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子どもを危険から守ってあげたい。子どもには夢を叶えて欲しい。そのためには子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。そんな深い親の愛がじつは子どもをつぶしてしまっていることもあると話すのは、花まる学習会の高濱正伸さん。高濱さんに、今の日本の子育ての現場で起こっている問題点についてお話を伺いました。
物価高、エネルギー高騰。でもお給料はあがらず、老後不安はますばかり。そんな閉塞感を抱えてるママたちに、家計のプロが今すぐできる対策を教えます。
時代が大きく変わっている今、「見えない学力」を身に着ければ「見える学力」も上がると話すのは、映画『みんなの学校』で「不登校ゼロ」の公立小学校として話題となった大空小学校初代校長・木村泰子先生。「母親としてここだけは外さないポイント」を聞きました。
「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前」と話すのは花まる学習会の高濱先生。家事や育児の負担がのしかかるママたちに今だからできることを教えていただきます。
コロナ禍で収入が減って、これからの家計が心配という声が聞かれます。教育費、老後のお金を我慢や無理をせずに貯めたい、毎日の家計を黒字にしたい…そんな方法をFPの横山光昭さんに教えていただきます。
子どもの「生きづらさ」を「らしさ」に変える【ギフテッドを知ると見えてくる、子育てのヒント Vol.2】(きほん編) の続きです。 知能が高いことで知られる ギフテッド ですが、 学校や日常生活で困ることがあり、配慮や支援が必要 ということを 前回の記事【きほん編】 でご紹介しました。 今回の【インタビュー編】では、 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』 の著者であり、Webメディア 「みんなの教育技術」 でギフテッドの担当をしているライターの 楢戸ひかる さんに、 日本のギフテッドの現状や課題 についてお話を伺います。 ギフテッドについて知ることは、 これからの時代を生きる子どもたちの生きやすさ にも関わってきます。 また、 個性を潰さないためにどのような教育環境を整えればいいのか というヒントにもなるはずです。ぜひギフテッドについて一人ひとりが理解を深め、社会全体でより良い議論ができるようになることを願います。 \ 教えて楢戸さん / ギフテッド Q&A 「うちの子、ギフテッドかも?」と悩んだ場合 Q. 我が子はギフテッドかも… と感じたら、 最初にすべきこと はなんでしょうか? また、どこへ相談すればいいでしょうか? 学校への説明などでアドバイスがあればそれも含めて教えてください。 A. 手前味噌で恐縮ですが、今回の著書『 ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊) 』をまずは読んで欲しいと願います。 日本でのギフテッドに関しての論議は、始まったばかりです。多角的にノウハウを蓄積している専門機関はまだ少ないのが正直なところです。 でもお子さまの特性が心配になった場合には、まずはひとりで悩まずに誰かとつながる場所を見つけることが大切です。書籍でも紹介している「一般社団法人 ギフテッド応援隊」についてはこの続きをお読みください。 また書籍では家庭の中に「ギフの湯」を登場させる方法についても書かれているので、ぜひこちらも読んで欲しいと願います。 情報の海で溺れるのは、本当に辛いですよね……。この応援ブックは、厳選したベーシックな情報で構成しました。 気持ちの整理 をする際に、浮き輪のつもりで使って下さい。 そして、 『まずは、お母さんの心の居場所を確保して下さい!』 と、お伝えしたいです。 お母さんの心が安定 していれば、たいていのことは何とかなります。 居場所の確保という意味では、一人でもいいから子育てのことを本音で話せたり、相談できる相手がいることが重要です。 一般社団法人ギフテッド応援隊 だと、ギフテッドの子育てに共通理解がある人に出会いやすいと思います。 この応援隊は、全国規模で活動する 保護者の自助団体 です。会員専用SNS内では、相談機関の情報なども共有されていると聞きます。先輩のお母さんから方から、経験談なども聞けるとよいですね! 学校への説明の際は、そのギフテッド応援隊が提供している サポートブック の使用をおすすめします。会員の方は、サポートブックを会員専用SNS内から無償でダウンロードできますが、一般の方への販売も行っています。(楢戸さん) まわりにいるギフテッドの子との接し方 Q. 身近にギフテッドの子がいる場合(兄弟やクラスメイト)、子どもたちには どう説明 すると理解しやすいでしょうか? また接し方で 注意すべき点やアドバイス があれば教えてください。 A. もし私に読者の方と同世代の子ども(未就学児や小学生)がいたとしたら、ギフテッドという言葉は使わずに、ギフテッドの子の特徴(周囲との違いや困っていること)を、 『そういう子も、当たり前にいるよね』といった気持ちで子どもと対話 をしてみると思います。 たとえば… 『チャイムの音、〇〇(お子さんの名前)より、うんとびっくりしちゃう子がいるんだよね』 『もし〇〇が、悲しい気持ち、うれしい気持ちが、いまより10倍強く感じたとしたら、どうかな?』 … といった感じでしょうか。 人はそれぞれ異なる ということ。ギフテッドをひとつの入口にして、いろいろな角度から子どもと話をしたら楽しいと思います。 ギフテッドだからといって、接し方で注意すべき点は、とくにありません。ただ、ギフテッドの子がもし我が家に遊びにきてくれたとしたら、私はその子自身に あらかじめ声かけ をしておくかもしれません。 たとえば、『人はそれぞれ違うから、△△ちゃんが嫌だなとか思うことがあったら、教えてもらえると助かるな。私、気が付けないと嫌だからさ』といったように。 私が実際に出会ったギフテッドたちは、繊細で聡明。1を見て10を知るみたいな感じの子どもたちでした。 私も最初の取材時は『ギフテッドと、どう話せばいいんだろう?』と、緊張をした記憶があります。でも妙に構えず、 率直 に話しをすれば、楽しく会話ができました。 もしかしたら、 “子ども扱い”はしない方がいいかも しれません。ギフテッドは 姿かたちは幼児でも、確固とした自己を確立している お子さんも多いからです。(楢戸さん) 日本での現状のギフテッドの課題 Q. 最近になってギフテッドへの認知が、徐々に広まってきているように感じます。 長年取材をしてきた楢戸さんがいま感じている 『日本におけるギフテッドの問題点や改善点』 について教えてください。 A. ギフテッドと発達障害が混同されている点 が気になります。 “ギフテッドの特性”と“発達障害の特性”はそれぞれ分けて考えた方が、その子が必要とする支援ニーズを整理しやすく、結果として 必要な支援に辿り着きやすい と考えます。 ギフテッドという言葉が広がることで、 発達障害に対する対応が遅れてしまうことを懸念 しています。とりわけLD(学習障害)は、 専門の配慮や介入が必要 なので、 見過ごさないで欲しい と思います。 また、ギフテッドという言葉を、日本では “稀にいる天才”といった意味だと誤解している人がいる ことも気がかりです。本連載でお伝えしたように「ギフテッド」とは、 知能が高いだけでなく、“学校や日常生活で困ることがある” お子さんのこと。それぞれに適したサポートが必要なのです。 欧米の国の中には、公教育の中でギフテッドの教育保障をしている国もあります。私が取材した範囲では、ギフテッドの割合は約5~7%と見積もられていました。日本の35人学級で換算すると、 1学級に1~2人はギフテッドがいる 計算です。 日本も文部科学省が2023年から予算をつけ、 ギフテッドの支援事業 を開始しました。ギフテッドの教育が、 公教育の枠組みの中で実施されること が大切です。(楢戸さん) ギフテッドに関心を持ったあなたへ 今回初めてギフテッドについて知った方へ、メッセージがあればお願いします! この記事をご覧になってくださったあなたは、いまどんな状況でしょうか? ご自身のお子さんの 強い個性 を 『発達障害の文脈だけでは、どうにも腑に落ちない…』 と感じていたならば、『うちの子、ギフテッドなのかもしれないな』と思われたかもしれません。 お子さんは、学校に行けていますか? 『不登校の子の中には、ギフテッドとしての対応が必要な子どもがいることを念頭に、具体的な支援が必要な時期に来ている』 と指摘する研究者もいます。 『うちの子とは、まったく無縁の話だわ』と思われる方も、もちろんいらっしゃるでしょう。 けれども、 お子さんのお友だちのなかに、ギフテッドがいる可能性 はあります。 今後、お子さんとギフテッド傾向のある子がお友達関係を築いていく上で、 ギフテッドの知識 が多少あった方が、お母さんご自身も安心なのでは… と思います。 世界ではギフテッドの論議が進んでいますが、日本ではギフテッドの論議はまだ始まったばかり。 でも、日本にもギフテッド当事者の声に耳を傾け、真摯にサポートをしている支援者、教育実践者、研究者たちがいます。 私が取材したギフテッド情報をどのように伝えれば、多くの方に関心を持っていただけるのだろうか? 私自身、まだまだ試行錯誤をしています。読者のみなさまと一緒に考えていけるとうれしいです。(楢戸さん) \ ご紹介した書籍 / 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊) 2023年10月3日発売 定価1,760円(税込)/192ページ 著:楢戸ひかる 監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授) 取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊 マンガ:黒川清作 著者:楢戸ひかる プロフィール ライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。 HP: 楢戸ひかる 記事一覧 >>
2024年02月05日マンガで解説! 「ふつう」が子どもを苦しめる【ギフテッドを知ると見えてくる、子育てのヒント Vol.1】 の続きです。 ここ数年で少しずつ認知が広がってきた、 ギフテッド 。しかし、言葉だけが先行し、ギフテッドである 当事者の生きづらさや、周囲の人たちの最適な接し方 といった本質的なところまではなかなか理解が進んでいません。 そこで今回の 【きほん編】 では 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』 から一部抜粋・編集し、 ギフテッドとはどんな特性をもっていて、どのような配慮が必要なのか 、をご紹介します。 本書ではギフテッドをとりまく現状や課題、有識者たちによる知見やアドバイス等を、マンガを交えてわかりやすく紹介。「子どもの成長に必要なもの」が生き生きと描かれており、 当事者のみならず「すべての親たちに役立つ子育てのヒント」 が詰まっている。 さらに、この本の著者 楢戸ひかる さんに、 日本におけるギフテッドの現状や課題 についても伺いました。(次回【インタビュー編】にてご紹介) 本連載は、初めてギフテッドについて触れる方にもわかりやすいよう 【マンガ編】 【きほん編】【インタビュー編】の3部構成でお届けしています。これを機に「ギフテッドをとりまく環境」に少しでも関心をもっていただき、 すべての人が生きやすい世の中 をみんなで作っていけたらと願っています。 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』 著者:楢戸ひかる 監修:北海道教育大学旭川校 片桐正敏教授 本書では片桐教授のほか、佐賀大学教育学部講師の日高茂暢さん、ギフ寺住職の小泉雅彦さんの3名をはじめ、ギフテッド当事者・保護者に繰り返し取材をし、その叡智を楢戸さんが結晶させた“富良野カムイ”という架空のキャラクターも登場。 ※本記事は、楢戸さんがナビゲーターを務め、カムイが答えるQ&Aページや 一般社団法人ギフテッド応援隊 と みんなの教育技術 編集部による座談会ページなどから一部抜粋し、編集しています。 \ ギフテッド【きほん編】 / 知ってるようで知らない、そもそもギフテッドって? 「ギフテッドとは、教育学や心理学で使われる用語で、一般的には 知的能力(知能)の高い子ども を指して使います。医学的な診断名ではないので、 医療機関を受信しても、ギフテッドと診断してもらうことはできません。 アメリカではギフテッドに関する項目に 定義 が記載されていますが、日本には定義はまだありません。しかしながら、2022年秋に 有識者会議から文部科学省への提言 がおこなわれ、今後の施策が示されるなど、日本でも議論がスタートしているところです」 IQや能力が高いひと=ギフテッド なの? 「ギフテッド」とは、知能が高いだけでなく、 “学校や日常生活で困ることがある” お子さんのことを指します。 「ギフテッドの教育整備が進んでいる 北欧のデンマーク では、2024/25年度からギフテッドの スクリーニングチェックリスト の活用を目指していますが、このチェックリストのもととなった研究では、ギフテッドに該当した子どもの84%が IQが120以上 だったという報告があるそうです。 知能が高いというのはギフテッドのひとつの特性といえます。そしてもうひとつ大切なポイントは、 “学校や日常生活で困ることがある” ということです。 知能が高くても、学校や日常生活で困っていない子もいるでしょう。あえてギフテッドというラベルを使うのは、実際に困っている子がいるからです。 ギフテッドは、 言語理解力や記憶力、好きなことに対する探究心 などは高いです。一方で、 日常のルーチンが定着しない、精神的にちょっと幼い と感じるケースが、よく見受けられます。 幼児期はとりわけ知識の高さに生活力が追いつかない時期で、そこにギフテッドによくある 完璧主義や正義感の強さ が結びつくと、 イライラが募って癇癪を起こす など、 周囲の人との軋轢 を生んでしまいます」 ギフテッドの子が感じている“生きづらさ”って? ギフテッドの生きづらさはさまざま。例えば… ・仲間に出会えずひとりで 孤独 を抱えている子が多い ・多くの人が自然に受け入れることができる物事に、 過剰に反応 してしまう。同年齢の集団の中で浮いてしまう ・ 自分に合った学習環境 が手に入らず、知能に見合った学習成績が得られない …など。 これまでの教育実践や研究から、ギフテッドの生きづらさを 大きく3つ に分類してみました。まず 1 と 2 について説明しましょう。 1. ギフテッドは「姿」が見えづらい 2. 「非同期発達」と「過度激動」が知られていない 3. ギフテッドと発達障害との混同(→次ページで解説) 1. ギフテッドは姿が見えづらい まず 量的 な問題として、 ギフテッドが少数派 であることから、 仲間に出会えず、孤独を抱えている子が多い ということが挙げられます。 内閣府がギフテッド(特異な才能のある子ども)と仮定したIQ130以上に該当するのは、約2.3%。ボリュームゾーンである約7割の多数派からは外れてしまいます。 小・中学校の頃は家と家庭が時間の大半を占めている時代です。 今いる世界の中で多数派でないことは、大人が思っている以上に辛い ものです。 そしてもうひとつは、 才能というのはそもそも見えづらい という点です。ギフテッドの中には、その子に合った学習環境を手に入れられず、 知能に見合うだけの学習成績が得られない子(アンダーアチーバー) もいます。 才能は学業成績だけでは測れませんし、子どもたちの中には 学校の勉強に興味を持たない という子もいます。まずは、 好き! やりたい! を尊重することが大切 です。 2. 「非同期発達」と「過度激動」が知られていない どちらも聞き慣れない言葉かもしれません。 まず 「非同期発達」 について。 いわゆる知的能力(認知能力や言語能力)、社会的な能力、情緒的な能力、運動能力は、一般的には 相互に関係しながら、年齢とともに発達 していきます。 この発達が同期している(相互に関係がある)状態に対して、ギフテッドの場合は 発達が同期していないように見える ことが多いため、「非同期発達」(発達の非同期性)と呼ばれます。得意な領域の発達が目覚ましいため、ほかの能力の発達と 大きな開き が出てくることがあるのです。 情緒面 では同年齢の子より 幼さ が見られることもあるほか、 運動能力も比較的ばらつきが大きい かもしれません。 そしてギフテッドの多くに見られるもうひとつの特徴である 「過度激動」 とは、文字通り、過度な感情や行動を示す状態。 多くの人が自然に受け入れることができる物事に過剰に反応してしまうなど、過度激動があると 集団生活の中で苦しい ことがあります。環境からの刺激に対して、 強い行動力・感情的な反応 を引き出すので、 同年齢集団の中で浮いてしまう ことも。 普通を主語にして物事を考えること自体が、時代遅れ。 その状態がギフテッド本人の葛藤になったり、周囲の人や環境との軋轢を生むことになる 可能性もあります。 そのため、ギフテッドのカウンセリングをする際には、過度激動に対して否定的に捉えるのではなく、 自分の過度激動に関して理解を深めることが重要視 されています。(※より詳しい過度激動の5つのタイプは書籍にて紹介) 「普通の枠内に収まらない強い個性を持ったギフテッドが、普通であることを求められる環境にいると 強いストレス を感じます。 日本では“多数派”側にいないと“普通”じゃないといわれがちですが、多様性が尊重される今の時代、 普通を主語にして物事を考えること自体が、時代遅れ 。いわゆる 普通でない仲間もたくさんいること や、 本人の辛さやSOSに周囲が気づくこと が大切ですね」 ギフテッド=発達障害 ではないの?? ギフテッドと発達障害は、分けて考えることが重要 です。なぜならば 支援ニーズが全く異なる から。 大切なのは「この子はなぜ生きづらいのだろうか? ギフテッドの特性があるからなのか? それとも発達障害の特性があるからなのか?」という 問い なんです。 「たとえば、発達障害の種類のひとつである ASD(自閉スペクトラム症) の特性である “こだわり” がある子は、興味関心のある分野についてかなり深い知識を持っているため、それを他者に滔々と話すことがあります。 これはギフテッドに見られる知性過度激動の【知的好奇心が強く、言語発達も早熟。時として、周囲と話が合わずに困る】という状態と、 一見すれば似たように 見えます。 しかしギフテッドは、総合的な学習の時間などの話し合いのある場面では、 イニシアチブを発揮しながら、友だちの意見を交えつつ問題解決に向けて学習を進めていくことが可能 です。 話題が噛み合っていないなと感じることもできますし、話をしている相手の感情なども感じ取ることができます。 ギフテッドとASDが決定的に異なる点は、ASDのある人は他者の感情や意図の読み取りが難しい ということです。 また、 ギフテッドの中には発達障害がある人もいて、このような人を2E (ツーイー)といいます。 発達障害とギフテッドでは 異なる支援ニーズ があり、 アプローチも異なり ます。したがって、 両者をしっかり分けて考え、両方の特性がある場合はそれぞれの配慮と支援を考える必要 があります。両者を同じだと考えたり、どちらか一方しかないと思い込むと、支援がうまくいかないことがあります」 ギフテッドの子への配慮や声がけ、どう気をつけたらよい? 義務教育のカリキュラムは、平均的な知的能力の人向けなので、 その環境に自分を合わせようと無理をしてがんばっているギフテッドがいる ということを、まずは知って欲しいです。 ギフテッドの強みと弱みは表裏一体。 子どもの個性を多角的な視点で捉えることが重要 です。 「仮にわが子が不登校で、その子が久しぶりに学校に行って帰ってきました。何て声がけをしますか? 頑張ったね! すごいね! という声がけをする気持ちはわかります。でも、 その声がけを子ども視点でチェックしてみて欲しい のです。学校に行ったことを褒めることで 暗黙のプレッシャー を与えていないでしょうか? 久しぶりに学校に行ったときには『大変だったね』『お疲れさま』『ご苦労さま』と、 まずは気持ちを汲みとり、いたわることが大切 です。 ギフテッドはとりわけ 環境に敏感 な子どもです。がんばって合わせようとしていても、そもそも合わない環境に置かれているので、フィットするのは至難の業。それを怠けている、我慢が足りないで片付けられてしまうと、 本当にしんどい のです。 特性である 強い集中力 は、強みでもありますが、 集中しすぎる(過集中)状態 のときはまわりのことが見えていなかったり、ほかのことはおろそかになりがちです。 つまり、 強みと弱みは表裏一体 。強みをうまく扱うことができれば強力な武器になりますが、一方で自分や周囲を傷つけてしまう可能性もあります。 現状、日本の教育現場では、どうしても弱みや困っていることに対する配慮や支援が優先され、 強みに対する配慮や支援の重要性 はあまり議論されていません。 ギフテッドへの理解が学校現場に浸透することで、 強みに対する配慮や支援という発想 が広がっていくことを期待しています」 ギフテッドについて理解し、多様性を受け入れよう! 今回の【きほん編】では、ギフテッドとはどんなものなのか、いくつか抜粋してご紹介しました。 まずは、ギフテッドは単に知能が高いだけでなく、学校や日常生活で困ることがたくさんあるということを理解しましょう。そして、社会全体で多様性を認め合って、誰しもが生きやすい環境を整えていけるよう、 関心を寄せていくことが大切 です。 次回 は、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』の著書であるライターの 楢戸ひかる さんに、日本のギフテッドの現状や課題について、さらにお話を伺います。 \ ご紹介した書籍 / 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊) 2023年10月3日発売 定価1,760円(税込)/192ページ 著:楢戸ひかる 監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授) 取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊 マンガ:黒川清作 著者:楢戸ひかる プロフィール ライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。 HP: 楢戸ひかる 記事一覧 >>
2024年02月05日近年、 「ギフテッド」 という言葉を耳にする機会が増えてきました。ギフト=贈り物という意味から、特別な才能を授かった人という認識の方が多いかもしれません。 しかし、ギフテッドの生きづらさや個性といった本質的な特徴を、 きちんと理解している人は少ない のが現状ではないでしょうか。 そこで、 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』 の著者で、 Webメディア「みんなの教育技術」 でギフテッドの担当をしているライターの 楢戸ひかる さんに、 ギフテッドを理解するうえで知っておきたいこと についてわかりやすく解説していただきます。(全3回) 今回の「マンガ編」では、著書に掲載されている“ギフテッドの生きづらさとは何か”がわかるマンガの一部を転載してご紹介します。 第1話: 「ふつう」がわたしを苦しめる 主人公は小川結衣(おがわ・ゆい)。生まれつき知能指数が高く、突出した絵やデザインの才にも恵まれたギフテッドの少女。一人っ子。 ※マンガのストーリーは、北海道に実在する「ギフ寺」(ギフテッドの子どもたちのための居場所)への取材に基づいたフィクションです。登場人物・場所・設定は、実在のそれとは無関係です。 ↓ココから読む(左から右) ギフテッドである主人公・結衣が、どんな場面で生きづらさを感じているのか少しご理解していただけたのではないでしょうか。 結衣はこの後、ギフの湯で自分の居場所を見つけ自分らしく毎日を過ごせるようになります。(マンガの続きは、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』に掲載されています。気になる方はぜひお手に取ってご覧ください) ギフテッドにとって、 “自分のことを理解し、理解してくれる仲間を作って、自分のやりたいことができる安心・安全な環境をもつ” ということが、 自分らしさを失わずに生きていく うえでとても重要になります。 続く 【きほん編】 では、楢戸さんのインタビューを通じて 「ギフテッドとは何か」 について、イチからご紹介します。 \ ご紹介した書籍 / 『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊) 2023年10月3日発売 定価1,760円(税込)/192ページ 著:楢戸ひかる 監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授) 取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊 マンガ:黒川清作 著者:楢戸ひかる プロフィール ライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。 HP: 楢戸ひかる 記事一覧 >>
