのライターだった私が、軸足を仕事から家庭に移したこと。 長男ひとりのときは共働きをしていましたが、夫の転勤先の北海道で双子を授かり、(ほぼ)専業主婦になりました。軸足を仕事から家庭に移したのだから、収入減は当たり前ですが、大きな打撃でした。 でも、今、考えると、家計がピンチになって、ようやく初めて家計管理と向き合えたんです。当時の私は、結婚しても、長男を産んでも、20代の浪費体質&どんぶり勘定を引きずったまま、30代後半を迎えていました。マネーライターなのに…です。あのとき、必要に迫られなかったら、今でも、放漫家計だったと思います。だから、「必要に迫られる」って、大切です。 ■収入源のピンチを乗り切った今思うこと な~んて、恰好いいことを言ってみましたが、収入激減は、すごく、すごく不安で、亀が手足を甲羅に引っ込めるような気持ちで、毎日を過ごしていました。 お金を使うこと自体に強い罪悪感があり、1000円のランチに行ったことを、「無駄遣いしちゃった」と、3日後悔するような日々。お風呂を沸かすのを節約するために、洗面所で息子の手足を洗ったこともありましたっけ…。 でも、家計が苦しい時期を何とか乗り切ったことは、その後の自信になりました。そして、思ったんです。 「あの時に、家計と真剣に向き合って良かった!」 と。 「お金を貯められるのは、子どもが10歳まで」 というフレーズ、聞いたことありませんか? 春からわが家は子どもたちが大学生2名と社会人になりましたが、「それって、本当だな~」と、つくづく思います。放漫家計のままだったら、教育費が山場の今、もっと苦しかったと思います。 そんな私だからこそ、「子どもが10歳になるまでに、一度、真剣に家計と向き合うことは、おすすめです!」と、言いたい。今、閉塞感を抱えてるママたちに、「ピンチはチャンス!」とエール送りたいです。 次回は、節約案の筆頭にある「スマホを格安スマホに乗り換える」。「知ってはいるけど、行動に移せない」という人のために お金のプロの横山光昭先生に対策をお聞きしました! ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月10日■前回の木村先生のお話 これまでは学校も親も「正解通りにできること」を、教育の目標に掲げてきました。「これから育てるべきは、自分の頭で考えることができる子」と話す木村先生。でもそういう子どもを育てるためにはどうしたらいいの? 「自分の頭で考えることができる子」を育てるべきと木村先生は言います。けれども、一方で、中学受験など低年齢化した「受験熱」は、親たちの間でヒートアップしている感もあり、目先の詰め込み教育に追われる日々を過ごすママも、現実には多いのかも!? 「学歴だけでは生きていけない」と頭ではわかっていても、受験の波に巻き込まれたら最後、自分を見失ってしまう…。「私の子育て、どこに向かって何を頑張ればいいんですか?」再び読者Aさんと木村さんの会話に戻りましょう。 ■子どもに正解を言うと対話が終わってしまう 木村先生 :今までの受験社会で評価されてきたこと「インプットをした『正解』を、どれだけ正確にアウトプットできるか」は、これからの社会を生きていく上では、優先順位の上位ではないと思うのです。 Aさん :では、どうしたらいいのでしょうか? 木村先生 : 「ママが「勉強させなければ!」と思うのは当然…でも勉強すれば幸せになれる?」 でお話ししたとおり、子どもを思いどおりに動かす子育てをしている保護者の方もいるでしょう。でも言うことを聞かせようとするから子どもは、そっぽを向くんです。それをやめれば、子どもは「ねえねえ」と勝手に寄ってきます。 どういうことかというと、子どもが何を言っても、一言も口をはさまず、とにかく子どもの言うことを 「聞く」「受け止める」 ことから始めるんです。大人だって、自分の言うことを聞いてくれそうだと思ったら、話をしたくなりますよね? たとえば「今日、学校でAちゃんが暴れて大変だった。何とかして!」と言ってきたら、まず「ああ、そうなんだ」と受け止める。いったん受け止めることをせず「そんなことを言っちゃダメでしょ!」などと、いきなり正解を言ってしまったら、それで対話は終わってしまいます。 ■ゲーム嫌いなママとゲームの話しかしない子どもの場合 Aさん :対話が大切なんですね。 木村先生 :はい。 「『正解通りにできる子ども』は生き抜けない…今の学校がつらい子どもにできること」 でお話しした新学習指導要領(※)のキーワードは、「主体的・対話的で深い学び」です。学校の先生であれば、このキーワードはみなさんご存知だと思います。国が、どの方向に向かって、教育を組み立てようとしているのか? それは、ママたちも知っておくと良いかもしれません。 Aさん :主体的・対話的で深い学び…難しいですね。親は、何をすれば良いのでしょう? 木村先生 :難しく考える必要はないです。たとえば、ある子どもはゲームの話だけはよくお母さんにしていたそうです。でも、ゲームが嫌いなママはゲームの話なんか聞きたくない…。口を開けば「いつまでやっているの!」「宿題は?」という小言や指示命令ばかりだったそうです。 「そうなんだ」と受け止めるという私の話を聞いたそのママは、意をけっして子どものゲームの話を(我慢して)最後まで聞いたところ、息子さんが「ねぇねぇ」と言って面白い動画をお母さんに見せに来てくれたそうです。 子どもの話を受け止めただけで、親子の関係性が変わり、対話が生まれたんです。親が受け止めると「おお、自分の話を聞いてくれた!」と、子どもは思いますからね。 ■指示命令をしてきた親子関係は急には変わらない 木村先生 :これで第1段階クリアです。ようやくスタート地点に立ちました。 Aさん :スタート地点!? 木村先生 :指示命令を続けてきた「これまでの長い親子関係」があるので、すぐに劇的な変化が訪れることは、まずありません。時間がかかるのです。でも、スタート地点に立てれば、だんだん、子どもの言うことを受け止めることができるようになっていきます。それが日常的に自然にできるようになったら、次の段階に行きましょう。 Aさん :なかなかに険しいですね…。 木村先生 :そりゃ、そうです。次の段階は、たとえばニュースを見ながら「お母さん、これがわからないんだけど、あなたはどう思う?」と質問してみます。ただし「すぐに子どもが素直に答えてくれる!」みたいな変な期待は、最初から持たないことです。 「あなたは、どう思う?」と聞いても「別に…」「知らない」「わからない」しか子どもが言わないようなら、 しつこく追いかけないのもコツ のひとつです。子どもが逃げているのですから、察知して、追いかけるのはNGです。「残念、バイバーイ!」と、あっさり引き下がりましょう。しつこくすると、せっかく築いた関係が元に戻ってしまいます。 ■子どもとの関係がマイナスのスパイラルに陥ったら Aさん :子どもは、野生動物みたいですね…。 木村先生 :大空小学校でもありました。せっかく教師が自分を変えて、子どものほうから来てくれるような関係性ができてきたのに、あるとき子どもから「うるさい、そんなん知るか!」と言われた途端、「ちょっと待て!」などと言って教師が怒ってしまった。そこまでにほんの少しできてきた関係性の絆が切れてしまうと、マイナスのスパイラルに陥ってしまうこともあります。 Aさん :そんな時は、どうしたら良いのでしょう? 木村先生 :笑いで終わらせる。しつこく追いかけない。私は学校でも、「それは残念!」などと言って軽くおどけながら子どもから離れるようにしていました。そうすると不思議なもので、「何で人がしゃべっている最中に、出ていくねん」とぶつぶつ言いながら子どもが帰ってきたりします。 軽い笑いに変えると、「あなたは悪くないよ。そういうこともあるよね」という空気になるんです。その場が軽くなるような言葉をいくつか持っておくといいですね。関西人は、ちょっと有利かな(笑)。 Aさん :本当にそうですね。 木村先生 : 今、この記事を読んでいるママたちは「現状を何か変えたい!」と思っている時なのかもしれませんね。すごいチャンスの瞬間です。現状を変えたいと思った時が、大人一人ひとりが自分で考え始めるチャンスなんです。「自分は、こう育ったから」「夫が、言うから」「ママ友が、こうだから」ではないんです。 「自分がこの子だったら、どうしてほしい?」「自分が、今、やっていることは、この子にとってどうなんだろう?」 こんなふうに大人一人ひとりが常に自分に問い続けて、自分の頭で考え始めてみることが大切なんです。 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 7.子どもに言うことを聞かせようとしない。話を受け止めることから始める 8.新学習指導要領のキーワードは、「主体的・対話的で深い学びの実現」である 9.大人一人ひとりが、自分の頭で考え始めることが大切 いかがでしたか? 子どもが自分が思ったようにならない時、つい「自分の言うことを聞かない子どもが悪い」と思ってしまいがちです。けれども木村先生のお話しを聞くと、「あれ? じつは私自身に問題があった!?」と、ハタと我に返ります。 自分の頭で考えられる子を育てるためには、まずは大人が自分の頭で考え始めることが大切…。いやぁ、本当にそうですよね! 木村先生の取材をすると、毎回、私自身(いつもよりは)深く考えます。そして木村先生と一緒に、学びを深めていきたいと思うのです。 ※文部科学省: 学習指導要領「生きる力」 学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもの学びが進化します。新しい学習指導要領、スタート。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは? 【木村泰子(きむら やすこ)先生】 映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集める。
2022年02月03日■前回の木村先生のお話 これからの時代を生き抜くためには母親も子どもも、失敗しても立ち直れる「レジリエンス」が必要。しかし親が過保護になって必要以上に子どもに関わり続けてしまうとこの力は伸びません。そうならないためには…? つい、子どもに口うるさく行ってしまうのは、ママが不安だから。ヘリコプターペアレント(ヘリコプターのように子どものまわりを旋回し、管理・干渉し続ける保護者を意味)のような子育てをしないためには、「周囲の同調圧力に負けずに、子どもを信用するが大切」と木村先生に教えていただきました。再び読者Aさんと木村先生の会話に戻りましょう。 ■勉強しない子どもを信じることができる? 木村先生 :「勉強をしない」、「素行が良くない友だちと付き合ってる」…。こういったことを長い人生の中で経験することは、悪いことではないと私は思っています。子どもが成長する最中には、山あり谷ありであることの方が自然です。「わが子は今、回り道をしているけれども、最終的には自分らしく幸せな大人になっていく」と、信じていればいいんです。 Aさん :その状況で、子どもを信じるって、とても、とても、難しいと思います…。 木村先生 :どうして? だって、自分の子どもでしょう? ゲームばかりしていても、親に迷惑をかけていても、自分の子どもでしょう? その子は、世界にたった一人しかいない、わが子でしょう? 「自分には、最終的に帰るところがある」 と、子どもが思えていること。これが、とても大切だと私は思うのです。そのためには、「どんなことがあってもお母さんは、あなたの味方だよ」と、ママ自身が子どもを信用するしか方法はないと思うんです。 ■勉強しない子ども自身が困っている可能性もある Aさん :子どもに、「お母さんは、あなたの味方だ」ということが伝わっているのかな? というのがわからなくて…。どう伝えればいいのでしょう? 木村先生 :たとえば、子どもが「勉強したくない」と言ったとしましょうか。そんな時、親は心配だから「なんで?」と聞きます。聞かれた子どもは、自分の中に原因があると考えて、不安になったり、塞ぎこんだりしてしまうのです。 そんな時は、発想を転換する! HOWを使うんです。「どうしたら、あなたが楽しく勉強ができるようになると思う?」「どうしたら、あなたが勉強したいと思うようになるかなぁ?」と、子どもに聞いてみるのです。 Aさん :なるほど。声かけをそんなふうに変えていくことから始めればいいんですね。 木村先生 :子どもに対して「指示命令」をするのではなく、 「問いかけ」 をしてみる。そして、その問の答えを子どもから言ってもらえる。親は、そんな大人になればいいのです。 「子どもが、勉強をしない」と親が困っているとしたら、子ども自身も、本当に困っていることが多いのです。 「(本当は勉強したいと思うのに)、その方法がわからない、向き合い方がわからない」 といった感じでね。 子どもが困っている原因は、じつは本人の中ではなくて、案外、周りの環境の中にあるんです。私が校長を務めていた大空小学校(映画『みんなの学校』の舞台となった学校)には、学校に通えなくなった子どもがたくさん転校してきました。でも、大空には通えるんです。「違いは、何?」と聞くと、「空気が違う」と、子どもたちはみんな言っていました。 Aさん :空気…。子どもたちは、きっと、今の世の中や、学校の空気がつらいんですよね。 木村先生 :今の学校の空気に入ろうとしたら、自分をガチガチのスーツケースの中に閉じ込めなければならない。でも、それを風呂敷に変えたら? 風呂敷は、どんな形にも自由自在になるでしょう? だから「子どもを育てる」のではなく、「子どもが育つ」。その周りにいる自分たち自身を少しずつアップデートしていこう! 大空は、そんな大人の集まりでした。 Aさん :子どもを主語にして、自分が変わっていく…、そんな感じでしょうか。 ■10年後の社会で「生きて働く力」とは 木村先生 :そうですね。だからこそ、「勉強をしないさい」と子どもに言うときには、「勉強って、何だろう? 学びって、そもそも何だろう?」といったことを、ママたちには自分の頭で考えてみて欲しいのです。下記は、私が文部科学省から聞いた文言です。 「みんなと同じことができる」 このことが評価される時代は終わった。 他人と違うことに価値のある時代になってきた。 木村先生 :文部科学省は10年に一度行う「学習指導要領」の改訂をし、小学校では2020年度から既に新しい学習指導要領(※)での指導が始まっています。 ところで、今の学習指導要領の下で育った子どもたちが大人になる、10年後、20年後は、どんな世の中になっていると思いますか? Aさん :10年後、20年後…。そうですね、学歴があることよりも、「自分が何をやりたいか?」を追求していける子が生き抜いている気がします。 木村先生 :本当にそうですね。今の学歴社会、受験社会が、どこまで通用するのかな? と、私は、思います。 Aさん :でも中学受験など受験が低年齢化して、ママたちがヒートアップしている現象もある気がします。この歪みが、どこで調整されるのか? いつ世の中が変化していくのかが不安です。 ■「正解通りにできること」が目標? 木村先生 :Aさんが世の中の変化を感じていないのであれば、残念ながら娘さんが通っている学校は、変化をしていない可能性もありますね…。 私の肌感覚としては、「全国の学校」という日本の全体像で見れば、随分と動き始めている印象です。一方で、旧態依然のまま、まったく変化をしていない学校があるのも事実です。たとえば、オリンピックがありましたが、現状はそのキーワードだった「多様性」や「共生」が、行動に繋がっていない人が多いのと似ているイメージでしょうか…。 木村先生 :ところで、多様性ってどんなことだと思いますか? 私は、多様性とは「違う文化をリスペクトすること」だと思っています。子どもがふたりいたら、ふたりともが、それぞれ別の人間ですから違います。お互いがお互いをリスペクトできる。言い換えれば、それぞれの人が、それぞれの人をリスペクトできれば、すべての人が 「自分の人生」を生きることができる のです。 具体的に考えてみましょうか? たとえば小学校1年生になったら「廊下は、右側を歩きましょう」と、習います。右側を歩くのが「正解」で、これまでは「先生に言われなくても、自主的に右側を歩けること」が評価されてきました。学校も親も「正解通りにできること」を、教育の目標に掲げてきたのです。 けれども、「正解通りにできる子ども(右側を歩ける子ども)」を育てたところで、多様性が尊重される社会で生きていけますか? これからの世の中には、左右がわからない人が歩いているかもしれないし、「左側を歩くことが正解」という文化の外国人の方だって増えていくでしょう。 Aさん :本当に、そうですね…。 木村先生 :これから育てるべきは、「きちんと右側を歩ける子ども」ではなく、「道で人にぶつからないためには、どうすればいいか?を、自分の頭で考えられる子ども」なんです。 そのためには、「曲がり角では、立ち止まるようにしよう」など、日々生活の中で、都度、自分で考えていかなければなりません。 Aさん :そういう子を育てるためには、どうしたらいいんでしょうか? 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 4.「自分には、最終的に帰るところがある」と、子どもが思えていることが大事 5. 指示命令ではなく、「あなたはどう思う?」と、子どもに聞いてみる 6. これから育てるべきは、自分の頭で考えることができる子である 「自分の頭で考えることができる子」を育てるためには、私はどうすればいいですか? 次回も、木村先生と一緒に考えます。 ※文部科学省: 学習指導要領「生きる力」 学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもの学びが進化します。新しい学習指導要領、スタート。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは? 【木村泰子(きむら やすこ)先生】 映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集める。
2022年02月02日子どもを産んだら、ママになる。けれども、自分がイメージするようなママになれず、落ち込んでしまうことは、ありませんか? 今回は、「子どもに、『あれしなさい』『これしなさい』とばかり言っている気がして、落ち込む」という読者のAさんと木村泰子先生の会話からスタートします。 【木村泰子(きむら やすこ)先生はこんな人】 木村先生は、映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長です。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「木村先生が子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集めています。 ■「あれしなさい」「これしなさい」ばかり言ってしまう Aさん :私の悩みは、つい、 子どもに「あれしなさい」「これしなさい」とばかり言ってしまう ことなんです。本当は、何でも大らかに受け入れて、「大丈夫よ!」と、子どもの気持ちに寄り添いたいのに……。 木村先生 :表面上、「大丈夫」と言って子どもを落ち着かせようとするのは、「大丈夫」という言葉を、単なる道具として使おうとしているのかもしれませんね。 子どもは、それをすぐ見抜きます。子どもが暴れたりイライラをぶつけたりするのは、 親を困らせようとしているのではなく、ただ、本人が困っているだけ 、不安を抱え、困っている子どもに対して、大人は寄り添おうという気持ちが大切です。 今、こんなふうに偉そうに言っている私ですが、私の娘が孫にあれこれ言っているのを見て、「そうやって力で押さえつけても、子どもは納得しないよ」と伝えたら、娘から言われた言葉があるんです。 Aさん :娘さんは、何と? 木村先生 :「お母さんにだけは、そんなこと、言われたくない!!」と、猛反発されました。私も、母親時代は、娘と同じことをやっていましたからね。 Aさん :木村先生も、自分の娘さんに、あれこれ言ってしまう母親だったのですか? 木村先生 :そりゃそうです、当たり前です。 Aさん :木村先生でもそうだったと伺って、何だかホッとしました。学校の宿題など、「どうしてもやって欲しいこと」があると、子どもに寄り添えなくて、落ち込みます。 木村先生 : 親は、「子どもが自分の望んでいるような姿になって欲しい!」と願う生き物 です。私も、「いろいろなことができるお子さん」を見ると、「うちの娘も、ああなって欲しい!」と、いつも思っていましたよ。 Aさん :「こういう子になってほしい」という自分の気持ちを子どもに押し付けてしまう気がして…。 木村先生 :母親だったら、全員そうでしょう。親の思うように行動していない子どもに、「あなたは、大丈夫!」なんて、とても言えませんよね。仮に母親が表面上そう言っていたとしても、子どもは見抜きます。 ■勉強をしたら、幸せになれますか? Aさん :では、どうしたらいいんでしょう? 勉強をする時間になっても、子どもがダラダラと漫画を読んでいる時、どんなふうに声かけをしたら良いですか? 木村先生 :その前段階として、勉強をする目的を、ママはどう考えていらっしゃいますか? Aさん :子どもが勉強することで自立する手助けになればと。私が高齢出産なので、少しでも子どもの選択肢が広げられたらと思って…。 木村先生 :わかります。私は、一人っ子なんです。そして、小学校の参観日に母が来るのがすごく嫌でした。友だちから、「お前は、おばあちゃんが来ているのか?」と聞かれるほど、友だちの母親と比べて年配感が漂う母だったんです。でも「世界中で一番尊敬している人は誰?」と、聞かれたら、私は「母」と答えると思います。 そんな母ですが、一緒に暮らしている間、ずーっと私に、「勉強しなさい」と言っていました。その時代の自分を省みて思うのは、「勉強しなさい」と言われたところで、勉強なんてしません。勉強をしている「ふり」だけして、まったく勉強しないで大人になりました。小学校の成績は、真ん中より下だったと思います。 Aさん :そうだったんですね…。 木村先生 :でも、「勉強しなかったら、大人になった時に幸せになれないのか?」と問われたら、そんなことはないと思うんです。ママたちは、今、子育ての真っ最中で、「子どもが勉強をしていれば安心。勉強をしていないと、不安」なのは、とてもよくわかります。 私は子育てが終わっているので、「このように育てたら、こんな結果になる」ということがわかっている人間です。その人間から言わせてもらえば、「勉強して、いい学校に行けば、子どもは幸せになる」というのは幻想です。 繰り返すようですが、「わが子が勉強をしていない」という姿を目前にすれば、 母親なら誰だって、「勉強させなければ!」と思うのは当然 のことなんです。けれども、そんなママたちだって、一個人に立ち戻った時に、 「勉強すれば、幸せになれるの?」 と問われたら、もはや「そんなことは、ない」と、気がついてはいるでしょう? ■これからの母親に必要な力とは? 木村先生 :時代が大きく変わっている今、「母親として、ここだけは外さないで欲しい」と私が思う力は、 復元力 です。 イメージとしては、大波に揺られても転覆しない船です。子どもは、大海でいろいろな波に揉まれながら、進んでいくわけです。いろんな波があっても、船が沈まないのは復元力があるからです。復元力は、最近よく使われる言葉として、 「レジリエンス」 とも言い換えられます。 私は娘ふたりの母親ですが、上の子と、下の子は、同じ親から生まれ、同じ家で育ったのにまったく違う性格です。上の子は、ありとあらゆることに反抗する子どもでした。とにかく先生の言うことを、聞かない。先生が、「右に、向きなさい」と言えば、「何で、右に向かなきゃいけないの?」と聞いて、「いいから、右、向きなさい!」などと先生が言おうものなら、「じゃあ、私は左向くわ!」と言って、どこかに行ってしまうような娘でした。下の子は、そんな姉を見ながら、生徒会に入って、「学校改革をしよう!」と言うような子でした。姉が中学3年間でぶっ壊してきた中学を、妹は生徒会の会長になって復活させた。笑い話です。 Aさん :すごいですね…。 木村先生 :「勉強をしない」、「素行が良くない友だちと付き合ってる」…。こういったことを長い人生の中で経験することは、私はけっして悪いことではないと思っています。 人が成長する最中には、山あり谷ありであることの方が自然で、子どもが大きな失敗をして親の元に帰ってくることもあるでしょう。そんな時、 「お母さん、一緒に考えるよ」 と、親が言える。こんなレジリエンス(復元力)を親が持っていたのなら、子どもはいろんな曲がり角にぶつかりながらも、最終的には自分らしく幸せな大人になっていくと思うんです。 Aさん :そんなレジリエンスを持てている親、いるのでしょうか? 木村先生 :それを持てるよう、親も子どもと一緒に学ぶのです。学びについては、別の機会に、ゆっくり考えていきましょう。今回、お伝えしたいのは、子どものレジリエンスが育ちづらくなる、親の関わりについてです。 それは「ヘリコプターペアレント」と言われたりする、 過保護になってしまいがちな親の行動 です。子どもの様子を逐一把握していないと心配で、必要以上に関わり続けてしまう…。 「自分の視界」「自分の想定」の範囲に子どもがいないと不安で、結果的に子どもを縛り付けてしまう…。縛りつけておかないと、子どもがどこかに行ってしまうような気がして不安なんでしょうね。そうならないため大切なことは、 大人も周りの同調圧力 に負けない覚悟が必要です。 Aさん :覚悟…ですか? 親が覚悟を持つためには、どうしたら良いのでしょう? 木村先生 :子どもを信用するしかないですよね。 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 1.これからのママに必要なのは、レジリエンス(復元力)である 2.復元力とは、子どもが失敗をした時に「一緒に考えるよ」と子どもの味方なる力 3.ヘリコプターペアレントをしている限り、いつまでも不安のままである 次回は、「子どもを信用すること」について、木村先生にお話しを伺います。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは?