2024年02月05日今回は、編集部に寄せられたお悩み、「わが子が他の子をいじめていた。その時、母親がすべきことは?」について、花まる学習会の高濱正伸さんにお話を伺いました。 ■いじめはなくならない ――わが子が他の子をいじめていた。母親にとっては衝撃的です。どう考えればいいんでしょうか? この話は、脳の進化の過程、とりわけ 「原始脳」 についての知識があると、理解が早いです。人間は、理性だけで割り切れるほど、単純な生き物ではありません。 【原始脳】 大脳辺縁系とも呼ばれ、動物として生きるための必要な機能を担う。感情が生まれる中枢であり、情動と密接に関係する部位と言われています ――「いじめの話」と脳の話はどう結びつくんですか? 人間を理解する前提として、「原始脳が司っている『人間らしい感情』は、全員が持っているものなんだ」と、知っておくことが大切です。 お母さんが、子どもを「心の底から愛している!」と感じるのも、この部分の脳です。一方で、怒ったら「自分でもどうしてここまでオーバーヒートしてしまうんだろう?」と、理性で制御がきかない状態になってしまう。それも、「原始脳だから」と捉えれば、納得できるわけです。 ――感情は「原始脳に由来する」ということですか? はい。それで私が言いたいのは、 「いじめはなくなりません」 ということです。なぜなら動物としての人間は、 残酷な生き物 だからです。 そこを「ないこと」にせずに、 まずは認める 。その上で、心のバランスをコントロールする。この二段階のステップが必要です。 つまり、いじめについては「絶対にあってはならないものだ」と言い出す人がいますが、「いや、いや。普通にあるでしょ」という話です。 「絶対にいじめちゃいけないのはわかっているけれど、どうしてだか腹が立つ」とか、「言っていることはわかるんだけど、なんかイラッとする」とか…。 「生きていればそういうことの連続で、それが自然なことである」 という人間理解が必要です。 ――「『いじめたい』」いう感情があることは人間としては自然だ」ということですか? こういった負の感情を飼い慣らしながら生きていくのは、大人だって難しいですよね…。だからこそ、お母さん方に考えて欲しいのは、 「いじめている側の子の根底にあるのは何か?」 ということです。 ――いじめている側の根底にあるのは、何なんですか? 不足や不安です。 「自分が認められていない」「欲求が満たされていない」 という時に、人は他者をいじめたくなります。 世の中に、満たされてる人、満たされない人がいるのは、当然です。お金持ちの人、そうではない人がいるのと同じで、必ずアンバランスになっています。 不満に思っている側は中傷したくなるし、いじめたくなるし、満足している人を嫌な目に遭わせたくなってしまうのです。 「社会で生きていく」 というのは、そういったことをどうかいくぐっていくのか? という話なんです。 ■もし子どもがいじめをしている側だったら? ――いじめている側の親になった時は、どうすればいいのでしょうか? 「わが子が加害者である」 という事実は、とてもショックです。けれども、その勢いのまま子どもを叱ってしまわずに、一呼吸置いて考えてみて欲しいのです。 「この子に何が足りていなかったのかな?」 と。親御さん自身で、問いを持って欲しいと思います。 ――「この子に何が足りていなかったのかな?」という問いとはどうすればいいですか? 特効薬は、 「1対1で、親が向き合うこと」 です。親も忙しいですから、子どもを理解する時間が少なくなってしまっていたのかもしれません。 子どもが本当に欲しいのは、ぎゅーっと抱きしめて、「あなたさえいれば、お母さんは何もいらない」と言ってもらう時間です。もしくは、「うん、うん、そうだよね、お母さんもそう思うよ」と、親にしっかりと話を聴いてもらう時間です。いじめている子は、結局、 根本的なところの愛が足りない だけなんです。 ――「根本的なところの愛」ですか? はい。その前段として、 「母親である自分自身が、大丈夫なのかな?」 というモニタリングがすごく大切です。 お母さんは、わが子がいじめっ子だと聞けば「子どものいじめを止めなければ!」と思いますが、 「その根本は、あなたの不安から始まっています」 と、言いたい時もあります。 ――何だか、耳が痛くなってきました。親はいつも不安なので… 大丈夫です。完璧な人なんていませんから。ただ、周囲に対して、 「これ以上は、言っちゃいけない」「ここは、引かなきゃいけない」 とコントロールができる程度には、自分をモニタリングできる余力は残しておいたほうがいいですね。 ――正直言えば「余力なんて、ありません!」という場合も多いと思いますが、どうすればいいでしょうか? 働くお母さんからの相談で一番多いのは、 「時間がない」 ということです。「子育ても仕事も、どっちつかずで中途半端になってしまい、自己嫌悪を感じている」という声もよく聞きます。 そんな時、私がよくお伝えするのは、 「(1)人との比較」「(2)やらされ感」「(3)コンプレックス」 は、3悪なんですよということです。 ――働くお母さんが持ってしまう自己嫌悪をどうすればいいですか? 働くお母さんは、自分を専業主婦のお母さんと無意識に比較していませんか? そんなお母さんたちに言いたいのは、「専業主婦と働く主婦は、スポーツの種別が違うんだ」ということです。 サッカーをやっている人が、「あっちは野球バットがあっていいな!」なんて言っても、意味がないでしょう? 「あなたは、サッカーをやっているんですよね?」と。「共働き」という種目でベストを尽くせばいいだけです。専業主婦のお母さんや自分の母親世代と比較してもしょうがない。 ――「仕事と家庭の両立」は幻想だと私も思います。でもどうモニタリングすればいいでしょうか? 働くお母さんなりの「安心できる自分」をどうモニタリングするかは、「今日の私、何だかイライラしている。どうしてかな?」と、あくまで 「自分の安心」 を中心に考えることです。 うまくやれているように見える人と比較をしない 。自分自身をちゃんと見る。それがもっとも大切なポイントです。 また、仮に他者から嫌なことを言われたら、「この人、心に穴があるのだろうな、可哀そうに」と思いながら、こなしていく力を持つ。嫌な上司に対しても「哀れだな」と思えば、腹も立たなくなるじゃないですか。 ――「お母さんを楽にするには、どうしたらいいんだろう?」と、記事を書きながら、いつも思います。お母さんが大変だから、子どもに「とばっちり」が行ってしまうのではないかと… 解決の基本は、シンプルです。 子どもと話をたくさんする 。その子との二人の時間を楽しむだけで充分です。それだけで、子どもは動物的に嬉しいのです。「解決策をちゃんと出そう」などと思うと、苦しくなります。 もし、「子どもと会話ができない」と思うのであれば、 「指示命令だけになっていないかな? 対話やコミュニケーションできていたかな?」 と振り返ればいいんです。 ――「子どもと話をたくさんする」でいいんですか? 自分の心持ちだけの話なんです。そして、今、子どもと対話やコミュニケーションができていない大人が多いのは、 あなた自身の問題でもない のです。 正直なところ、 教育の仕組みに大きな穴がある と思っています。端的にいえば、評価基準にさらされ続けている教育です。偏差値、いい大学、いい会社、高い年収といった数値指標ばかりを見せられているのです。 ――「教育の評価基準がそもそもおかしい」ということですか? そうです。他人の尺度で評価するのではなく、自分の軸を持つ。 自分の選んだ道が正解です 。子どもたちには、 自分の幸せを自分の心で決められる人 になって欲しいです。 そのためには、親がそういう メンタリティを獲得する必要があるんです。だからこそ、まずは 大人が自分の決めた場所で面白がる ことから始めてみませんか? いかがでしたか? 筆者は、高濱先生の取材を「高濱先生浴」と呼んでいます。高濱先生の肯定的で前向きな言葉や思考を浴びると、ものすごく元気になります。私自身、「自分の決めた場所で面白がること」から始めてみようと思います! ■今回お話を伺った高濱 正伸先生の著書 『どんな時代でも幸せをつかめる大人にする つぶさない子育て』 高濱 正伸 (著)/ PHP研究所(1,540円(税込)) 子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。あの時、子どもに「あれをやらせておけばよかった」と後悔したくない。そんな深い親の愛が時に暴走してしまうことがある…。 「どうしてできない!?」と子どもを責めたり、「そんな点数じゃ、○○中学なんて入れないぞ!」と脅してしまったり…。それで、子どもがつぶれては本末転倒です。 そんなお母さん、お父さんたちに意識して欲しいのが「伸ばすよりも、つぶさない子育て」。子どもとの適切な距離感がわかり、子育て不安が軽くなる1冊です。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)先生 1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒。 花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。 武蔵野美術大学客員教授。環太平洋大学(IPU)特任教授。
2024年01月17日前回、「『心を強くする経験』は、これからの子育てを考える時、一番のキーワードになります」と、花まる学習会の高濱正伸さんに教えていただきました。 そのためには、「『そういうこともある!』と、『事件にしない』という形で、親が子どもに状況を提示してあげる必要があります」とも。 では、最近増えている不登校は、どのように考えればいいですか? 引き続きお話しを伺いました。 ■不登校と言っても実態はさまざまある ――最近、不登校が増えていることについては、どうお考えですか? 「不登校」と一言で言っても、その実態はさまざまです。じつは、「 学校が『つまらない場所』 だから行きたくない」という子も一定数います。そういった子は、 大人になって自立さえできれば、不登校でも問題はない と思います。 ――「不登校だからダメ」と一概には言えない? もちろんです。ただ、長期の引きこもりの人たちの履歴を見ると、不登校からスタートしている場合も多いので、「入口の対応」という意味では「不登校であるという状態」をどう扱うかは大切です。長期化すると、「外に出るのが怖い」とか「朝晩逆転」といったことに繋がることもありますから。 ――不登校については、何から考え始めたらいいのでしょうか。 一言で言えば、 愛 です。ラポールです。 【ラポール】 ラポールとは、フランス語で「橋を架ける」という意味。心が通い合い、互いに信頼し合い、相手を受け入れている状態のこと。 今の学校の先生の中には、 子どもとの信頼関係が築けていない人 もいます。そんな先生のことを、子どもはどう見ているのか? 「この人は、授業をやらないとお給料がもらえない人。この人が困るから、黙って授業を聞くしかない」といった目で見ている可能性もあります。 先生に悪気がないのはわかります。でも、「そこに、【ラポール】~子どもとの信頼関係~があるのか?」という話です。 ■今の学校は古い⁉ ――先生と信頼関係が築けないお子さんにはどんな特徴がありますか? 知能が高かったり、才能がある子ほど、ラポールに敏感です。今、そういった子たちが、 学校の中に居場所を見つけられない という現実があります。 ――学校に居場所がない子どもはどうすればいいんでしょうか? 私は、この現実を受けて、花まるエレメンタリースクールというフリースクールをつくりました。昨年が一年目で、今は二年目なんですが、手ごたえを感じています。 ――フリースクルーでの手ごたえとは? 昨年からいる(1年目からいる)24人が、先輩面するんです。「俺も暴れていたから、わかるよ」みたいなことを言う(笑)。大人に言われるより、 「自分もそうだった」という先輩 (そう言っても子どもですが…)の言葉を届けることができることが大きいんです。 そういった仕組みを作ることが大事だったんです。 「現状の学校に収まりきらないタイプの不登校」に対しては、花まるエレメンタリースクールの教育実践を通して、ひとつの答えが出ました。 ――どんな答えですか? 子どもが心から安心できる居場所 を作ればいいのです。要は、 「仕組み」の問題 なんです。この話も何度もしていますが、 今の学校がもう古い んです。先生一人一人には、絶対に悪い人はいないんです。 ■日本の教育は、何が問題か? 高濱先生は、いまの日本の教育の問題点として、「粒のそろった兵隊を作る教育」なところと挙げています。そして高濱さんは、「上の言うことを忠実に聞く兵隊を作るのではなく、これからの教育では『自走する人間』を育てていく必要があるんです」と、言います。 ■居場所を見つけられない子どもに届く言葉とは ――居場所に辿り着けてないご家庭は、どうしたらいいでしょうか? 「子どもを癒やすのは何か?」という話です。それは、 「大丈夫。あなたは、私の子どもなんだから、絶対に大丈夫」 という 親の言葉 です。この言葉が、効きます。私は本当に、たくさんのいろいろなタイプの親子を見てきました。だからこそ、言えるのです。「あなたは、大丈夫。母さんの子どもだから、大丈夫」という言葉が、もっとも子どもの心に響くのです。 子どもは親から「大丈夫!」と言われたい し、その言葉を信じたいのです。毎日、家庭でしっかりと愛情を与えていれば、少々、外でつらいこと、嫌なことがあっても耐えることができます。 前話の話にも通じますが、多少の試練は、心の免疫をつけるために必要です。親元にいる時に、心の免疫をつけてあげる、と考えてみてはどうでしょうか? ■子どもが不登校になったとき母親がしてはいけないこと ――お母さん自身が、子どもに対して「あなたは、大丈夫」と言い切れるエネルギーがない場合もあると思うのです。その時は、どうすれば良いですか? そんな時は、お母さんが孤立しているのです。 「孤立した母」 というのは、現代の社会が抱える問題です。この問題の解決策として言えることは、「繋がりを持ちましょう」ということです。 子育てとまったく関係のない、趣味のサークルに入るのでもいいし、パートに出るのでもいいし、大学時代の友達に会うのでもいい…。繋がりをいくつか作ったなかで、誰か一人でいいから、心を開いて話ができる人、居場所を、お母さん自身が確保するのがもっとも大事です。 お母さん自身も、正解が欲しいわけではないでしょう? 「うん、うん、そうだよね」と話を聞いてもらって、安心したいのです。 ――お母さん自身の居場所を、まずは確保するのですね そうです。昔は、隣近所にそういう人がいたかもしれません。けれども、今は 「自分で意識して、居場所を確保しないとならない時代なんだ」 と、お母さんがしっかりと踏まえておくことが大切です。 子どもが不登校の時、「私がちゃんとしなければ!」と、一人で抱え込んでしまう人がいます。大切なのは、 一人で頑張ることではありません 。人と繋がり、自分自身の居場所をまずは見つけて欲しいです。 ――キーワードは「繋がり」ですね はい。居場所は、専門的な相談場所でもいいし、気のおけない友だちとカフェで喋るといった時間(心の置き場)でもいいのです。とにかく、 誰かと繋がって、孤立をしないようにする 。 子どもは、そんな母を見て、安心するのです。「お母さん、楽しそう!」と思うと、子どもも、なんとかなりそうな気がしてくるものですよ。 ――子どもが、「なんとかなりそうな気がしてくる」って大事ですね 私の経験から言わせてもらえば、 14歳までに自己肯定感に穴ぼこ ができなければ、大体のことは大丈夫です。14歳は、昔の元服です。人が育つ本質は、そう変わらないのです。 不登校で多少、勉強が遅れていたとしても、自己肯定感さえあって、「やっぱり俺、ちゃんとやるわ!」と本人が言い出せば、大丈夫です。 ――高濱先生に「大丈夫」と言っていただけると、何だか安心します。 「あの問題児が!?」と、いい意味で裏切られる子とたくさん出会ってきました。別人になりますからね(笑)。嘆き悩んでいたお母さん方が、「本当に『大丈夫』でした」とおっしゃる例も、たくさん見てきました。大学に入るのが1~2年遅れたとしても、そんなのたいした話ではありません。 ■高濱先生は三浪四留!? 高濱先生は、東京大学に入るまでに三浪していて、大学に入ってからは四回留年しています。二浪した人からは、「自分が、『人生、回り道した』などと言っていて、お恥ずかしい限りです。すいませんでした」と、謝られるとか…。 高濱先生のお話を聞いていると、自分の悩みが小さく感じられます……。 次回は、編集部に寄せられたお悩み、「わが子が他の子をいじめていた。その時、母親がすべきことは?」について、高濱先生にお話しして頂きます。 ■今回お話を伺った高濱 正伸先生の著書 『どんな時代でも幸せをつかめる大人にする つぶさない子育て』 高濱 正伸 (著)/ PHP研究所(1,540円(税込)) 子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。あの時、子どもに「あれをやらせておけばよかった」と後悔したくない。そんな深い親の愛が時に暴走してしまうことがある…。 「どうしてできない!?」と子どもを責めたり、「そんな点数じゃ、○○中学なんて入れないぞ!」と脅してしまったり…。それで、子どもがつぶれては本末転倒です。 そんなお母さん、お父さんたちに意識して欲しいのが「伸ばすよりも、つぶさない子育て」。子どもとの適切な距離感がわかり、子育て不安が軽くなる1冊です。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)先生 1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒。 花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。 武蔵野美術大学客員教授。環太平洋大学(IPU)特任教授。
2024年01月16日世の中がすごいスピードで変化している今、「何を道標にして、子育てをすればいいのかな?」と、悩むことはありませんか? 「子育ての最終的な目的は、たったひとつ。経済的、社会的、精神的に自立した『自分でメシを食っていける大人』にすること」と、30年言い続けている花まる学習会の高濱正伸さんにお話を伺いました。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ■攻撃的な子どもが増えている⁉ ――高濱先生のご著書『つぶさない子育て』というタイトル、衝撃的でした。高濱先生は、最近は、どんなことに関心をお持ちですか? 先日、『傷つきやすいアメリカの大学生たち 大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』(グレッグ・ルキアノフ著 ジョナサン・ハイト著/西川由紀子 訳)という本を読みました。本の内容は、ざっくりとこんな感じです。 ■『傷つきやすいアメリカの大学生たち: 大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』とは アメリカの20代で、自殺、うつ病、精神疾患が増えている。一方で、大学教授のちょっとした発言に対して、言葉狩りのような吊るし上げをした挙句に辞職に追い込んだりする、攻撃的で他罰的な子が量産されてる……。このような 状況が、なぜ起こっているのか? それを学術的に調べた本 ――一体、子育ての現場で何が起きているのでしょう? 一言で言えば、 「トラブル回避に重きを置く子育ては危険だ」 ということです。母親は、 「心配する生き物」 です。母親一人「だけ」が子育てのすべてを担うと、トラブル回避の子育てになってしまうのは当たり前のことです。 ――「心配する生き物」である母親は何が危険なのですか? 私は30年間ずっとこの話を講演でし続けています。 「怪我をしないように」「傷つかないように」「喧嘩をして欲しくない」 というような子育てをしていると、本当に危険です。 ――トラブル回避は、そこまで危険なことなのですか? はい。保育園、幼稚園、小学校では、さまざまな人間関係を築きます。もちろん、仲良しの友だちとの楽しい時間も大切です。けれども、「嫌な目にあった」とか「ちょっと価値観が合わない人がいる」といった時にどうするのか? この本の言葉を借りれば、 「心の免疫」 をつけるために保育園、幼稚園、小学校に通っているという時期は非常に重要です。トラブルを回避することで、大切な時代に心の免疫がつかないまま大人になってしまう子がいるのです。 ――心の免疫がつかないとはどういうことですか? 要するに、 無菌主義、除菌主義、喧嘩をさせない、いじめは絶対にあってはいけない …そのように考え始めることが、危ないんです。 たとえば、雪合戦で投げられた雪玉の中に石が入っていて、子どもが怪我をしたとします。その子の親御さんが学校に申し立てをすると、校長は保護者を一同に集めて、「今後、子どもたちには雪を一切触らせないと会議で決めました」と報告をするということが起こります。 たしかに、そうすれば「雪合戦での怪我」はなくなります。けれども重要なことは「雪合戦で怪我をしないこと」なのでしょうか? 私が危惧しているのは、「怪我をしないように」とトラブル回避をすることで、「雪合戦をすることで得るさまざまな経験」がすべて除去されてしまうことです。 ――確かに今の日本の教育現場では、そういう話が起こりえそうですね こうして話すと、あたかも笑い話のように聞こえますが、 日本でもずっと前からこのような状態ト なんです。私は、「教育の目的はそこなんですか?」と、講演会で訴えているのです。 ■社会全体がトラブル回避の思考回路に陥っている ――このご時世、「子どもを預かる立場」だと慎重にならざるを得ないのではないでしょうか? 預かる側に悪気はありません。「何かあったら、訴えられてしまう」という思考回路に陥るのは当然です。ただ、 「トラブルが起こらないこと」が最優先項目になった教育の先 に何があるのか? ということを、一度考えてみて欲しいのです。 日本だけではなくアメリカでもそうなら、 世界全体がトラブル回避の思考回路 に陥っている可能性も考えられます。 ――そんな時代、保護者はどうしたらいいですか? まず、「今の世の中は、トラブル回避に進みがちだ」と知っておくことです。そんな時代に子育てをしているのだから、 「子どもの心を強くする経験をさせる」 ということを、保護者は強く意識していかないといけません。 「心を強くする経験」は、これからの子育てを考える時、一番のキーワードになります。もう少し具体的に言えば、 「事件化しない」 ということです。 ――「事件化しない」とは? 何か困ったこと、嫌なことがあったとしても、「そういうこともある!」と「事件にしない」という形で、親が子どもに状況を提示してあげる必要があります。 周りを見渡してみても、強くてめげない人の基礎には、「いちいち事件化しない姿勢」「いろいろなことがあるけれど、乗り越えてきた」という経験が必ずあるものなのです。 初っ端から高濱先生のお話は、心に響きます……。 次回は、母親にとっては事件中の事件、最近、増えている不登校についてお話ししていただきます。 ■今回お話を伺った高濱 正伸先生の著書 『どんな時代でも幸せをつかめる大人にする つぶさない子育て』 高濱 正伸 (著)/ PHP研究所(1,540円(税込)) 子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。あの時、子どもに「あれをやらせておけばよかった」と後悔したくない。そんな深い親の愛が時に暴走してしまうことがある…。 「どうしてできない!?」と子どもを責めたり、「そんな点数じゃ、○○中学なんて入れないぞ!」と脅してしまったり…。それで、子どもがつぶれては本末転倒です。 そんなお母さん、お父さんたちに意識して欲しいのが「伸ばすよりも、つぶさない子育て」。子どもとの適切な距離感がわかり、子育て不安が軽くなる1冊です。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)先生 1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒。 花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。 武蔵野美術大学客員教授。環太平洋大学(IPU)特任教授。