2022年02月01日■前回のあらすじ 「『良いお母さんをやろう』と思うから辛くなる。自分は、自分でいればいいんです。良いお母さんである前に、自分自身を大切にできていますか?」と問う高濱先生。 良いお母さんである前に、「あなたは人として、自分を大切にできていますか?」…そんな問い、考えたことあるママはいるでしょうか? どうしても「良いママ像」に縛られがちなママたちに高濱先生は、「自分は、何をしている時が楽しいか?」をママには絶対考えて欲しいと話します。 ■「自分は何をしている時が一番楽しいか?」を考える ――「良いお母さんであらねばならない」みたいな呪縛は強いと思います わかります。ママ友の目だってあるだろうし、住んでいる地域によっては、お姑さんや、御近所の目がうるさいということもあるでしょう。「あのお母さん、子どもを放っているよね」みたいなね。でも、やっぱり、そこでも「人目」を気にしている…。 もう、そういう時代じゃないんですけれどね。「誰に何を言われようと気にしない」みたいな人たちの時代が来ているというか。いま、勢いがある企業のトップの方というのは、そういう人々が多いですよね。 ――でも思い切るのは、なかなか難しいと思います でもね、 お母さん自身が「自分でいること」に焦点を当てられるように なりさえすれば、「何が起こっても、人生、楽しんだけどな!」みたいな感覚は得られるんです。まぁたしかに、かなり勇気が必要です。 やっぱり周りに言われちゃうから。「本当は働きたい」と思ったから、実際に働いてみたら、じつのお母さんに、「子どもがかわいそうじゃない」と言われてしまったりしてね。 ――言われちゃったら、どうしたらいいんですか? 言わせておけばいいんですよ。「そういうことを言う人も、いる」ということですよね。でも一方で、働くことへの理解者や仲間もたくさんいますよね。 やっぱり、お母さん自身が、 「自分は、何をしている時が楽しいか?」を考えてみる ことが、こんな時期だからこそ、本当に、本当に、大切なんです。 ■子どものために、ママ自身が自分を楽しく生きればいい ――「自分は、何をしている時が楽しいか?」を考える…。それ、難しい!! 難しいけれど、ママたちには絶対に考えて欲しいんです。では、私の場合をお話ししましょうか。私の出身は熊本です。父は医者で私は長男なので、「当然、親父の後を継ぐもの」と周りは思っていたんです。 でも、私はその環境から逃れたかった。「東大だったら、文句は言われないだろう」と東京に出てきて、さきほどお話ししたとおり、本当にいろいろなことをやった挙句、「やっぱり、俺は子どもが好きだ」という結論が出たんです。 映画が好きでたくさん見ましたが、子どもが主人公の映画に5つ星をつけている自分がいる。バックパッカーをやった時も、タージマハルに行って、建物ではなく、その横にいた子どもたちと遊んだことを10ページくらいノートに書き綴っていました。 「俺は間違いなく子どもがすごい好きで、子どもと一緒にいるとワクワクするんだな」ということを自分自身で捉えることができたので、「子どものことを仕事にすれば、一生楽しめるな」と、思ったんです。 ――お母さんが好きなことをしていれば、その姿を見て子どもは育つんですものね お母さん自身が輝いて生きていれば、子どもはそれが一番うれしいものなんです。お母さんが、仕事が大好きで、仕事を頑張っていれば、きっと、「私も早く働きたいな!」と思うんです。 子どもは学校で嫌なことがあったとしても、家に帰ってきてニコニコしたお母さんを見ると、 「世界には、いいものがある」みたいな気持ちになるもの です。嫌なことなんて、浜辺に書いた文字のように、波ですうっと消える感じですよ。 だからこそ、 お母さんたちには、好きなことを主軸に生きて欲しい のです。子どものために、自分が楽しく生きればいいんです。それが、もっとも子どもに良い影響がある「良い母親像」です。 私が「子どもを放っておけ」と言ったとしても気にかけてしまう母親が多いと思います。だったら、「今日、私、何が楽しかったかな?」ということを、まずは自分に聞いてみてあげてください。 ■「今日、楽しかったこと」を子供と会話してみる ――そんな質問、自分にしてみたことないかもしれません じゃあ、もう一つお伝えしておきます。自分の人生観として、最近、「確信」が出てきたことがあるので。 ――どんなことでしょう? 私は、人から感謝された時が、一番いい「ポカポカ」を感じるんです。「誰かの役に立つ」ということが、人間にとってもっとも幸せだということです。そしてそれは誰にでも同じことが起こるんだ、ということを確信したんです。 2021年の前半の今は、まだ「外付けの枠組み」で生きている人も多いでしょう。でも、 今こそ自分の心だけ見るべき だと思いますね。私は、社会で活躍している人たちにお会いする機会も多いですが、みなさん、そこの部分がシンプルに整理できています。 ――「今日、お母さん、こんなこと楽しかったんだ」などと、子どもと会話するのはどうでしょう? すごくいいですね。実際に、それをやっている人もいます。寝る前など、布団に入った時に、みんなで「今日、良かったこと」を言い合うみたいなね。 ■コロナ渦での学習の遅れは? ――最後に、「コロナでの学習の遅れ」についてのご意見をお願いします 「コロナでの学習の遅れが心配」という声は、たしかにあります。けれども、コロナだっていつかは収束するでしょう。そうしたら、何だかんだと追いつきますよ。コロナの間の学習の遅れは、 ちょっと「やる気」になれば取り戻せるレベル です。そんなに深刻に悩まなくても大丈夫です。 それよりも、コロナ禍だからこそ、「発見できること」がたくさんあると思うのです。夏目漱石が、「眺めて楽しむ」と言っていましたが、目の前で起こっている事象のすべてを面白がることができる気持ちが持てるかどうかが大切です。 危機の時にこそ、そういう気持ちが大切です。同じ事象でも、認知の仕方でまったく違ってきますよね。たとえば、「コップに半分水が入っている」というニュートラルな状態も、捉え方次第でまったく異なった見方になります。 コップに半分「も」水がある。コップに半分「しか」水がない 今の時期は、どうしてもネガティブな方向に気持ちが持って行かれてしまうから、ここは大人たちの頑張りどころだなと思うんです。 親がガックリしていれば、子どもは不安になります から。勉強の遅れは、コツコツやれば取り戻せます。それよりも、「今の危機にしかないこと」をキャッチして、「経験値貯金」にしておけば面白いと思います。 ――オンライン授業については、どうお考えですか? オンラインで困るのは、やっぱり低学年ですよね。私たちもやってみて、1年生までは、正直、お母さんが横にいないと厳しいかなとは思うんですよね。 低学年のお子さんがいる方には、「基盤力に絞ってください。簡単に言えば、 字の練習と計算 です。そこだけは、学年相応のことをやっておく。それぐらいで十分です」とお伝えしています。 字の練習と計算は反復練習なので、保護者でも対応できると思うんです。その際、多少声を荒げるようなことがあっても、大丈夫です。子どもは、お母さんたちが心配しているほど、傷つかないものです。 でも、お母さんが少し欲を出して文章題を教え始めると、危ないです。お母さんが魔物に変身して行きますからね(笑)。文章題は、(教えることの素人である)お母さんたちが指導しない方が良いエリアかもしれません。 大丈夫ですよ。たとえば1、2年生でまったく文章題をやらなくても、4年生で4年生の文章題をやるようになれば、できるようになります。「1、2年生の頃、しっかり文章題をやったから」という理由で、高学年で伸びるというものでもないんですよね。 ――高濱先生にそう言っていただけると、ホッとするママもいると思います ただ、これからの保護者は、ざっくり大きな見通しとして、 「授業がオンラインになることもある」 ということは、視野にいれておいた方が良いですよね。今までだってインフルエンザで学級閉鎖などはしていましたが、これからは「インフルエンザ期間は、2週間オンライン授業です」ということがあるかもしれません。そうなること前提の準備は、しておいた方が良いというのはありますね。だからといって、「学校的なもの」がなくなるということは、ないと思います。子どもは、他の子どもの声を聞きたい生き物ですからね。 いかがでしたか? 取材で高濱先生とお会いすると、「元気をいただく」という気持ちになります。なかなか難しいですが、「自分は、自分でいればいい」にトライしてみようと原稿を書きながら思いました。自分を尊重することで、子供に寄り添うといった気持ちの余裕が生まれる予感がします。 高濱先生のメッセージが、一人でも多くのママたちに届くことを心より願っています! ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは? 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 『情熱大陸』(毎日放送)など、数多くのテレビ番組や『AERA with Kids』(朝日新聞出版)などの雑誌にも登場。『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』(日本図書センター)など、著書多数。
2021年04月02日■前回のあらすじ 「コロナ禍、イライラするのは当たり前。でも煮詰まってしまうママには特徴がある」と話す高濱先生。子どもにも悪気なく「親が、価値があるものだと思っているもの」を押し付けてしまうママたちはどうすればいいのか? 消しゴムのカスを集めている子どもに対して、「そんなの集めていて、何になるの? そんな意味のないことをしていないで、勉強をしなさい」と、親が無自覚に自分の価値観を押し付けていることが、子どもの自己肯定感の低さに繋がっていると、高濱先生に指摘を受けました。そう言われても…。 ■誰にでも心が疲れてしまう時はある ――おっしゃっていること、頭では理解できます。でも、消しゴムのカスを集める子どもを見守る境地にたどり着くには、まだ遠いです 私は東京大学に入るまでに三浪していて、大学に入ってからは四年留年しています。三浪四留、まだ誰にも負けたことはないです。 二浪した奴からは、「自分が、『人生、回り道した』などと言っていて、お恥ずかしい限りです。すいませんでした」と、謝られます。 ――三浪四留! 四留って、大学に在学できる、ギリギリラインなのでは? そうです(即答)。三留までは、自分の中で、「そこまでは自由にやろう」と計算して、映画や恋愛、落語など、思いっきり楽しんでいました。四留目は1単位のためだけに留年したんです。 ――なんか、すごいんですね…(絶句) 私だって、「褒められる側」に回ろうとしたこともあります。25、26歳の頃でしょうか、「遊ぶだけ遊んだので、そろそろ人がやれないくらい勉強しよう」と思って、いきなり十ヶ国語を勉強し始めたんです。そうしたら、2ヶ月くらいで調子が悪くなりました。 いまでいうところの、パニック障害のような症状が出たんです。ドキドキするからトイレに行って鏡を見てみたら、自分の顔が土気色になっていました。高校の同級生だった西郡(※)に「俺、本気でヤバイかも」と下宿先に来てもらって、二人で精神科医になりたての友だちに電話しました。そうしたら、そいつから「それは、心身症の一種だと思う」みたいなことを言われたんです。 そこから2年半~3年ぐらいは電車に乗れず、「すべてが怖い」という状態です。精神的に病んでしまった時は、人からの声かけや元気づけでどうにかなるほど甘くないんだ、ということを学びました。 精神的な病のことは、書きづらいこともあるかと思います。私のこの話、もしかしたらメディアに載るのは初めてなんじゃないかな? ただ、今の時期だからこそ、私は書いてもらった方が良いと思っているんです。元気なイメージが強い私でも、精神を病んでしまった経験はあるんです。だから、 すごく毎日を頑張っていても、ある日いきなり心が疲れ切ってしまうことは誰にでも起こりうる ことなんですよね。 ■「良いお母さんをやろう」と思うから、不幸せになる ――ママが精神的に、一杯一杯になってしまった時、どうしたら良いのでしょうか? そういう状態になってしまっている時は、自分しか見えていないんです。「私だけが、ダメなお母さんになっている」「私だけが、子どもが可愛くなくなってしまっている」みたいな…。 まず、強く言いたいことは、「それ、全然違います」ということです。そんなことは誰も思ってなくて、自分が思っているだけなんです。「良いお母さん像から離れてしまっいてる」「子どもを邪険に思ってしまっている」「自分がいけない」みたいなね。 それは、 「良いお母さん像」に引きづられてるだけ なんです。「一人になりたいから、子どもにあっちに行っててもらいたい」と思う自分がいても、全然、構わないと思うんです。 「良いお母さんをやろう」と思うから、不幸せになってしまうんです。自分は、自分でいればいいんです。良いお母さんである前に、「あなたは人として、自分を大切にできていますか?」と、まずは自分に聞いてあげて欲しいんです。 「まずは自分に聞いてあげて欲しい」という高濱先生の言葉に、緊張で張りつめていた心が、ふっと緩みます。そうか、そういうことをしても良いんですね。 次回に続く! ※西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 花まるグループ「西郡学習道場」代表を務める西郡さんは、高濱さんの高校の同級生。創成期から二人三脚でやってきた二人は、大学時代に一緒に牛乳配達をしながらひたすら哲学をした時期もあったそう。 ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは? 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 『情熱大陸』(毎日放送)など、数多くのテレビ番組や『AERA with Kids』(朝日新聞出版)などの雑誌にも登場。『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』(日本図書センター)など、著書多数。
2021年04月01日「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前」、そんな風に話すのは、花まる学習会の高濱先生。 ママは感染に気を使い、家で過ごすことが多い毎日のなか、家事や育児に日々頑張っています。でも口にはなかなか出せないけれど、「コロナ禍、そろそろ本当に疲れてきた…」そう思っている人も多いのではないでしょうか。 そこでこんな逆境の時代でもママが笑顔で暮らせるように、背中を押す言葉を花まる学習会の高濱先生にお聞きしました。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ■イライラするママが悪いわけではない ――コロナ禍でお疲れ気味のママたちに、高濱先生からメッセージをお願いします! コロナ禍で、夫婦のこと、子どものこと、この2つの問題で悩んでいる人は多いと思います。「潜在的な問題がコロナ禍で表面化した」などと言う人もいますが、あまり深刻に考える必要はないと思うんです。 人間は、距離が近くなりすぎると、相手に対して苛立ちの感情が出てくる「生き物」なんです。どんなに大切に思っていても、 一緒にいる時間が長くなれば、疲れが出て、イライラするのは当たり前 です。私は、自分の経験からそう考えるようになりました。 ――どんな経験なのでしょうか? 私が大学1年生の時のことです。仲が良かった友だち5人で、南アルプス登頂に挑戦しました。私だけ山登りの初心者で、他の4人は山登りの経験値が高かったせいもあり、「ついていけるかなぁ」と心配で、事前に山の専門家に注意点などを質問しに行きました。 専門家の方からは、「体力的な面では、高濱くんはずっと野球をやっていたから大丈夫だよ。でも、必ず喧嘩になるだろうから、そこだけは気をつけて!」と、言われたんです。そう言われても、「南アルプス登頂に挑戦しよう」と思うほど仲が良い仲間だっただけに、「喧嘩なんか絶対にしないのにな…」と不思議でした。 ところが、やっぱり喧嘩になったんです。人間は、長い時間、一緒にいることを強いられると、関係性が絶対におかしくなるものなんです。当時、私は日記をつけていたのですが、「俺のカレーだけ肉が少ない。他の奴には多めに肉をいれているのに、どうしてだ」とか、そのレベルで本気で苛立っているんです。 ――コロナ禍、ささいなことでイライラするのは、私だけではないと? そりゃ、そうですよ。母子の愛は崇高ですが、長い時間、一緒にいれば疲れます。そこで、「問題が表面化した」などと深刻になるより、「そういうものだから」と思っておいた方が、気が楽じゃないですか。 ――高濱先生に「そういうものだから」と言わると、何だかホッとします 何回でも言いますよ。あなたが悪いんじゃなくて、 「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前だ」 ということです。 そんなの、絶対に当たり前です。そもそも、「お母さんになる」ということだけでも、ものすごいパワーの要ることなんですよ。皆さん、突然「お母さんになる」わけでしょう? いままでとまったく違う状況に、突然、放り出される感じじゃないですか。不安になってあたり前だし、不安な自分を受容するにはパワーが必要なんです。 ■「行き詰まってしまうママ」には、特徴がある ――でも、先ほど、高濱先生は「母子の愛は崇高」と、おっしゃっていました お母さんが子どもを想う愛は、崇高だと思います。それは事実として、あります。一方で、「立派な母であろう!」みたいになると、あっという間に行き詰ってしまいますよね。じつはね、「行き詰まってしまうママ」というのは、特徴があるんです。 ――どんな特徴ですか? 人の評価を気にしたり、人と自分を比較したり…。とにかく 自分の意識が、「人の目」の方向にいってしまうと危ない です。もっとも、日本人の大半は、「人の目」の方向に意識がいってしまっているんです。それが、「日本の子どもたちの自己肯定感の低さ」に繋がっていると、私は考えています。 ――どうして人の目を気にすると自己肯定感が低くなるんですか? 人生は、 「自分で決めたこと」が、一番面白い んです。だから、もっとも大切にするべきは、「自分は、何に関心があるのか?」です。言い換えれば、「どれだけ、自分の心に焦点を当てることができるのか?」が、勝負なんです。 けれども、親は何かと口を出してしまいます。小さい頃から、「これをやれば、いい」とか、「この点数を取れば、合格できるよ」「ここの中学に行ったら、すごい」みたいな感じで、日本の子どもは、「外付けの価値」を与えられて育つことが多いんです。 本当は、その子は、「私は、消しゴムのカスを集めたかったんだ!」と思っているかもしれないですよね。はたから見たら、「ただのゴミじゃん」と、思われるようなものでも、「あなたたちはゴミと思うかもしれないけれども、私にとっては、これが大切なんです」という気持ちを持つことが大切なんです。 「自分が本当に関心を持っているもの」を見失わないでいられれば、人間は大丈夫 なんです。「自分が、何にワクワクするか?」を見失わずにいられれば、どんなことがおきたって、大したことではないんです。すべて、楽しいんです。 ――消しゴムのカス、ですか? 高濱先生節が炸裂していますね… 私は、もう、こういう子どものワクワクする価値観の大切さを話したいんです! たとえば、「友だちの夫はお金持ちなのに、うちの夫は出世しない」といったように、比較ばかりしてしまうからつらくなるんです。子どもたちも同様に「他者と比較して、自分はこうだ」とか、小さい頃から植え付けられて、それを価値基準に置いてしまう。 そうではなくて、「私は(僕は)、これをやりたいんだ!」ということを、繰り返して成長していかれれば、人間は幸せになれるものなんです。 子どもがワクワクしている「消しゴムのカス」に対して「そんなの集めていて、何になるの? そんな意味のないことをしていないで、勉強をしなさい」みたいに、 「親が、価値があるものだと思っているもの」を押し付けられるところから、子どもの自己肯定感の低さが生まれる と私は考えています。 もちろん、親の方にはまったく悪気がなくて、心の底から子どものためを思って言っているのはわかっていますよ。だからこそ、余計に危ない。親の価値観自体が、「外付けの枠組み」をもとにしてしまっているのです。 アイタタ! 高濱先生の言葉、思い当たりすぎて、胸が痛くなります…。でも、だからって、私はどうすればいいのでしょうか? 次回に続く! ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは?
2021年03月31日「家計をシンプルにする第1歩は、お金の流れをシンプルにすること」。そう言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 でも、そもそも、家計の把握の方法がわからない場合は、何から始めたらいいですか? 引き続きお話しを伺います。 この記事は、 「『コロナで家計がヤバい!』やりがちな失敗パターンと今やるべきこと」 なぜかお金が貯まらない…じつはお得だと思っていたものが元凶!? の続きです。 ■夫婦で「家庭」という会社を共同経営する ――家計の「お金の流れ」、なかなか把握ができないんです 皆さん、そうですよ。ただ、とくに共働きのご家庭は、忙しいから、それぞれの収入にノータッチになりがちゆえに、複雑になってしまいがちだという印象があります。 夫婦それぞれの入出金が不透明だと、家計が悪化しやすい傾向 があります。 ――共働きなのに、お金が貯まらない‥‥。それって、よくあることなんですか? そうそう(笑)。正直なところ、それはよくあります。そういう方たちに対して、僕は、「どちらか一人が黒字会計にしようとがんばるよりも、 二人で力をあわせれば圧倒的に効果がでやすい んです」とお伝えしています。 できれば、夫婦で「家庭」という会社を共同経営しているという感覚が持てるようになると良いですね。夫婦(家族)の家計づくりは、次のような手順で進めます。 ●夫婦(家族)の家計づくりの手順 1)お互いの収入を把握する 2)夫婦共通の口座から支払う支出、おこづかいから支払う支出を決める 3)毎月の夫婦の目標貯蓄額を決める 4)それぞれのおこづかいの予算額を決める 5)毎月の振り返りを一緒に行い、必要があればルールを調整する 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (出典:『横山先生ド素人の私にわかりやすく教えてください! これからの「お金」の貯め方&使い方) ■お金と上手につきあっていく、たった2つのポイント ――「夫とお金の話をする」というだけで、めちゃくちゃ、ハードルが高いです その気持ちも、よくわかります。でも、要は、次の2つができれば良いんです。この2つさえできていれば、お金を使いすぎて赤字会計に陥ることはありませんから。 1)今の状態を知る(現状把握) 2)収支のバランスを記録&チェック 「夫婦でお金の話し合いをするのは、ハードルが高い」と感じる人は、大切なことは先ほどの2つなんだという、ゴールのイメージを知ることから始めると良いかもしれませんね。 ●夫婦の家計づくり ■家計簿をつける上で、最も大切なこと ――そう言って頂けると、少し心が軽くなります… 家計簿も、難しく考えずに、「次の2つをするためのもの」と、ある意味、割り切ってみてはどうでしょう? 大切なことなので、何回も繰り繰り返しお伝えします。 1)今の状態を知る(現状把握) 2)収支のバランスを記録&チェック 家計簿の肝は、「ふりかえり」なんです。 家計簿が続かない理由として、「細かくつけようとして数字が合わない」とか「分類や記録の仕方がわからない」といった声をよく聞きます。 けれども、家計簿で大切なのは、「費目分けがきちんとしていること」でも「収支がきっちりとしていること」でもないんです。 家計簿は、自分のお金の現状を把握し、収支のバランスを記録&チェックするためのもの です。 ■「記録をつける」ということに労力を使わない工夫を! 僕が声を大にしてお伝えしたいのは、くれぐれも、家計簿の「記録をつける」ということに囚われない(労力を使わない)工夫をして欲しい! ということです。 そのためには、例えばスマホのアプリなどを活用するのも一つです。スマホには多くの家計簿アプリが存在します。そのなかには銀行口座やクレジットカードと連携することで、細かな記録をつけなくても自動管理してくれるものもあります。 家計簿の肝である「ふりかえり」に一番、労力が割けるように、「記録をつける」部分を楽にする方法を、自分なりに工夫をしてみる。その工夫をする試行錯誤にこそ、まずは労力を使って欲しいですね。 いかがでしたか? 筆者は、「このままでは、ヤバイ!」と思いつつ、なかなか着手できない3大項目のひとつが、「お金のこと」だと思っています(他の二つは、「ダイエット」と「お片付け」)。自分を上手にあやしながら、「お金のこと」と向き合うキッカケに本連載がなるとうれしいなと願っています。 最後に、横山さんから、皆さまにエールをいただきました! 「今回お伝えした事柄は、一見、地味に感じるかもしれません。でも、最初にお伝えしたとおり、普通の道を着実に歩いた方が、結局、挫折はしないから長続きするんです。 今、コロナ禍で不安に感じている人が多くいると思います。でもパパママ世代は、心配することはありません。今から、頑張れば大丈夫です! これらの方法を実践した人は、最初こそ『お金のことが苦手』だったかもしれませんが、いつしか『家計の達人』になりました。23,000万件以上の家計相談を受けてきた僕は、その事実を、皆さんに強くお伝えしたいのです」 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第3回まとめ 1)家計の再生は、夫婦二人で力をあわせれば圧倒的に効果がでやすい 2)家計簿の肝は、「ふりかえり」である 3)効果が出やすい見直し費目は、「携帯費」「交際費」「保険料」である ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。
2020年08月30日「貯まらない人の共通点は、『お金の流れ』がごちゃごちゃしていること。反対に言えば『家計の混乱』をうまくほどいて、シンプルにすることで、お金はきちんと貯められるようになるんです」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 そこで、『家計の混乱』をうまくほどいて、シンプルにする具体的な方法を、伺ってきました! 「『コロナで家計がヤバい!』やりがちな失敗パターンと今やるべきこと」 の続きです。 ■『家計の混乱』ほどき方その1、銀行口座を書き出す まず、最初にやっていただきたいのが、銀行口座の確認です。 お給料の入ってくる口座、貯金をしている口座、教育資金を貯めている口座、生活費などを支払っている口座、生命保険や自動車保険の支払い口座、住宅ローンの支払い口座、クレジットカードの引き落とし口座などなど、とにかく全部書き出してみます。 ――うっ! それを、全部やるんですか? いきなり、気分が萎えてしまいます ここは、がんばりどころです。自分を励ましながら、書き出してみましょう。全部書き出したら、次は、これらの口座を絞り込んでいきます。大切なのは、 「使う口座」を一つに絞り込む ことです。 人によっては、光熱費はA銀行で引き落とし、食費はB銀行から引き出して使う、クレジットカードの引き落としはC銀行というふうにあちこちの口座からお金が引き落とされ、何にいくら使ったのかよくわからないという状況に陥っています。 ――銀行口座を絞り込む基準は、何かありますか? 絞り込む基準は、「自分にとって使い勝手が良い金融機関かどうか」です。たとえば、「家や会社から近い」、「ネットでの口座管理がしやすい」というように、あくまで自分にとって便利な口座を選んでください。 ――なるほど! 「ただ数を減らせばいいというわけでもないんですよ。3つの袋(口座)の考え方をお忘れなく! すると、銀行口座は、次のように絞り込まれると思います。 ※3つの袋(口座)とは 家計を①使う袋、②貯める袋、③増やす袋で考えます。ポイントは、できるだけ『使う袋』の口座に、出費や引き落としを集結することです。 ●銀行口座の絞り込み着地点 1)お給料振り込み口座(共働きなら2口座) 2)使う口座(生活費やローンの支払い) ⇒ 毎月一定額を補充する 3)貯める口座(貯金用) ⇒ 毎月一定額を貯める 4)増やす口座(資産運用・証券口座) ⇒ 毎月一定額を運用する 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 ■『家計の混乱』ほどき方その2、クレジットカードの絞り込み ――銀行口座の絞り込みが終わったらどうすればいいですか? 銀行口座の絞り込みが終わったら、クレジットカードも絞り込みます。クレジットカードの複数持ちも、ごちゃごちゃ家計の元凶です。 クレジットカードは店頭での決済タイミングと、引き落としタイミングが約1ヶ月ズレるため、いつ、何に、いくら、支払うかが、とにかくあいまいになりがちです。 だからこそ、枚数はできるだけ絞り込んでください。 「カードは一人1枚のみ!」 と声を大にしていいたいくらいです。それくらい、家計の混乱を招くものなのです。 ――クレジットカードや電子マネーの選び方を教えてください! 「自分の生活圏だったら、どれが使いやすいか?」で、考えてみると良いですね。 たとえば、自分がよく行くスーパーと相性の良いクレジットカードや電子マネーってあると思うんです。そうなると、おのずと選ぶべきものは、決まってきます。あとは、お得に翻弄されないということも大切です。 ――ドキっ! お得に翻弄されない…。耳が、とても痛いです クレジットカードや電子マネーは、ポイントに目がくらんで、使おうとしないということです。あくまで、ポイントは、お金を使うからつくものであるので、お得ではない…。それくらいのシビアな気持ちを持っておいて欲しいと思います。 ■『家計の混乱』ほどき方その3、お金の出口を厳選する ――ここまでできたら、結構すごいこどだと思います 仕上げは、お金の出口を一本化することです。まず、日頃、お金をどんなことに使っているか思い浮かべてください。 次のように、ざっと思いつくだけでもずいぶんあると思うんです。これらの支払い方法は、現金だったり、口座引き落としだったり、クレジットカード払いだったり、現金で支払っていたりと、普通、バラバラですよね? ●「日頃、お金をどんなことに使っているかの例 生活費(水道光熱費、日用品、食費、被服費)、医療費、通信費、住宅ローン、保険料、教育費(学校教育費や保育料)、レジャー費(交際費や旅行費)、習い事代 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 ――あらためて考えてみると、たしかに、いろいろな方法で支払っていますねぇ~ ここも、絞り込んでいきます。「口座引き落とし」「クレジットカード払い」「現金払い」を、なるべく1つの方法にまとめます。 たとえば、光熱費や通信費をカード払いにしているのなら、それを先ほど選んだ、1枚のクレジットカードから引き落とすようにするんです。当然、口座引き落としもクレジット払いも、元となる口座は、1本目で絞りこんだ『使う口座』にします。 ――はぁ(溜息) やっぱりお金のことって、面倒ですね… 最初だけです。たしかに、おっしゃるとおり、ここでお伝えしたことは、面倒なことかもしれません。でも、最初だけなんです。 一度だけ、覚悟を決めて銀行口座やクレジットカードを整理 してしまえば、後は、そのまま使えます。 それに、振り返りもしやすくなります。口座引き落としは、通帳。クレジットカード払いは、使用明細にお金を使った記録が残りますからね。ここは踏ん張りどころと思って、トライしてみて欲しいですね。 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第2回まとめ 1)銀行口座やクレジットカード、電子マネーは、「自分にとって使い勝手」で絞り込む 2)ポイントに目が眩まないようにする 3)お金の出口を一本化するのは大変だが、大変なのは最初だけ 次回は、誰もが気になる「家計簿」について、横山先生にレクチャーしていただきます。 !--[ARTICLE-E1596790262201]--> ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。
2020年08月29日withコロナの生活が「日常」になって、「家計が厳しい!」と感じている人は多いのではないでしょうか? 「残業代が減るなど、月額1~3万円収入減のご家庭は珍しくないんです。そうなると、『ギリギリ何とか回っていた』『少しは貯蓄ができていた』というご家庭でも、俄然、厳しいと感じるようになっています」とおっしゃるのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■コロナ禍にあって、家計が心配な方へ 横山光昭さんは、こんなふうに言います。「私は、長年、赤字家計の悩みを解決し、黒字にすることを仕事にしてきました。やり方さえ理解すれば、誰でも 『家計の達人』になれる んです」 ――ええ! 本当ですか? ぜひ、そのやり方を教えてください! 承知しました。最初にお伝えしたいことは、 「まずは、落ち着こう!」 ということです(笑)。 「家計を何とかしないと、本当にヤバイ!」というような勢いがある時って、気分的には修行系、茨の道をガシガシと行きたい気分なんだと思うんです。けれども、普通の道を着実に歩いた方が、結局、挫折をしないので長続きするんです。 ■自分が使っている金額は、世の中の平均的か? ――そう言われても、気持ちばかりが焦るんです そんな人は、家計の現状把握から始めましょう。「家計が黒字なのか? 赤字なのか?」。そこまでは、何となく把握している人が多いんです。 けれども、その先になると、じつは、「何にいくら使っているのか? さっぱりわかりません」という人は、多いものです。 ましてや、 自分が使っている金額が平均的なのか? そして、家計全体から見て、 その割合が適正なのか? といったことになると、ほとんどの人が把握していません。 ――え? そうなんですか? これは そういう方を否定している訳ではないんです。まずは、「多くの人が、家計の現状把握ができていない」という事実を、皆さんに知って欲しいなと思ってお伝えしています。 でも、それって、ある意味、当然のことだとも思うんです。お金のことって、とてもセンシティブです。たとえ夫婦間や気のおけない友人に対してでさえも、細かい内容まで踏み込んで話す機会がないことの方が普通です。 そうなると、「自分のお金の使い方を客観的に眺めてみる」という経験や発想がないことの方が、当たり前だと感じます。 でも、たくさんの家計をみてきた僕から言わせてもらうのであれば、「がんばっているのになぜかお金が貯まらない、毎月赤字になってしまう」という方々には、やっぱり共通点があるんです。 ■赤字の「元」を根本から断つために必要なこと ――共通点!? それは、 「お金の流れ」がごちゃごちゃしている ことなんです。 生活費や水道光熱費、教育費、住宅ローンなどの支払い用の銀行口座が複数あり、いつ、どこの銀行から何円の支払いがあるか、ほとんど把握できていないご家庭がとても多いのです。 ――「それって、自分だけじゃないんだ」と、逆に、少しほっとしました そうなんです! 繰り返すようですが、「多くの人が、家計の現状把握ができていない」という事実を知るだけでも、皆さん、安心されます。それが家計と向き合う第1歩なんです。 ちなみに、ごちゃごちゃしているのは、支払い用の銀行口座だけではありません。貯蓄用の口座や資産運用のための口座が複数あったり、クレジットカードや電子マネーも、ポイントを貯めるために複数持っている人が多いですね。 ――だんだん耳が痛くなってきました… ひとつ言えることは、お金の出口が分散しすぎると、全体像が見えづらくなるということです。そうなると、家計は必ずと言っていいほど、うまく回りません。 でも、反対に言えば、複雑に絡み合った「家計の混乱」をうまくほどいて、シンプルにするだけで、お金はきちんと貯められるようになるんです。 ■家計は、「3つの袋」で考える ――シンプルにする…。それって、どういうことですか? 最初に、目標とするイメージをお伝えしますね。 考え方としては、次の図のように、家計を、「3つの袋」で考えます。ポイントは、できるだけ『使う袋』の口座に、出費や引き落としを集結することです。 ●「3つの袋」 ――なるほど 「家計を何とかしないと!」という今の焦りや勢いを、銀行口座やクレジットカードを整理することにぶつけてみてはどうでしょう? 最初はちょっと面倒ですが、一度やってしまえばあとは手間がかからないから、おすすめです。 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第1回まとめ 1)自分のお金の使い方が適正かどうか把握している人は、実は少ない 2)『家計の混乱』をほどいて、シンプルにすることで、お金はきちんと貯められる 3)家計は、「3つの袋」で考える。 次回は、銀行口座の統合や、クレジットカードの整理の手順を具体的にお伝えします。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説!