2024年01月15日■前回までの話 家計が厳しくて教育費を削るべきかどうか…で悩むママたちは多くいます。そんな時に考えたい「習い事の始める時と辞め時」について。また子どもとお金の話をするときに「うちはお金がない」と言ってしまってもいいのか? という問題も横山先生が回答します。 >>1話目を見る 「節約は得意だけれど、投資は怖い…。でも、最近、 「つみたてNISA(ニーサ)」や「iDeco(イデコ)」 という言葉をよく聞くから、やっぱり投資はしておくべき?」 そんなママたちを代表して家計再生コンサルタントの横山光昭さんにお話しを伺ってきました。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■「投資はすべきか?」プロの驚くべき回答は? 楢戸 :直球で聞きます。投資ってするべきなんですか? 横山 :「するべきか?」というよりも、 「しなければマズい!」という人たちが多い のが現実です。「怖い」といった感情的な判断軸で、判断している場合ではないというか…。正直なところ、極論を言ってしまえば、「やらなければ、アウト」な人が多いんです。 楢戸 :え!? それって「貯金」というペースだけでは、必要な老後資金を貯められないという意味ですか? 横山 :そうですね。 「老後資金を、公的年金だけで十分賄えます」という人はレアケース だと思います。そうなると、ある程度は自分で用意しておく必要があります。 私たちは、 ライフプラン表 を使って、具体的に計算をします。そうすると「この貯金ペースだけでは、必要な老後資金を貯められない」という人が、大半なんです。 ■投資が初めての人におすすめの「パッチテスト」 楢戸 :厳しい現実ですね…。でもお金のことを、「ライフプラン」という長い時間軸で考えられる人は、まだ少ないと思います。 「節約を頑張れば大丈夫なのでは?」という目線の方に、「ライフプラン的に見て、投資をしなければ間に合わない」という話をしても難しい…。この目線の切り替えは、どうしたら良いでしょうか? 横山 :よくある話ですけど、 「投資を少額からやってみる」 というのは、王道だと思います。「つみたてNISA」や「iDeco」は、税制の優遇制度なのはご存知ですか? 入口としては、「つみたてNISA」の方が入りやすいですね。こういった制度を使って、まずは投資を少しだけ始めてみるんです。 楢戸 :NISAは「少額投資非課税制度」の愛称です。この制度には 「少額投資を、税金の優遇制度を使って推奨します!」 という国からのメッセージが込められています。 「少額の投資を体験する」という意味で、いわば 「投資のパッチテスト」 です。自分が投資に対して、どんな反応をするのか? それを知ることから始める…くらいのテンションだったら、「やってみようかな?」と思える人もいるかもしれません。 横山 :パッチテストいいですね! うちでも使います(笑)。本格的な投資を始める前に、まずはパッチテストで体験予想をしておくと心理的なハードルは下がります。 ■リアルに投資を始めた人の実感は? 楢戸 :以前、ウーマンエキサイトの連載で、横山さんの 「貯金感覚で始める3000円投資生活」 を特集したことがありました。特集を担当した編集者さんが、この特集を機に投資を始めたそうなんです。 その編集者さんは「最初は全然増えずに、放ったらかしにしていました。ある時、フッとみたら上がっていて、そこから勉強を始めました」と、おっしゃっていました。 投資に対して、頭で「減った時のこと」を考えるのではなく、行動を起こして、「増えた」というプチ体験をすると、投資をスムーズに始められると思います。いい意味での「欲」を持てるようになれば、興味も沸きますしね。 横山 :好奇心ですよね。 楢戸 :好奇心という言葉、いいですね! ▼「貯金感覚で始める3000円投資生活」 ■投資の「値動き」に一喜一憂しないためには? 横山 :私が推進している投資は、 「インデックスファンドを長い時間をかけて積み立てする」 というもので、そんなに怖くはないと思っています。 「家訓として言われているので、僕は絶対に投資はできません!」と、おっしゃる方も、一定数いらっしゃいますが…。そういう方は、「投資」と「投機」を混同されているのかもしれませんね。 楢戸 :インデックスファンドを長期で積み立てするというのは、世の中のお金の流れに乗り遅れない、最も手軽な方法だと私は思っています。 横山 :ただ、コロナショックもそうでしたが、「半年」「1年」といった短いスパンで見てしまうと、値下がりをすることもあります。投資に慣れていないと、この最初の値動きのアップダウンで、「やっぱり投資は無理」と思ってしまう人がいるのかもしれません。 繰り返しになりますが、私が推奨しているのは、 10年単位で保有をする「長期投資」 です。10年単位のスパンで見れば、値動きしつつも、資産は増えていくとは思います。今、個人投資家の数は日本の人口の6分の1くらいかな? もう少し増えてもいいと思います。 ■夫に「お金の話」をどう切り出すか?の大問題! 楢戸 :最後にひとつ聞いていいですか? 投資に対しての価値観の擦り合わせにも繋がると話ですが、結局のところ「お金の話」は、ママひとりでは、解決できないと思うんです。 でも 「お金のことを、夫にどう切り出すか?」 。このハードルは、とてつもなく高いと思うんです。そんなママたちに、アドバイスをお願いします! 横山 :とても難しい問題ですね。旦那さんにお金の話をする際に、私がお勧めしているのは 「実際の数字を見せる」 ということです。 「今月の収入は〇〇円で、支出の内訳はこうでした」みたいな一覧表を作るのです。具体的な数字があると、男性はイメージが沸きやすいと思います。 楢戸 :感情に訴えるのではなく、相手が理解しやすい資料を用意するということですね。あとは、 「ひとりで不安にならない」 ってことですかね? 横山 :それは、大いにあります。それから、子どもにも一緒に話に参加してもらう。 楢戸 :子どもに「わが家のお金の話」をすることは、 「自分は、この家の大切な構成員なんだ」 という子どもの自尊感情を育てることにも繋がると思います。 横山 :そうですね。私自身も、子どもたちに対して、「みんなが『株式会社 横山』のメンバーなんだ!」という気持ちで接しています。大人は固定概念に囚われがちなので、子どもからお金について新鮮な目線を教えてもらうこと、今でもありますよ。 【この記事のまとめ】 投資をしないと、アウトな人が多い。横山さんの言葉は、かなり衝撃でした。でも、お金を「ライフプラン表を使って人生の最後まで考えてみる」という視点は、大切ですね。 昨年(2022年)12月には、NISAの制度改正も発表になり、これから投資分野はますます熱くなりそう…。ひとりでお金のことを悩むのではなく、家族でお金の話を共有しつつ、具体的な行動ができると良いですね! ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月12日■前回までの話 家計のプロである横山光昭さんによると、「家計費でここはまだ削れる」というところが2つあるといいます。ひとつは携帯代金。もうひとつは保険。どこに、どうやって情報を取りに行けばいいかが、わからない…。そんな方はどうすればいいのでしょうか? >>1話目を見る 「これからどんどん教育費かかるよね…でも少しでもお金削りたいなんて親失格かな…」そんな風に悩むママが多くいると聞きます。 全然、親失格なんかじゃありません! かえって「どんなに家計が苦しくても、教育費だけは削らない」などと、ママがひとりで節約を抱え込んで頑張る時代は終わりました。 今後、教育費のことをどんなふうに考えていけばいいのか? 6人のお子さんがいる「お父さん」でもある家計再生コンサルタントの横山光昭さんにお話しを伺いました。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■習い事の辞め時シグナルを見逃さないためには 楢戸 :教育費について、横山さんはどんなお考えなんでしょうか? 横山 :わが家の指針として間違いなくやっていることは、教育費について子ども自身とよく話し合って、 子どもの意向を聴く ということです。 たとえば、大人もそうかもしれませんが、習い事は「やりたい!」と思った時点が、「やりたい気持ちがMAX」なんです。けれども半年くらい経ってみると、「思っていたほど、面白くないな」といったことってありませんか? 「習い事に、少し遅れて行く日がチラホラでてきた」…。そんなところに、 「習い事、辞め時のシグナル」 は出ています。子ども側としても、「あれだけ『やりたい!』と言った手前、すぐに辞めたいとは言い出せないな…」と、思っている可能性もあります。「習い事の辞め時シグナル」を見逃さないためにも、子どもの意向を聞くことは大切です。 ■習い事を始める前に親が覚悟すること 楢戸 :今の話のポイントとして「やりたい気持ちがマックスなら、やらせてみてもいい」というのは、ひとつ、ありますか? 横山 :ただ親の都合で「お金がないから、途中で辞めさせる」というのは違うと思います。習い事を始める時には、親は 「月謝を払い続けられるかどうか?」 をよく考えて、覚悟を持って通わせ始めないといけないと思います。 楢戸 :そういった「家計の舞台裏」を、実際に子どもに話してみるというのはどうですか? たとえば「うちの家計は、〇〇円です。あなたの習い事代は〇〇円、1ヶ月の食費の1/4と同じくらいの金額がかかっています。お母さんも節約を頑張って月謝を払っているので、あなたの気持ちが変わったら早めに言ってね」といった感じです。 横山 :いいですね! お金の話を家庭内でする習慣 があると、子どもの視点が違ってきますよ。たとえば、うちの中学生の子は、自分からこんな提案をしてきました。 「A塾は16,500円で、B塾だと19,000円くらいかかる。内容的にはB塾の方がいいので、少し高いけどお願いだから通わせて」と。本人が、塾の内容と金額の両方を見て、自分で選んでくれるのは助かります。 楢戸 :子どもが 「自分で考え、選択をする」 という場面は、尊重したいですね。そのためにも、「わが家のお金の話」を、幼い頃から子どもに話していく必要があると思います。 ■「うちはお金がない」と言っていいの? 横山 :子どもにお金の話をする時に注意して欲しいのは、 「ネガティブな言い方をしない」 ということです。「うちはお金がないから、〇〇できない」といった言い方だと、子どもは心配になってしまいます。 わが家でお金の話をする時には、「〇〇をするためにはどうしたらいいかなぁ? みんなで一緒に考えようぜ!」という“ノリ”で話をします。 楢戸 :なるほど。ネガティブなトーンではなく、 「これを達成するために、みんなでやろう!」 という明るいトーンで話をするのですね。「お金の話」をする時の大事なポイントです。 横山 :子どもたちに家計をオープンにした副産物として、「いくら言っても水をジャージャー使っていた子が、歯磨きをする時は蛇口を締めるようになる」みたいな循環が、わが家では生まれています。 ■子どもの前でお金の話をするのは悪いこと? 楢戸 :そうは言っても、家庭内で「お金の話」をすることに、抵抗がある人もいると思います。 横山 :たしかに少し前の日本では、「お金のことを話すことは、はしたないこと」といった価値観がありましたから…。でも、家庭内でお金の話を聞かずに育った大人は、今、困っていると思うのです。 楢戸 :この記事を読んでくださっているママは、もしかしたらひとりで「教育費を何とかしなきゃ!」と思っていらっしゃるかもしれません。 横山 :ひとりで抱え込むのは、よくないですね。 楢戸 :「子どもにお金の話をするのは、子どものためでもある」ということを、今日は知って欲しいと思います。横山さんに教えていただいた「お金の話の伝え方のポイント」に注意しながら、少しずつ、子どもに「わが家のお金の話」をしていけると良いですね。 【この記事のまとめ】 子どもは、大人が思っているよりずっと、 「自分の家のこと」に敏感 だと思います。家族の一員として、習い事代といった「自分に関係のある話」あたりから、少しずつ、「家のお金の話」に触れていく…。そうすると、子どもは、実感を持ってお金に慣れていけるのではないでしょうか? 次回は、「節約は得意だけれど、投資は怖い…」というママに向けた投資のお話。お金のプロであるFPの横山先生に直球で「投資ってするべきなんですか?」と聞いてみました。すると返ってきた答えは衝撃の一言でした。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月11日■前回までの話 マネーライターである楢戸さんは以前収入減に陥った過去が…。そんな家計のピンチに初めて家計管理と向き合うことに。そんなピンチがあったからこそ、自信につながったという。そんな楢戸さんが「子供が10歳になるまでに、一度、真剣に家計と向き合うことは、おすすめです!」と話す。 >>1話目を見る 節約の記事は、よく見かけます。試しに、今、「家計 節約」と検索してみたら、節約案の筆頭に「スマホを格安スマホに乗り換える」とありました。 でも、実際の多くの人は「知ってはいるけど、行動に移せない」という段階なのではないでしょうか? そこで、どうしたら実際の行動に移せるのか? を中心に、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、お話しを聞いてきました! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■携帯代金は半分の人が見直す余地がある!? 楢戸 :今、家計が不安な人は多いと思うんです。家計のプロから見て、「ここをチェックしてみて!」という部分は、どこでしょう? 横山 :筆頭は、 携帯代金 です。ここ2、3年で、携帯費用を抑えられている方も増えてはいますが、まだ半分くらいの方は見直す余地があると思います。 楢戸 :携帯代金は、どんなふうに見直せば良いのでしょう? 横山 :(自分が入っている)大手キャリアに「携帯代金の割安プラン」を相談に行っても、料金はそう大きくは変わりません。まずは、家電量販店の「格安携帯」というコーナーに行ってみて下さい。 楢戸 :家電量販店に行って、「格安携帯かどうか」というのは、わかるものですか? 横山 :最近は、コーナー自体が目立つようになっています。担当者の方が「格安」という法被を着ていたり、旗が立っていたりするんです。 ■携帯を変更する「心理的ハードル」が高い人は? 楢戸 :なるほど、そうなんですね…。削りどころを質問しておいてナンですが、やっぱり「携帯を変える」という心理的なハードルは、かなり高いような気もします…。 横山 :そんな方は、こんなふうに考えてください。 「家電量販店には、現状を相談に行く」 と、思ってみるんです。最初から「携帯を変えるぞ!」と思っていると、お店に行くこと自体が億劫になります。 たとえば、買い物に出たついでに、ふらっとお店に寄ってみる。そこで、「私は、こんなふうに携帯を使っているけれど、どんなプランがありますか?」と、話を切り出します。 ギガ数が多い方がいいのか、通話があった方がいいのか…。人によって携帯の使い方は違いますから、自分にとってベストな使い方と、それにかかる料金を聞いてみましょう。 楢戸 :「携帯を変える」ではなく、「まずは相談する」で、良いんですね。安心しました。 ■お得情報はアップデートしないともったいない! 横山 :最初の一歩は、「携帯料金が、安くなるんだ」ということを「知る」だけでも充分です。「料金が安くなる可能性がある」と 「知る」 だけで、気持ちや意識は変わってきますから、キャッチする情報も違ってくるんです。 相談に行った際には、 「デメリット」 も、一緒に聞いておきましょう。デメリットを聞いて、「相談はしたけれども、変更しない」という結論でも大丈夫です。 大切なのは、「格安携帯って、繋がらないんでしょ」などと、頭の中のイメージだけで判断をしないことです。実際に足を運び、具体的な料金を知り、メリットとデメリットを比較検討しながら、自分で考えてみるということが重要です。 楢戸 :お得情報はアップデートされているので、「知らない」のはもったいないですね。「情報をチェックに行く」、それくらいだと気が楽です。 横山 :わが家は今、携帯を7台使っていますが、7台で、月額料金は、8000円弱だったと思います。 楢戸 :7台で、8000円弱!? 横山 :ここが、 「工夫」 なんです。たとえば、家や会社にWi-Fiがあれば、ギガ数がかかるものは、そこで使うようにする。そうすると、「毎月、私は10ギガ使うかな?」という自分に対しての問いが生まれます。こんなふうに、節約は、情報力と自分なりの工夫で何とかなる部分もあることを知って欲しいですね。 ■1回頑張るだけで効果が持続する費目は? 楢戸 :携帯料金の次にチェックする費目はありますか? 横山 :次に検討して欲しいのは、 保険 です。保険は、「固定費」の代表格ですから。保険の見直しは労力かかりますが、 「1回だけ」頑張ればいい んです。 楢戸 :1回だけ!? 横山 :固定費の見直しは、1回見直しさえすれば、あとは気を抜いていても効果は持続します。そういう 「面倒だけれど、確実に効果がある」 という節約を、意外と皆さんやってないんです。 楢戸 :なるほど! では、「保険の見直し」は、どのようにすればいいのでしょう? 横山 :携帯の見直しと似ていますが、プロに聞くのが早くて楽です。信頼のおけるファイナンシャルプランナーに相談に行くのが近道だと思います。 楢戸 :皆さんのニーズとして、「自分が入るべき保険って、本当にこれでいいのかな?」というのはあると思うんです。けれども、どこに、どうやって情報を取りに行けばいいかが、わからない…。そんな「保険難民」の方、多いと思います。 横山 :うちは、「金融商品のセカンドオピニオン」サービスもしています。「提案されて保険に加入したものの、どうも腑に落ちない」といったモヤモヤを一人で抱えている方って、思っている以上に多いんです。 たとえば… 横山さんのところで、保険の見直しの相談は1回5,000円。死亡保障、医療保障の内容チェック、貯蓄性のある商品の整理整頓などをしてもらえます。 楢戸 :そういった方たちも、ある意味「保険難民」ですね。 横山 :少し暑苦しいのですが、私は、「そもそも、どこに保険をかけるべきなのか?」という「『保障を買う』という根本の考え方」をお伝えする資料も渡すようにしています。 「加入している保険の意図」と「自分の意図」が合っているかどうか? を、御自身で考えてみるために、最低限の基礎知識は必要だからです。 楢戸 :普通の人が、「保険証券を見て、保障(補償)内容を読み解き、自分に合っているか判断する」というのは、難易度が高すぎですね。 横山さんは、保険証券とその方との「通訳」をしてくださっているんですね。たしかに、保険の見直しは、プロ(通訳)なしだと厳しいのかもしれません。 【この記事のまとめ】 家計が不安だと、とっつきやすい節約として、やみくもに「買い物を控える」という選択をしがちです。けれども、それが守れなくて落ち込んでしまうことはありませんか? 今回、横山さんに教えていただいた節約のキーワードは、 「自分で考えてみる」 だと思います。もちろん、必要に応じて、プロの手を借りてOK! まずは、「家計について、ゆっくり考える時間を作ること」から始めようと思います。 次回は、教育費のお話。「教育費を削りたいなんて親失格かな…」そんな風に悩むママが多くいると聞きます。ひとりで節約に悩むママに向けて、家族で取り組む方法を教えてもらいます。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月10日物価は高くなるし、エネルギーも高騰。それなのに、お給料は全くあがる気配がない…。そんな閉塞感の中で、将来への不安を感じている人は、多いのではないでしょうか? でも、大丈夫! ピンチは、チャンスでもあるんです。これまで、「ちゃんとしなきゃ!」と思いながらも、何となく先送りにしていた「お金のこと」と、今、向き合ってみませんか マネーライターである私・楢戸ひかるがお金のプロである横山光昭先生に今のこの時代をどう乗り切っていけばいいのか、直球質問した対談をお送りしていきます。 ■マネーライターなのに家計がヤバい! まず最初に私自身のことを少しお話させてください。 じつは、私自身、30代の時に、 「毎年、世帯年収が減り続けた時期」 がありました。理由はふたつあって、夫の会社が、「3年間で社員の年収を5%引き下げる」と決めたこと。加えてフリーランスのライターだった私が、軸足を仕事から家庭に移したこと。 長男ひとりのときは共働きをしていましたが、夫の転勤先の北海道で双子を授かり、(ほぼ)専業主婦になりました。軸足を仕事から家庭に移したのだから、収入減は当たり前ですが、大きな打撃でした。 でも、今、考えると、家計がピンチになって、ようやく初めて家計管理と向き合えたんです。当時の私は、結婚しても、長男を産んでも、20代の浪費体質&どんぶり勘定を引きずったまま、30代後半を迎えていました。マネーライターなのに…です。あのとき、必要に迫られなかったら、今でも、放漫家計だったと思います。だから、「必要に迫られる」って、大切です。 ■収入源のピンチを乗り切った今思うこと な~んて、恰好いいことを言ってみましたが、収入激減は、すごく、すごく不安で、亀が手足を甲羅に引っ込めるような気持ちで、毎日を過ごしていました。 お金を使うこと自体に強い罪悪感があり、1000円のランチに行ったことを、「無駄遣いしちゃった」と、3日後悔するような日々。お風呂を沸かすのを節約するために、洗面所で息子の手足を洗ったこともありましたっけ…。 でも、家計が苦しい時期を何とか乗り切ったことは、その後の自信になりました。そして、思ったんです。 「あの時に、家計と真剣に向き合って良かった!」 と。 「お金を貯められるのは、子どもが10歳まで」 というフレーズ、聞いたことありませんか? 春からわが家は子どもたちが大学生2名と社会人になりましたが、「それって、本当だな~」と、つくづく思います。放漫家計のままだったら、教育費が山場の今、もっと苦しかったと思います。 そんな私だからこそ、「子どもが10歳になるまでに、一度、真剣に家計と向き合うことは、おすすめです!」と、言いたい。今、閉塞感を抱えてるママたちに、「ピンチはチャンス!」とエール送りたいです。 次回は、節約案の筆頭にある「スマホを格安スマホに乗り換える」。「知ってはいるけど、行動に移せない」という人のために お金のプロの横山光昭先生に対策をお聞きしました! ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 90日で「貯める力」をつける本 (横山光昭著/ディスカヴァー・トゥエンティワン 1540円(税込)) 「赤字家計」「貯金ゼロ」「低収入」の家計を再生してきた伝説のメソッドが超リニューアル! なぜ、今、「貯める力」なのでしょうか? 1つ目は 「リスク対策」、2つ目は「お金を増やすため」。 「貯める力」は、一生お金に困らない“基本の力”となります。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで24,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 イラスト:ありま