2020年08月28日2019年に話題となった公的年金の「2000万円足りない」問題。何となく気になっている人は、パパママ世代でも多いかもしれませんね。 お金の超プロフェッショナルである横山光昭さんは言います。「2000万円問題は、年金を自分事として考えるいいキッカケなんですよ」 この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 第2回「じつは『老後に2000万円必要』とは報告されてなかった!?」 第3回「老後資金『2000万円以上必要な人』と『2000万円かからない人』 の続きです。 ■今、私たちがやるべきこと2つ 本連載の 第2回 では、横山さんに年金を自分事として考えるために、今、私たちがやるべきことを、ポイントを2つに絞って教えてもらいました。 ●今、私たちがやるべきこと2つ 1)自分自身の年金受取額の見込みを把握すること 2)今とこれからの社会状況を認識した上で、『将来の自分の場合はどうなのか』を知っておくこと 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) ■自分自身の年金受取額の見込み額を把握するには? 今回は、自分の年金受取額の見込み額を把握するための方法からお伝えしましょう。みなさん、お誕生日月に「ねんきん定期便」が送られてきますよね。現役世代では、基本的に次の4パターンで郵送されてきます。 ●「ねんきん定期便」の郵送パターン 1)50歳未満の人(35歳、45歳の人を除く):ハガキ 2)35歳・45歳の人:封書 3)50歳以上の人:ハガキ 4)59歳の人:封書 筆者作成 大まかに言えば、50歳未満と50歳以上で「ねんきん定期便」の形式が違います。ここで、ひとつ問題点があります。それは、50歳未満の人の場合は、「ねんきん定期便」だけでは、将来の自分の受給予定額がいくらなのかが、わからないんです。 ■ねんきんネットは、ご存知ですか? 「自分の年金額を早めに把握しておくと、現在の生活費と老後を比較したときに、どれだけ足りそうか、足りなさそうかが推測しやすくなります」(横山さん) 筆者も、「将来の自分の年金額は早めに知っておくに越したことはない」と思っています。50歳未満の人が、将来の自分の年金を知りたい場合は、「ねんきんネット」を使いましょう。 ただ、「ねんきんネット」を見るためには、毎年のねんきん定期便についていくる「お客様のアクセスキー」や基礎年金番号での利用登録が必要です。利用登録をしてユーザーIDを取得すると、自分の年金の試算などができる仕組みになっています。ちなみに、アクセスキーの有効期間は、ねんきん定期便到着後3ヶ月間です。「毎年、お誕生日月に将来の年金額を試算してみる」など、自分の「年中行事」のひとつに組み込んでも良いですね。 ■年金事務所はご存知ですか? それでも、やはりわからないことはあるはずです。「年金全般に関する不明点があれば、直接近くの年金事務所に足を運んでみたり、ねんきんダイヤルに電話をかけて聞いてみることです。いずれにしても、みずから動いて聞きに行くことが大事です」(横山さん) ●ねんきんネット: ●全国の相談・手続き窓口: ●ねんきんダイヤル:0570-05-1165 ■繰り下げると受給率が増える老齢年金 ここまで読んで、「年金、やっぱり、面倒くさい」と、ちょっと憂鬱になってしまいましたか?(笑)。 では最後に、とても大切なことをお伝えして、本連載を終わりましょう。 年金は繰り下げると、受給率が高くなる 年金を「繰り下げる」とは、年金の受給開始年齢を遅らせることをいいます。次の表のとおり、1ヶ月繰り下げるごとに受給額が0.7%増える計算で、今は、70歳が後ろ倒しにできる最高齢です。 ちなみに、70歳から受給を開始すれば、増額率は42%! つまり142%の年金がもらえるんです。なかなか、すごいスゴイ数字だと思いませんか? ●老齢年金の繰り下げ受給の増額率 ■65歳までに1560万円を! そうは言っても、現状、多くの人の定年は、65歳。年金の繰り下げの恩恵を最大限に利用できる70歳まで年金を受給しないとなると、65~70歳の生活費を確保しておく必要があります。 たとえば、第2回でご紹介した 「金融審議会」 のモデル家計を例にとって、65歳~70歳の生活費を試算してみましょう。モデル家計の毎月の生活費は、26万円でしたから、これの5年分。具体的には、1,560万円です。 生活費月26万円×12ヶ月×5年=1560万円 一言で、「65歳までに1560万円を貯める」といっても、30歳、35歳、40歳では、老後までの持ち時間が違います。そうなれば、毎月の貯蓄目標額も違ってきます。残りの月数から逆算した、毎月の貯蓄目標額を表にしてみました。 ●スタート年齢から逆算する老後資金貯蓄額(1,560万円の場合) ■年金を自分事として考え始めることが大切 いかがでしょう? 具体的なベネフィット(それをやることで得られる未来)を知れば、自分年金について少しはヤル気が出てきませんか? こんなふうに、少しずつでも、年金に対しての知識を増やしていくことが、今は大切な時期なのだと筆者は思います。 私はマネー記事の取材を通じて、日本の年金制度は、「最低限の生活保障」というカタチになっていくと予測しています。NISAのモデルとなったイギリス、iDeCoのモデルとなったアメリカ、両国ともに年金の自助努力を促すために税制優遇制度を作り、年金は「最低限の生活保障」という位置づけです。NISAやiDeCoが「輸入」されてきたのですから、日本の年金政策はイギリスやアメリカと同じ方向に舵を切っていると考えるのが自然でしょう。 老後までの時間が、まだある今だからこそ、「自分らしい老後」を送るために、年金に対して学び始めること。それは、ライフデザインも含めて、「未来の自分」について考えることでもあると思います。 ●「老後までに2000万円貯められる?」第4回のまとめ 1)「ねんきんネット」の利用登録をして将来の年金額を試算してみる 2)年金の「繰り下げ」を知る 3)まずは、65歳までに1,560万円を貯金しよう ※本連載で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月18日「『老後2000万円問題』で不安や疑問を覚えた今こそ、年金について学び始めるチャンスです」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。 学び始めると言われても、何をどうやって考え始めればいいの? 最初の1歩がわかりません!! そんな人のために、「2000万円より必要な人、少なくて済む人」の具体例を教えてもらいました。 この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 第2回「じつは『老後に2000万円必要』とは報告されてなかった!?」 の続きです。 ■そもそも「2000万円が不足」って、何? 前回の記事で、 「2000万円問題は、ある一組の夫婦の資産の(例)にすぎない」 と、書きました。(例)となっている家計は、下記です。ポイントを3つあげておきましょう。 ●「2000万円問題」のモデルとなった家計のポイント3つ 1)夫が65歳以上で妻も60歳以上。二人とも無職 2)年金収入が約21万円なのに対し、支出は約26万円 3)月額5万円の赤字が出る 筆者作成 家計の内訳は、次のとおりです。ご自身の家計と比べてみて、いかがですか? たとえば、この家計の住居費は、月額13,656円です。この金額ですと「家賃」というよりは、「持ち家でローンは完済。固定資産税などを月額割にした数字」なのではないでしょうか? ■「どんな生活をしたいか?」で必要な金額は変わる こんなふうに、モデルとなった家計と、「わが家の家計」を照らし合わせてみる作業を、まず始めてみると良いと思います。その上で、「では、自分自身の老後をどんなふうにしたいか?」を、考え始めてみましょう。 「まずは自分の老後のビジョンを決めることから始めましょう。そうでないと老後の必要額はわかりません」(横山さん) そう言われても、多くの人は「心配のない老後にしたい」というくらいしか、イメージが沸かないかもしれませんね…。 そこで、23,000件以上の家計をみてきた、家計のプロ横山さんの出番です! 今回は、「2000万円」を基準にして、2000万円以上老後資金が必要な人、2000万円までなくても大丈夫な人の、「ありがちな収支パターン」を教えていただきました。 ●ありがちな収支パターン4例 1) Aさん:2000万円では全然たりない人 2) Bさん:2000万円までなくても足りる人 3) Cさん:年金のみでもいける人 4) Dさん:Aさんのバージョン違いの「2000万円ではたりない人」 ※Dさんは、わりとよくみられるパターンだそうです。 ここで、今回の「試算の条件」のポイント整理しておきましょう ●今回試算条件 1)「将来の収支予想の収入」は年金のみの収入で、年金のみで生活した場合 2)年金受給額は、今後の加入状況や収入の状況を予測した概算 3)予備費用は、リフォーム、介護、病気、旅行費用に充てるための金額 筆者作成 ▼パターン1)Aさん 2000万円では全然たりない人 【診断】 高支出メタボ家計 Aさんは、こんな人 → ちょっといいもの症候群 Aさんは、現役時代の年収が1100万円と非常に高いので、いわば「ちょっといいもの症候群」です。 消費では、「ちょっといいもの」を選びがちなので、生活コストがかかります。また、資産形成は、「賢くできるはず!」という気持ちで堅実路線とは言い難いチョイスをしていますが、思うような結果は得られていません。 ▼パターン2)Bさん 2000万円までなくても足りる人 【診断】 無駄のない節約家計 Bさんは、こんな人 → 堅実な生活者 Bさんの現役時代の年収は500万円で、「堅実な生活者」です。 そもそも、現役時代に使えるお金が特別高いわけではないので、消費は、「地に足がついた感じ」です。普通の収入なので、生活もごく質素です。もっとも「質素」と「貧乏くさい感じ」は、まったく違います。家計の収支について、きちんと考えています。 ▼パターン3)Cさん 年金のみでもいける人 【診断】 年金を貯蓄に回せる理想家計 Cさんは、こんな人 → 老後は実家の田舎で暮らす予定の人 Cさんの現役時代の年収は、600万円。老後は実家に戻って田舎暮らしを始める可能性があるそうです。住宅ローンは返済中ですが、これを完済して持ち家を売れば、1000万円くらいの資産になるかもしれません。 田舎に戻ったあとは、親と変わらない近所付き合いをし、食材はもらったり安く買えたりしそうなので、生活コストは低そうです。 ▼パターン4)Dさん 2000万円より多く必要な人人 【診断】 賃貸住宅が老後にも響く赤字家計 Dさんは、こんな人 → 「老後の家賃」が厳しいタイプ Dさんの現役時代の年収は、700万円。比較的慎重派で、何千万もの住宅ローンを組んで持ち家にすることは考えていません。家は必ず買わなくてはいけないというものではありませんが、老後の限られた収入の中でやりくりするときには、家賃は、かなり負担の大きな支出となります。 あなたの家計は、どのパターンが近かったですか? この記事をキッカケにして、老後というのは、「どこかの国の誰かの話」ではなく、「今日の私の地続きにある話」というイメージを持つことが、年金を自分事として考える第1歩なのだと筆者は考えます。 ■老後対策の柱は、3つ 「老後生活を送っている自分」のイメージが持てるようになると、ようやく自分年金づくりのスタートラインに立ったということなのだと思います。では、スタートラインに立ったら、何から始めれば良いのでしょうか? 横山さんは、言います。「老後対策は、総じていえば、次の3つのアプローチから手をつけていくと、良いでしょう」 ●老後対策の柱3つ 1)年金以外の収入の道を探る 2)支出は現役世代のうちからコントロールする習慣をつける 3)運用もできるだけ早いうちから始める 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) ●「老後までに2000万円貯められる?」第3回のまとめ 1)「2000万円問題」のモデルケースを知り、自分の家計と比べてみる 2)老後は、「今日の私の地続きにある話」である 3)「老後対策の柱3つ」を知っておく 次回は、いよいよ「自分年金の作り方」について、具体的に考えてみます。 ※本連載で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月17日2019年は、公的年金だけでは 「2000万円足りない」 問題が注目されたことにより、「老後について、本気でどうにかしなきゃ!」と、危機感を感じた人も少なくなかったのかもしれません。 「老後に2000万円足りないって、本当?」お金の超プロフェッショナルである 横山光昭さん にお話しを伺ってきました! この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 の続きです。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■老後2000万円足りなくなるって、本当? 取材の冒頭、「老後資金が、2000万円足りないって、本当ですか?」という、素朴な疑問を横山さんにぶつけてみました。 横山さん曰く、「結論から言えば、ウーマンエキサイトのパパママ世代の方は今から、『自分の場合は?』と、 年金を自分事として考え始めれば大丈夫です 」とのこと。 ほッ! 良かった! では、年金を自分事と考え始めるためには、何が必要なのでしょうか? いわゆる 「老後2000万円問題」の整理 から始めましょう。 コトの発端は、6月上旬に公表された金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書です。全51ページの、たった一文(太線部分)だけが切り取られ、大騒ぎになりました。 ●金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 年金だけが収入源となる無職のある高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)。夫婦の 年金収入が約21万円 なのに対して、 支出は約26万円 かかっています。 その収入と支出の差となる 不足額が毎月5万円 。 これが20年間続くとすると、 30年間で約2000万円が必要になる という試算です。 参考文献: 金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 (全51ページの21ページ目) ■「絶対に2000万円が必要だ」などとは書いていない 報告書は、ネット上で誰でも目をとおすことができます。「私も報告書が公表されてすぐに目をとおしましたが、あの報告書では、 『老後の生活に、絶対に2000万円が必要だ』 とは書かれていません。紹介されていたのは、ある平均的な夫婦の老後の資産(例)です」(横山さん) 「ある平均的な夫婦の老後の試算(例)」についての解説は次回行うとして、ここでは、この報告書のポイントを整理しておきます。とても大切な報告書なので。 ●ウーマンエキサイト世代のパパママが知っておくべき3つのポイント 1)長寿化はこれからどんどん進んでいく。 2)充実した人生を送るためには年金だけでは足りない。 3)自分事として準備しましょうと「自助努力」を促す。 筆者作成 ところで。皆さんは自分の年金について、 「いつから」「どのくらい」 もらえるのか知っていますか? 年金について、今、何か準備していることはあるのでしょうか? 「自分の年金について考えたことのなかった方、これまで誤った情報に惑わされていた方に、この連載を通じてメッセージをお伝えしたいと思っています」(横山さん) ■キーワードは、「人生100年時代」 年金の問題を考える時、キーワードは、 「人生100年時代」 です。今では当たり前のように使われている「人生100年時代」というフレーズですが、そのキッカケは、『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社刊)という本がよく売れたことにあります。 この本の初版は、2016年10月なので、約3年前、にわかに「人生が100年になった」=「長寿化が現実味を帯びた」といったイメージでしょうか。 『LIFE SHIFT』の中では、「人生の組み立て方が、今までとは違ってくる」と提言されています。端的に言えば、「教育→仕事→引退」という三つのステージで人生を考えるのは、長寿社会では無理だということなんです。 100年という時間を、自分らしく生ききるためには、「学び直し」をしたり、「複数の仕事を同時に持つ」など、これまでの違う考え方で、人生を捉えていく必要があるとされています。 ■年金だけで暮らせる人は1割 私たちの親世代は、「教育→仕事→引退」というライフステージを送り、仕事を引退した後は年金だけで暮らしている人も多いでしょう。けれども、私たちが仕事を引退する頃は、高齢化が進んでいます…。 「端的に言っておきましょう。これからの日本では、 年金だけではほとんどの人は暮らしていけません 。ほとんどいうのは全体の8~9割くらいの人です」(横山さん) つまり、年金だけで暮らせる人は1割。「老後は年金があるから何とかなるだろう」という発想があるとしたら、それ自体、今の現役世代にとっては現実的ではないのです。「この記事をキッカケにして、ぜひ、その考え方から離れて欲しいと思います」(横山さん) ■老後に向けて、今、私たちがやるべきこと2つ では、どうしたら良いのでしょうか? 横山さんより、私たちがやるべきことをポイントを絞って2つ教えてもらいました。 ●今、私たちがやるべきこと2つ 1)自分自身の年金受取額の見込みを把握すること 2)今とこれからの社会状況を認識した上で、『将来の自分の場合はどうなのか』を知っておくこと 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) 1)の自分自身の年金受取額の見込みを把握する方法については、今後詳しく説明します。まずは、上記の2つをクリアした上で、「自分は将来どういったライフスタイルを目指すのか?」を考え、「そのためには、どうしていけばいいのか?」を、各人が探っていく必要がありそうです。 「人に勧められるままに内容を理解せず投資をしたり、極端な節約生活を続けていくのは老後の生活が危ういだけでなく、長続きしません」(横山さん) ●「老後までに2000万円貯められる?」第2回のまとめ 1)「老後資金2000万円問題」、年金を自分事として考えるキッカケにする 2)「人生100年時代」は、今までとは違った生き方をしていく必要がある 3)「今、私たちがやるべきこと2つ」を知っておく 次回は、年金を自分事として感じられるよう「2000万円より必要な人、少なくて済む人」について、具体的に考えてみます。 ※本特集で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 <参考サイト> 金融庁: 金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 リンダ グラットン (著), アンドリュー スコット (著), 池村 千秋 (翻訳) ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月16日■「老後2000万円問題」は老後が不安になっただけ? こんにちは! ライターの楢戸ひかるです。私は20年ほどマネー記事を書いていますが、昨年の 「老後2000万円問題」 は、マネー史に残る、インパクトのある「事件」だったと思っています。 ママの毎日は、忙しい! いっぱいいっぱいの毎日のなかで、とてもじゃないけれど、老後のことなんて考えられませんよね? それなのに、不安だけ、ポトリと滴のように落とされてしまった……。 私個人の感想としては、多くのママにとって、2000万円問題が、 「ただ、老後のことが不安になっただけ」 なことが、すごく残念です。 ■老後資金、「知らないから不安」を払拭するには まずは、 「知らないから不安」 にエネルギーを奪われないよう、必要な情報を知ることから始めてみませんか? 「知っておく」こと、老後に対してのひとつの有効な備えだと私は思っています。 「老後2000万円問題」については、 ァイナンシャルプランナーの横山光昭先生 に取材させていただき、詳しい解説をこの後の記事で行っていきます。 記事を読んでいただければわかりますが、2000万円問題は、いいキッカケだと思うのです。そういう意味で、一般の人が話題にするレベルまで反響があった、この「事件」を、無駄にしたくないと思いました。 ■老後資金貯める余裕がないのに、不安がない理由 私自身、今、老後資金を貯める余裕は、ほとんどありません。高校生2人、大学生1人の息子の教育費がピークだからです。けれども、「老後が不安だから、お金を貯めなきゃ!」といった感じの漠然とした不安は、それほどないです。 なぜ、漠然とした不安がないのか? それは、「知っている」からです。私が何を知っているのか、書き出してみますね。 ●「老後の漠然とした不安がない」 私が知っていること 1)1ヶ月いくらあれば、足りるのか? 具体的な毎月の生活コストを把握している 2)家電の買い替えやリフォームなど、大まかな生活サイクルと必要額を把握している 3)わが家が、いつから老後資金を貯められる家計なのか? ライフプランニング表を書いて、予測がついている 4)取材を通じて、「介護」や「老齢期の医療」のイメージを持てるようになりつつある 5)投資を経験したことがあり、自分なりの投資方針がある こんなところでしょうか? 情報は力です。 30代、40代は、住宅ローンや教育費負担が重い時期。「老後資金を余裕を持って貯めています」というご家庭の方が少ないのでは? と感じます。 「知らないから不安」ということ、結構あると思うのです。それだったら、漠然とした不安にシャドーボクシングをしているよりも、具体的に考えてみませんか? ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月15日cakes史上、最も読まれた連載が書籍化されました! ガンを宣告された写真家・幡野広志さんによる人生相談です。幡野さんのところには、なぜか多くの人からありとあらゆる人生相談が集まるのですが「悩み相談を受ける中で、親子や家族関係で、悩んでいる人が多い」とのこと。 「親子関係」は、人間関係の原点で悩みも深いテーマなのかもしれません……。 親子の「距離感」は難しい 幡野広志さん(以下、幡野) :本のタイトルにもしましたが、人生の悩みを『なんで僕に聞くんだろう』とずっと思ってました。おそらく、相談者の方は「親に相談できる」という選択肢や人間関係を持てていないのかなぁ…と。自分の親に相談しても、納得のいく答えが出ないと思っているんでしょうね。 編集部(以後、―)自分が母親になってみると、耳が痛い話です。 幡野 :多くのお母さんの子どもに対しての距離感、僕は「不思議だなあ」と、感じます。少し距離をとっているお父さんのことをdisっちゃったりして。 ― 夫が、自分と同じくらい子育てに「一生懸命」でないのが腹立たしくなるんですよね… 幡野 :子どもからすれば、お父さんまで、お母さんと同じ距離感になってしまったら、逃げ場がなくなってしまいます。あまりよくないと思います。 ― 母親にとっては、「自分」と「子ども」の精神的な線引きが、難しいのかもしれません。 幡野 : 子育て以外に何かアイデンティティを持ってないと危ない ですよ。子どもが生まれると、自分の仕事や趣味を諦めてしまう人は多いですが、僕は逆じゃないのか? と、思うんです。子どもができた人ほど、色々なことをやってみるべきだと思います。ストーカーみたいな親にならないためにもね(笑)。 ― 子育て以外のことをしていい…。なかなか、そうは思えない人が多いように思います。 幡野 :とりわけお母さんと息子のパターンは、恋愛にかなり似たようなものを感じます。下手な恋愛みたいになっている親子を見てると、逃げられない子どもは可哀想だと思います。恋愛上手な人って、恋人との距離感の取り方が上手だと思います。 ― 子どもとの距離感について、幡野さんはどう考えてますか? 幡野 :今、僕の子どもは3歳ですけど、とても魅力的な存在です。子どもが生まれて、子どものことが何よりも大事になるのはわかります。あそこまで純粋無垢に自分のことを大好き!と言ってくれる存在は、他にはいませんから。「ママ大好き! パパ大好き!」という「大好きでいてもらえること」が嬉しくて、それに依存してしまうんでしょうね。 ―親が「子どもという存在」に依存してしまう…。わかります。 幡野 :でも、子どもが、大きくなれば親がどういう人間なのかというのはバレます。いずれ、こう、何というか……例えば依存が強い親だったら そういう人間だってことが子どもにバレちゃう んです。 僕だって、子どものころは「大人は立派で偉い人」と思っていた時期もありました。でも、大人が立派なわけではなくて、立派な人もそうでもない人がいることが自分が大人になるとわかりますよね。僕が子どもの頃、偉ぶっていた学校の先生がいましたけれど、今考えると大したことなかったと思います。いずれバレるんだから、あんまり子どもに偉そうな態度はしないほうがいいんじゃないかなと僕は思っちゃいます。 力の弱い人間に対して、どんな態度をとるかで人間性は出る ー著書の中で、「力の弱い人間に対して、どんな態度をとるかで人間性が出る」と。 幡野 :すごく出ると思います。これは、子どもに対しての話だけでもなく、たとえば、会社の後輩や、弱い立場の人に対する態度で人柄ってわかると思います。もちろん、これは男性だけでなく、女性も一緒です。 ― 反省しかないです…。家庭という密室の中で、どうしても子どもに対してイライラをぶつけてしまうことがあって…たとえば、出ないといけない時間なのに子どもがダラダラしている…とか、そういう些細なことなのですが。 幡野 :でも、子どもは、そういうもんなんじゃないですか? 僕は36歳で、もう36年も人間をやっているから、ある程度のことはできます。でも、3歳の息子は、地球に来て3年ですから。まだ新人ですよ。そんな人に怒ってもしょうがないかな~、と僕は思うんです。怒って子どもが成長するのだったら話は別ですけど、怒ったところであまり効果はないと思うので。 ― 怒っても何もいいことないのは、頭ではわかっています。でも、毎日の生活の中で、子どもと接していると、合理的な判断ができなくなってしまう瞬間もあって… 幡野 :そりゃそうですよね。その感じもわかります。お母さんの中には、完璧を求めている人が、多くいる気がします。無意識に「絵に描いたような家庭」や「良妻賢母なみたい自分」を目指してしまっているんだと思います。そんな「絵に描いた餅」を目指したって、無理なんじゃないですか? ― どうして、母親は「「絵に描いた餅」を目指してしまうのでしょうね? 幡野 :う〜ん…人の目を気にしているからじゃないですか? 僕は、人の目を全く気にしないから、あまり子どもに怒らないんだと思うんです。たとえば、「オムツが早くとれることは、良いことだ」と、思っていませんか? 無理にオムツを取ろうとして、それでおもらしをして子どもにイライラして、ストレス抱えるぐらいなら、オムツが自然に取れるのを待てばいいんじゃないかなと思います。きっと、「他の子よりも早くオムツがとれる」とか「喋り出すのが早い」とか「立つのが早い」とか……。 無意識に他の子と比較しちゃう んでしょうね。次は、学校の成績や習い事の上手い下手、進学先や就職先、結婚相手……と比較ばかりしていると、その先にあるのは 「自分のことを他の誰かと比較する人間」のできあがり ですよ。 ―幡野さんは、比較とは無縁そうですね…(笑) 幡野 :僕自身、誰かと比べられるのが嫌いなので、自分の子どもを他の子どもと比較するなんて絶対に嫌です。妻の実家に行くと、「早くオムツ取れるといいわね」と言われるんですけれど、「関係ねえよ」と、僕は大きい声で言っちゃいます。 人は比較する生き物だというのはわかっているんですが、あまり巻き込まれたくないので、面倒くさい人に釘を打つのは、大事な仕事かなぁと。 僕は、1人の子どもを夫婦2人で育てていて、かなりギリギリだと感じています。これは僕もやってみてわかったことです。もし、ワンオペでやらざるをえないんだったら、よっぽど他の部分を切り捨てないと無理です。家事なんか、無理。バッサリと割り切って、合理的にやっていかないと難しいと思います。 ― ワンオペ育児でも「家事をきちんとやらないと」と思う人は多いですよね…。 幡野 :毎日の食事を自分で作らなければいけないと思っている人は多いですが、「そんなにがんばらなくていいんじゃないかな?」と、思います。もちろん好きで楽しんで食事を作ってる人はいいのですが、うちはかなりウーバーイーツに頼っています。子育てという、あんな大変な仕事を、1人でなんて、絶対に無理です。何度も言いますが、ウチは1人の子どもを夫婦2人で育てていてギリギリです。 子どもが泣き止まない。僕はそんな時、音楽を聴いている ― 幡野さんみたいに、「合理的」+「人と比べない」だと、だいぶ楽になれそうです 幡野 :そうですよ。 人の目を気にするより、自分の子どもからの目を気にした方がいい ですよ。僕は、子どもが泣き止まないとき、イヤホンをつけて音楽を聴くこともあります。「泣き声」でイライラするくらいだったら、イヤホンをつけて自分の好きな音楽を聴いていた方がいいじゃないですか。 ―泣き声は、自分が責められている気がしてしまうんですよね 幡野 :泣き声は生理的に不快だから、ですよね。それだったら僕は自分が耳栓をしたり、イヤホンで音楽を聴いて自分の気持ちを落ち着けてから子どもの対応したほうがいいと思うんです。「子どもが泣いているのにイヤホンで音楽を聴いているなんて、何て、ひどい人!」と言う人もいると思いますが、僕は「合理性に欠けるな」と、思っちゃいます。楽するところと、がんばるところを分けて考えればいいのに。 親の方が立場が強い期間なんて一瞬 ― 楽をしていいところを見極める……。そういう「境地」になかなかたどり着けないです 幡野 :まず、人のことを気にするのをやめたらいいと思うんですよね。周りの人のことより、自分と自分の子どものことを気にした方がいい。あとね、最終的に「子どもの評価」を「自分の評価」にすり替えちゃう人がいるんです。 ― 子どもは、自分とは切り離して考えた方がいい? 幡野 :そりゃそうですよ。想像するのが難しければ、「先輩」「後輩」ぐらいの関係性で考えてみたら、どうでしょう。 自分が何もできない新人の時に、「ガミガミ怒る先輩」と、「優しくいつも待って教えてくれた先輩」、どちらに信頼を置きますか? おそらく、感情的に「ガミガミ怒る先輩」を尊敬することって難しいですよね。それは親子関係でも、同じだと思います。今、子どもは自分よりも弱い存在ですが、15年ぐらいで抜かれますから。親がよっぽど成長する人でない限り、そのうち絶対に抜かれます。親の方が立場が強い期間なんて人生で圧倒的に一瞬ということを意識した方がいいと思います。 幼少期は、自分と子どもの信頼関係を積み重ねる時期 ― 著書の中の「言葉で人の歩みを止めることも、背中を押すこともできるならば、できるかぎりぼくは背中を押す人でありたい」という言葉が印象に残りました。子どもの背中を押すことができるママになるために、どうすればいいですか? 幡野 :子どものことを、否定しないことじゃないですか? たとえば、うちの息子がyoutubeを見て「これ、欲しい」と言った時、僕はいつも「いいね! 今度、探しにいこうか」と、言うんです。3歳の子どもが「これ、欲しい」というのは、少し噛み砕けば、「これ、いいな」ということでしょう? それを、大人の都合で「いらない」とか「すぐ飽きちゃうよ」と決めつけるのは、子どもの感情の否定だと思うんです。買う、買わないは、別の話として、「いいね! 今度、探しにいこうか」って言えばいいと思うんです。 ―どうして、幡野さんは、そういうセリフがサラっと出てくるのでしょうか? 幡野 :そうだなぁ、そうですね……。いずれ評価をするのは、子どもだと思ってるからですかね。最後は自分の人間性が子どもにバレるんです。だから僕は子どもに自分の価値観をできるだけ押しつけないようにしています。幼少期は 自分と子どもの信頼関係を積み重ねる時期 なんだと僕は思ってるんです。 幡野さんの人生相談が人気の理由 詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、恋愛相談から家族のこと、病気の悩みなど多種多様な人生相談に幡野さんが答えています。 「家庭のある人の子どもを産みたい」「娘がイジメられていて自殺を考えている」「2歳半の息子の子育てがツラい」「娘が非行にはしった」「中2の息子の成績が悪い」「友人と同じ人を好きになった」「夫の浮気が判明し、自分の病気も発覚した」 ヘビーな相談も多いのですが、幡野さんは、子どもや立場の弱い人に徹底的に寄り添いつつ、合理的――そして、問題の本質をさらっと見抜きつつ 本音で生きることの大切さ を伝えてくれます。 合理的で優しい…このバランスの絶妙さ が幡野さんが人気の秘密だと思いました。 …本の帯には「言葉で人の歩みを止めることを、背中を押すこともできるならば、できるかぎりぼくは背中を押す人でありたい」と書かれています。幡野さんが誰かの背中を優しく(時に強く)押している言葉をぜひ読んでみてください。子どもとの関係に役立つ言葉はもちろん、人生のヒントがたくさん散りばめられています。 ガンになった写真家に なぜかみんな、 人生相談をした。 Amazonで詳細を見る 『なんで僕に聞くんだろう。』 幡野広志著/幻冬舎刊 定価(本体1500円+税)
2020年02月26日自分が親になってみると、乗り越えたはずの「幼少期の辛い記憶」がよみがえる…。そんな人は、案外多いようです。 親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない! 虐待の世代間連鎖を防ぐために、私たちができることは? 母子論の第一人者であるカウンセラーの信田さよ子先生が、豊富なカウンセリング経験から導き出した初の子育て論を出版されたので、お話しを伺いました。 この記事は、 「『親にされたことを、わが子にしたくない』そんなママに限界がきたら…」 「子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?」 の続きです。 ■虐待の世代間連鎖を防ぐ二つのキーワード ―「親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない!」と思う人は多いようです。 信田:日本には、虐待にかかわる広範な職種の人たちにより構成された「日本子ども虐待防止学会」という学会があり、そこでは世代間連鎖に関する研究がいくつも発表されています。それらの研究から浮かびあがる重要なキーワードは、2つあります。ひとつは、 「アタッチメント」 、もうひとつは 「感覚否定」 です。 ―「アタッチメント」とは、何ですか? 信田:アタッチメントは、子どもが不安を感じたときに、養育者にくっつくことで安心感を回復するシステムです。ここで注意したいのは、アタッチメントは「愛情」を表しているのではなく、むしろ 危機的場面を切り抜けるために必要な「安心感」 を表しているという点です。 つまり、アタッチメントは「親から子どもに与えるもの」(愛情)ではなく、 「子どもの側が親に求めるもの」 (安心感)なんです。 ■子どもが親に求めているものとは? ―なるほど。 信田:アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すると、満2歳ごろから、自分と他者との関係性について、心の中のイメージが構成されるようになります。これを「内的作業モデル(Internal Working Model)」と呼びます。 アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すれば、 「自分の感覚は世界から受容されるはずだ」 「他者は自分に安心感を与えてくれる」という信頼感が育ち、子どもの心の中には、世界とは、他者とはそのようなものである、というイメージが形成されていきます。 ―そのイメージ、とても大切ですね。 信田:けれども、全員が全員、アタッチメントのシステムがうまく形成されるとは限りません。安心できる定点のようなものがどこにもなかったとしても、子どもたちは成長せざるをえませんから。そうなると、親子関係、対人関係におけるさまざまな特徴が生まれることになるんです。 ―どんな特徴があるのでしょうか? 信田:たとえば、ほんとうはケアを求めているのに、わざと求めなかったり、ケアなんか必要ないという態度をとったりします。危険な行動を起こしたり、相手を攻撃したりすることで、ケアを求めていることをわかってもらおうとすることもあります。時には、反対に相手をケアする側に回ったりします。 それらは、たいてい周囲の大人から「本人の個性」「性格」「遺伝」とされがちですし、本人たちもそう思い、成長し、結婚し、やがて親となる時を迎えます。アタッチメントがどのように形成されているかを、多くの人は自覚することはありません。目にはみえませんし、自分はそういう人間だと思っているからです。 ■子どもの「不快」を受け止められない親 ―「アタッチメント」という概念、とても重要性ですね。では「感覚否定」とは、何ですか? 信田:子育てで最初に直面するのが、 「子どもの泣き声」 です。 育児に対して困難な気持ちを抱える女性たちのカウンセリングにかかわった経験がありますが、深刻な虐待をくりかえす女性も少なくありませんでした。 「子どもが泣くと不安や憎しみが沸く」「いらいらしたり、何ともいえない気持ちになったりする」「心臓がどきどきしたり、呼吸が荒くなったりする」……。これらは育児ノイローゼとかたづけられがちですが、彼女たちの反応をもっと深くとらえる必要があります。 これらの反応は、 「子どもが泣く」という負の情動 に対して、 母親も負の反応を生じてしまう ことを表しているんです。 「どうしたの、よしよし」と抱っこする以前に、負の情動を示す子どもに対して母親の身体レベルでの拒絶が起き、結果的に 子どもの負の情動を拒否してしまう 。この拒否が、感覚否定です。 ―母親として、「子どもの負の情動を受け止めることができない」ということですか? 信田:自分自身が負の情動を受け止められたという経験がない、負の情動を生み出す感覚が否定されてきたことが、泣く子どもへの身体レベルでの拒否感を生み出していると考えられます。子育てという事態に直面したとき、アタッチメントの課題が「感覚否定」という問題となって再浮上するのです。 ―「アタッチメント」と「感覚否定」、そんな因果関係があるのですね。 信田:子どもの泣き声は、不快だったり、苦痛だったりするので生じる声です。それらが親から否定されたり、親から攻撃されたらどうなるでしょう? アタッチメントという言葉を用いれば、親の感覚否定こそが、アタッチメントが形成されることの最大の妨げとなっているとも言えます。 不快で泣くしかできない子どもが、それを拒絶される ということは、感情・情緒を受け止めてもらえないというより、もっと身体感覚に近いものがあるでしょう。 ■子どもが泣いた時、自分に課すべきこと ―母親として、そのような状態になってしまう場合は、どうしたら良いのでしょうか? 信田:子育て中のママには、 「子どもが泣いたら、とにかく『よしよし』と口に出すこと」 と、お伝えしています。 「よしよし」というのはあやす言葉ですが、「良し」という肯定も表しているんです。とにかく「よしよし」とつぶやくことを、自分に課す。それが条件反射になるくらい、毎日練習してみる。 「自分はそんなふうに言ってもらったことがない」と、気づく人もいるでしょう。それはとても重要な気づきだと言えます。そして、「私は未経験のことをやろうとしている。何てすごいんだろう」と、 「よしよし」に取り組む自分をほめてあげましょう 。 ひとりでぶつぶつ、「よしよし」という練習をする、このような練習をして、それを習慣化していく方法を「行動療法」と言います。理由はなんであれ、とにかく行動する、それを習慣化させることが大切なのです。 ―なかなか、厳しいですね。まるで修行のようです。 信田:子育ては、修行という部分もありますよね。もう少し子どもの年齢があがれば、「いやだ」「お腹がすいた」ということもあるでしょう。転べば「痛い!」と言うでしょう。 そんなとき、「いやじゃないの」「お腹なんて空いてないの」「痛くない!」と、言わないで欲しいのです。それこそが、感覚否定ですから。「痛い!」と、子どもが言えば「痛いのね」と復唱する。共感できなくても腹がたっても、とにかく 子どもの言葉を「復唱」する のです。 なぜなら、感情がこもっていなくても、どこか機械的であったとしても、否定するより、はるかにましだからです。「痛くないでしょ!」が感覚否定であるのに対して、「痛いの痛いの飛んでけ」は感覚肯定になります。このような伝承された言葉遣いには、感覚否定をしない智恵がつまっていますね。 ■世代間連鎖を防ぐために、私たちができること ―「アタッチメント」「感覚否定」、あらためてキーワードだと感じました。 信田:感覚否定に陥らないためには、子どもの言動に対して自分がどう感じているかを察知する必要があります。「ああ、自分は怯えている」「子どもが泣くとパニックになる」といった具合に自覚するためには、子どもの様子と同時に、 自分の感覚を観察する 必要があります。それをセルフウォッチング(自己観察)と呼びます。 このような知識があったとしても、日々の子育ての場面で、すぐに自覚できるわけではありません。自己観察することに拒否感を覚える人もいます。自分の感覚を麻痺させるために、酒や薬などに依存することもあるからです。 第三者(専門家)の援助を受けながら、自分の感覚に気づけるようにするという長いプロセスが必要となりますが、けっして不可能ではありません。 ―そうおっしゃっていただけると、何だか気力が沸いてきます。 信田:自己観察によって、自分が子どもと向き合うときに不意に生じる負の反応を、だんだんと自覚できるようになると良いですね。 ●なぜ子どもが泣くと、自分が責められたように感じるのか? ●なぜ子どもがぐずったりだだをこねたりすると、見境もなく怒りが沸いてきて怒鳴りたくなるのか? 前述のとおり、このような反応が子どもにとって感覚否定になることを知り、その多くが、自分が育つ中で経験してきたものだとすれば、自分はそれを繰り返さないようにしなければなりません。 ―なるほど。 信田: 自分が親からどのようなことを継承したか、何を子どもに継承させたくないか を知るために、もう一つ大切なのは生育歴を振り返ることです。 ときに振り返ることは苦しかったり、蓋をしておきたいという気持ちから、思い出せなかったり、思い出すことで不安定になったりすることもおきます。できれば専門家(カウンセラー)や、同じ経験をした仲間(友人)などと一緒に振り返るほうが安全かもしれませんね。 ―第三者(専門家)の援助、とても大切ですね。 信田:これは私の持論なのですが、両親学級で、沐浴や授乳を教わるのに加え、そのうちの1回を生育歴作成にあてたらどうかと思っています。 夫婦それぞれが生育歴を振り返ることで、あらためて、生まれてくる子どもに伝えていきたいこと、継承させたくないことを自覚できるのではないでしょうか。 どの人にも、自分が親にされたように自分のこどもにはしたくないという点がひとつはあるはずです。それを確認するために 生育歴を振り返ることは、世代間連鎖の防止 ともいえるでしょう ―本当にそうですね。 信田:日々の練習を積み重ねることで、子どもに対して望ましい接し方ができるようになると思っています。 「自分はそうしてもらってこなかったとしても」 です。 何より 「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことそのものが、すでに防止の第1歩 なのです。そんな自分のことを「すばらしい」と、自信を持っていただきたいと思います。 いかがでしたか? 子育て中に沸き起こる負の感情は、ママなら、誰しもが経験済です。けれども、「負の感情が自分の手に負えない!」と感じるならば、信田先生のような専門家の援助も必要なのでは? と、筆者は思っています。1人でも多くの独りで悩んでいるママに、この特集が届くことを願っています。 <世代間連鎖を防ぐには> 1)世代間連鎖を防ぐためのキーワードは、「アタッチメント」と「感覚否定」 2)子どもが泣いたら、「よしよし」という練習から始める 3)「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことそのものが、すでに防止の第1歩 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月25日以前、信田先生を取材させていただいた 「『私って、毒親?』と心配するママたちの原因は、“母”にある!?」 という記事が、とても人気がありました。それだけ、多くの人が、「こんなに感情的になってしまう私って、大丈夫?」と、心配しているのだと思います。 》 「『私って、毒親?』と心配するママたちの原因は、“母”にある!?」 出産・育児の時期は、自分の母親の育児態度が思い出され、「母と同じ口調でわが子を叱ってしまう」と、自己嫌悪を感じることも。「私って、もしかして毒親?」と、心配になるママはどうすればいいのかをひも解いていきます。 それだけ、多くの人が、 「こんなに感情的になってしまう私って、大丈夫?」 と、心配しているのだと思います。 子育てをしていれば、感情的に子どもを叱ってしまう日だってあるでしょう。では、母親は、感情的になってはいけないのでしょうか? 引き続き、母子論の第一人者であるカウンセラーの信田さよ子さんにお話しを伺います。 この記事は、 「『親にされたことを、わが子にしたくない』そんなママに限界がきたら…」 の続きです。 ■「感情的になった母親はひどい」のか? ―つい感情的に子どもを叱ってしまい、その後に激しい自己嫌悪に陥ります。 信田さよ子さん(以下、信田):「感情的になった母親はひどい」と考えると、「感情的になってはいけない」「怒ってはいけない」と抑制しなければという気持ちになりますが、それは誤解です。 たとえ否定的な感情だったとしても、湧き上がる感情そのものに良い悪いはないんです。「怒りの感情を抱く」ことと、「それをどのように表現するか」は、別の話として考えた方が良いですね。 ―そうなんですか? 信田:怒ったらすぐに怒鳴ってしまう、思わず子どもを叩いてしまうという人は、「怒り」を「抑える」しか方法がない、だから我慢しなければというふうに考えがちです。 近年の心理学の成果は、どれほど怒りの感情が激しくしても、その表現方法は「選択」できることを明らかにしたことです。 ―表現方法を、「選択」ですか? 信田:それには、自分の怒りを客観的に眺める必要がありますね。 「怒りの温度計」 という比喩は、とても役に立ちます。 ゼロから10までの目盛りの温度計で「今6度だ、このままの状態を続けると9度を超えてしまう」というように、自分がどこまで怒りを抱いているか、 怒りの程度をウォッチする のに温度計の比喩は役立ちます。 怒りの温度計が上昇しているときであっても、ゆっくりとそして落ち着いた声で、「パン屋さんでは、パンに指でさわってはいけません」と、伝えることはできるでしょう? ―なるほど。そんなふうに考えれば良いんですね。 