2023年07月10日■前回の木村先生のお話 これまでは学校も親も「正解通りにできること」を、教育の目標に掲げてきました。「これから育てるべきは、自分の頭で考えることができる子」と話す木村先生。でもそういう子どもを育てるためにはどうしたらいいの? 「自分の頭で考えることができる子」を育てるべきと木村先生は言います。けれども、一方で、中学受験など低年齢化した「受験熱」は、親たちの間でヒートアップしている感もあり、目先の詰め込み教育に追われる日々を過ごすママも、現実には多いのかも!? 「学歴だけでは生きていけない」と頭ではわかっていても、受験の波に巻き込まれたら最後、自分を見失ってしまう…。「私の子育て、どこに向かって何を頑張ればいいんですか?」再び読者Aさんと木村さんの会話に戻りましょう。 ■子どもに正解を言うと対話が終わってしまう 木村先生 :今までの受験社会で評価されてきたこと「インプットをした『正解』を、どれだけ正確にアウトプットできるか」は、これからの社会を生きていく上では、優先順位の上位ではないと思うのです。 Aさん :では、どうしたらいいのでしょうか? 木村先生 : 「ママが「勉強させなければ!」と思うのは当然…でも勉強すれば幸せになれる?」 でお話ししたとおり、子どもを思いどおりに動かす子育てをしている保護者の方もいるでしょう。でも言うことを聞かせようとするから子どもは、そっぽを向くんです。それをやめれば、子どもは「ねえねえ」と勝手に寄ってきます。 どういうことかというと、子どもが何を言っても、一言も口をはさまず、とにかく子どもの言うことを 「聞く」「受け止める」 ことから始めるんです。大人だって、自分の言うことを聞いてくれそうだと思ったら、話をしたくなりますよね? たとえば「今日、学校でAちゃんが暴れて大変だった。何とかして!」と言ってきたら、まず「ああ、そうなんだ」と受け止める。いったん受け止めることをせず「そんなことを言っちゃダメでしょ!」などと、いきなり正解を言ってしまったら、それで対話は終わってしまいます。 ■ゲーム嫌いなママとゲームの話しかしない子どもの場合 Aさん :対話が大切なんですね。 木村先生 :はい。 「『正解通りにできる子ども』は生き抜けない…今の学校がつらい子どもにできること」 でお話しした新学習指導要領(※)のキーワードは、「主体的・対話的で深い学び」です。学校の先生であれば、このキーワードはみなさんご存知だと思います。国が、どの方向に向かって、教育を組み立てようとしているのか? それは、ママたちも知っておくと良いかもしれません。 Aさん :主体的・対話的で深い学び…難しいですね。親は、何をすれば良いのでしょう? 木村先生 :難しく考える必要はないです。たとえば、ある子どもはゲームの話だけはよくお母さんにしていたそうです。でも、ゲームが嫌いなママはゲームの話なんか聞きたくない…。口を開けば「いつまでやっているの!」「宿題は?」という小言や指示命令ばかりだったそうです。 「そうなんだ」と受け止めるという私の話を聞いたそのママは、意をけっして子どものゲームの話を(我慢して)最後まで聞いたところ、息子さんが「ねぇねぇ」と言って面白い動画をお母さんに見せに来てくれたそうです。 子どもの話を受け止めただけで、親子の関係性が変わり、対話が生まれたんです。親が受け止めると「おお、自分の話を聞いてくれた!」と、子どもは思いますからね。 ■指示命令をしてきた親子関係は急には変わらない 木村先生 :これで第1段階クリアです。ようやくスタート地点に立ちました。 Aさん :スタート地点!? 木村先生 :指示命令を続けてきた「これまでの長い親子関係」があるので、すぐに劇的な変化が訪れることは、まずありません。時間がかかるのです。でも、スタート地点に立てれば、だんだん、子どもの言うことを受け止めることができるようになっていきます。それが日常的に自然にできるようになったら、次の段階に行きましょう。 Aさん :なかなかに険しいですね…。 木村先生 :そりゃ、そうです。次の段階は、たとえばニュースを見ながら「お母さん、これがわからないんだけど、あなたはどう思う?」と質問してみます。ただし「すぐに子どもが素直に答えてくれる!」みたいな変な期待は、最初から持たないことです。 「あなたは、どう思う?」と聞いても「別に…」「知らない」「わからない」しか子どもが言わないようなら、 しつこく追いかけないのもコツ のひとつです。子どもが逃げているのですから、察知して、追いかけるのはNGです。「残念、バイバーイ!」と、あっさり引き下がりましょう。しつこくすると、せっかく築いた関係が元に戻ってしまいます。 ■子どもとの関係がマイナスのスパイラルに陥ったら Aさん :子どもは、野生動物みたいですね…。 木村先生 :大空小学校でもありました。せっかく教師が自分を変えて、子どものほうから来てくれるような関係性ができてきたのに、あるとき子どもから「うるさい、そんなん知るか!」と言われた途端、「ちょっと待て!」などと言って教師が怒ってしまった。そこまでにほんの少しできてきた関係性の絆が切れてしまうと、マイナスのスパイラルに陥ってしまうこともあります。 Aさん :そんな時は、どうしたら良いのでしょう? 木村先生 :笑いで終わらせる。しつこく追いかけない。私は学校でも、「それは残念!」などと言って軽くおどけながら子どもから離れるようにしていました。そうすると不思議なもので、「何で人がしゃべっている最中に、出ていくねん」とぶつぶつ言いながら子どもが帰ってきたりします。 軽い笑いに変えると、「あなたは悪くないよ。そういうこともあるよね」という空気になるんです。その場が軽くなるような言葉をいくつか持っておくといいですね。関西人は、ちょっと有利かな(笑)。 Aさん :本当にそうですね。 木村先生 : 今、この記事を読んでいるママたちは「現状を何か変えたい!」と思っている時なのかもしれませんね。すごいチャンスの瞬間です。現状を変えたいと思った時が、大人一人ひとりが自分で考え始めるチャンスなんです。「自分は、こう育ったから」「夫が、言うから」「ママ友が、こうだから」ではないんです。 「自分がこの子だったら、どうしてほしい?」「自分が、今、やっていることは、この子にとってどうなんだろう?」 こんなふうに大人一人ひとりが常に自分に問い続けて、自分の頭で考え始めてみることが大切なんです。 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 7.子どもに言うことを聞かせようとしない。話を受け止めることから始める 8.新学習指導要領のキーワードは、「主体的・対話的で深い学びの実現」である 9.大人一人ひとりが、自分の頭で考え始めることが大切 いかがでしたか? 子どもが自分が思ったようにならない時、つい「自分の言うことを聞かない子どもが悪い」と思ってしまいがちです。けれども木村先生のお話しを聞くと、「あれ? じつは私自身に問題があった!?」と、ハタと我に返ります。 自分の頭で考えられる子を育てるためには、まずは大人が自分の頭で考え始めることが大切…。いやぁ、本当にそうですよね! 木村先生の取材をすると、毎回、私自身(いつもよりは)深く考えます。そして木村先生と一緒に、学びを深めていきたいと思うのです。 ※文部科学省: 学習指導要領「生きる力」 学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもの学びが進化します。新しい学習指導要領、スタート。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは? 【木村泰子(きむら やすこ)先生】 映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集める。
2022年02月03日■前回の木村先生のお話 これからの時代を生き抜くためには母親も子どもも、失敗しても立ち直れる「レジリエンス」が必要。しかし親が過保護になって必要以上に子どもに関わり続けてしまうとこの力は伸びません。そうならないためには…? つい、子どもに口うるさく行ってしまうのは、ママが不安だから。ヘリコプターペアレント(ヘリコプターのように子どものまわりを旋回し、管理・干渉し続ける保護者を意味)のような子育てをしないためには、「周囲の同調圧力に負けずに、子どもを信用するが大切」と木村先生に教えていただきました。再び読者Aさんと木村先生の会話に戻りましょう。 ■勉強しない子どもを信じることができる? 木村先生 :「勉強をしない」、「素行が良くない友だちと付き合ってる」…。こういったことを長い人生の中で経験することは、悪いことではないと私は思っています。子どもが成長する最中には、山あり谷ありであることの方が自然です。「わが子は今、回り道をしているけれども、最終的には自分らしく幸せな大人になっていく」と、信じていればいいんです。 Aさん :その状況で、子どもを信じるって、とても、とても、難しいと思います…。 木村先生 :どうして? だって、自分の子どもでしょう? ゲームばかりしていても、親に迷惑をかけていても、自分の子どもでしょう? その子は、世界にたった一人しかいない、わが子でしょう? 「自分には、最終的に帰るところがある」 と、子どもが思えていること。これが、とても大切だと私は思うのです。そのためには、「どんなことがあってもお母さんは、あなたの味方だよ」と、ママ自身が子どもを信用するしか方法はないと思うんです。 ■勉強しない子ども自身が困っている可能性もある Aさん :子どもに、「お母さんは、あなたの味方だ」ということが伝わっているのかな? というのがわからなくて…。どう伝えればいいのでしょう? 木村先生 :たとえば、子どもが「勉強したくない」と言ったとしましょうか。そんな時、親は心配だから「なんで?」と聞きます。聞かれた子どもは、自分の中に原因があると考えて、不安になったり、塞ぎこんだりしてしまうのです。 そんな時は、発想を転換する! HOWを使うんです。「どうしたら、あなたが楽しく勉強ができるようになると思う?」「どうしたら、あなたが勉強したいと思うようになるかなぁ?」と、子どもに聞いてみるのです。 Aさん :なるほど。声かけをそんなふうに変えていくことから始めればいいんですね。 木村先生 :子どもに対して「指示命令」をするのではなく、 「問いかけ」 をしてみる。そして、その問の答えを子どもから言ってもらえる。親は、そんな大人になればいいのです。 「子どもが、勉強をしない」と親が困っているとしたら、子ども自身も、本当に困っていることが多いのです。 「(本当は勉強したいと思うのに)、その方法がわからない、向き合い方がわからない」 といった感じでね。 子どもが困っている原因は、じつは本人の中ではなくて、案外、周りの環境の中にあるんです。私が校長を務めていた大空小学校(映画『みんなの学校』の舞台となった学校)には、学校に通えなくなった子どもがたくさん転校してきました。でも、大空には通えるんです。「違いは、何?」と聞くと、「空気が違う」と、子どもたちはみんな言っていました。 Aさん :空気…。子どもたちは、きっと、今の世の中や、学校の空気がつらいんですよね。 木村先生 :今の学校の空気に入ろうとしたら、自分をガチガチのスーツケースの中に閉じ込めなければならない。でも、それを風呂敷に変えたら? 風呂敷は、どんな形にも自由自在になるでしょう? だから「子どもを育てる」のではなく、「子どもが育つ」。その周りにいる自分たち自身を少しずつアップデートしていこう! 大空は、そんな大人の集まりでした。 Aさん :子どもを主語にして、自分が変わっていく…、そんな感じでしょうか。 ■10年後の社会で「生きて働く力」とは 木村先生 :そうですね。だからこそ、「勉強をしないさい」と子どもに言うときには、「勉強って、何だろう? 学びって、そもそも何だろう?」といったことを、ママたちには自分の頭で考えてみて欲しいのです。下記は、私が文部科学省から聞いた文言です。 「みんなと同じことができる」 このことが評価される時代は終わった。 他人と違うことに価値のある時代になってきた。 木村先生 :文部科学省は10年に一度行う「学習指導要領」の改訂をし、小学校では2020年度から既に新しい学習指導要領(※)での指導が始まっています。 ところで、今の学習指導要領の下で育った子どもたちが大人になる、10年後、20年後は、どんな世の中になっていると思いますか? Aさん :10年後、20年後…。そうですね、学歴があることよりも、「自分が何をやりたいか?」を追求していける子が生き抜いている気がします。 木村先生 :本当にそうですね。今の学歴社会、受験社会が、どこまで通用するのかな? と、私は、思います。 Aさん :でも中学受験など受験が低年齢化して、ママたちがヒートアップしている現象もある気がします。この歪みが、どこで調整されるのか? いつ世の中が変化していくのかが不安です。 ■「正解通りにできること」が目標? 木村先生 :Aさんが世の中の変化を感じていないのであれば、残念ながら娘さんが通っている学校は、変化をしていない可能性もありますね…。 私の肌感覚としては、「全国の学校」という日本の全体像で見れば、随分と動き始めている印象です。一方で、旧態依然のまま、まったく変化をしていない学校があるのも事実です。たとえば、オリンピックがありましたが、現状はそのキーワードだった「多様性」や「共生」が、行動に繋がっていない人が多いのと似ているイメージでしょうか…。 木村先生 :ところで、多様性ってどんなことだと思いますか? 私は、多様性とは「違う文化をリスペクトすること」だと思っています。子どもがふたりいたら、ふたりともが、それぞれ別の人間ですから違います。お互いがお互いをリスペクトできる。言い換えれば、それぞれの人が、それぞれの人をリスペクトできれば、すべての人が 「自分の人生」を生きることができる のです。 具体的に考えてみましょうか? たとえば小学校1年生になったら「廊下は、右側を歩きましょう」と、習います。右側を歩くのが「正解」で、これまでは「先生に言われなくても、自主的に右側を歩けること」が評価されてきました。学校も親も「正解通りにできること」を、教育の目標に掲げてきたのです。 けれども、「正解通りにできる子ども(右側を歩ける子ども)」を育てたところで、多様性が尊重される社会で生きていけますか? これからの世の中には、左右がわからない人が歩いているかもしれないし、「左側を歩くことが正解」という文化の外国人の方だって増えていくでしょう。 Aさん :本当に、そうですね…。 木村先生 :これから育てるべきは、「きちんと右側を歩ける子ども」ではなく、「道で人にぶつからないためには、どうすればいいか?を、自分の頭で考えられる子ども」なんです。 そのためには、「曲がり角では、立ち止まるようにしよう」など、日々生活の中で、都度、自分で考えていかなければなりません。 Aさん :そういう子を育てるためには、どうしたらいいんでしょうか? 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 4.「自分には、最終的に帰るところがある」と、子どもが思えていることが大事 5. 指示命令ではなく、「あなたはどう思う?」と、子どもに聞いてみる 6. これから育てるべきは、自分の頭で考えることができる子である 「自分の頭で考えることができる子」を育てるためには、私はどうすればいいですか? 次回も、木村先生と一緒に考えます。 ※文部科学省: 学習指導要領「生きる力」 学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもの学びが進化します。新しい学習指導要領、スタート。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは? 【木村泰子(きむら やすこ)先生】 映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集める。
2022年02月02日子どもを産んだら、ママになる。けれども、自分がイメージするようなママになれず、落ち込んでしまうことは、ありませんか? 今回は、「子どもに、『あれしなさい』『これしなさい』とばかり言っている気がして、落ち込む」という読者のAさんと木村泰子先生の会話からスタートします。 【木村泰子(きむら やすこ)先生はこんな人】 木村先生は、映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長です。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「木村先生が子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集めています。 ■「あれしなさい」「これしなさい」ばかり言ってしまう Aさん :私の悩みは、つい、 子どもに「あれしなさい」「これしなさい」とばかり言ってしまう ことなんです。本当は、何でも大らかに受け入れて、「大丈夫よ!」と、子どもの気持ちに寄り添いたいのに……。 木村先生 :表面上、「大丈夫」と言って子どもを落ち着かせようとするのは、「大丈夫」という言葉を、単なる道具として使おうとしているのかもしれませんね。 子どもは、それをすぐ見抜きます。子どもが暴れたりイライラをぶつけたりするのは、 親を困らせようとしているのではなく、ただ、本人が困っているだけ 、不安を抱え、困っている子どもに対して、大人は寄り添おうという気持ちが大切です。 今、こんなふうに偉そうに言っている私ですが、私の娘が孫にあれこれ言っているのを見て、「そうやって力で押さえつけても、子どもは納得しないよ」と伝えたら、娘から言われた言葉があるんです。 Aさん :娘さんは、何と? 木村先生 :「お母さんにだけは、そんなこと、言われたくない!!」と、猛反発されました。私も、母親時代は、娘と同じことをやっていましたからね。 Aさん :木村先生も、自分の娘さんに、あれこれ言ってしまう母親だったのですか? 木村先生 :そりゃそうです、当たり前です。 Aさん :木村先生でもそうだったと伺って、何だかホッとしました。学校の宿題など、「どうしてもやって欲しいこと」があると、子どもに寄り添えなくて、落ち込みます。 木村先生 : 親は、「子どもが自分の望んでいるような姿になって欲しい!」と願う生き物 です。私も、「いろいろなことができるお子さん」を見ると、「うちの娘も、ああなって欲しい!」と、いつも思っていましたよ。 Aさん :「こういう子になってほしい」という自分の気持ちを子どもに押し付けてしまう気がして…。 木村先生 :母親だったら、全員そうでしょう。親の思うように行動していない子どもに、「あなたは、大丈夫!」なんて、とても言えませんよね。仮に母親が表面上そう言っていたとしても、子どもは見抜きます。 ■勉強をしたら、幸せになれますか? Aさん :では、どうしたらいいんでしょう? 勉強をする時間になっても、子どもがダラダラと漫画を読んでいる時、どんなふうに声かけをしたら良いですか? 木村先生 :その前段階として、勉強をする目的を、ママはどう考えていらっしゃいますか? Aさん :子どもが勉強することで自立する手助けになればと。私が高齢出産なので、少しでも子どもの選択肢が広げられたらと思って…。 木村先生 :わかります。私は、一人っ子なんです。そして、小学校の参観日に母が来るのがすごく嫌でした。友だちから、「お前は、おばあちゃんが来ているのか?」と聞かれるほど、友だちの母親と比べて年配感が漂う母だったんです。でも「世界中で一番尊敬している人は誰?」と、聞かれたら、私は「母」と答えると思います。 そんな母ですが、一緒に暮らしている間、ずーっと私に、「勉強しなさい」と言っていました。その時代の自分を省みて思うのは、「勉強しなさい」と言われたところで、勉強なんてしません。勉強をしている「ふり」だけして、まったく勉強しないで大人になりました。小学校の成績は、真ん中より下だったと思います。 Aさん :そうだったんですね…。 木村先生 :でも、「勉強しなかったら、大人になった時に幸せになれないのか?」と問われたら、そんなことはないと思うんです。ママたちは、今、子育ての真っ最中で、「子どもが勉強をしていれば安心。勉強をしていないと、不安」なのは、とてもよくわかります。 私は子育てが終わっているので、「このように育てたら、こんな結果になる」ということがわかっている人間です。その人間から言わせてもらえば、「勉強して、いい学校に行けば、子どもは幸せになる」というのは幻想です。 繰り返すようですが、「わが子が勉強をしていない」という姿を目前にすれば、 母親なら誰だって、「勉強させなければ!」と思うのは当然 のことなんです。けれども、そんなママたちだって、一個人に立ち戻った時に、 「勉強すれば、幸せになれるの?」 と問われたら、もはや「そんなことは、ない」と、気がついてはいるでしょう? ■これからの母親に必要な力とは? 木村先生 :時代が大きく変わっている今、「母親として、ここだけは外さないで欲しい」と私が思う力は、 復元力 です。 イメージとしては、大波に揺られても転覆しない船です。子どもは、大海でいろいろな波に揉まれながら、進んでいくわけです。いろんな波があっても、船が沈まないのは復元力があるからです。復元力は、最近よく使われる言葉として、 「レジリエンス」 とも言い換えられます。 私は娘ふたりの母親ですが、上の子と、下の子は、同じ親から生まれ、同じ家で育ったのにまったく違う性格です。上の子は、ありとあらゆることに反抗する子どもでした。とにかく先生の言うことを、聞かない。先生が、「右に、向きなさい」と言えば、「何で、右に向かなきゃいけないの?」と聞いて、「いいから、右、向きなさい!」などと先生が言おうものなら、「じゃあ、私は左向くわ!」と言って、どこかに行ってしまうような娘でした。下の子は、そんな姉を見ながら、生徒会に入って、「学校改革をしよう!」と言うような子でした。姉が中学3年間でぶっ壊してきた中学を、妹は生徒会の会長になって復活させた。笑い話です。 Aさん :すごいですね…。 木村先生 :「勉強をしない」、「素行が良くない友だちと付き合ってる」…。こういったことを長い人生の中で経験することは、私はけっして悪いことではないと思っています。 人が成長する最中には、山あり谷ありであることの方が自然で、子どもが大きな失敗をして親の元に帰ってくることもあるでしょう。そんな時、 「お母さん、一緒に考えるよ」 と、親が言える。こんなレジリエンス(復元力)を親が持っていたのなら、子どもはいろんな曲がり角にぶつかりながらも、最終的には自分らしく幸せな大人になっていくと思うんです。 Aさん :そんなレジリエンスを持てている親、いるのでしょうか? 木村先生 :それを持てるよう、親も子どもと一緒に学ぶのです。学びについては、別の機会に、ゆっくり考えていきましょう。今回、お伝えしたいのは、子どものレジリエンスが育ちづらくなる、親の関わりについてです。 それは「ヘリコプターペアレント」と言われたりする、 過保護になってしまいがちな親の行動 です。子どもの様子を逐一把握していないと心配で、必要以上に関わり続けてしまう…。 「自分の視界」「自分の想定」の範囲に子どもがいないと不安で、結果的に子どもを縛り付けてしまう…。縛りつけておかないと、子どもがどこかに行ってしまうような気がして不安なんでしょうね。そうならないため大切なことは、 大人も周りの同調圧力 に負けない覚悟が必要です。 Aさん :覚悟…ですか? 親が覚悟を持つためには、どうしたら良いのでしょう? 木村先生 :子どもを信用するしかないですよね。 【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】 1.これからのママに必要なのは、レジリエンス(復元力)である 2.復元力とは、子どもが失敗をした時に「一緒に考えるよ」と子どもの味方なる力 3.ヘリコプターペアレントをしている限り、いつまでも不安のままである 次回は、「子どもを信用すること」について、木村先生にお話しを伺います。 ■お話を伺った木村先生の書籍 『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』 木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込)) 「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは?