信田:怒ったらすぐ大声で怒鳴ってしまう、という人は、行動の選択肢は怒鳴る以外にもあることを知らないか、怒鳴るという行為を許している、 自分を正当化している んだと思います。 もし、「自分の子どもだから怒鳴ってもかまわない」と考えているとすれば、はなはだ迷惑な話だと思います。子どもを所有物だと思っているのではないでしょうか? ■叱るのはいけないことなのか? ―所有物というか、子どもに対して「責任がある」と思っているんです。 信田:なるほどね。そういう方は、もしかすると 「怒る」と「叱る」を混同している のかもしれませんね。最近は、「怒ると叱るは違う」と、さまざまな子育て本に書いてあり、ひとつの定番化になっているほどです。でも、「怒る」と「叱る」の違いを理解している人は、案外と少ないのかもしれません。 「叱る」行為の大前提として、「自分の感情を爆発させるためではなく、 相手の成長のため 」という目的がある点を、意識してみましょう。 つまり下の存在を成長させるために、上の存在がきつく諭し気づかせるように導くことが、「叱る」という行為です。そこには、「上から下への勾配関係」があります。 ―なるほど。 信田:けれども、最近では子どもに対して「上から目線」になることをためらう親が増えています。「子どもを対等な人として扱うことが大切」、「押し付けない」「強制しない」、「なぜなら子どもの自主性が大切だから」といった育児観が広がることで、上から目線の命令口調は否定されるようになってきました。 けれども、「〇〇してはいけません」「〇〇しなさい」と発言しないことは、親が責任を取ることに怯えているんじゃないでしょうか。もっとはっきり言えば、 「叱らない親」「お願いする親」の本質は、私には責任逃れのように感じられる のです。 ■子どもに怒ってしまったことは取り返しがつかないの? ―すごく思い当たります…。でも、やっぱり、何だか及び腰になってしまうんです。 信田:「怒る」と「叱る」を、整理できるようになってくると、怒りのエネルギーを上手に使えるのかもしれませんね。 そんな方に知っておいて欲しいのは、思わず怒りの感情が暴発してしまったとしても、取り返しがつかないわけではない。ちゃんとフォローできていれば大丈夫、ということです。 取返しのつかないことなどない んです。 ―そういってもらえると、何だかホッとします。 信田:そして、さらに、親が叱る時の基準をつくることが大切です。親の気分次第の勝手な叱り方は、子どもに大きな混乱をもたらしますからね。そうすると、子どもなりに、 リスクの少ない安全策は「親から見て常にいい子でいることである」 と学んでしまうんです。 過剰ないい子、誰からみてもいい子であることの背景に、 親のわけのわからない無原則的な怒りの暴発がある ことは指摘しておきたいと思います。 ―そうなんですね…。 信田:望ましい家族の一つの条件は、「子どもなりに納得できる原則を親が示し、親がそれを守ろうとする姿勢を示すこと」。それはひとつの「秩序」を示すことですね。 叱るという行為は上から下への支配的な言動のひとつですが、「自分の感情を爆発させるためではなく、相手の成長のため」という目的ゆえに許されるのです。こうやって整理しておけば、「怒る」ことをむやみに怖がらなくなるし、感情的になってしまった時も、きちんと「叱る」ために、ハッと立ち止まれるのではないでしょうか? <感情的に怒ってしまうママへ> 1)「怒り」の表現方法は選択できる。「怒りの温度計」という比喩を使うとわかりやすい 2)「叱る」のは、相手の成長のため。叱る時は基準を示し、親は基準を守る姿勢を見せる 3)親のわけのわからない無原則的な怒りの暴発が、「いい子」を作ってしまう 次回は、いよいよ本特集の仕上げ。虐待の世代間連鎖を防ぐためのお話しです。 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月24日「親のことを、手放しで『大好き!』と言える人って、案外、少ないんだな」 と、そんなふうに筆者は感じています。 仕事仲間やママ友の多くが、自分の生育歴のどこかは、納得していない…。言い換えれば、「親にされて、嫌だったこと」は、誰にでも、ひとつや、ふたつあるんです。 それでは、 自分の子育てで繰り返さない ためには、どうしたら良いのでしょうか? 原宿カウンセリングセンター所長であり、母子論の第一人者の信田さよ子先生が、初の育児論を書かれたというので、お話しを伺ってきました! 信田 さよ子さん(のぶた さよこ) 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。親子・夫婦関係、暴力、ハラスメントなどの問題に関するカウンセリングを行っている。著書に 『母が重くてたまらない』 (春秋社)ほか多数。 ■親にされたことを、自分の子どもにはしたくない! 信田先生は、言います。「私のところにカウンセリングに訪れる人たちの多くが、自分が親たちから受けた育児態度やしつけ、もっと具体的に言うなら 虐待に近い経験を子どもに対して繰り返したくない と考えています」。 日本では、いまだ「虐待」という響きから、殴る蹴るといった残酷な行為のことをイメージしがちです。けれども、虐待とは次の4つのことを指すことを、まずは知っておいて欲しいと思います。 <「4つの虐待」の定義> ●身体的虐待 :殴る、蹴るなど身体的な暴力を行う ●心理的虐待 :「ばか」「お前なんかはいらない」といった、言葉の暴力や、DVを見せること ●性的虐待 :子どもに対して性的な言葉を浴びせたり、性的行動を見せたり、行う ●ネグレクト :子どもの心身の健康な成長・発達に必要な世話・対応をしない (筆者作成) 身体的な暴力はもちろんのこと、 「子どもの心になんらかの傷を負わせる行為は虐待である」 という知識があると、親との間にあった「納得のいかない感情」を、俯瞰(ふかん)しながら突き放して眺めることに役立つのではないでしょうか? 「カウンセリング現場からの声を逆算していくと、 『これだけは子どもに対してやってはいけない』 というものが見えてきます。それをしないようにするだけで、虐待の防止になります」(信田先生) ■家族が機能するために大切なことは? 信田先生のカウンセリングは、「家族の中で生じる問題は、原因があるわけではない」というスタンスです。 「私たちカウンセラーの仕事は、原因を見つけ、犯人を摘発することではないのです。考え方としては、因果論ではなく循環論に近いのかもしれません。『原因によって問題が起こっているのではなく、悪循環が起こっているのだ』と考えています」(信田先生) では、その悪循環は、どう断ち切れば良いのでしょうか? キーワードは、 世代間境界 です。わかりやすい例としては、夫との関係がうまくいかない母親が、子どもとタッグを組んで、夫の存在を疎外してしまう…。「適度な世代間境界の形成と尊重が、家族関係を適度に機能させるんです」(信田先生) ■母親は子どもに嫉妬していないか? 適度な世代間境界の形成の第一歩として、意外かもしれませんが、 「子どもに嫉妬していないか?」 というチェックが必要です。 <「子どもに嫉妬していないか?」チェック例> □私は親からそんなことをしてもらったこともないのに、この子は、私という親からいい思いをさせてもらっているんじゃないか □同性である娘がキラキラとして幸せそうな顔をしていると、「いい気になるんじゃない」などと、透明な水に真っ黒な墨を一滴垂らすような一言を投げつけたくなる。 でも、私は親心から慢心をたしなめていると思い正当化する 「こんな気持ちになることがあったら、親が子どもに嫉妬している、と言い換えても良いのではないか?」と、信田先生は言います。 「親にしてもらえなかったことを、子どもにはやってあげようとは思いながらも、それはすんなりといくわけではないのです。誰かに支えてもらったり、そんな自分を認めてもらいながらでないと、限界が来てしまいます。 まずは、『私は子どもに嫉妬している』と、自分で気がつけるようになることが大切ですね」(信田先生) ■虐待する親たちが例外なく言うこと 私は子どもに嫉妬している。 そんな自分の醜い気持ちに、自分で気がつけるようになる! なかなかヘビーな作業です。でも、筆者は、子育てはキレイごとだけではやっていけないとも思うのです。 「自分の醜い気持ち」 から目を背けないでいようとする気力や勇気。それは、やっぱり必要なのではないか? そんなふうに思います。なぜなら…。 「虐待をする親たちは例外なく 『子どもが言うことをきかなかった』 と言います。自分が腹を立てたことを『自分の問題』ではなく、『腹を立てさせた子どもの問題』であるとする思考回路です」(信田先生) こう言われて、思い当たらない人の方が少ないと思います。筆者も、思い当たり過ぎて胃が痛くなりました…。でも、こんな時に、 「自分で気がつけるかどうか?」 は、大きな大きな分岐点だと思うのです。 「親を怒らせないように、母親が何を期待しているかを瞬時に察知して、そのとおりの言動をする癖が子どもについてしまう。そうなると、いつもびくびくして、母親の表情を伺うことになってしまいます」(信田先生) 要は、子どもに、甘えないこと。筆者は、このお話しを伺って、子どもに、自分の醜い心を背負わせるのではなく、自分が向き合える人になりたいと感じました。それは、とてつもなく難しいことだと、途方のなさに溜息が出てきますが……。 <親にされたことを自分の子に繰り返さないために> 1)家族が機能するためには世代間境界が大切 2)世代間境界を意識するために、「子どもに嫉妬していないか?」をチェックする 3)自分の負の感情を、子どもに背負わせない 次回は、ママの永遠のお悩み。「ついつい子どもに対して感情的に怒ってしまう」について考えてみましょう。 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月23日筆者は、ライターとして教育記事を手掛けることが多いのですが、とりわけ特別支援教育に関心があります。なぜなら、私には広汎性発達障害の診断を受けた息子がいるからです。 彼は、小学校の低学年の時に支援学級(通級)に通い、適切な特別支援を受けることができました。そのおかげで、今は通常学級のみの在籍で楽しそうに学校に通ってます。 》 「「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら」 発達障害の子、LGBTQの子、外国にルーツのある子など、 教室のなかには多様な子どもたち がいます。それぞれの子のニーズに合った支援の必要性が、ようやく認知されるようになってきました。そういう意味で、最近の教育現場では、 「多様性」 がキーワードのひとつになっています。 【LGBTQとは】 L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)。そして「Q」はQuestioning(自分の性別がわからない、もしくは意図的に決めていない人)、Queer(セクシュアルマイノリティの総称、枠組みに囚われない人)として使われています。 ■クラスの中にLGBTQの子どもたちはいる 筆者は、ある教育雑誌の記事に「 13人に1人がLGBT 。この数字は日本の左利きの人口とほぼ一緒です」というフレーズを書きました。 割合から推測すれば、 LGBTQの子どもたちはクラスに2~3人 はいるのかもしれません。そんな子どもたちが安心して過ごすために、大人ができることは? パナソニックセンター東京で行われた、教育関係者を中心とした『LGBTQ』のワークショップに参加してきました。 私が参加したワークショップグループのメンバーは、「養護教諭」、「ユニバーサルデザインに関心がある建築家」、「企業のダイバーシティ推進室所属の会社員」、「当事者の発信者」、そして教育ライターの私の5人です。さまざまな立場の人が、それぞれの立脚点から、このトピックに関心を寄せていることがわかります。 質問に対して、グループのみんなで話し合い、その後、登壇者の方たちも、同じ質問に回答をするという形式で進められました。 ■LGBTQの子どもたちの苦しみとは 最初の質問は、「映画を見た感想を語り合いましょう」。 オーストラリアの映像作品でトランスジェンダーの少女(出生時男性→女性)が主人公の映画『新入生』(原題:First Day)を見たあと、グループに分かれてワークショップを行いました。 【映画『新入生』とは…】 トランスジェンダーの少女ハナーは小学生の時、男の子として過ごしていました。進学は本当の自分になるチャンスです。ところが、入学初日が近づくにつれて、ハナーは不安になっていきます。トランスジェンダーだということが他の生徒に知られてしまったらどうしよう? 登壇したそれぞれの方の「背景」が垣間見えたので、それを含めてご紹介します。 小林 りょう子(こばやし りょうこ)さん 子どもからカミングアウトを受け、性的マイノリティの子の親として、LGBT当事者や家族の支援活動を行っている。 小林さんの38歳になる息子さんは、出生時の性は女性でした。小林さんが映画の中で最もグッときたのは、ハナーちゃんが制服を着た時の表情だったそうです。息子さんに、 「男性の制服を着せてあげたかった」 と、涙ぐんでいらっしゃったのが印象に残りました。 浅沼 智也(あさぬま ともや)さん トランス男性(出生時女性→男性)。看護師。LGBTQであり、精神疾患や発達障害、依存症などの複合的な問題を抱える当事者のぴあサポートをしている団体カラフル@はーと代表。 浅沼さんは、「 自分は何も悪いことをしていないのに、トランスジェンダーということは隠し通さなければいけない と感じてしまう、その苦しさを思い出した」と。 浦田 幸奈(うらた ゆきな)さん トランス女性(出生時男性→女性)。 愛知県の中学校教諭。2017年、学級・学年・職員に性同一性障害をカミングアウト。2018年度より女性名・女性の装いで教壇に立つ。特定非営利活動法人ASTA所属。 浦田さんは、映画の中での、いわゆる「誰でもトイレ」の話に言及。「『男子トイレ(たくさん)』『誰でもトイレ(ひとつ)』『「女子トイレ(たくさん)』。 この『たくさん・ひとつ・たくさん』とあった時の、『ひとつ』を使うということは、 隅に追いやられている感じ がして、思った以上に孤独感を味わう」と。「映画の中では、ハナーの事情を知らない同級生が、『今度私もそこに行きたい!』言うのですが、その発言に歩み寄るというか寄り添う感じがした」とも。 知花 梨花(ちばな りか)さん トランス女性(出生時男性→女性)。ジェンダークリニックで看護師をしながら女優として活動。 ジェンダークリニックで性に違和感を抱える方のケアをされている実感として、「性別を移行するということは、世間体、家族、会社などとの関係性もあり、長い時間を要します。現実として、『女性ホルモン(男性ホルモン)を打てれば幸せなんです』と、外見の見た目は変わらないという人も多いです」と。 ■「無知」が多様な性を阻害している 次の質問は、 「多様な性を阻害しているものは、何だと思いますか?」 。 私たちのグループから出た意見は、 「無知」「世間体」「旧態依然とした制度」 の3つでした。登壇者の方からの意見も大別すれば、この3つのどれかに含まるのでは? と、感じました。 小林さんからは、「無知である」ということを象徴する具体的なエピソードとして、「文部科学省から2016年4月1日に教員向けの手引書が出されているのに、 現場の先生に浸透していない 」という問題が指摘されました。 手引書は、ネットで誰でも見ることができるので、ぜひご覧ください。 教育現場のLGBTQの子どもたちへの対応については、情報インフラがまったく整っていないと感じます。私が取材を通じて遭遇した教育現場の現実をいくつかご紹介しましょう。 ■共生社会をつくるには 「多様性を目指す教員の会」の勉強会に参加したときのこと。多様な性に関する教育現場などでの発信をされている中島潤(なかじまじゅん)さんのお名刺に、 「生まれた命が、生き抜ける社会を」 と印刷されていました。 中島さんは、「今年から、この文言を印刷しました」とおっしゃっていました。どんな現実があるのか、ぜひ今後、ウーマンエキサイトでもご紹介していきたいと考えています。 ▼性を揶揄する言葉が教室内で使われている 当事者の子どもたちは、性を揶揄(やゆ)する言葉で傷つくことが多々あるそうです。そうした言動を、 先生方が見て見ぬふり をしているというのは、LGBTQの子どもたちや保護者の集まりで必ず話題になる事柄だそうです。 ▼性に対しての配慮と合理的配慮の混同 LGBTQの子への配慮が合理的配慮と混同 され、診断書の提出を求められることが多いことも教育現場の混乱のひとつでしょう。 合理的配慮を受ける場合は、たしかに診断書が必要です。ただ、性に対しての配慮は、合理的配慮とは別物です。たとえば、「名前シールで、赤・青といった性別二元論ではない対応をして欲しい」というのは、けっしして「わがまま」という範疇の話ではないのです。 ■すべての子がありのままの自分でいられるために こうした教育現場の現実を踏まえ、最後の質問に突入します。 「すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を実現するために必要なことは?」 私たちのグループから出た意見は 「まずは、知ることなのでは?」 ということでした。私は今年に入ってから多様な性に関する記事を書くようになりましたが、正直なところ、いまだ「手探りで書いている」という状態です。2019年現在、 多様な性を知るための情報が、圧倒的に少なすぎる… 。 浦田さんは、「知ることで、できることが見えてくる。多様性を知ることを楽しみつつ、その人たちが笑顔になるために自分ができることを考える人が増えたらうれしい」と、おっしゃっていました。 ワークショップのチラシには、「目に見える違い、見えない違い、それぞれの人が 『人と人との違い』 にさまざまな思いを持ちながら過ごしています」と、書いてありました。 「知らないこと」に対しては、誰だって身構えてしまいます。そんな自分を、「だから悪いんだ」と思うのではなく、「何に対して自分は身構えているのだろう?」 そういったことから、ゆっくりと自分と対話を始めてみようと思いました。 知花さんが、「今日感じたことを、まずは、みなさんの言葉で伝えて、広げていって欲しい」と、おっしゃっていました。私が感じたことの何かひとつでも、皆さんの心に届くとうれしいです。 <参考サイト> ●文部科学省: 「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、 児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」 (教職員向け)[pdf] ●多様性を目指す教員の会: 公式HP DIVERSITY&INCLUSIONイベント第6弾 『LGBTQ』~すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を目指して~
2019年12月01日子どもがちっとも言うことを聞かないと嘆く前に、子どもとの信頼関係が築けていることが大切と語るのは、カリスマ的な人気がある映画「みんなの学校」の舞台となった大空小学校の初代校長である木村泰子先生と、子育てスキルの解説に定評がある高山恵子先生。 そう言われても、そもそも「子どもに信頼してもらう大人」になるのが難しい! どうしたらいいですか? 引き続き、木村泰子先生と高山恵子先生の対談から筆者が探ります。 「子どもが言うことを聞かないのは、ママとの信頼関係に問題があった!」 の続きです。 ■大人が画一的な価値観を押しつけない ―子どもが信頼できる大人になるためには、何から始めれば良いでしょうか? 木村泰子先生 (以下、木村):自分が子どもに信頼してもらえているのか? それは、いわば、 子どもにとって自分が安全基地になれているのか? という問いです。言い換えれば、この問いは、「子どもにとって、自分が安全基地になるためには、どうしたらいいのか?」ということです。 これについて、私は何段階かに分けて考えました。いろいろと考えた結果、最終的に、子どもにとって自分が安全基地になるためには、大人が持っている『限られた画一摘な価値観』を、子どもに一方的に押しつけないということなんだと思い至りました。 高山恵子先生 (以下、高山):自分が受けてきた 過去の教育 や、 自分の親の育て方 が正しいと信じている方は多いですよね。 木村 :そう、そこが問題の「核心」とも言える点なんです。 いま、自分がやっている子育てが、自分がもっている「画一的な価値観」を押し付ける行為になっていないか? そこに対して、 ママは主体的に自分の頭で考えてみて 欲しいのです 高山 :たしかに。そこを考え始めてみることが、今、一番大切なことですね。 ■子どもにどんな人になって欲しいですか? ―主体的に自分の頭で考えてみる…。なかなか、ハードルが高いですね 木村 :この話をしていたら、ある県の教員研修会に呼ばれた時のことを思い出しました。 そのときは、大きな体育館に先生方が集まって、映画「みんなの学校」の上映後、「何かお話しをしてください」と言われていました。 高山 :どんなお話しをされたのでしょうか? 木村 :新任の先生が最前列に座っていらしたので、新任の先生方に向かって、「ご自身がどんな先生になりたいか、言えますか?」と聞いてみました。みなさん、意気揚々と「僕に当ててください!」「私が話したいです!」という顔をされていました。 そこで、私は言いました。「そんなん、どうでもいいんです。自分が、どんな先生になるかなんて、どうでもいいんですよ。では、 どんな子どもを育てたいですか? はい、どうぞ!」と、言ったんです。そうしたら、誰も手を挙げませんでした。 高山 :ああ、本当に先生と気が合います。私は講演会の最初によく、「みなさんは、子どもにどんな人になってほしいですか?」という質問から始めるんです。 ■家でも学校でも、教育の目的はたったひとつだけ ―「子どもにどんな人になってほしいか?」…ですか? 木村 :たとえば、教員になる人たちは、教員養成課程で「自分がどんな先生になりたいか?」ばかりを勉強させられています。「子ども理解ができて、授業がうまくてなんとかかんとか…」と。 そうしたら、自分がそういう教員になることが、すべての「目的」になってしまい、 子どもは目的を達成する「手段」になってしまう んです。「目的」と「手段」が逆になってしまっているんです。 高山 :家庭でも、同じことが起きています。 木村 :「どんな親でありたいか、どんな教員になりたいか」ではなく、 「自分は、どんな子どもを育てたいのか」 ということだけを考えていればいい。 もっと、言ってしまえば、「家庭や学校での教育の目的とは何か?」という話です。家庭や学校での教育の目的は、 その子がその子らしく育つ こと。それ以外にありません。 高山 :おっしゃるとおりだと思います。私は、アメリカの大学院で、教授法には「教師中心法」と「生徒中心法」があると学びました。「教師中心法」は、文字通り、教師中心の教授法で、従来の日本の一斉教育のイメージですね。 一方で、生徒中心法は、子どもありきの教授法です。この「生徒中心法」の考え方が、これからの教育で、非常に大切なのだと私も思います。 ■親が変われば子どもも変わる ―大空小学校には、保護者の方、ボランティアで来て下さる地域の方など、たくさんの大人がたくさんいました。学校に多様な大人がいて混乱はありませんでしたか? 木村 : 私たち教職員がすごく大事にしていたのは、「私らが子どもを一番見ていて、わかってへんかったら、給料返さなあかんで」ということです。 「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」。そこを判断するのは、教員の仕事です。授業中に、地域の方がその子にとってプラスにならないような関わりをするときは、やっぱりキッチリ言わないと。専門家である私たちが、「いま、ちょっと邪魔やねん」と言う。それが教員の仕事です。 高山 :「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」を判断すると思えば、親も自分の感情に流されることは減るかもしれませんね。でも、そこまでキッパリ言って、気を悪くされる方はいらっしゃいませんでしたか? 木村 :そういうこともあるでしょう。「邪魔やねん」と言われて、「そんなん言われたし、もう行かへん」と思われる方は、それ以後、自らいらっしゃることはないでしょうね。 一方で、「邪魔やねん」と言われたときに、「あ、そうか。いまの私の関わり、あかんかったな」と学んでくださる方は、それ以後、同じような関わりはされません。 高山 :なるほど。その方自身を否定するのではなく、その方の言動がNGなのですから、そこを変えればいいのですね。 木村 :自分の意思で学びつづけようとする。そういう人が増えて、そういう方が、どんどん学んでいってくだされば、家庭や学校、ひいては地域全体の「学びの場」としての空気が変わっていくわけです。ですから、大空の校門には、こんな看板をかけていました。 ●大空小学校の校門の看板 木村 :大人が 「主体的な深い学び」 を行えるようになってくれば、子どもたちも自然に「主体的な深い学び」を獲得していきます。親が変われば、必然的に子どもも変わっていくんです。 高山 :本当にそうですね。それにしても、木村先生は、行動の人ですよね。 木村 :「誰が、いつやるか?」というだけの話なんです。私の話を聞いて、「いいのはわかっているんですが、私の現実はそうではないんです」ではなく、「そうするためには、どうしたらいいですか?」なんです。 「自分自身を、まず変えようよ!」 と。自分自身を変えることからしか、何も始まらないのです。 ■今、自分自身を変えることから始めよう! いかがでしたか? 筆者は、「私の生きづらさは、どこからくるのだろう?」 そんなことをよく考えます。私が子どもだった頃、「その子がその子らしく育つこと」を最優先に考える大人に囲まれていたのなら、「私は、私であっていい」と、力みなくストンと思えたのかもしれません。 そう思うのであれば、いま、自分が、そんな大人になればいい。「その子がその子らしく育つこと」を保障できる大人に、自分がなればいい。そんなふうに、考えるようになりました。 下記の対談本は、筆者が取材・執筆を担当しました。取材を通じて、木村・高山両先生と多くの時間を過ごさせていただくなかで、実践してきた人しか持ちえない、「言葉の力」を体感しました。本書を通じて、それが少しでも読者さまに伝わるとうれしいです。 <親の意識を変えるポイント> 1)自分が持っている画一的な価値観を子どもに押しつけていないかセリフチェックを! 2)教育の目的は、その子がその子らしく育つこと。それ以外には、ない 3)大人が主体的な深い学びを獲得すれば、子どもも自然とそれに続く ■参考文献 『「みんなの学校」から社会を変える: 障害のある子を排除しない教育への道』 (木村泰子・高山恵子 著/小学館刊 本体800円(税)) ●木村泰子(きむら・やすこ)先生 文部科学省特別選定にもなったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は、2015年2月に封切られてロングラン、今もなお全国の自治体などで自主上映され続けています。木村泰子先生は、この映画の舞台である大阪市立大空小学校の初代校長。2015年に退職後は、全国各地で公演活動を行っています。 》 「『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方」 ●高山恵子(たかやま・けいこ)先生 NPO法人えじそんくらぶ代表。保育所・幼稚園などへの巡回指導を通じて、子育ての現場支援に携わっています。著書に『しからずにすむ子育てのヒント(高山恵子/Gakken)』など、子育てのスキルをのわかりやすい解説に定評があります。「ママのストレスを少しでも減らしたい!」が、活動の原動力。 》 「ママのためのアンガーマネジメント」
2019年11月18日毎日、子育てをしていて、何となく不安…。それは、もしかしたら「子どもを育てる土台」が整っていないからなのかもしれません。 では、子どもを育てる土台とは、何なのでしょうか? カリスマ的な人気がある元小学校校長の木村泰子先生と、子育てスキルの解説に定評がある高山恵子先生の対談から筆者が探ります。 ●木村泰子(きむら・やすこ)先生 文部科学省特別選定にもなったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は、2015年2月に封切られてロングラン、今もなお全国の自治体などで自主上映され続けています。木村泰子先生は、この映画の舞台である大阪市立大空小学校の初代校長。2015年に退職後は、全国各地で公演活動を行っています。 》 「『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方」 ●高山恵子(たかやま・けいこ)先生 NPO法人えじそんくらぶ代表。保育所・幼稚園などへの巡回指導を通じて、子育ての現場支援に携わっています。著書に『しからずにすむ子育てのヒント(高山恵子/Gakken)』など、子育てのスキルをのわかりやすい解説に定評があります。「ママのストレスを少しでも減らしたい!」が、活動の原動力。 》 「ママのためのアンガーマネジメント」 ■「子どもが言うことを聞く」ために必要なこと ―子どもが全然言うことを聞きません! そんな時、どうしたらいいですか? 木村泰子先生 (以下、木村):子どもへの関わり方は、「手法」ではありません。子どもが「この目の前の大人は、自分のために言っているよな」と感じるときは、「うるせぇな」などと表面的にどれだけ悪態をついていようが、必ず自分の身体のなかに、その言葉をトンと沁み込ませています。 子どもは、目の前の大人が、 「本当に自分のために言ってくれている」 と感じたときは、必ず大人を信用します。これはすべての子どもがもっている「本能」なんです。 高山恵子先生 (以下、高山):子どもに言うことを聞いてもらうには、まず 信頼関係 が基本です。「教える」という土台には、人間同士の信頼関係が大切です。「自分のことをわかってくれている人だ」と子どもが感じられることが基本なんです。 ■子どもが信頼できる大人の条件とは? ―では、子どもと信頼関係を築くには、どうすれば良いのでしょうか? 木村 :子どもが本当に困ったとき、 「信頼できる大人の条件」 って、どんなことだと思われますか? これについて、大空小学校の校長をしているときに「そこなのね?」と、衝撃的に学んだ事実があるのです。 高山 :ぜひ、伺いたいですね。 木村 :(他人を信頼していなかった子どもが校長である木村先生だけ信頼した理由を)「だってな、校長先生は最後までずっと横にいとってくれる」と、言ったんです。それだけです。 「ただ、横にそっとおるだけや」 という話です。助けてくれるわけでも、ためになる話をするわけでもないけれど、最後の最後まで横にいる。 高山 :たしかに「寄り添う」ということ、とても大事ですね。大人は、頭では理解をしていると思うんです。ただ、じつは、「子どものかたわらに、ただいる」って、すごく難しいですよね。 子どものかたわらにただいるということが、「すごく難しいこと」になってしまっているのは、ママたちが 「この子を、自分が正しく導かなければならない!」 という使命感をもっていらっしゃるからなんだと思うんです。 ―毎日、「子どもにやらせるべきToDo」に追われています 高山 :子どもに対して、いろいろなことをやらなければいけないという思いが強くて、ママたちは、なかなか「まず寄り添う」という気持ちになれないと思います。 だからこそ、 「寄り添う」 ということを 「意識して、やっていこう」 という気持ちが、大切だと思います。そうするうちに、だんだんと子どもに自然と寄り添い、評価せずにただ話を聴くことができるようになって、信頼関係も生まれていくのだと思います。 ■子どもと信頼関係を結ぶために知っておきたいこと ―おっしゃることはわかります。でも、なかなか、そう切り替えられません。 高山 :子どもが大人の言うことを聞く、つまりは子どもがスムーズに学ぶためには、 子どもの心身が安定 していないと難しいんです。これに関して、私はよく「マズローの欲求階層図」のお話しをしています。難しい理論のように聞こえるかもしれませんが、これは大学の教育系学部では必ず学ぶ、教育のベーシックな知識なんですよ。 ●マズローの欲求階層図 高山 :アメリカの心理学者マズローは、人間には基本となる欲求が5つあり、それは階層になっていて、下から順に満たされると良いと考えました。(上記の図参照) ここでのポイントは、「欲求には優先順位があり、下から順に満たしていくことが大切」という点です。どういうことかというと、人はまず図の①から④までの欲求が満たされてから、⑤の「自分の能力を発揮して何かを成し遂げたいという気持ち(自己実現欲求)」が起こる、という考え方なんです。 つまり、ママが子どもと信頼関係を結ぶことができれば、「②(安全欲求)」「③(所属・愛情欲求)」、「④(自己承認欲求)」が満たされます。そうして初めて、「子どもが言うことを聞く耳を持つ」状態になるんです。この理論が頭に入っていると、急がば回れ、子どもが言うことを聞くためには、 「親子関係の土台づくりから」 という気持ちになりませんか? いかがでしたか? ママは、溢れかえる育児情報の中で、ついつい「アレもコレも」と思ってしまいがち。けれども教育学の知識が少しあるだけで、情報を「間引き」するヒントになりそうです。 <親の意識を変えるポイント> 1)子どもは、信頼関係が築けている大人の言うことは聞く 2)子どもと信頼関係を築くには、「寄り添う」ことが大事 3)マズローの欲求階層図で、「子どもが言うことを聞く耳を持つ」までの過程を理解する ■参考文献 『「みんなの学校」から社会を変える: 障害のある子を排除しない教育への道』 (木村泰子・高山恵子 著/小学館刊 本体800円(税))
2019年11月17日落ち込んでも立ち直る力があれば、生きていくのは楽になるはず! そんな心のありようをレジリエンスといいます。 前回までの記事で「レジリエンスを育てるためには、『できたこと』に焦点をあてて褒めることが大切」ということを学びました。けれども、そもそも褒めることが苦手な場合はどうしたらいいですか? 引き続き東京学芸大学教授の藤野博先生にお話しを伺ってきました。 「『どうせムリ…』あきらめがちな子どもが陥っている悪循環とは」 「つまずきやすい子のやる気の引き出し方」 の続きです。 ■「褒める」が苦手なママ。それでも必要なワケ 褒めるのが苦手問題、ママの「ある・ある」ですね。 「子どもを褒めるのが苦手というお母さんは多いものです。『できたこと』や『子どもの長所』を いちいち言葉にするのは野暮ったく感じる かもしれませんが、あえて話すようにしてください。一つひとつの言葉が子どもの自己認識を変え、その子の力となっていきます」(藤野先生) ものすごくザックリいえば、レジリエンスとは、 「自分を適正に励ませる力」 なのではないか? と、筆者は感じました。「適正に」というのも、ポイントです。この「適正に」を考えるときのキーワードは、 「仮想的有能感」 です。 ■間違った褒め方では、間違った自信がつく 仮想的有能感 とは、いわば自信のバブル化現象のこと。自尊感情とは対極にある感情で、他者を批判的に批評したり軽視したりすることで生まれる 偽物の有能感 です。 「子どもを褒めるのは基本的には良いことですが、他の子と比較して褒めることは避けましょう。そのような褒め方では、本来の自信ではなく、仮想的有能感が育ってしまいます」(藤野先生) 子どもを褒めるときは、その子自身をしっかり見て、「できたこと」に焦点をあてる。誰かと比較しない。子どもの何を、どのように褒めるか? これは、時間をかけてじっくり考えてみたい大切な事柄だと筆者は感じました。 「レジリエンスを育てるためのステップ」で、「1、人を頼って成功する」「2、家庭内で役割をもつ」までの説明が終了しましたので、レジリエンスを育てる最後のステップ、「気持ちを切り替える」について考えてみます。 【気持ちを切り替える】 「人に相談してうまくいく」「役割を果たす」という経験をするなかでも、うまくいかないこともある。そんなとき、「気持ちを切り替える」というふうに考えてみる <レジリエンスを育てる3つのステップ> ■「イライラしてる」をキャッチできただけでOK! 「『どうせムリ…』あきらめがちな子どもが陥っている悪循環とは」 で、レジリエンスの構成要素に感情調整があると書きました。 「感情は、やっぱりきちんとコントロールをしないといけないんだ」と思うと、何だかハードルが高いです…。できなかったら、「やっぱり、だから私はダメなんだと」という気持ちにもなりがちです。どうしたら良いのでしょうか? 「落ち込んだとき、イライラしたとき、まずは イライラした気持ちに気がついただけで充分 です」(藤野先生) 「感情調整をしなきゃ!」ではなく、「イライラした気持ちに気がついただけでOK」と思うと、気が楽です。「あ! イライラしているな」ということをキャッチできたら、ひとまず手をとめる、その場を離れるる…。そんなあたりから始めてみるのが良いのではないでしょうか。 ■「ママがちゃんとしなければ」という肩の力を抜くこと また、気晴らしに、気の合う誰かと他愛のないおしゃべりをすることも、とても有効だそうです。 「最近のレジリエンスの研究では、個人の資質やスキルも大切ですが、『サポート・ネットワーク』があることも重要だとされています。つまり 人に頼れて安心できるネットワーク のなかで、人の心は癒えていくのです」(藤野先生) 気の合う人との他愛のないおしゃべりは、とても大切なこと! レジリエンスを育てるためには、「私がちゃんとしないと!」と肩に力をいれるのではなく、むしろ、その逆なんです。 ■レジリエンスを育てるにはママの余裕が大切なワケ 「じつは、子どものレジリエンスを育てるためには、ママの気持ちの余裕がとても大切なんです。なぜなら大前提として家庭が『心のエネルギーを補給できる場』でないと、子どものレジリエンスは育ちませんからね。急がば回れではありませんが、何より大切なのが、親が楽に生きることなんです」(藤野先生) そして親が楽になる五か条「らりるれろ」を教えてくださいました。 ●親が楽になる五か条。 「ら」 楽に生きよう あれこれ気にしすぎず、親がまず楽になる。親が悩んで、子どもに口うるさくしない 「り」 理解しよう 子どもを理解すること。理解すればするほど、その子にとって必要な支援は見えてきます 「る」 ルールはほどほどに 守りやすい、ほどほどのルールを設定すること。ルールにがんじがらめにならない 「れ」 連携は、こちらからの歩みより 人と連携することも大切です。何事も自分から歩みより、丁寧に相談しましょう 「ろ」 ロンリネスはよくない 孤独に陥らないこと。人間は承認され、仲間に支えられることが大切です 出典: 『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』 より抜粋。 上記の親が楽になる五か条は、主に日戸先生かが伺った話をまとめたものである。 いかがでしたか? 「ママが楽な方が、結果オーライなんですよ」という話を伺い、筆者は何だか少し肩の力が抜けました。 藤野先生は、「近年のレジリエンス研究で重視されているサポートネットワークの観点からみると、とりわけ『れ』と『ろ』が大切だと思っています。ひとりで抱え込まず、気楽に頼れる誰かが身近にいることが子育てには大切なんですね」と言います。 本連載が、みなさんの「気楽な子育て」の一助になるとうれしいです。 ●「レジリエンス」を育てるポイント 1)一つひとつの言葉が、その子の自己認識になる 2)子どもを褒める時は、その子自身をしっかり見て、誰かと比較しない 3)何より大切なのが、親が楽に生きること ■今回、お話を伺った藤野博先生の著書 『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』 (藤野 博, 日戸 由刈 (監修)/講談社 本体1,300円(税抜き)) 「レジリエンス」とは心の回復力であり、立ち直り力のこと。自分の思い通りにいかず、落ちこんだときに、気持ちを切り替え、またがんばろうと思える力をいいます。書籍では道具の管理や家事の手伝いといった、子どもにとって身近なことを例として挙げながら、レジリエンスの育て方やポイントをイラスト図解で徹底解説します。 藤野博先生 東京学芸大学教職大学院教授 博士(教育学) 子どものレジリエンスを育てる研究をしている。専門はコミュニケーション障害学、臨床発達心理学。とくに発達障害の子のコミュニケーションやソーシャルスキルにくわしい。言語聴覚士、臨床発達心理士スーパーバイザー。特別支援教育士スーパーバイザー。
2019年10月15日「毎日、子どもを叱ってばかり」「こんなに叱ってばかりで、子どもをダメにしちゃう」 内心、そんな心配をしているママは多いはず。コツを知って、「叱るエネルギー」を「子どものレジリエンスを育てる機会」にしてみませんか? レジリエンスとは、英語で「回復力」や「弾力性」を意味する言葉です。専門に研究されている東京学芸大学教授の藤野博先生にお話しを伺ってきました。 前回の記事 「『どうせムリ…』あきらめがちな子どもが陥っている悪循環とは」 では、レジリエンスを育てるための第一歩は、生活習慣を整えることだと学びました。今回は、その先のステップ「人を頼って成功する体験」「家庭内で役割を持つ」について考えてみましょう。 <レジリエンスを育てる3つのステップ> 【家庭内での役割を持つとは】 その子の長所や興味がいきるような役割を設定し、子どもに選んでもらう。本人の選択を尊重し、その役割を果たせるように手助けをする そもそも、ママ自身、人に頼ることが苦手な人も多いかもしれません。そこで、家庭のなかで「人を頼って成功する体験」を、どんなふうに作り出すかを具体的に考えてみます。 ■レジリエンスを育てるコツ1 「やらなければいけない」に焦点をおかない 人には、その人なりのペースがあります。ですから子どもも、その子なりのペースで育っているんです。ここで大切なことは、「やらなければいけないこと」に焦点を合わすのではなく、 「この子が、いま、できることは何か?」 という子どもありきの目標を設定することです。 たとえば、頭ごなしに「明日の時間割をそろえなさい! 毎日、言わないとできないんだから」ではなく、まずは、その子にとって「言われなくても、時間割りをそろえること」の難易度がどれくらいなのかを、次のようにピラミッドを使って考えてみます。 仮に、「時間割りをそろえること」が、ピラミッドの「2、もう少しでできること・大人のサポートを受けたらできること」だとします。 ここで、「時間割をそろえるとき、ママが声かけをするようにしようか?」と、提案します。もしくは、「ママに時間割をそろえるように、声かけしてねと頼めると素敵だね」と、伝えてみます。つまり、子ども目線にたってToDoをスモールステップに分けてみるのです。 ■レジリエンスを育てるコツ2 親に頼ってできたことも認める 子どもから「声がけをして欲しい」という依頼があって、親が声掛けをして、時間割をそろえられたのなら、「すごいね! できたね」と、伝えます。これでひとつ、 「人に頼って成功する」 という体験を作ってあげられましたね。 重要なのは、スモールステップを設定して、 成功体験を積み重ねる ことです。ほぼできていることを目標にして練習していくと、その活動がたしかな生活習慣として定着します。 「そんなこと?」と思われるほど、小さな歩みです。けれども、子どもにとってはこれくらいのペースで、着実に成功していくことの方が自信になるのです。 ■レジリエンスを育てるコツ3 子どもの苦手克服より「好き」を伸ばす 次に、「家庭内で役割を持つ」について考えてみましょう。「子どもに家庭内での役割を与えてあげると、子どもは役割を果たして達成感を得られ、レジリエンスも高くなっていきます」(藤野先生) 「少しくらいお手伝いしなさい!」とイライラする気持ちをいったん横においておいて、「どの家事だったら、この子が楽しくできるかな?」という視点を持ってみます。 「子どもの苦手なことを支援し失敗を減らすのも大切ですが、その子の得意なことを理解し、伸ばしていくことも重要です」(藤野先生) その子の好きな家事を見つけてあげられると良いですね! ●小学校低学年までの役割の例 □新聞を新聞受けからとってくる □朝、起きたらカーテンを開ける □食事の前に、テーブルを拭く □食事が終わったら食器を台所へ運ぶ □衣服を脱いだら洗濯かごに入れる 出典: 『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』 より抜粋 ■レジリエンスを育てるコツ4、 「できない」より「できた」を見る お手伝いメニュー(選択肢)が決まったら、どれにするかは 子どもに選ばせます 。 「自分で選んで決めたことで、決断をした責任を持つという経験が自己形成に繋がっていきます」(藤野先生) 子どもが家事ができたら、うれしい気持ちを伝えます。役割を果たせなかった場合も、「新聞をとってくるのは忘れちゃったけれど、カーテンは開けられたね」と、できた部分はきちんと褒めます。 「 『できたこと』に焦点 をあてて声かけをすると、子どもは『自分のことをちゃんと見ていてくれているんだな、気にかけてくれているんだな』と感じます。メッセージは言葉にして、ちゃんと伝えてあげましょう」(藤野先生) ●叱るではなく、褒めるメッセージの見つけ方 たとえば、作業が多少粗くても、それは言葉にせず、よくできたところを褒めます。『洗濯物をとりこむのが早くて助かるわ』。また、いつもは5分しか集中できない子が、10分集中して宿題をできたなら、『いつもより5分多く集中できたね』と、そこを褒めます。「早く宿題を全部しちゃいなさい!」ではなく、です。 ●ママにできるレジリエンスを育てるポイント 1)目標設定はスモールステップに。小さな成功体験を積み重ねることが大切 2)お手伝いは選択肢を示し、子供に選ばせる 3)「できたこと」という実績に焦点をあてて褒める 次回は、「そもそも褒めることが苦手な場合はどうしたらいいですか?」。そんなママたちのあるある疑問を考えます。 ■今回、お話を伺った藤野博先生の著書 『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』 (藤野 博, 日戸 由刈 (監修)/講談社 本体1,300円(税抜き)) 「レジリエンス」とは心の回復力であり、立ち直り力のこと。自分の思い通りにいかず、落ちこんだときに、気持ちを切り替え、またがんばろうと思える力をいいます。書籍では道具の管理や家事の手伝いといった、子どもにとって身近なことを例として挙げながら、レジリエンスの育て方やポイントをイラスト図解で徹底解説します。 藤野博先生 東京学芸大学教職大学院教授 博士(教育学) 子どものレジリエンスを育てる研究をしている。専門はコミュニケーション障害学、臨床発達心理学。とくに発達障害の子のコミュニケーションやソーシャルスキルにくわしい。言語聴覚士、臨床発達心理士スーパーバイザー。特別支援教育士スーパーバイザー。