2022年02月01日■前回のあらすじ 「『良いお母さんをやろう』と思うから辛くなる。自分は、自分でいればいいんです。良いお母さんである前に、自分自身を大切にできていますか?」と問う高濱先生。 良いお母さんである前に、「あなたは人として、自分を大切にできていますか?」…そんな問い、考えたことあるママはいるでしょうか? どうしても「良いママ像」に縛られがちなママたちに高濱先生は、「自分は、何をしている時が楽しいか?」をママには絶対考えて欲しいと話します。 ■「自分は何をしている時が一番楽しいか?」を考える ――「良いお母さんであらねばならない」みたいな呪縛は強いと思います わかります。ママ友の目だってあるだろうし、住んでいる地域によっては、お姑さんや、御近所の目がうるさいということもあるでしょう。「あのお母さん、子どもを放っているよね」みたいなね。でも、やっぱり、そこでも「人目」を気にしている…。 もう、そういう時代じゃないんですけれどね。「誰に何を言われようと気にしない」みたいな人たちの時代が来ているというか。いま、勢いがある企業のトップの方というのは、そういう人々が多いですよね。 ――でも思い切るのは、なかなか難しいと思います でもね、 お母さん自身が「自分でいること」に焦点を当てられるように なりさえすれば、「何が起こっても、人生、楽しんだけどな!」みたいな感覚は得られるんです。まぁたしかに、かなり勇気が必要です。 やっぱり周りに言われちゃうから。「本当は働きたい」と思ったから、実際に働いてみたら、じつのお母さんに、「子どもがかわいそうじゃない」と言われてしまったりしてね。 ――言われちゃったら、どうしたらいいんですか? 言わせておけばいいんですよ。「そういうことを言う人も、いる」ということですよね。でも一方で、働くことへの理解者や仲間もたくさんいますよね。 やっぱり、お母さん自身が、 「自分は、何をしている時が楽しいか?」を考えてみる ことが、こんな時期だからこそ、本当に、本当に、大切なんです。 ■子どものために、ママ自身が自分を楽しく生きればいい ――「自分は、何をしている時が楽しいか?」を考える…。それ、難しい!! 難しいけれど、ママたちには絶対に考えて欲しいんです。では、私の場合をお話ししましょうか。私の出身は熊本です。父は医者で私は長男なので、「当然、親父の後を継ぐもの」と周りは思っていたんです。 でも、私はその環境から逃れたかった。「東大だったら、文句は言われないだろう」と東京に出てきて、さきほどお話ししたとおり、本当にいろいろなことをやった挙句、「やっぱり、俺は子どもが好きだ」という結論が出たんです。 映画が好きでたくさん見ましたが、子どもが主人公の映画に5つ星をつけている自分がいる。バックパッカーをやった時も、タージマハルに行って、建物ではなく、その横にいた子どもたちと遊んだことを10ページくらいノートに書き綴っていました。 「俺は間違いなく子どもがすごい好きで、子どもと一緒にいるとワクワクするんだな」ということを自分自身で捉えることができたので、「子どものことを仕事にすれば、一生楽しめるな」と、思ったんです。 ――お母さんが好きなことをしていれば、その姿を見て子どもは育つんですものね お母さん自身が輝いて生きていれば、子どもはそれが一番うれしいものなんです。お母さんが、仕事が大好きで、仕事を頑張っていれば、きっと、「私も早く働きたいな!」と思うんです。 子どもは学校で嫌なことがあったとしても、家に帰ってきてニコニコしたお母さんを見ると、 「世界には、いいものがある」みたいな気持ちになるもの です。嫌なことなんて、浜辺に書いた文字のように、波ですうっと消える感じですよ。 だからこそ、 お母さんたちには、好きなことを主軸に生きて欲しい のです。子どものために、自分が楽しく生きればいいんです。それが、もっとも子どもに良い影響がある「良い母親像」です。 私が「子どもを放っておけ」と言ったとしても気にかけてしまう母親が多いと思います。だったら、「今日、私、何が楽しかったかな?」ということを、まずは自分に聞いてみてあげてください。 ■「今日、楽しかったこと」を子供と会話してみる ――そんな質問、自分にしてみたことないかもしれません じゃあ、もう一つお伝えしておきます。自分の人生観として、最近、「確信」が出てきたことがあるので。 ――どんなことでしょう? 私は、人から感謝された時が、一番いい「ポカポカ」を感じるんです。「誰かの役に立つ」ということが、人間にとってもっとも幸せだということです。そしてそれは誰にでも同じことが起こるんだ、ということを確信したんです。 2021年の前半の今は、まだ「外付けの枠組み」で生きている人も多いでしょう。でも、 今こそ自分の心だけ見るべき だと思いますね。私は、社会で活躍している人たちにお会いする機会も多いですが、みなさん、そこの部分がシンプルに整理できています。 ――「今日、お母さん、こんなこと楽しかったんだ」などと、子どもと会話するのはどうでしょう? すごくいいですね。実際に、それをやっている人もいます。寝る前など、布団に入った時に、みんなで「今日、良かったこと」を言い合うみたいなね。 ■コロナ渦での学習の遅れは? ――最後に、「コロナでの学習の遅れ」についてのご意見をお願いします 「コロナでの学習の遅れが心配」という声は、たしかにあります。けれども、コロナだっていつかは収束するでしょう。そうしたら、何だかんだと追いつきますよ。コロナの間の学習の遅れは、 ちょっと「やる気」になれば取り戻せるレベル です。そんなに深刻に悩まなくても大丈夫です。 それよりも、コロナ禍だからこそ、「発見できること」がたくさんあると思うのです。夏目漱石が、「眺めて楽しむ」と言っていましたが、目の前で起こっている事象のすべてを面白がることができる気持ちが持てるかどうかが大切です。 危機の時にこそ、そういう気持ちが大切です。同じ事象でも、認知の仕方でまったく違ってきますよね。たとえば、「コップに半分水が入っている」というニュートラルな状態も、捉え方次第でまったく異なった見方になります。 コップに半分「も」水がある。コップに半分「しか」水がない 今の時期は、どうしてもネガティブな方向に気持ちが持って行かれてしまうから、ここは大人たちの頑張りどころだなと思うんです。 親がガックリしていれば、子どもは不安になります から。勉強の遅れは、コツコツやれば取り戻せます。それよりも、「今の危機にしかないこと」をキャッチして、「経験値貯金」にしておけば面白いと思います。 ――オンライン授業については、どうお考えですか? オンラインで困るのは、やっぱり低学年ですよね。私たちもやってみて、1年生までは、正直、お母さんが横にいないと厳しいかなとは思うんですよね。 低学年のお子さんがいる方には、「基盤力に絞ってください。簡単に言えば、 字の練習と計算 です。そこだけは、学年相応のことをやっておく。それぐらいで十分です」とお伝えしています。 字の練習と計算は反復練習なので、保護者でも対応できると思うんです。その際、多少声を荒げるようなことがあっても、大丈夫です。子どもは、お母さんたちが心配しているほど、傷つかないものです。 でも、お母さんが少し欲を出して文章題を教え始めると、危ないです。お母さんが魔物に変身して行きますからね(笑)。文章題は、(教えることの素人である)お母さんたちが指導しない方が良いエリアかもしれません。 大丈夫ですよ。たとえば1、2年生でまったく文章題をやらなくても、4年生で4年生の文章題をやるようになれば、できるようになります。「1、2年生の頃、しっかり文章題をやったから」という理由で、高学年で伸びるというものでもないんですよね。 ――高濱先生にそう言っていただけると、ホッとするママもいると思います ただ、これからの保護者は、ざっくり大きな見通しとして、 「授業がオンラインになることもある」 ということは、視野にいれておいた方が良いですよね。今までだってインフルエンザで学級閉鎖などはしていましたが、これからは「インフルエンザ期間は、2週間オンライン授業です」ということがあるかもしれません。そうなること前提の準備は、しておいた方が良いというのはありますね。だからといって、「学校的なもの」がなくなるということは、ないと思います。子どもは、他の子どもの声を聞きたい生き物ですからね。 いかがでしたか? 取材で高濱先生とお会いすると、「元気をいただく」という気持ちになります。なかなか難しいですが、「自分は、自分でいればいい」にトライしてみようと原稿を書きながら思いました。自分を尊重することで、子供に寄り添うといった気持ちの余裕が生まれる予感がします。 高濱先生のメッセージが、一人でも多くのママたちに届くことを心より願っています! ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは? 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 『情熱大陸』(毎日放送)など、数多くのテレビ番組や『AERA with Kids』(朝日新聞出版)などの雑誌にも登場。『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』(日本図書センター)など、著書多数。
2021年04月02日■前回のあらすじ 「コロナ禍、イライラするのは当たり前。でも煮詰まってしまうママには特徴がある」と話す高濱先生。子どもにも悪気なく「親が、価値があるものだと思っているもの」を押し付けてしまうママたちはどうすればいいのか? 消しゴムのカスを集めている子どもに対して、「そんなの集めていて、何になるの? そんな意味のないことをしていないで、勉強をしなさい」と、親が無自覚に自分の価値観を押し付けていることが、子どもの自己肯定感の低さに繋がっていると、高濱先生に指摘を受けました。そう言われても…。 ■誰にでも心が疲れてしまう時はある ――おっしゃっていること、頭では理解できます。でも、消しゴムのカスを集める子どもを見守る境地にたどり着くには、まだ遠いです 私は東京大学に入るまでに三浪していて、大学に入ってからは四年留年しています。三浪四留、まだ誰にも負けたことはないです。 二浪した奴からは、「自分が、『人生、回り道した』などと言っていて、お恥ずかしい限りです。すいませんでした」と、謝られます。 ――三浪四留! 四留って、大学に在学できる、ギリギリラインなのでは? そうです(即答)。三留までは、自分の中で、「そこまでは自由にやろう」と計算して、映画や恋愛、落語など、思いっきり楽しんでいました。四留目は1単位のためだけに留年したんです。 ――なんか、すごいんですね…(絶句) 私だって、「褒められる側」に回ろうとしたこともあります。25、26歳の頃でしょうか、「遊ぶだけ遊んだので、そろそろ人がやれないくらい勉強しよう」と思って、いきなり十ヶ国語を勉強し始めたんです。そうしたら、2ヶ月くらいで調子が悪くなりました。 いまでいうところの、パニック障害のような症状が出たんです。ドキドキするからトイレに行って鏡を見てみたら、自分の顔が土気色になっていました。高校の同級生だった西郡(※)に「俺、本気でヤバイかも」と下宿先に来てもらって、二人で精神科医になりたての友だちに電話しました。そうしたら、そいつから「それは、心身症の一種だと思う」みたいなことを言われたんです。 そこから2年半~3年ぐらいは電車に乗れず、「すべてが怖い」という状態です。精神的に病んでしまった時は、人からの声かけや元気づけでどうにかなるほど甘くないんだ、ということを学びました。 精神的な病のことは、書きづらいこともあるかと思います。私のこの話、もしかしたらメディアに載るのは初めてなんじゃないかな? ただ、今の時期だからこそ、私は書いてもらった方が良いと思っているんです。元気なイメージが強い私でも、精神を病んでしまった経験はあるんです。だから、 すごく毎日を頑張っていても、ある日いきなり心が疲れ切ってしまうことは誰にでも起こりうる ことなんですよね。 ■「良いお母さんをやろう」と思うから、不幸せになる ――ママが精神的に、一杯一杯になってしまった時、どうしたら良いのでしょうか? そういう状態になってしまっている時は、自分しか見えていないんです。「私だけが、ダメなお母さんになっている」「私だけが、子どもが可愛くなくなってしまっている」みたいな…。 まず、強く言いたいことは、「それ、全然違います」ということです。そんなことは誰も思ってなくて、自分が思っているだけなんです。「良いお母さん像から離れてしまっいてる」「子どもを邪険に思ってしまっている」「自分がいけない」みたいなね。 それは、 「良いお母さん像」に引きづられてるだけ なんです。「一人になりたいから、子どもにあっちに行っててもらいたい」と思う自分がいても、全然、構わないと思うんです。 「良いお母さんをやろう」と思うから、不幸せになってしまうんです。自分は、自分でいればいいんです。良いお母さんである前に、「あなたは人として、自分を大切にできていますか?」と、まずは自分に聞いてあげて欲しいんです。 「まずは自分に聞いてあげて欲しい」という高濱先生の言葉に、緊張で張りつめていた心が、ふっと緩みます。そうか、そういうことをしても良いんですね。 次回に続く! ※西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん 花まるグループ「西郡学習道場」代表を務める西郡さんは、高濱さんの高校の同級生。創成期から二人三脚でやってきた二人は、大学時代に一緒に牛乳配達をしながらひたすら哲学をした時期もあったそう。 ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは? 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 『情熱大陸』(毎日放送)など、数多くのテレビ番組や『AERA with Kids』(朝日新聞出版)などの雑誌にも登場。『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』(日本図書センター)など、著書多数。
2021年04月01日「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前」、そんな風に話すのは、花まる学習会の高濱先生。 ママは感染に気を使い、家で過ごすことが多い毎日のなか、家事や育児に日々頑張っています。でも口にはなかなか出せないけれど、「コロナ禍、そろそろ本当に疲れてきた…」そう思っている人も多いのではないでしょうか。 そこでこんな逆境の時代でもママが笑顔で暮らせるように、背中を押す言葉を花まる学習会の高濱先生にお聞きしました。 高濱 正伸(たかはま まさのぶ)さん 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。 ■イライラするママが悪いわけではない ――コロナ禍でお疲れ気味のママたちに、高濱先生からメッセージをお願いします! コロナ禍で、夫婦のこと、子どものこと、この2つの問題で悩んでいる人は多いと思います。「潜在的な問題がコロナ禍で表面化した」などと言う人もいますが、あまり深刻に考える必要はないと思うんです。 人間は、距離が近くなりすぎると、相手に対して苛立ちの感情が出てくる「生き物」なんです。どんなに大切に思っていても、 一緒にいる時間が長くなれば、疲れが出て、イライラするのは当たり前 です。私は、自分の経験からそう考えるようになりました。 ――どんな経験なのでしょうか? 私が大学1年生の時のことです。仲が良かった友だち5人で、南アルプス登頂に挑戦しました。私だけ山登りの初心者で、他の4人は山登りの経験値が高かったせいもあり、「ついていけるかなぁ」と心配で、事前に山の専門家に注意点などを質問しに行きました。 専門家の方からは、「体力的な面では、高濱くんはずっと野球をやっていたから大丈夫だよ。でも、必ず喧嘩になるだろうから、そこだけは気をつけて!」と、言われたんです。そう言われても、「南アルプス登頂に挑戦しよう」と思うほど仲が良い仲間だっただけに、「喧嘩なんか絶対にしないのにな…」と不思議でした。 ところが、やっぱり喧嘩になったんです。人間は、長い時間、一緒にいることを強いられると、関係性が絶対におかしくなるものなんです。当時、私は日記をつけていたのですが、「俺のカレーだけ肉が少ない。他の奴には多めに肉をいれているのに、どうしてだ」とか、そのレベルで本気で苛立っているんです。 ――コロナ禍、ささいなことでイライラするのは、私だけではないと? そりゃ、そうですよ。母子の愛は崇高ですが、長い時間、一緒にいれば疲れます。そこで、「問題が表面化した」などと深刻になるより、「そういうものだから」と思っておいた方が、気が楽じゃないですか。 ――高濱先生に「そういうものだから」と言わると、何だかホッとします 何回でも言いますよ。あなたが悪いんじゃなくて、 「コロナ禍で『母親』をやっていれば、イライラするのは当たり前だ」 ということです。 そんなの、絶対に当たり前です。そもそも、「お母さんになる」ということだけでも、ものすごいパワーの要ることなんですよ。皆さん、突然「お母さんになる」わけでしょう? いままでとまったく違う状況に、突然、放り出される感じじゃないですか。不安になってあたり前だし、不安な自分を受容するにはパワーが必要なんです。 ■「行き詰まってしまうママ」には、特徴がある ――でも、先ほど、高濱先生は「母子の愛は崇高」と、おっしゃっていました お母さんが子どもを想う愛は、崇高だと思います。それは事実として、あります。一方で、「立派な母であろう!」みたいになると、あっという間に行き詰ってしまいますよね。じつはね、「行き詰まってしまうママ」というのは、特徴があるんです。 ――どんな特徴ですか? 人の評価を気にしたり、人と自分を比較したり…。とにかく 自分の意識が、「人の目」の方向にいってしまうと危ない です。もっとも、日本人の大半は、「人の目」の方向に意識がいってしまっているんです。それが、「日本の子どもたちの自己肯定感の低さ」に繋がっていると、私は考えています。 ――どうして人の目を気にすると自己肯定感が低くなるんですか? 人生は、 「自分で決めたこと」が、一番面白い んです。だから、もっとも大切にするべきは、「自分は、何に関心があるのか?」です。言い換えれば、「どれだけ、自分の心に焦点を当てることができるのか?」が、勝負なんです。 けれども、親は何かと口を出してしまいます。小さい頃から、「これをやれば、いい」とか、「この点数を取れば、合格できるよ」「ここの中学に行ったら、すごい」みたいな感じで、日本の子どもは、「外付けの価値」を与えられて育つことが多いんです。 本当は、その子は、「私は、消しゴムのカスを集めたかったんだ!」と思っているかもしれないですよね。はたから見たら、「ただのゴミじゃん」と、思われるようなものでも、「あなたたちはゴミと思うかもしれないけれども、私にとっては、これが大切なんです」という気持ちを持つことが大切なんです。 「自分が本当に関心を持っているもの」を見失わないでいられれば、人間は大丈夫 なんです。「自分が、何にワクワクするか?」を見失わずにいられれば、どんなことがおきたって、大したことではないんです。すべて、楽しいんです。 ――消しゴムのカス、ですか? 高濱先生節が炸裂していますね… 私は、もう、こういう子どものワクワクする価値観の大切さを話したいんです! たとえば、「友だちの夫はお金持ちなのに、うちの夫は出世しない」といったように、比較ばかりしてしまうからつらくなるんです。子どもたちも同様に「他者と比較して、自分はこうだ」とか、小さい頃から植え付けられて、それを価値基準に置いてしまう。 そうではなくて、「私は(僕は)、これをやりたいんだ!」ということを、繰り返して成長していかれれば、人間は幸せになれるものなんです。 子どもがワクワクしている「消しゴムのカス」に対して「そんなの集めていて、何になるの? そんな意味のないことをしていないで、勉強をしなさい」みたいに、 「親が、価値があるものだと思っているもの」を押し付けられるところから、子どもの自己肯定感の低さが生まれる と私は考えています。 もちろん、親の方にはまったく悪気がなくて、心の底から子どものためを思って言っているのはわかっていますよ。だからこそ、余計に危ない。親の価値観自体が、「外付けの枠組み」をもとにしてしまっているのです。 アイタタ! 高濱先生の言葉、思い当たりすぎて、胸が痛くなります…。でも、だからって、私はどうすればいいのでしょうか? 次回に続く! ■今回、取材を受けてくださった高濱正伸先生の書籍 花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫! (高濱 正伸/幻冬舎(¥1,320(税込))) 花まる学習会代表・高濱正伸が自身の幼少時代を紐解きながら、はみ出し、回り道しながらたどり着いた「花まるな人生」について語ります。逆境を楽しみ乗り越える強さ、自分で学べる賢さ、誰とでも仲間になり人を幸せにできるしなやかさ…。これからの時代に必要とされる力を育むために、親が子どもにしてあげられることとは?