2019年10月14日「一度落ち込むと、なかなか立ち直れない」「失敗することを、極度に怖がる」…。そんな子には、 「レジリエンスの力」 をつけてあげると、大きな支えとなるかもしれません。 レジリエンスとは、英語で「回復力」や「弾力性」を意味する言葉です。専門に研究されている東京学芸大学教授の藤野博先生にお話しを伺ってきました。 藤野博(ふじの ひろし)先生 東京学芸大学教職大学院教授 博士(教育学) 子どものレジリエンスを育てる研究をしている。専門はコミュニケーション障害学、臨床発達心理学。とくに発達障害の子のコミュニケーションやソーシャルスキルにくわしい。言語聴覚士、臨床発達心理士スーパーバイザー。特別支援教育士スーパーバイザー。 ■心が「強い」のではなく「しなやか」 レジリエンスという言葉は、聞いたことがありますか? レジリエンスのイメージを一言で言い表すと、「風にそよぐ柳の木」。鉄塔のような、けっして折れない強い心ではなく、ときには折れたり曲がったりするけれど、また 立ち直る心 。レジリエンスとは、そんな心のありようのことをいいます。 ポイントは、 心が折れてしまうことを否定していないこと 。社会で生きていけば、困難なことは必ずあります。傷つき落ち込む出来事だって、あるでしょう。だったら傷つくことを避けるより、落ち込んでも立ち直る力がある方が現実的に考えて楽なんです。 ■「折れない心」を持っている人は、どんな人? 「レジリエンスの研究は、『レジリエンスがある人とは、どんな人なのか?』を探る形で進められてきました。その結果、次の3つの要素があることあきらかになってきました。これらを日常の生活の中で、少し意識してみると良いかもしれませんね」(藤野先生)。 ●新奇性追求 ●感情調整 ●肯定的な未来志向 <レジリエンスの3大要素> ■レジリエンスと自尊心、どう違う? レジリエンスは、自尊心と似ている気もしますが、何が違うのでしょうか? 「自尊心は成功したり、ほめられたりすることで育っていくものです。一方で、レジリエンスは成功したときにも育ちますが、 失敗して人に助けられたときにも育ちます 。 自尊心は『自分を信じる力』、レジリエンスは『自分とまわりの人を信じる力』 ともいえます」(藤野先生) レジリエンスとは、自尊心を裏打ちするような、そんな心のありようでもあるんですね。 さらに、「レジリエンスの特徴として体質や性格といった『持って生まれたもの』ばかりではないこともあげられます。 日々の生活のなかで、少しずつ育っていく ものなのです」(藤野先生)。 ■「余白の時間」が減ることで起こる悪循環 では、そんなレジリエンスを育てるためには、どうしたら良いのでしょうか? 「子どものレジリエンスを育てるためのポイントは、『安定した生活を保障すること』です。基本の土台作りとして、子どもが、栄養と睡眠を十分にとれるようにしてあげることが大切です」(藤野先生) 「そんな簡単なことでいいんですか?」と、筆者はビックリしてしまいました。「いま、睡眠が十分とれていない子は、多いんですよ」と藤野先生からは、こんなお話しを伺いました。 「最近感じるのは、子どもの 『余白の時間』が減っている ことです。勉強やスポーツ、習い事をすることも大切です。ただ、人間には、ボーっとする、自分の好きなことだけをするといった時間も必要です。 ToDoを詰め込みすぎるあまり、そうした時間がとれなくなってしまうと余白の時間がズレこみ、結果的に睡眠時間が減ってしまうという悪循環になってしまうんですよ」 ■子どもの「ToDoリストの整理」が必要なワケ 「あ、そうかもしれないな」と、感じる方も多いのでは? だからこそ、いま、ママが意識したいのは、 「子どものToDoの取捨選択」 なのかもしれませんね。 アレもコレもはできないから、その子にとって、いま、何が大切か? 優先順位を決めて、親が「ToDoの間引き」をしてあげる。そんな視点です。生活習慣を基軸に子どもの生活を見直すことで、ママの時間や心にも余裕が出るかもしれません。 「 生活習慣には、枠組みが必要 なんです。子どもの心を卵にたとえてみると、生活の枠組みが、卵のカラにあたります。起床・睡眠リズム、毎日の食習慣といった生活習慣の枠組みのなかで、心が育ちます。それは、まるで卵が過熱されて徐々にかたくなっていくようなイメージです(藤野先生)」 ■レジリエンスを育てる3つのステップ 生活習慣という土台が整ったら、いよいよレジリエンスを育てるための子どもへの関わりを考えてみます。レジリエンスは、一朝一夕に手に入りません。少しずつ育てていくものなので、ステップを3つに分けてみました。このステップは同時進行する場合もあります ●「立ち直る力」レジリエンスを育てるポイント 1)レジリエンスとは、心のしなやかさ。「心の強さ」より、現実的に役立つ力である 2)「感情調整」「新奇的追求」「肯定的な未来志向」が、レジリエンスの3要素 3)レジリエンスを育てる土台は、生活習慣を整えること 次回は、レジリエンスを育てるための各ステップを具体的に教えていただきます。 ■今回、お話を伺った藤野博先生の著書 『発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本』 (藤野 博, 日戸 由刈 (監修)/講談社 本体1,300円(税抜き)) 「レジリエンス」とは心の回復力であり、立ち直り力のこと。自分の思い通りにいかず、落ちこんだときに、気持ちを切り替え、またがんばろうと思える力をいいます。書籍では道具の管理や家事の手伝いといった、子どもにとって身近なことを例として挙げながら、レジリエンスの育て方やポイントをイラスト図解で徹底解説します。
2019年10月13日人生100年時代、「一生涯の家賃を支払い続けるのが大変と、退職前の完済を目指して住宅購入に踏み切った人も多く見かけます」と教えてくれたのは住宅購入に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんです。 仮に家を買うと決めたとしても、購入するタイミング、「マンション or 戸建て」「中古 or 新築」「戸建て or マンション」など、迷う点はたくさんあります。そんな素朴な疑問を、竹下さんに一気に質問してきました! 「住宅購入を考えるだけでメリット!? 学区問題は本当に大切か」 「中学受験と住宅購入、両立できる? 老後資金問題を解決するには」 の続きです。 ■家を購入するときに得なのは、30代? 40代? Q、30代と40代。家を購入するなら、得なのはどっち? <竹下さんの回答> 試算をしてみると、30代のようです。 竹下さんに、試算の前提条件(※)を同じにして、「30歳」「40歳」「50歳」それぞれの時期に住宅を購入した場合に支払うことになる住居費の総額を試算してもらいました。 ●90歳までの住居費の例 ※前提条件: 23歳から賃貸。家賃10万円。更新料2年ごとに家賃の1か月分。購入する新築マンションの物件価格は3800万円。頭金300万円 住宅ローン3,500万円(35年返済、金利1.5%、元利均等返済) 維持費 年間30万円(固定資産税・都市計画税、マンションの管理費・修繕積立金) 「大都市圏などで家賃が高い地域に住みながら、住宅の購入物件もその周辺を希望している場合は、購入する時期が遅くなればなるほど、 もったいないお金(総額が多くなる)が発生する 可能性があると言えそうです」(竹下さん) ■「マンション」と「戸建て」どっちが得? Q、「マンション」 vs 「戸建て」買うならどっち? <竹下さんの回答①> 資産価値や立地の良さを追求するなら駅近マンションです 個々の立地や物件にもよりますが、駅から近い土地は一般に地価が高いため、戸建てよりもマンションが造られるケースが多いです。そのため、 駅近で便利な立地 にこだわるなら、マンション物件が豊富です。 なお、戸建て(木造)よりマンション(鉄筋コンクリート造)のほうが、建物の耐用年数が長いため、築年数が進んだ際の資産価値はマンションのほうが比較的維持されやすいのが通常です。 ただし、駅から遠いなど アクセスが悪い物件 の場合は、マンションも戸建ても資産価値は期待できにくいという点は念頭においておきましょう。 <竹下さんの回答②> 暮らしの自由度の高さは、戸建てに分があります 子どもがいる場合、子どもが走り回ってもピリピリしなくて済むようにと戸建てをチョイスする方もいます。またマンションの場合であれば、階下が店舗である物件など、音が響くのを気にせずに済む物件を探すという方法もあります。 <竹下さんの回答③> 固定資産税は戸建てとマンションのどちらが高いかは一概には言えません 固定資産税は、新築マンションは5年間、木造2階建ての戸建てなら3年間、建物部分の減額措置があります。 本来の固定資産税は土地が多い分だけ戸建ての負担が多いと思われがちですが、マンションでは全体の敷地面積を按分したり駅近で地価が高いこともあり、戸建てとマンションのどちらが高いかは一概にはいえません。 ■「新築マンション」と「中古マンション」どっちが得? Q、「新築マンション」 vs 「中古マンション」買うならどっち? <竹下さんの回答①> 立地を重視するなら「中古マンション」が豊富です 住みたい地域や沿線、駅まで決まっているなら、「新築マンション」だけでなく「中古マンション」まで視野にいれたほうが、 物件数は圧倒的に豊富 になります。 <竹下さんの回答②> 購入時のコストは「新築マンション」が有利 購入時に用意すべきお金は、中古マンションのほうが多くなりがちです。なぜなら、新築であれば売り主からの直接購入が主流ですが、中古となると不動産仲介業者を挟むため、仲介手数料が発生します。 たとえば、3,800万円の物件であれば、132万円(※)を不動産仲介業者に現金で支払うことになります。 ※消費税10%の場合。物件価格の3%+6万円に消費税を加算 固定資産税や不動産取得税の減免措置は新築には用意されていますが、中古では基本的に受けられません。また、 「住宅ローン控除」を受けるための要件 も事前にチェックしておいた方が良さそうです。あまり古すぎる物件を選ぶと、要件を満たせない可能性もあるので要注意です ちなみに筆者は、中古住宅を購入しましたが、要件を満たせず住宅ローン控除を受けることができませんでした。 ■「住居費」の負担、重くないですか? 本連載も、そろそろ終わりです。連載の最初に書いたとおり、多くのご家庭にとって、家計費のいちばんの支出である住居費。これだけ大きな額の支出ですから、少し見通しを立てるだけでもっと効率的に、もっと合理的になるはずです。住居費節約の奥義は、ライフプラン全体の中で住居費を位置付けてみることです。 「先のことなんてわからない」と放置しておくのは、もったいなさすぎです。なぜなら、今、ライフプラン表を書いて、ちょっと考えてみることが、数百万~数千万単位の住居費の節約に繋がるかもしれないからです。 筆者自身、30代で家を購入したことで、数千万円の住居費が節約できました。本連載が、人生100年時代の暮らし方を考える一助となれば幸いです。 ■今回のお話を伺った竹下さくら先生のご著書 『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』 (竹下さくら著/翔泳社 本体1,500円(税抜き)) 竹下さくらさん CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。 自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。
2019年08月28日住宅購入に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに「子どもの教育のことを考えて住宅購入を検討するのであれば、最優先すべきは、 教育費にしわ寄せのこない価格の物件 を選ぶことです」と教えていただきました。 では、その価格は、一体、いくらなのでしょうか? 引き続き竹下さんにお話しを伺います。 「住宅購入を考えるだけでメリット!? 学区問題は本当に大切か」 の続きです。 ■教育費にしわ寄せのこない物件の選び方 多くの方が、「子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格」といきなり言われても、ピンとは来ないと思います。順を追って、説明していきましょう。 まずは次の図を見てください。サラリーマンの場合、 生涯収入は一定の枠 があります。一定の枠の中での使えるお金は、大きく2つに分けて考える必要があります。 それは、「日々の生活費(人生を回していくお金)」と、「人生イベントの費用(人生を構築するお金)」です。さらに着目していただきたいのは、赤文字部分、 「住宅」「教育」「老後」資金 です。この3つのお金は、人生の3大資金と呼ばれ、金額が大きいことが特徴です。 ■家購入前に考えたい、「中学受験どうする?」 「30代は、人生の3大資金のうちの、『住宅』『教育』の方針をおおまかに決める人が多い年代です。両方とも、決めたら最後、 後戻りが難しいタイプのお金 です」(竹下さん) 後戻りが難しいと聞くと何だかドキドキしてしまいます。どうしたら良いのでしょうか? 「私は、家を買う前に、 ライフプラン表 を使って、『これからの人生』を一度イメージすることをおすすめしています。とりわけ大事なのは、 子どもの教育コース です。私立に行くのか? 公立にするのか? 私立小学校を選択するご家庭が全体の2%であることを考えると、私学コースの論点は、多くの場合、 中学受験をするか、しないか です。私立中学に行くのか、公立にするのか? ここで教育費の総額は大きく違ってきます。 家を買う段階で、子どもの教育コースのイメージを持っておかないと、大きなリスクになる可能性があることは、強くお伝えしたい点です」(竹下さん) ■私立中高一貫校に行く場合のリアル費用 筆者の息子は、中学受験をした後、中高一貫校に通いました。中学受験をするのであれば、ザックリとした目安として、次の金額程度は覚悟しておく必要がありそうです。 【中学受験のための塾代】 小学校3年生の2月から通塾スタート: 総額で250万円~300万円(6年生の2月まで) 【学費】 学費と定期代で1年間:100万円×6年間(中高6年間) ※筆者の体験に基づく場合の金額 このほかに、部活動にかかる費用や大学受験をする際の予備校代…。成長期なので洋服や靴があっという間にサイズアウトしてしまうので衣料費もかさみますし、通う学校によってはママ友との交際費がかかる場合もあります。 子どもが 中高~大学卒業までは教育費の山場 で、お金が右から左にかかる時期だという実感があります。 ■「住宅」「教育」費のしわ寄せが「老後資金」不足に 30代でお子さんが小さい場合、教育費の大変さをイメージするのが難しいかもしれません。けれども、『教育費が大変な時期が、この先にある』ということは、ぜひとも知っておいて欲しいのです。 「人生の3大資金のうち、『住宅資金』と『教育資金』を適正金額の枠内にしておくことは、とても大切です。 身の丈に合わない物件を買ってしまったり、子どもの教育にお金をかけすぎてしまったりしたしわ寄せが、 『老後資金』の不足 に直結しているケースを、私はたくさん見てきました」(竹下さん) ■ライフプラン表を書くことで、見える景色がある そうは言っても、忙しい毎日の中、未来をイメージするのは、なかなか難しいものです。 「私は、ライフプラン表を書いてみることをおすすめしています。実際に、『書いてみる』と、これまで見えなかった風景が見えてきます」と、竹下さん。 30代になったのなら、一度はライフプラン表を書いてみる! それとともに、筆者は「物件価格は、ライフプラン表を踏まえた上でファイナンシャルプランナーなど、 お金のプロに相談にのってもらう のもアリ」と、お伝えしておきたいです。 なぜなら、「物件の価格」「教育資金」といったお金は、日常生活とは別物の「桁の違うお金」だからです。 金額が適正かどうか? という判断は、素人では難しいと感じます。 Q.ファイナンシャルプランナーに相談に乗ってもらうには? 日本FP協会のファイナンシャルプランナーの上級資格であるCFP検索で、自分と相性が良さそうなファイナンシャルプランナーさんを探して、コンタクトしてみても良いかもしれません。 》日本FP教会: ※費用の目安は、CFPへの相談料金の相場は2時間2万円程度です。 たとえば竹下さんに、「ライフイベントを踏まえた上で、わが家にとっての適正な物件価格の相談に乗ってもらう場合の費用」をお聞きしたところ、「相談者の購入プランを見て無理があるかどうかの判断であれば8000円~20000円(相談時間の長さによる)、シミュレーション込みの2時間相談コースの場合は2万1000円~2万5000円」だそうです。 ■賃貸と購入でこれだけ変わる将来の貯蓄残高 脅すような話ばかりが続いて、家を買う気持ちがなえてしまったかもしれません。最後に、平均的な家庭の貯蓄残高をグラフにしたものをご紹介しましょう。 竹下さんは、「一生涯の家賃を支払い続けるのが大変と、退職前の完済を目指して住宅購入に踏み切った人も多く見かけます」とおっしゃっていました。 実際のところは、どうなのでしょうか? 竹下さんに試算していただきました。 ●一生賃貸の場合 子ども二人を大学生まで通わせる」という条件の場合、お金の「谷」が2回できます。Aは、教育費がピークの時期です。Bは、85歳以降です。 結論:85歳をすぎると切り崩す貯蓄がなくなり赤字に転落します。 ●35歳で家を買った場合 Aの教育費がピークの時期は「谷」になりますが、住宅ローン完済後の貯蓄残高減はゆるやかで85歳以降も赤字にはなりません。 結論:70歳で住宅ローンを完済した後は貯蓄を切り崩すペースがゆるやかに 【前提条件】 家族:男性30歳・妻30歳子0歳&2歳。/収入:夫(会社員。年収500万円)、妻(パート。年収100万円)/子どもの進路:幼稚園は私立。小・中・高は公立。大学は第1子は私立文系、第2子は私立理系(6年)。/退職金:65歳1500万円。住まい:35歳で3000万円の住宅ローンを組んで3200万円の物件を購入。完済時期は70歳。金利1%。住宅の維持費は年間30万円。/75歳で1500万円のリフォーム(じゅうたくメンテナンス費用)を拠出。 「人生100年」という言葉が頻繁に使われ出したのは、ここ3年くらいの話です(ちなみに以前はライフプランニングは人生85年で試算していました)。 30代にとって、「老後」なんて、はるか遠くの話すぎますね…。けれども、遠い遠い将来、「あの時、住宅購入を検討してみて良かったな」と、思うことがあるかもしれません。 ■今回のお話を伺った竹下さくら先生のご著書 『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』 (竹下さくら著/翔泳社 本体1,500円(税抜き)) 竹下さくらさん CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。 自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。
2019年08月27日多くのご家庭にとって、家計費のなかでいちばんの支出は 住居費(家賃) なのではないでしょうか? 人生100年時代、たとえば平均して10万円の家賃を30歳から100歳まで払い続けるならば、その 総額は8400万円! (※) 元の金額が大きいだけに、住居費を賢く節約できれば、節約効果は絶大なはず! でも、そんなことはできるのでしょうか? 子育て中のママがどう住宅を選べばいいのか、住居費に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんにお話を伺いました。 竹下(たけした)さくらさん CFP®(国際ライセンス)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。 自らの生活者としての経験を踏まえた、家計の見直しや、教育資金設計のご相談のほか、講演、執筆活動等を行っている。2児の母。 ※住居費の総額8400万円=(10万円×12ヶ月)×70年 ■家賃を下げてもらうのは、意外と簡単!? 「同じ住まいを長く借りている人は、大家さんや仲介業者にひとこと言えば、 月々5,000円分程度の家賃を下げてもらう のは、意外と簡単なんです」と、竹下さんは言います。 なぜなら、住んでいる間にその物件は古くなっていくから。借りた時よりも古くなっている物件の家賃を下げてもらうことは、さほど無理なお願いでもないのです。 筆者は住居費関連の取材で「家の更新時、家賃を下げてもらう交渉は、やるのがあたり前」といった論調を何度か耳にしました。 大切なことは、こういった話を「知っていること」です。とかくお金のことは、 「知っている」「知っていない」が、明暗を分ける のです。 ■30代で「家を買うこと」を本気で考える理由 では、知っている人になるためには、どうしたら良いのでしょうか? これについては、お金のアンテナを立ててみるのが早道。アンテナを立てれば情報は自然と入ってきます。 けれども、「どうしてもお金のことは苦手で」という人も多いものです。そんな人は、 “家を買うことを自分事として意識” してみてはいかがでしょうか? 竹下さんは言います。「私は、 『30代になったら、一度は家の購入を意識すること』 をご提案することがあります。 賃貸と購入で、何が違ってくるかというと、家計の引き締め度なんです。多くの家計相談にのってきて感じるのは、家を買おうと意識するだけで、 家計が引き締まり、お金のアンテナも立つ ということです。 現実を直視し、『このままじゃいけないな』と思われる方が多いからです。ずっと賃貸だと、そういう節目がない。それが、賃貸と購入の、お金のやりくり上手に差が付く一番の違いだと思います」 ■家購入のターニングポイントは、小学校入学前 家を買うとなると。そのタイミングが気になるところです。 「最初のお子さんの 小学校入学 が視野に入ってきた時期は、家を買うひとつのターニングポイントかもしれません。 小学校の場合、受験をして私立などに行くのは、全体の2%。残りの98%は地域の小学校に通いますが、いじめの評判なども加味して、小学校に入る前に引っ越しておこうと考える親御さんは多いですね」(竹下さん) ■住宅購入で気になる! 小学校の学区問題 小学校となると、 学区の問題 も気がかりです。 たとえば、評判のよい小中学区では越境禁止にしていて所定の地域内に住んでいることを求められます。せっかく引っ越すならいっそのこと買ってしまおうという流れで踏み切ると、予算がオーバーしてしまうというような場合も。 そこで次の2択をどう考えれば良いのか竹下さんに教えてもらいます。 Q.マイホーム購入の際、学区はどう考えればいいですか? □学区優先で、生活を切り詰める □学区を妥協し、無理なく生活する 「はじめてのお子さんを持つ親にとって、小学校の学区が気になる気持ちは、すごくわかるんです。 園時代のお友だちとの関係を重視するというケースも、気になるのは最初だけで、小学校に入ってしまえば人間関係も変わっていきます。実際のところ、 学区に縛られるのは、小学校、中学校くらいまで 。 家を購入する際は、少し俯瞰(ふかん)した視点を持って欲しいのです。子どもが二人いたとしても、その子たちが小中学生なのは、せいぜい 10年前後 。 一方で 住宅ローンは35年で組む ことが多く、子どもが巣立ったあとも支払いは続きます。学区を優先したばかりに、子どもが巣立ったあとも高額な住宅ローン返済に追われる生活になるのは避けたいところです」(竹下さん) 竹下さんは、さらに続けて教えてくれました。「子どもの教育を中心に住宅購入を検討するのであれば、最優先すべきは 子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格 です」(竹下さん)。 子どもの教育費にしわ寄せのこない物件価格!? それって、いくらなのでしょうか? 次回は、そのあたりのお話しを、しっかりと伺いましょう。 ■今回のお話を伺った竹下さくら先生のご著書 『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』 (竹下さくら著/翔泳社 本体1,500円(税抜き))
2019年08月25日