2021年03月31日「家計をシンプルにする第1歩は、お金の流れをシンプルにすること」。そう言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 でも、そもそも、家計の把握の方法がわからない場合は、何から始めたらいいですか? 引き続きお話しを伺います。 この記事は、 「『コロナで家計がヤバい!』やりがちな失敗パターンと今やるべきこと」 なぜかお金が貯まらない…じつはお得だと思っていたものが元凶!? の続きです。 ■夫婦で「家庭」という会社を共同経営する ――家計の「お金の流れ」、なかなか把握ができないんです 皆さん、そうですよ。ただ、とくに共働きのご家庭は、忙しいから、それぞれの収入にノータッチになりがちゆえに、複雑になってしまいがちだという印象があります。 夫婦それぞれの入出金が不透明だと、家計が悪化しやすい傾向 があります。 ――共働きなのに、お金が貯まらない‥‥。それって、よくあることなんですか? そうそう(笑)。正直なところ、それはよくあります。そういう方たちに対して、僕は、「どちらか一人が黒字会計にしようとがんばるよりも、 二人で力をあわせれば圧倒的に効果がでやすい んです」とお伝えしています。 できれば、夫婦で「家庭」という会社を共同経営しているという感覚が持てるようになると良いですね。夫婦(家族)の家計づくりは、次のような手順で進めます。 ●夫婦(家族)の家計づくりの手順 1)お互いの収入を把握する 2)夫婦共通の口座から支払う支出、おこづかいから支払う支出を決める 3)毎月の夫婦の目標貯蓄額を決める 4)それぞれのおこづかいの予算額を決める 5)毎月の振り返りを一緒に行い、必要があればルールを調整する 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (出典:『横山先生ド素人の私にわかりやすく教えてください! これからの「お金」の貯め方&使い方) ■お金と上手につきあっていく、たった2つのポイント ――「夫とお金の話をする」というだけで、めちゃくちゃ、ハードルが高いです その気持ちも、よくわかります。でも、要は、次の2つができれば良いんです。この2つさえできていれば、お金を使いすぎて赤字会計に陥ることはありませんから。 1)今の状態を知る(現状把握) 2)収支のバランスを記録&チェック 「夫婦でお金の話し合いをするのは、ハードルが高い」と感じる人は、大切なことは先ほどの2つなんだという、ゴールのイメージを知ることから始めると良いかもしれませんね。 ●夫婦の家計づくり ■家計簿をつける上で、最も大切なこと ――そう言って頂けると、少し心が軽くなります… 家計簿も、難しく考えずに、「次の2つをするためのもの」と、ある意味、割り切ってみてはどうでしょう? 大切なことなので、何回も繰り繰り返しお伝えします。 1)今の状態を知る(現状把握) 2)収支のバランスを記録&チェック 家計簿の肝は、「ふりかえり」なんです。 家計簿が続かない理由として、「細かくつけようとして数字が合わない」とか「分類や記録の仕方がわからない」といった声をよく聞きます。 けれども、家計簿で大切なのは、「費目分けがきちんとしていること」でも「収支がきっちりとしていること」でもないんです。 家計簿は、自分のお金の現状を把握し、収支のバランスを記録&チェックするためのもの です。 ■「記録をつける」ということに労力を使わない工夫を! 僕が声を大にしてお伝えしたいのは、くれぐれも、家計簿の「記録をつける」ということに囚われない(労力を使わない)工夫をして欲しい! ということです。 そのためには、例えばスマホのアプリなどを活用するのも一つです。スマホには多くの家計簿アプリが存在します。そのなかには銀行口座やクレジットカードと連携することで、細かな記録をつけなくても自動管理してくれるものもあります。 家計簿の肝である「ふりかえり」に一番、労力が割けるように、「記録をつける」部分を楽にする方法を、自分なりに工夫をしてみる。その工夫をする試行錯誤にこそ、まずは労力を使って欲しいですね。 いかがでしたか? 筆者は、「このままでは、ヤバイ!」と思いつつ、なかなか着手できない3大項目のひとつが、「お金のこと」だと思っています(他の二つは、「ダイエット」と「お片付け」)。自分を上手にあやしながら、「お金のこと」と向き合うキッカケに本連載がなるとうれしいなと願っています。 最後に、横山さんから、皆さまにエールをいただきました! 「今回お伝えした事柄は、一見、地味に感じるかもしれません。でも、最初にお伝えしたとおり、普通の道を着実に歩いた方が、結局、挫折はしないから長続きするんです。 今、コロナ禍で不安に感じている人が多くいると思います。でもパパママ世代は、心配することはありません。今から、頑張れば大丈夫です! これらの方法を実践した人は、最初こそ『お金のことが苦手』だったかもしれませんが、いつしか『家計の達人』になりました。23,000万件以上の家計相談を受けてきた僕は、その事実を、皆さんに強くお伝えしたいのです」 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第3回まとめ 1)家計の再生は、夫婦二人で力をあわせれば圧倒的に効果がでやすい 2)家計簿の肝は、「ふりかえり」である 3)効果が出やすい見直し費目は、「携帯費」「交際費」「保険料」である ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。
2020年08月30日「貯まらない人の共通点は、『お金の流れ』がごちゃごちゃしていること。反対に言えば『家計の混乱』をうまくほどいて、シンプルにすることで、お金はきちんと貯められるようになるんです」と言うのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 そこで、『家計の混乱』をうまくほどいて、シンプルにする具体的な方法を、伺ってきました! 「『コロナで家計がヤバい!』やりがちな失敗パターンと今やるべきこと」 の続きです。 ■『家計の混乱』ほどき方その1、銀行口座を書き出す まず、最初にやっていただきたいのが、銀行口座の確認です。 お給料の入ってくる口座、貯金をしている口座、教育資金を貯めている口座、生活費などを支払っている口座、生命保険や自動車保険の支払い口座、住宅ローンの支払い口座、クレジットカードの引き落とし口座などなど、とにかく全部書き出してみます。 ――うっ! それを、全部やるんですか? いきなり、気分が萎えてしまいます ここは、がんばりどころです。自分を励ましながら、書き出してみましょう。全部書き出したら、次は、これらの口座を絞り込んでいきます。大切なのは、 「使う口座」を一つに絞り込む ことです。 人によっては、光熱費はA銀行で引き落とし、食費はB銀行から引き出して使う、クレジットカードの引き落としはC銀行というふうにあちこちの口座からお金が引き落とされ、何にいくら使ったのかよくわからないという状況に陥っています。 ――銀行口座を絞り込む基準は、何かありますか? 絞り込む基準は、「自分にとって使い勝手が良い金融機関かどうか」です。たとえば、「家や会社から近い」、「ネットでの口座管理がしやすい」というように、あくまで自分にとって便利な口座を選んでください。 ――なるほど! 「ただ数を減らせばいいというわけでもないんですよ。3つの袋(口座)の考え方をお忘れなく! すると、銀行口座は、次のように絞り込まれると思います。 ※3つの袋(口座)とは 家計を①使う袋、②貯める袋、③増やす袋で考えます。ポイントは、できるだけ『使う袋』の口座に、出費や引き落としを集結することです。 ●銀行口座の絞り込み着地点 1)お給料振り込み口座(共働きなら2口座) 2)使う口座(生活費やローンの支払い) ⇒ 毎月一定額を補充する 3)貯める口座(貯金用) ⇒ 毎月一定額を貯める 4)増やす口座(資産運用・証券口座) ⇒ 毎月一定額を運用する 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 ■『家計の混乱』ほどき方その2、クレジットカードの絞り込み ――銀行口座の絞り込みが終わったらどうすればいいですか? 銀行口座の絞り込みが終わったら、クレジットカードも絞り込みます。クレジットカードの複数持ちも、ごちゃごちゃ家計の元凶です。 クレジットカードは店頭での決済タイミングと、引き落としタイミングが約1ヶ月ズレるため、いつ、何に、いくら、支払うかが、とにかくあいまいになりがちです。 だからこそ、枚数はできるだけ絞り込んでください。 「カードは一人1枚のみ!」 と声を大にしていいたいくらいです。それくらい、家計の混乱を招くものなのです。 ――クレジットカードや電子マネーの選び方を教えてください! 「自分の生活圏だったら、どれが使いやすいか?」で、考えてみると良いですね。 たとえば、自分がよく行くスーパーと相性の良いクレジットカードや電子マネーってあると思うんです。そうなると、おのずと選ぶべきものは、決まってきます。あとは、お得に翻弄されないということも大切です。 ――ドキっ! お得に翻弄されない…。耳が、とても痛いです クレジットカードや電子マネーは、ポイントに目がくらんで、使おうとしないということです。あくまで、ポイントは、お金を使うからつくものであるので、お得ではない…。それくらいのシビアな気持ちを持っておいて欲しいと思います。 ■『家計の混乱』ほどき方その3、お金の出口を厳選する ――ここまでできたら、結構すごいこどだと思います 仕上げは、お金の出口を一本化することです。まず、日頃、お金をどんなことに使っているか思い浮かべてください。 次のように、ざっと思いつくだけでもずいぶんあると思うんです。これらの支払い方法は、現金だったり、口座引き落としだったり、クレジットカード払いだったり、現金で支払っていたりと、普通、バラバラですよね? ●「日頃、お金をどんなことに使っているかの例 生活費(水道光熱費、日用品、食費、被服費)、医療費、通信費、住宅ローン、保険料、教育費(学校教育費や保育料)、レジャー費(交際費や旅行費)、習い事代 出典: 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 ――あらためて考えてみると、たしかに、いろいろな方法で支払っていますねぇ~ ここも、絞り込んでいきます。「口座引き落とし」「クレジットカード払い」「現金払い」を、なるべく1つの方法にまとめます。 たとえば、光熱費や通信費をカード払いにしているのなら、それを先ほど選んだ、1枚のクレジットカードから引き落とすようにするんです。当然、口座引き落としもクレジット払いも、元となる口座は、1本目で絞りこんだ『使う口座』にします。 ――はぁ(溜息) やっぱりお金のことって、面倒ですね… 最初だけです。たしかに、おっしゃるとおり、ここでお伝えしたことは、面倒なことかもしれません。でも、最初だけなんです。 一度だけ、覚悟を決めて銀行口座やクレジットカードを整理 してしまえば、後は、そのまま使えます。 それに、振り返りもしやすくなります。口座引き落としは、通帳。クレジットカード払いは、使用明細にお金を使った記録が残りますからね。ここは踏ん張りどころと思って、トライしてみて欲しいですね。 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第2回まとめ 1)銀行口座やクレジットカード、電子マネーは、「自分にとって使い勝手」で絞り込む 2)ポイントに目が眩まないようにする 3)お金の出口を一本化するのは大変だが、大変なのは最初だけ 次回は、誰もが気になる「家計簿」について、横山先生にレクチャーしていただきます。 !--[ARTICLE-E1596790262201]--> ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説! 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。
2020年08月29日withコロナの生活が「日常」になって、「家計が厳しい!」と感じている人は多いのではないでしょうか? 「残業代が減るなど、月額1~3万円収入減のご家庭は珍しくないんです。そうなると、『ギリギリ何とか回っていた』『少しは貯蓄ができていた』というご家庭でも、俄然、厳しいと感じるようになっています」とおっしゃるのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さんです。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万件以上の家計相談を受けてきた。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■コロナ禍にあって、家計が心配な方へ 横山光昭さんは、こんなふうに言います。「私は、長年、赤字家計の悩みを解決し、黒字にすることを仕事にしてきました。やり方さえ理解すれば、誰でも 『家計の達人』になれる んです」 ――ええ! 本当ですか? ぜひ、そのやり方を教えてください! 承知しました。最初にお伝えしたいことは、 「まずは、落ち着こう!」 ということです(笑)。 「家計を何とかしないと、本当にヤバイ!」というような勢いがある時って、気分的には修行系、茨の道をガシガシと行きたい気分なんだと思うんです。けれども、普通の道を着実に歩いた方が、結局、挫折をしないので長続きするんです。 ■自分が使っている金額は、世の中の平均的か? ――そう言われても、気持ちばかりが焦るんです そんな人は、家計の現状把握から始めましょう。「家計が黒字なのか? 赤字なのか?」。そこまでは、何となく把握している人が多いんです。 けれども、その先になると、じつは、「何にいくら使っているのか? さっぱりわかりません」という人は、多いものです。 ましてや、 自分が使っている金額が平均的なのか? そして、家計全体から見て、 その割合が適正なのか? といったことになると、ほとんどの人が把握していません。 ――え? そうなんですか? これは そういう方を否定している訳ではないんです。まずは、「多くの人が、家計の現状把握ができていない」という事実を、皆さんに知って欲しいなと思ってお伝えしています。 でも、それって、ある意味、当然のことだとも思うんです。お金のことって、とてもセンシティブです。たとえ夫婦間や気のおけない友人に対してでさえも、細かい内容まで踏み込んで話す機会がないことの方が普通です。 そうなると、「自分のお金の使い方を客観的に眺めてみる」という経験や発想がないことの方が、当たり前だと感じます。 でも、たくさんの家計をみてきた僕から言わせてもらうのであれば、「がんばっているのになぜかお金が貯まらない、毎月赤字になってしまう」という方々には、やっぱり共通点があるんです。 ■赤字の「元」を根本から断つために必要なこと ――共通点!? それは、 「お金の流れ」がごちゃごちゃしている ことなんです。 生活費や水道光熱費、教育費、住宅ローンなどの支払い用の銀行口座が複数あり、いつ、どこの銀行から何円の支払いがあるか、ほとんど把握できていないご家庭がとても多いのです。 ――「それって、自分だけじゃないんだ」と、逆に、少しほっとしました そうなんです! 繰り返すようですが、「多くの人が、家計の現状把握ができていない」という事実を知るだけでも、皆さん、安心されます。それが家計と向き合う第1歩なんです。 ちなみに、ごちゃごちゃしているのは、支払い用の銀行口座だけではありません。貯蓄用の口座や資産運用のための口座が複数あったり、クレジットカードや電子マネーも、ポイントを貯めるために複数持っている人が多いですね。 ――だんだん耳が痛くなってきました… ひとつ言えることは、お金の出口が分散しすぎると、全体像が見えづらくなるということです。そうなると、家計は必ずと言っていいほど、うまく回りません。 でも、反対に言えば、複雑に絡み合った「家計の混乱」をうまくほどいて、シンプルにするだけで、お金はきちんと貯められるようになるんです。 ■家計は、「3つの袋」で考える ――シンプルにする…。それって、どういうことですか? 最初に、目標とするイメージをお伝えしますね。 考え方としては、次の図のように、家計を、「3つの袋」で考えます。ポイントは、できるだけ『使う袋』の口座に、出費や引き落としを集結することです。 ●「3つの袋」 ――なるほど 「家計を何とかしないと!」という今の焦りや勢いを、銀行口座やクレジットカードを整理することにぶつけてみてはどうでしょう? 最初はちょっと面倒ですが、一度やってしまえばあとは手間がかからないから、おすすめです。 ■「これからを生き抜くお金の貯め方」第1回まとめ 1)自分のお金の使い方が適正かどうか把握している人は、実は少ない 2)『家計の混乱』をほどいて、シンプルにすることで、お金はきちんと貯められる 3)家計は、「3つの袋」で考える。 次回は、銀行口座の統合や、クレジットカードの整理の手順を具体的にお伝えします。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生ド素人の私に教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』 (横山光昭 (著), マネーフォワード (著)/かんき出版 ¥1,540) マンガとイラストで、わかりやすくて面白い「お金」の本。書籍では、年金2000万円問題から電子マネーやスマホ決済まで、「お金」の今さら聞けないことや得することが、この本1冊でわかります。さらにスマホで行えるらくらく家計簿についても解説!
2020年08月28日2019年に話題となった公的年金の「2000万円足りない」問題。何となく気になっている人は、パパママ世代でも多いかもしれませんね。 お金の超プロフェッショナルである横山光昭さんは言います。「2000万円問題は、年金を自分事として考えるいいキッカケなんですよ」 この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 第2回「じつは『老後に2000万円必要』とは報告されてなかった!?」 第3回「老後資金『2000万円以上必要な人』と『2000万円かからない人』 の続きです。 ■今、私たちがやるべきこと2つ 本連載の 第2回 では、横山さんに年金を自分事として考えるために、今、私たちがやるべきことを、ポイントを2つに絞って教えてもらいました。 ●今、私たちがやるべきこと2つ 1)自分自身の年金受取額の見込みを把握すること 2)今とこれからの社会状況を認識した上で、『将来の自分の場合はどうなのか』を知っておくこと 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) ■自分自身の年金受取額の見込み額を把握するには? 今回は、自分の年金受取額の見込み額を把握するための方法からお伝えしましょう。みなさん、お誕生日月に「ねんきん定期便」が送られてきますよね。現役世代では、基本的に次の4パターンで郵送されてきます。 ●「ねんきん定期便」の郵送パターン 1)50歳未満の人(35歳、45歳の人を除く):ハガキ 2)35歳・45歳の人:封書 3)50歳以上の人:ハガキ 4)59歳の人:封書 筆者作成 大まかに言えば、50歳未満と50歳以上で「ねんきん定期便」の形式が違います。ここで、ひとつ問題点があります。それは、50歳未満の人の場合は、「ねんきん定期便」だけでは、将来の自分の受給予定額がいくらなのかが、わからないんです。 ■ねんきんネットは、ご存知ですか? 「自分の年金額を早めに把握しておくと、現在の生活費と老後を比較したときに、どれだけ足りそうか、足りなさそうかが推測しやすくなります」(横山さん) 筆者も、「将来の自分の年金額は早めに知っておくに越したことはない」と思っています。50歳未満の人が、将来の自分の年金を知りたい場合は、「ねんきんネット」を使いましょう。 ただ、「ねんきんネット」を見るためには、毎年のねんきん定期便についていくる「お客様のアクセスキー」や基礎年金番号での利用登録が必要です。利用登録をしてユーザーIDを取得すると、自分の年金の試算などができる仕組みになっています。ちなみに、アクセスキーの有効期間は、ねんきん定期便到着後3ヶ月間です。「毎年、お誕生日月に将来の年金額を試算してみる」など、自分の「年中行事」のひとつに組み込んでも良いですね。 ■年金事務所はご存知ですか? それでも、やはりわからないことはあるはずです。「年金全般に関する不明点があれば、直接近くの年金事務所に足を運んでみたり、ねんきんダイヤルに電話をかけて聞いてみることです。いずれにしても、みずから動いて聞きに行くことが大事です」(横山さん) ●ねんきんネット: ●全国の相談・手続き窓口: ●ねんきんダイヤル:0570-05-1165 ■繰り下げると受給率が増える老齢年金 ここまで読んで、「年金、やっぱり、面倒くさい」と、ちょっと憂鬱になってしまいましたか?(笑)。 では最後に、とても大切なことをお伝えして、本連載を終わりましょう。 年金は繰り下げると、受給率が高くなる 年金を「繰り下げる」とは、年金の受給開始年齢を遅らせることをいいます。次の表のとおり、1ヶ月繰り下げるごとに受給額が0.7%増える計算で、今は、70歳が後ろ倒しにできる最高齢です。 ちなみに、70歳から受給を開始すれば、増額率は42%! つまり142%の年金がもらえるんです。なかなか、すごいスゴイ数字だと思いませんか? ●老齢年金の繰り下げ受給の増額率 ■65歳までに1560万円を! そうは言っても、現状、多くの人の定年は、65歳。年金の繰り下げの恩恵を最大限に利用できる70歳まで年金を受給しないとなると、65~70歳の生活費を確保しておく必要があります。 たとえば、第2回でご紹介した 「金融審議会」 のモデル家計を例にとって、65歳~70歳の生活費を試算してみましょう。モデル家計の毎月の生活費は、26万円でしたから、これの5年分。具体的には、1,560万円です。 生活費月26万円×12ヶ月×5年=1560万円 一言で、「65歳までに1560万円を貯める」といっても、30歳、35歳、40歳では、老後までの持ち時間が違います。そうなれば、毎月の貯蓄目標額も違ってきます。残りの月数から逆算した、毎月の貯蓄目標額を表にしてみました。 ●スタート年齢から逆算する老後資金貯蓄額(1,560万円の場合) ■年金を自分事として考え始めることが大切 いかがでしょう? 具体的なベネフィット(それをやることで得られる未来)を知れば、自分年金について少しはヤル気が出てきませんか? こんなふうに、少しずつでも、年金に対しての知識を増やしていくことが、今は大切な時期なのだと筆者は思います。 私はマネー記事の取材を通じて、日本の年金制度は、「最低限の生活保障」というカタチになっていくと予測しています。NISAのモデルとなったイギリス、iDeCoのモデルとなったアメリカ、両国ともに年金の自助努力を促すために税制優遇制度を作り、年金は「最低限の生活保障」という位置づけです。NISAやiDeCoが「輸入」されてきたのですから、日本の年金政策はイギリスやアメリカと同じ方向に舵を切っていると考えるのが自然でしょう。 老後までの時間が、まだある今だからこそ、「自分らしい老後」を送るために、年金に対して学び始めること。それは、ライフデザインも含めて、「未来の自分」について考えることでもあると思います。 ●「老後までに2000万円貯められる?」第4回のまとめ 1)「ねんきんネット」の利用登録をして将来の年金額を試算してみる 2)年金の「繰り下げ」を知る 3)まずは、65歳までに1,560万円を貯金しよう ※本連載で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月18日「『老後2000万円問題』で不安や疑問を覚えた今こそ、年金について学び始めるチャンスです」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。 学び始めると言われても、何をどうやって考え始めればいいの? 最初の1歩がわかりません!! そんな人のために、「2000万円より必要な人、少なくて済む人」の具体例を教えてもらいました。 この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 第2回「じつは『老後に2000万円必要』とは報告されてなかった!?」 の続きです。 ■そもそも「2000万円が不足」って、何? 前回の記事で、 「2000万円問題は、ある一組の夫婦の資産の(例)にすぎない」 と、書きました。(例)となっている家計は、下記です。ポイントを3つあげておきましょう。 ●「2000万円問題」のモデルとなった家計のポイント3つ 1)夫が65歳以上で妻も60歳以上。二人とも無職 2)年金収入が約21万円なのに対し、支出は約26万円 3)月額5万円の赤字が出る 筆者作成 家計の内訳は、次のとおりです。ご自身の家計と比べてみて、いかがですか? たとえば、この家計の住居費は、月額13,656円です。この金額ですと「家賃」というよりは、「持ち家でローンは完済。固定資産税などを月額割にした数字」なのではないでしょうか? ■「どんな生活をしたいか?」で必要な金額は変わる こんなふうに、モデルとなった家計と、「わが家の家計」を照らし合わせてみる作業を、まず始めてみると良いと思います。その上で、「では、自分自身の老後をどんなふうにしたいか?」を、考え始めてみましょう。 「まずは自分の老後のビジョンを決めることから始めましょう。そうでないと老後の必要額はわかりません」(横山さん) そう言われても、多くの人は「心配のない老後にしたい」というくらいしか、イメージが沸かないかもしれませんね…。 そこで、23,000件以上の家計をみてきた、家計のプロ横山さんの出番です! 今回は、「2000万円」を基準にして、2000万円以上老後資金が必要な人、2000万円までなくても大丈夫な人の、「ありがちな収支パターン」を教えていただきました。 ●ありがちな収支パターン4例 1) Aさん:2000万円では全然たりない人 2) Bさん:2000万円までなくても足りる人 3) Cさん:年金のみでもいける人 4) Dさん:Aさんのバージョン違いの「2000万円ではたりない人」 ※Dさんは、わりとよくみられるパターンだそうです。 ここで、今回の「試算の条件」のポイント整理しておきましょう ●今回試算条件 1)「将来の収支予想の収入」は年金のみの収入で、年金のみで生活した場合 2)年金受給額は、今後の加入状況や収入の状況を予測した概算 3)予備費用は、リフォーム、介護、病気、旅行費用に充てるための金額 筆者作成 ▼パターン1)Aさん 2000万円では全然たりない人 【診断】 高支出メタボ家計 Aさんは、こんな人 → ちょっといいもの症候群 Aさんは、現役時代の年収が1100万円と非常に高いので、いわば「ちょっといいもの症候群」です。 消費では、「ちょっといいもの」を選びがちなので、生活コストがかかります。また、資産形成は、「賢くできるはず!」という気持ちで堅実路線とは言い難いチョイスをしていますが、思うような結果は得られていません。 ▼パターン2)Bさん 2000万円までなくても足りる人 【診断】 無駄のない節約家計 Bさんは、こんな人 → 堅実な生活者 Bさんの現役時代の年収は500万円で、「堅実な生活者」です。 そもそも、現役時代に使えるお金が特別高いわけではないので、消費は、「地に足がついた感じ」です。普通の収入なので、生活もごく質素です。もっとも「質素」と「貧乏くさい感じ」は、まったく違います。家計の収支について、きちんと考えています。 ▼パターン3)Cさん 年金のみでもいける人 【診断】 年金を貯蓄に回せる理想家計 Cさんは、こんな人 → 老後は実家の田舎で暮らす予定の人 Cさんの現役時代の年収は、600万円。老後は実家に戻って田舎暮らしを始める可能性があるそうです。住宅ローンは返済中ですが、これを完済して持ち家を売れば、1000万円くらいの資産になるかもしれません。 田舎に戻ったあとは、親と変わらない近所付き合いをし、食材はもらったり安く買えたりしそうなので、生活コストは低そうです。 ▼パターン4)Dさん 2000万円より多く必要な人人 【診断】 賃貸住宅が老後にも響く赤字家計 Dさんは、こんな人 → 「老後の家賃」が厳しいタイプ Dさんの現役時代の年収は、700万円。比較的慎重派で、何千万もの住宅ローンを組んで持ち家にすることは考えていません。家は必ず買わなくてはいけないというものではありませんが、老後の限られた収入の中でやりくりするときには、家賃は、かなり負担の大きな支出となります。 あなたの家計は、どのパターンが近かったですか? この記事をキッカケにして、老後というのは、「どこかの国の誰かの話」ではなく、「今日の私の地続きにある話」というイメージを持つことが、年金を自分事として考える第1歩なのだと筆者は考えます。 ■老後対策の柱は、3つ 「老後生活を送っている自分」のイメージが持てるようになると、ようやく自分年金づくりのスタートラインに立ったということなのだと思います。では、スタートラインに立ったら、何から始めれば良いのでしょうか? 横山さんは、言います。「老後対策は、総じていえば、次の3つのアプローチから手をつけていくと、良いでしょう」 ●老後対策の柱3つ 1)年金以外の収入の道を探る 2)支出は現役世代のうちからコントロールする習慣をつける 3)運用もできるだけ早いうちから始める 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) ●「老後までに2000万円貯められる?」第3回のまとめ 1)「2000万円問題」のモデルケースを知り、自分の家計と比べてみる 2)老後は、「今日の私の地続きにある話」である 3)「老後対策の柱3つ」を知っておく 次回は、いよいよ「自分年金の作り方」について、具体的に考えてみます。 ※本連載で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月17日2019年は、公的年金だけでは 「2000万円足りない」 問題が注目されたことにより、「老後について、本気でどうにかしなきゃ!」と、危機感を感じた人も少なくなかったのかもしれません。 「老後に2000万円足りないって、本当?」お金の超プロフェッショナルである 横山光昭さん にお話しを伺ってきました! この記事は、 第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」 の続きです。 横山 光昭(よこやま・みつあき)さん 家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。株式会社マイエフピー代表取締役。お金の使い方を改善する独自の家計再生プログラムで、これまで23,000万人以上の家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。 ■老後2000万円足りなくなるって、本当? 取材の冒頭、「老後資金が、2000万円足りないって、本当ですか?」という、素朴な疑問を横山さんにぶつけてみました。 横山さん曰く、「結論から言えば、ウーマンエキサイトのパパママ世代の方は今から、『自分の場合は?』と、 年金を自分事として考え始めれば大丈夫です 」とのこと。 ほッ! 良かった! では、年金を自分事と考え始めるためには、何が必要なのでしょうか? いわゆる 「老後2000万円問題」の整理 から始めましょう。 コトの発端は、6月上旬に公表された金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書です。全51ページの、たった一文(太線部分)だけが切り取られ、大騒ぎになりました。 ●金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 年金だけが収入源となる無職のある高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)。夫婦の 年金収入が約21万円 なのに対して、 支出は約26万円 かかっています。 その収入と支出の差となる 不足額が毎月5万円 。 これが20年間続くとすると、 30年間で約2000万円が必要になる という試算です。 参考文献: 金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 (全51ページの21ページ目) ■「絶対に2000万円が必要だ」などとは書いていない 報告書は、ネット上で誰でも目をとおすことができます。「私も報告書が公表されてすぐに目をとおしましたが、あの報告書では、 『老後の生活に、絶対に2000万円が必要だ』 とは書かれていません。紹介されていたのは、ある平均的な夫婦の老後の資産(例)です」(横山さん) 「ある平均的な夫婦の老後の試算(例)」についての解説は次回行うとして、ここでは、この報告書のポイントを整理しておきます。とても大切な報告書なので。 ●ウーマンエキサイト世代のパパママが知っておくべき3つのポイント 1)長寿化はこれからどんどん進んでいく。 2)充実した人生を送るためには年金だけでは足りない。 3)自分事として準備しましょうと「自助努力」を促す。 筆者作成 ところで。皆さんは自分の年金について、 「いつから」「どのくらい」 もらえるのか知っていますか? 年金について、今、何か準備していることはあるのでしょうか? 「自分の年金について考えたことのなかった方、これまで誤った情報に惑わされていた方に、この連載を通じてメッセージをお伝えしたいと思っています」(横山さん) ■キーワードは、「人生100年時代」 年金の問題を考える時、キーワードは、 「人生100年時代」 です。今では当たり前のように使われている「人生100年時代」というフレーズですが、そのキッカケは、『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社刊)という本がよく売れたことにあります。 この本の初版は、2016年10月なので、約3年前、にわかに「人生が100年になった」=「長寿化が現実味を帯びた」といったイメージでしょうか。 『LIFE SHIFT』の中では、「人生の組み立て方が、今までとは違ってくる」と提言されています。端的に言えば、「教育→仕事→引退」という三つのステージで人生を考えるのは、長寿社会では無理だということなんです。 100年という時間を、自分らしく生ききるためには、「学び直し」をしたり、「複数の仕事を同時に持つ」など、これまでの違う考え方で、人生を捉えていく必要があるとされています。 ■年金だけで暮らせる人は1割 私たちの親世代は、「教育→仕事→引退」というライフステージを送り、仕事を引退した後は年金だけで暮らしている人も多いでしょう。けれども、私たちが仕事を引退する頃は、高齢化が進んでいます…。 「端的に言っておきましょう。これからの日本では、 年金だけではほとんどの人は暮らしていけません 。ほとんどいうのは全体の8~9割くらいの人です」(横山さん) つまり、年金だけで暮らせる人は1割。「老後は年金があるから何とかなるだろう」という発想があるとしたら、それ自体、今の現役世代にとっては現実的ではないのです。「この記事をキッカケにして、ぜひ、その考え方から離れて欲しいと思います」(横山さん) ■老後に向けて、今、私たちがやるべきこと2つ では、どうしたら良いのでしょうか? 横山さんより、私たちがやるべきことをポイントを絞って2つ教えてもらいました。 ●今、私たちがやるべきこと2つ 1)自分自身の年金受取額の見込みを把握すること 2)今とこれからの社会状況を認識した上で、『将来の自分の場合はどうなのか』を知っておくこと 出典: 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』(横山光昭著/KADOKAWA刊)より抜粋) 1)の自分自身の年金受取額の見込みを把握する方法については、今後詳しく説明します。まずは、上記の2つをクリアした上で、「自分は将来どういったライフスタイルを目指すのか?」を考え、「そのためには、どうしていけばいいのか?」を、各人が探っていく必要がありそうです。 「人に勧められるままに内容を理解せず投資をしたり、極端な節約生活を続けていくのは老後の生活が危ういだけでなく、長続きしません」(横山さん) ●「老後までに2000万円貯められる?」第2回のまとめ 1)「老後資金2000万円問題」、年金を自分事として考えるキッカケにする 2)「人生100年時代」は、今までとは違った生き方をしていく必要がある 3)「今、私たちがやるべきこと2つ」を知っておく 次回は、年金を自分事として感じられるよう「2000万円より必要な人、少なくて済む人」について、具体的に考えてみます。 ※本特集で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月26日時点のものです。 <参考サイト> 金融庁: 金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 リンダ グラットン (著), アンドリュー スコット (著), 池村 千秋 (翻訳) ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る 第1回「「老後が不安」で終わらせていいの?」 \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月16日■「老後2000万円問題」は老後が不安になっただけ? こんにちは! ライターの楢戸ひかるです。私は20年ほどマネー記事を書いていますが、昨年の 「老後2000万円問題」 は、マネー史に残る、インパクトのある「事件」だったと思っています。 ママの毎日は、忙しい! いっぱいいっぱいの毎日のなかで、とてもじゃないけれど、老後のことなんて考えられませんよね? それなのに、不安だけ、ポトリと滴のように落とされてしまった……。 私個人の感想としては、多くのママにとって、2000万円問題が、 「ただ、老後のことが不安になっただけ」 なことが、すごく残念です。 ■老後資金、「知らないから不安」を払拭するには まずは、 「知らないから不安」 にエネルギーを奪われないよう、必要な情報を知ることから始めてみませんか? 「知っておく」こと、老後に対してのひとつの有効な備えだと私は思っています。 「老後2000万円問題」については、 ァイナンシャルプランナーの横山光昭先生 に取材させていただき、詳しい解説をこの後の記事で行っていきます。 記事を読んでいただければわかりますが、2000万円問題は、いいキッカケだと思うのです。そういう意味で、一般の人が話題にするレベルまで反響があった、この「事件」を、無駄にしたくないと思いました。 ■老後資金貯める余裕がないのに、不安がない理由 私自身、今、老後資金を貯める余裕は、ほとんどありません。高校生2人、大学生1人の息子の教育費がピークだからです。けれども、「老後が不安だから、お金を貯めなきゃ!」といった感じの漠然とした不安は、それほどないです。 なぜ、漠然とした不安がないのか? それは、「知っている」からです。私が何を知っているのか、書き出してみますね。 ●「老後の漠然とした不安がない」 私が知っていること 1)1ヶ月いくらあれば、足りるのか? 具体的な毎月の生活コストを把握している 2)家電の買い替えやリフォームなど、大まかな生活サイクルと必要額を把握している 3)わが家が、いつから老後資金を貯められる家計なのか? ライフプランニング表を書いて、予測がついている 4)取材を通じて、「介護」や「老齢期の医療」のイメージを持てるようになりつつある 5)投資を経験したことがあり、自分なりの投資方針がある こんなところでしょうか? 情報は力です。 30代、40代は、住宅ローンや教育費負担が重い時期。「老後資金を余裕を持って貯めています」というご家庭の方が少ないのでは? と感じます。 「知らないから不安」ということ、結構あると思うのです。それだったら、漠然とした不安にシャドーボクシングをしているよりも、具体的に考えてみませんか? ■今回、取材を受けてくださった横山光昭先生の書籍 『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』 (横山光昭/KADOKAWA ¥1,540円(税込み)) >> 「老後までに2000万円貯められる?」連載 記事を見る \おすすめ動画もぜひご覧ください!/ 母ちゃんTVはコチラ チャンネル登録お願いします♪
2020年03月15日cakes史上、最も読まれた連載が書籍化されました! ガンを宣告された写真家・幡野広志さんによる人生相談です。幡野さんのところには、なぜか多くの人からありとあらゆる人生相談が集まるのですが「悩み相談を受ける中で、親子や家族関係で、悩んでいる人が多い」とのこと。 「親子関係」は、人間関係の原点で悩みも深いテーマなのかもしれません……。 親子の「距離感」は難しい 幡野広志さん(以下、幡野) :本のタイトルにもしましたが、人生の悩みを『なんで僕に聞くんだろう』とずっと思ってました。おそらく、相談者の方は「親に相談できる」という選択肢や人間関係を持てていないのかなぁ…と。自分の親に相談しても、納得のいく答えが出ないと思っているんでしょうね。 編集部(以後、―)自分が母親になってみると、耳が痛い話です。 幡野 :多くのお母さんの子どもに対しての距離感、僕は「不思議だなあ」と、感じます。少し距離をとっているお父さんのことをdisっちゃったりして。 ― 夫が、自分と同じくらい子育てに「一生懸命」でないのが腹立たしくなるんですよね… 幡野 :子どもからすれば、お父さんまで、お母さんと同じ距離感になってしまったら、逃げ場がなくなってしまいます。あまりよくないと思います。 ― 母親にとっては、「自分」と「子ども」の精神的な線引きが、難しいのかもしれません。 幡野 : 子育て以外に何かアイデンティティを持ってないと危ない ですよ。子どもが生まれると、自分の仕事や趣味を諦めてしまう人は多いですが、僕は逆じゃないのか? と、思うんです。子どもができた人ほど、色々なことをやってみるべきだと思います。ストーカーみたいな親にならないためにもね(笑)。 ― 子育て以外のことをしていい…。なかなか、そうは思えない人が多いように思います。 幡野 :とりわけお母さんと息子のパターンは、恋愛にかなり似たようなものを感じます。下手な恋愛みたいになっている親子を見てると、逃げられない子どもは可哀想だと思います。恋愛上手な人って、恋人との距離感の取り方が上手だと思います。 ― 子どもとの距離感について、幡野さんはどう考えてますか? 幡野 :今、僕の子どもは3歳ですけど、とても魅力的な存在です。子どもが生まれて、子どものことが何よりも大事になるのはわかります。あそこまで純粋無垢に自分のことを大好き!と言ってくれる存在は、他にはいませんから。「ママ大好き! パパ大好き!」という「大好きでいてもらえること」が嬉しくて、それに依存してしまうんでしょうね。 ―親が「子どもという存在」に依存してしまう…。わかります。 幡野 :でも、子どもが、大きくなれば親がどういう人間なのかというのはバレます。いずれ、こう、何というか……例えば依存が強い親だったら そういう人間だってことが子どもにバレちゃう んです。 僕だって、子どものころは「大人は立派で偉い人」と思っていた時期もありました。でも、大人が立派なわけではなくて、立派な人もそうでもない人がいることが自分が大人になるとわかりますよね。僕が子どもの頃、偉ぶっていた学校の先生がいましたけれど、今考えると大したことなかったと思います。いずれバレるんだから、あんまり子どもに偉そうな態度はしないほうがいいんじゃないかなと僕は思っちゃいます。 力の弱い人間に対して、どんな態度をとるかで人間性は出る ー著書の中で、「力の弱い人間に対して、どんな態度をとるかで人間性が出る」と。 幡野 :すごく出ると思います。これは、子どもに対しての話だけでもなく、たとえば、会社の後輩や、弱い立場の人に対する態度で人柄ってわかると思います。もちろん、これは男性だけでなく、女性も一緒です。 ― 反省しかないです…。家庭という密室の中で、どうしても子どもに対してイライラをぶつけてしまうことがあって…たとえば、出ないといけない時間なのに子どもがダラダラしている…とか、そういう些細なことなのですが。 幡野 :でも、子どもは、そういうもんなんじゃないですか? 僕は36歳で、もう36年も人間をやっているから、ある程度のことはできます。でも、3歳の息子は、地球に来て3年ですから。まだ新人ですよ。そんな人に怒ってもしょうがないかな~、と僕は思うんです。怒って子どもが成長するのだったら話は別ですけど、怒ったところであまり効果はないと思うので。 ― 怒っても何もいいことないのは、頭ではわかっています。でも、毎日の生活の中で、子どもと接していると、合理的な判断ができなくなってしまう瞬間もあって… 幡野 :そりゃそうですよね。その感じもわかります。お母さんの中には、完璧を求めている人が、多くいる気がします。無意識に「絵に描いたような家庭」や「良妻賢母なみたい自分」を目指してしまっているんだと思います。そんな「絵に描いた餅」を目指したって、無理なんじゃないですか? ― どうして、母親は「「絵に描いた餅」を目指してしまうのでしょうね? 幡野 :う〜ん…人の目を気にしているからじゃないですか? 僕は、人の目を全く気にしないから、あまり子どもに怒らないんだと思うんです。たとえば、「オムツが早くとれることは、良いことだ」と、思っていませんか? 無理にオムツを取ろうとして、それでおもらしをして子どもにイライラして、ストレス抱えるぐらいなら、オムツが自然に取れるのを待てばいいんじゃないかなと思います。きっと、「他の子よりも早くオムツがとれる」とか「喋り出すのが早い」とか「立つのが早い」とか……。 無意識に他の子と比較しちゃう んでしょうね。次は、学校の成績や習い事の上手い下手、進学先や就職先、結婚相手……と比較ばかりしていると、その先にあるのは 「自分のことを他の誰かと比較する人間」のできあがり ですよ。 ―幡野さんは、比較とは無縁そうですね…(笑) 幡野 :僕自身、誰かと比べられるのが嫌いなので、自分の子どもを他の子どもと比較するなんて絶対に嫌です。妻の実家に行くと、「早くオムツ取れるといいわね」と言われるんですけれど、「関係ねえよ」と、僕は大きい声で言っちゃいます。 人は比較する生き物だというのはわかっているんですが、あまり巻き込まれたくないので、面倒くさい人に釘を打つのは、大事な仕事かなぁと。 僕は、1人の子どもを夫婦2人で育てていて、かなりギリギリだと感じています。これは僕もやってみてわかったことです。もし、ワンオペでやらざるをえないんだったら、よっぽど他の部分を切り捨てないと無理です。家事なんか、無理。バッサリと割り切って、合理的にやっていかないと難しいと思います。 ― ワンオペ育児でも「家事をきちんとやらないと」と思う人は多いですよね…。 幡野 :毎日の食事を自分で作らなければいけないと思っている人は多いですが、「そんなにがんばらなくていいんじゃないかな?」と、思います。もちろん好きで楽しんで食事を作ってる人はいいのですが、うちはかなりウーバーイーツに頼っています。子育てという、あんな大変な仕事を、1人でなんて、絶対に無理です。何度も言いますが、ウチは1人の子どもを夫婦2人で育てていてギリギリです。 子どもが泣き止まない。僕はそんな時、音楽を聴いている ― 幡野さんみたいに、「合理的」+「人と比べない」だと、だいぶ楽になれそうです 幡野 :そうですよ。 人の目を気にするより、自分の子どもからの目を気にした方がいい ですよ。僕は、子どもが泣き止まないとき、イヤホンをつけて音楽を聴くこともあります。「泣き声」でイライラするくらいだったら、イヤホンをつけて自分の好きな音楽を聴いていた方がいいじゃないですか。 ―泣き声は、自分が責められている気がしてしまうんですよね 幡野 :泣き声は生理的に不快だから、ですよね。それだったら僕は自分が耳栓をしたり、イヤホンで音楽を聴いて自分の気持ちを落ち着けてから子どもの対応したほうがいいと思うんです。「子どもが泣いているのにイヤホンで音楽を聴いているなんて、何て、ひどい人!」と言う人もいると思いますが、僕は「合理性に欠けるな」と、思っちゃいます。楽するところと、がんばるところを分けて考えればいいのに。 親の方が立場が強い期間なんて一瞬 ― 楽をしていいところを見極める……。そういう「境地」になかなかたどり着けないです 幡野 :まず、人のことを気にするのをやめたらいいと思うんですよね。周りの人のことより、自分と自分の子どものことを気にした方がいい。あとね、最終的に「子どもの評価」を「自分の評価」にすり替えちゃう人がいるんです。 ― 子どもは、自分とは切り離して考えた方がいい? 幡野 :そりゃそうですよ。想像するのが難しければ、「先輩」「後輩」ぐらいの関係性で考えてみたら、どうでしょう。 自分が何もできない新人の時に、「ガミガミ怒る先輩」と、「優しくいつも待って教えてくれた先輩」、どちらに信頼を置きますか? おそらく、感情的に「ガミガミ怒る先輩」を尊敬することって難しいですよね。それは親子関係でも、同じだと思います。今、子どもは自分よりも弱い存在ですが、15年ぐらいで抜かれますから。親がよっぽど成長する人でない限り、そのうち絶対に抜かれます。親の方が立場が強い期間なんて人生で圧倒的に一瞬ということを意識した方がいいと思います。 幼少期は、自分と子どもの信頼関係を積み重ねる時期 ― 著書の中の「言葉で人の歩みを止めることも、背中を押すこともできるならば、できるかぎりぼくは背中を押す人でありたい」という言葉が印象に残りました。子どもの背中を押すことができるママになるために、どうすればいいですか? 幡野 :子どものことを、否定しないことじゃないですか? たとえば、うちの息子がyoutubeを見て「これ、欲しい」と言った時、僕はいつも「いいね! 今度、探しにいこうか」と、言うんです。3歳の子どもが「これ、欲しい」というのは、少し噛み砕けば、「これ、いいな」ということでしょう? それを、大人の都合で「いらない」とか「すぐ飽きちゃうよ」と決めつけるのは、子どもの感情の否定だと思うんです。買う、買わないは、別の話として、「いいね! 今度、探しにいこうか」って言えばいいと思うんです。 ―どうして、幡野さんは、そういうセリフがサラっと出てくるのでしょうか? 幡野 :そうだなぁ、そうですね……。いずれ評価をするのは、子どもだと思ってるからですかね。最後は自分の人間性が子どもにバレるんです。だから僕は子どもに自分の価値観をできるだけ押しつけないようにしています。幼少期は 自分と子どもの信頼関係を積み重ねる時期 なんだと僕は思ってるんです。 幡野さんの人生相談が人気の理由 詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、恋愛相談から家族のこと、病気の悩みなど多種多様な人生相談に幡野さんが答えています。 「家庭のある人の子どもを産みたい」「娘がイジメられていて自殺を考えている」「2歳半の息子の子育てがツラい」「娘が非行にはしった」「中2の息子の成績が悪い」「友人と同じ人を好きになった」「夫の浮気が判明し、自分の病気も発覚した」 ヘビーな相談も多いのですが、幡野さんは、子どもや立場の弱い人に徹底的に寄り添いつつ、合理的――そして、問題の本質をさらっと見抜きつつ 本音で生きることの大切さ を伝えてくれます。 合理的で優しい…このバランスの絶妙さ が幡野さんが人気の秘密だと思いました。 …本の帯には「言葉で人の歩みを止めることを、背中を押すこともできるならば、できるかぎりぼくは背中を押す人でありたい」と書かれています。幡野さんが誰かの背中を優しく(時に強く)押している言葉をぜひ読んでみてください。子どもとの関係に役立つ言葉はもちろん、人生のヒントがたくさん散りばめられています。 ガンになった写真家に なぜかみんな、 人生相談をした。 Amazonで詳細を見る 『なんで僕に聞くんだろう。』 幡野広志著/幻冬舎刊 定価(本体1500円+税)
2020年02月26日自分が親になってみると、乗り越えたはずの「幼少期の辛い記憶」がよみがえる…。そんな人は、案外多いようです。 親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない! 虐待の世代間連鎖を防ぐために、私たちができることは? 母子論の第一人者であるカウンセラーの信田さよ子先生が、豊富なカウンセリング経験から導き出した初の子育て論を出版されたので、お話しを伺いました。 この記事は、 「『親にされたことを、わが子にしたくない』そんなママに限界がきたら…」 「子どもが泣くと怒りが沸く…その負の感情が世代間連鎖を生む!?」 の続きです。 ■虐待の世代間連鎖を防ぐ二つのキーワード ―「親にされたようなことを、自分の子どもにはしたくない!」と思う人は多いようです。 信田:日本には、虐待にかかわる広範な職種の人たちにより構成された「日本子ども虐待防止学会」という学会があり、そこでは世代間連鎖に関する研究がいくつも発表されています。それらの研究から浮かびあがる重要なキーワードは、2つあります。ひとつは、 「アタッチメント」 、もうひとつは 「感覚否定」 です。 ―「アタッチメント」とは、何ですか? 信田:アタッチメントは、子どもが不安を感じたときに、養育者にくっつくことで安心感を回復するシステムです。ここで注意したいのは、アタッチメントは「愛情」を表しているのではなく、むしろ 危機的場面を切り抜けるために必要な「安心感」 を表しているという点です。 つまり、アタッチメントは「親から子どもに与えるもの」(愛情)ではなく、 「子どもの側が親に求めるもの」 (安心感)なんです。 ■子どもが親に求めているものとは? ―なるほど。 信田:アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すると、満2歳ごろから、自分と他者との関係性について、心の中のイメージが構成されるようになります。これを「内的作業モデル(Internal Working Model)」と呼びます。 アタッチメントのシステムが子どもの成長とともに安定的に発達すれば、 「自分の感覚は世界から受容されるはずだ」 「他者は自分に安心感を与えてくれる」という信頼感が育ち、子どもの心の中には、世界とは、他者とはそのようなものである、というイメージが形成されていきます。 ―そのイメージ、とても大切ですね。 信田:けれども、全員が全員、アタッチメントのシステムがうまく形成されるとは限りません。安心できる定点のようなものがどこにもなかったとしても、子どもたちは成長せざるをえませんから。そうなると、親子関係、対人関係におけるさまざまな特徴が生まれることになるんです。 ―どんな特徴があるのでしょうか? 信田:たとえば、ほんとうはケアを求めているのに、わざと求めなかったり、ケアなんか必要ないという態度をとったりします。危険な行動を起こしたり、相手を攻撃したりすることで、ケアを求めていることをわかってもらおうとすることもあります。時には、反対に相手をケアする側に回ったりします。 それらは、たいてい周囲の大人から「本人の個性」「性格」「遺伝」とされがちですし、本人たちもそう思い、成長し、結婚し、やがて親となる時を迎えます。アタッチメントがどのように形成されているかを、多くの人は自覚することはありません。目にはみえませんし、自分はそういう人間だと思っているからです。 ■子どもの「不快」を受け止められない親 ―「アタッチメント」という概念、とても重要性ですね。では「感覚否定」とは、何ですか? 信田:子育てで最初に直面するのが、 「子どもの泣き声」 です。 育児に対して困難な気持ちを抱える女性たちのカウンセリングにかかわった経験がありますが、深刻な虐待をくりかえす女性も少なくありませんでした。 「子どもが泣くと不安や憎しみが沸く」「いらいらしたり、何ともいえない気持ちになったりする」「心臓がどきどきしたり、呼吸が荒くなったりする」……。これらは育児ノイローゼとかたづけられがちですが、彼女たちの反応をもっと深くとらえる必要があります。 これらの反応は、 「子どもが泣く」という負の情動 に対して、 母親も負の反応を生じてしまう ことを表しているんです。 「どうしたの、よしよし」と抱っこする以前に、負の情動を示す子どもに対して母親の身体レベルでの拒絶が起き、結果的に 子どもの負の情動を拒否してしまう 。この拒否が、感覚否定です。 ―母親として、「子どもの負の情動を受け止めることができない」ということですか? 信田:自分自身が負の情動を受け止められたという経験がない、負の情動を生み出す感覚が否定されてきたことが、泣く子どもへの身体レベルでの拒否感を生み出していると考えられます。子育てという事態に直面したとき、アタッチメントの課題が「感覚否定」という問題となって再浮上するのです。 ―「アタッチメント」と「感覚否定」、そんな因果関係があるのですね。 信田:子どもの泣き声は、不快だったり、苦痛だったりするので生じる声です。それらが親から否定されたり、親から攻撃されたらどうなるでしょう? アタッチメントという言葉を用いれば、親の感覚否定こそが、アタッチメントが形成されることの最大の妨げとなっているとも言えます。 不快で泣くしかできない子どもが、それを拒絶される ということは、感情・情緒を受け止めてもらえないというより、もっと身体感覚に近いものがあるでしょう。 ■子どもが泣いた時、自分に課すべきこと ―母親として、そのような状態になってしまう場合は、どうしたら良いのでしょうか? 信田:子育て中のママには、 「子どもが泣いたら、とにかく『よしよし』と口に出すこと」 と、お伝えしています。 「よしよし」というのはあやす言葉ですが、「良し」という肯定も表しているんです。とにかく「よしよし」とつぶやくことを、自分に課す。それが条件反射になるくらい、毎日練習してみる。 「自分はそんなふうに言ってもらったことがない」と、気づく人もいるでしょう。それはとても重要な気づきだと言えます。そして、「私は未経験のことをやろうとしている。何てすごいんだろう」と、 「よしよし」に取り組む自分をほめてあげましょう 。 ひとりでぶつぶつ、「よしよし」という練習をする、このような練習をして、それを習慣化していく方法を「行動療法」と言います。理由はなんであれ、とにかく行動する、それを習慣化させることが大切なのです。 ―なかなか、厳しいですね。まるで修行のようです。 信田:子育ては、修行という部分もありますよね。もう少し子どもの年齢があがれば、「いやだ」「お腹がすいた」ということもあるでしょう。転べば「痛い!」と言うでしょう。 そんなとき、「いやじゃないの」「お腹なんて空いてないの」「痛くない!」と、言わないで欲しいのです。それこそが、感覚否定ですから。「痛い!」と、子どもが言えば「痛いのね」と復唱する。共感できなくても腹がたっても、とにかく 子どもの言葉を「復唱」する のです。 なぜなら、感情がこもっていなくても、どこか機械的であったとしても、否定するより、はるかにましだからです。「痛くないでしょ!」が感覚否定であるのに対して、「痛いの痛いの飛んでけ」は感覚肯定になります。このような伝承された言葉遣いには、感覚否定をしない智恵がつまっていますね。 ■世代間連鎖を防ぐために、私たちができること ―「アタッチメント」「感覚否定」、あらためてキーワードだと感じました。 信田:感覚否定に陥らないためには、子どもの言動に対して自分がどう感じているかを察知する必要があります。「ああ、自分は怯えている」「子どもが泣くとパニックになる」といった具合に自覚するためには、子どもの様子と同時に、 自分の感覚を観察する 必要があります。それをセルフウォッチング(自己観察)と呼びます。 このような知識があったとしても、日々の子育ての場面で、すぐに自覚できるわけではありません。自己観察することに拒否感を覚える人もいます。自分の感覚を麻痺させるために、酒や薬などに依存することもあるからです。 第三者(専門家)の援助を受けながら、自分の感覚に気づけるようにするという長いプロセスが必要となりますが、けっして不可能ではありません。 ―そうおっしゃっていただけると、何だか気力が沸いてきます。 信田:自己観察によって、自分が子どもと向き合うときに不意に生じる負の反応を、だんだんと自覚できるようになると良いですね。 ●なぜ子どもが泣くと、自分が責められたように感じるのか? ●なぜ子どもがぐずったりだだをこねたりすると、見境もなく怒りが沸いてきて怒鳴りたくなるのか? 前述のとおり、このような反応が子どもにとって感覚否定になることを知り、その多くが、自分が育つ中で経験してきたものだとすれば、自分はそれを繰り返さないようにしなければなりません。 ―なるほど。 信田: 自分が親からどのようなことを継承したか、何を子どもに継承させたくないか を知るために、もう一つ大切なのは生育歴を振り返ることです。 ときに振り返ることは苦しかったり、蓋をしておきたいという気持ちから、思い出せなかったり、思い出すことで不安定になったりすることもおきます。できれば専門家(カウンセラー)や、同じ経験をした仲間(友人)などと一緒に振り返るほうが安全かもしれませんね。 ―第三者(専門家)の援助、とても大切ですね。 信田:これは私の持論なのですが、両親学級で、沐浴や授乳を教わるのに加え、そのうちの1回を生育歴作成にあてたらどうかと思っています。 夫婦それぞれが生育歴を振り返ることで、あらためて、生まれてくる子どもに伝えていきたいこと、継承させたくないことを自覚できるのではないでしょうか。 どの人にも、自分が親にされたように自分のこどもにはしたくないという点がひとつはあるはずです。それを確認するために 生育歴を振り返ることは、世代間連鎖の防止 ともいえるでしょう ―本当にそうですね。 信田:日々の練習を積み重ねることで、子どもに対して望ましい接し方ができるようになると思っています。 「自分はそうしてもらってこなかったとしても」 です。 何より 「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことそのものが、すでに防止の第1歩 なのです。そんな自分のことを「すばらしい」と、自信を持っていただきたいと思います。 いかがでしたか? 子育て中に沸き起こる負の感情は、ママなら、誰しもが経験済です。けれども、「負の感情が自分の手に負えない!」と感じるならば、信田先生のような専門家の援助も必要なのでは? と、筆者は思っています。1人でも多くの独りで悩んでいるママに、この特集が届くことを願っています。 <世代間連鎖を防ぐには> 1)世代間連鎖を防ぐためのキーワードは、「アタッチメント」と「感覚否定」 2)子どもが泣いたら、「よしよし」という練習から始める 3)「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことそのものが、すでに防止の第1歩 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月25日以前、信田先生を取材させていただいた 「『私って、毒親?』と心配するママたちの原因は、“母”にある!?」 という記事が、とても人気がありました。それだけ、多くの人が、「こんなに感情的になってしまう私って、大丈夫?」と、心配しているのだと思います。 》 「『私って、毒親?』と心配するママたちの原因は、“母”にある!?」 出産・育児の時期は、自分の母親の育児態度が思い出され、「母と同じ口調でわが子を叱ってしまう」と、自己嫌悪を感じることも。「私って、もしかして毒親?」と、心配になるママはどうすればいいのかをひも解いていきます。 それだけ、多くの人が、 「こんなに感情的になってしまう私って、大丈夫?」 と、心配しているのだと思います。 子育てをしていれば、感情的に子どもを叱ってしまう日だってあるでしょう。では、母親は、感情的になってはいけないのでしょうか? 引き続き、母子論の第一人者であるカウンセラーの信田さよ子さんにお話しを伺います。 この記事は、 「『親にされたことを、わが子にしたくない』そんなママに限界がきたら…」 の続きです。 ■「感情的になった母親はひどい」のか? ―つい感情的に子どもを叱ってしまい、その後に激しい自己嫌悪に陥ります。 信田さよ子さん(以下、信田):「感情的になった母親はひどい」と考えると、「感情的になってはいけない」「怒ってはいけない」と抑制しなければという気持ちになりますが、それは誤解です。 たとえ否定的な感情だったとしても、湧き上がる感情そのものに良い悪いはないんです。「怒りの感情を抱く」ことと、「それをどのように表現するか」は、別の話として考えた方が良いですね。 ―そうなんですか? 信田:怒ったらすぐに怒鳴ってしまう、思わず子どもを叩いてしまうという人は、「怒り」を「抑える」しか方法がない、だから我慢しなければというふうに考えがちです。 近年の心理学の成果は、どれほど怒りの感情が激しくしても、その表現方法は「選択」できることを明らかにしたことです。 ―表現方法を、「選択」ですか? 信田:それには、自分の怒りを客観的に眺める必要がありますね。 「怒りの温度計」 という比喩は、とても役に立ちます。 ゼロから10までの目盛りの温度計で「今6度だ、このままの状態を続けると9度を超えてしまう」というように、自分がどこまで怒りを抱いているか、 怒りの程度をウォッチする のに温度計の比喩は役立ちます。 怒りの温度計が上昇しているときであっても、ゆっくりとそして落ち着いた声で、「パン屋さんでは、パンに指でさわってはいけません」と、伝えることはできるでしょう? ―なるほど。そんなふうに考えれば良いんですね。 信田:怒ったらすぐ大声で怒鳴ってしまう、という人は、行動の選択肢は怒鳴る以外にもあることを知らないか、怒鳴るという行為を許している、 自分を正当化している んだと思います。 もし、「自分の子どもだから怒鳴ってもかまわない」と考えているとすれば、はなはだ迷惑な話だと思います。子どもを所有物だと思っているのではないでしょうか? ■叱るのはいけないことなのか? ―所有物というか、子どもに対して「責任がある」と思っているんです。 信田:なるほどね。そういう方は、もしかすると 「怒る」と「叱る」を混同している のかもしれませんね。最近は、「怒ると叱るは違う」と、さまざまな子育て本に書いてあり、ひとつの定番化になっているほどです。でも、「怒る」と「叱る」の違いを理解している人は、案外と少ないのかもしれません。 「叱る」行為の大前提として、「自分の感情を爆発させるためではなく、 相手の成長のため 」という目的がある点を、意識してみましょう。 つまり下の存在を成長させるために、上の存在がきつく諭し気づかせるように導くことが、「叱る」という行為です。そこには、「上から下への勾配関係」があります。 ―なるほど。 信田:けれども、最近では子どもに対して「上から目線」になることをためらう親が増えています。「子どもを対等な人として扱うことが大切」、「押し付けない」「強制しない」、「なぜなら子どもの自主性が大切だから」といった育児観が広がることで、上から目線の命令口調は否定されるようになってきました。 けれども、「〇〇してはいけません」「〇〇しなさい」と発言しないことは、親が責任を取ることに怯えているんじゃないでしょうか。もっとはっきり言えば、 「叱らない親」「お願いする親」の本質は、私には責任逃れのように感じられる のです。 ■子どもに怒ってしまったことは取り返しがつかないの? ―すごく思い当たります…。でも、やっぱり、何だか及び腰になってしまうんです。 信田:「怒る」と「叱る」を、整理できるようになってくると、怒りのエネルギーを上手に使えるのかもしれませんね。 そんな方に知っておいて欲しいのは、思わず怒りの感情が暴発してしまったとしても、取り返しがつかないわけではない。ちゃんとフォローできていれば大丈夫、ということです。 取返しのつかないことなどない んです。 ―そういってもらえると、何だかホッとします。 信田:そして、さらに、親が叱る時の基準をつくることが大切です。親の気分次第の勝手な叱り方は、子どもに大きな混乱をもたらしますからね。そうすると、子どもなりに、 リスクの少ない安全策は「親から見て常にいい子でいることである」 と学んでしまうんです。 過剰ないい子、誰からみてもいい子であることの背景に、 親のわけのわからない無原則的な怒りの暴発がある ことは指摘しておきたいと思います。 ―そうなんですね…。 信田:望ましい家族の一つの条件は、「子どもなりに納得できる原則を親が示し、親がそれを守ろうとする姿勢を示すこと」。それはひとつの「秩序」を示すことですね。 叱るという行為は上から下への支配的な言動のひとつですが、「自分の感情を爆発させるためではなく、相手の成長のため」という目的ゆえに許されるのです。こうやって整理しておけば、「怒る」ことをむやみに怖がらなくなるし、感情的になってしまった時も、きちんと「叱る」ために、ハッと立ち止まれるのではないでしょうか? <感情的に怒ってしまうママへ> 1)「怒り」の表現方法は選択できる。「怒りの温度計」という比喩を使うとわかりやすい 2)「叱る」のは、相手の成長のため。叱る時は基準を示し、親は基準を守る姿勢を見せる 3)親のわけのわからない無原則的な怒りの暴発が、「いい子」を作ってしまう 次回は、いよいよ本特集の仕上げ。虐待の世代間連鎖を防ぐためのお話しです。 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月24日「親のことを、手放しで『大好き!』と言える人って、案外、少ないんだな」 と、そんなふうに筆者は感じています。 仕事仲間やママ友の多くが、自分の生育歴のどこかは、納得していない…。言い換えれば、「親にされて、嫌だったこと」は、誰にでも、ひとつや、ふたつあるんです。 それでは、 自分の子育てで繰り返さない ためには、どうしたら良いのでしょうか? 原宿カウンセリングセンター所長であり、母子論の第一人者の信田さよ子先生が、初の育児論を書かれたというので、お話しを伺ってきました! 信田 さよ子さん(のぶた さよこ) 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。親子・夫婦関係、暴力、ハラスメントなどの問題に関するカウンセリングを行っている。著書に 『母が重くてたまらない』 (春秋社)ほか多数。 ■親にされたことを、自分の子どもにはしたくない! 信田先生は、言います。「私のところにカウンセリングに訪れる人たちの多くが、自分が親たちから受けた育児態度やしつけ、もっと具体的に言うなら 虐待に近い経験を子どもに対して繰り返したくない と考えています」。 日本では、いまだ「虐待」という響きから、殴る蹴るといった残酷な行為のことをイメージしがちです。けれども、虐待とは次の4つのことを指すことを、まずは知っておいて欲しいと思います。 <「4つの虐待」の定義> ●身体的虐待 :殴る、蹴るなど身体的な暴力を行う ●心理的虐待 :「ばか」「お前なんかはいらない」といった、言葉の暴力や、DVを見せること ●性的虐待 :子どもに対して性的な言葉を浴びせたり、性的行動を見せたり、行う ●ネグレクト :子どもの心身の健康な成長・発達に必要な世話・対応をしない (筆者作成) 身体的な暴力はもちろんのこと、 「子どもの心になんらかの傷を負わせる行為は虐待である」 という知識があると、親との間にあった「納得のいかない感情」を、俯瞰(ふかん)しながら突き放して眺めることに役立つのではないでしょうか? 「カウンセリング現場からの声を逆算していくと、 『これだけは子どもに対してやってはいけない』 というものが見えてきます。それをしないようにするだけで、虐待の防止になります」(信田先生) ■家族が機能するために大切なことは? 信田先生のカウンセリングは、「家族の中で生じる問題は、原因があるわけではない」というスタンスです。 「私たちカウンセラーの仕事は、原因を見つけ、犯人を摘発することではないのです。考え方としては、因果論ではなく循環論に近いのかもしれません。『原因によって問題が起こっているのではなく、悪循環が起こっているのだ』と考えています」(信田先生) では、その悪循環は、どう断ち切れば良いのでしょうか? キーワードは、 世代間境界 です。わかりやすい例としては、夫との関係がうまくいかない母親が、子どもとタッグを組んで、夫の存在を疎外してしまう…。「適度な世代間境界の形成と尊重が、家族関係を適度に機能させるんです」(信田先生) ■母親は子どもに嫉妬していないか? 適度な世代間境界の形成の第一歩として、意外かもしれませんが、 「子どもに嫉妬していないか?」 というチェックが必要です。 <「子どもに嫉妬していないか?」チェック例> □私は親からそんなことをしてもらったこともないのに、この子は、私という親からいい思いをさせてもらっているんじゃないか □同性である娘がキラキラとして幸せそうな顔をしていると、「いい気になるんじゃない」などと、透明な水に真っ黒な墨を一滴垂らすような一言を投げつけたくなる。 でも、私は親心から慢心をたしなめていると思い正当化する 「こんな気持ちになることがあったら、親が子どもに嫉妬している、と言い換えても良いのではないか?」と、信田先生は言います。 「親にしてもらえなかったことを、子どもにはやってあげようとは思いながらも、それはすんなりといくわけではないのです。誰かに支えてもらったり、そんな自分を認めてもらいながらでないと、限界が来てしまいます。 まずは、『私は子どもに嫉妬している』と、自分で気がつけるようになることが大切ですね」(信田先生) ■虐待する親たちが例外なく言うこと 私は子どもに嫉妬している。 そんな自分の醜い気持ちに、自分で気がつけるようになる! なかなかヘビーな作業です。でも、筆者は、子育てはキレイごとだけではやっていけないとも思うのです。 「自分の醜い気持ち」 から目を背けないでいようとする気力や勇気。それは、やっぱり必要なのではないか? そんなふうに思います。なぜなら…。 「虐待をする親たちは例外なく 『子どもが言うことをきかなかった』 と言います。自分が腹を立てたことを『自分の問題』ではなく、『腹を立てさせた子どもの問題』であるとする思考回路です」(信田先生) こう言われて、思い当たらない人の方が少ないと思います。筆者も、思い当たり過ぎて胃が痛くなりました…。でも、こんな時に、 「自分で気がつけるかどうか?」 は、大きな大きな分岐点だと思うのです。 「親を怒らせないように、母親が何を期待しているかを瞬時に察知して、そのとおりの言動をする癖が子どもについてしまう。そうなると、いつもびくびくして、母親の表情を伺うことになってしまいます」(信田先生) 要は、子どもに、甘えないこと。筆者は、このお話しを伺って、子どもに、自分の醜い心を背負わせるのではなく、自分が向き合える人になりたいと感じました。それは、とてつもなく難しいことだと、途方のなさに溜息が出てきますが……。 <親にされたことを自分の子に繰り返さないために> 1)家族が機能するためには世代間境界が大切 2)世代間境界を意識するために、「子どもに嫉妬していないか?」をチェックする 3)自分の負の感情を、子どもに背負わせない 次回は、ママの永遠のお悩み。「ついつい子どもに対して感情的に怒ってしまう」について考えてみましょう。 ■今回、取材を受けてくださった信田さよ子先生の最新作 『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと』 (¥1,400円(税別)/講談社) 信田 さよ子さん 臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコールなどさまざまな依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス(DV)、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)、『母・娘・祖母が共存するために』(朝日新聞出版)、『母からの解放 娘たちの声は届くか』(集英社)『タフラブという快刀』(梧桐書院)など。
2020年01月23日筆者は、ライターとして教育記事を手掛けることが多いのですが、とりわけ特別支援教育に関心があります。なぜなら、私には広汎性発達障害の診断を受けた息子がいるからです。 彼は、小学校の低学年の時に支援学級(通級)に通い、適切な特別支援を受けることができました。そのおかげで、今は通常学級のみの在籍で楽しそうに学校に通ってます。 》 「「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら」 発達障害の子、LGBTQの子、外国にルーツのある子など、 教室のなかには多様な子どもたち がいます。それぞれの子のニーズに合った支援の必要性が、ようやく認知されるようになってきました。そういう意味で、最近の教育現場では、 「多様性」 がキーワードのひとつになっています。 【LGBTQとは】 L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)。そして「Q」はQuestioning(自分の性別がわからない、もしくは意図的に決めていない人)、Queer(セクシュアルマイノリティの総称、枠組みに囚われない人)として使われています。 ■クラスの中にLGBTQの子どもたちはいる 筆者は、ある教育雑誌の記事に「 13人に1人がLGBT 。この数字は日本の左利きの人口とほぼ一緒です」というフレーズを書きました。 割合から推測すれば、 LGBTQの子どもたちはクラスに2~3人 はいるのかもしれません。そんな子どもたちが安心して過ごすために、大人ができることは? パナソニックセンター東京で行われた、教育関係者を中心とした『LGBTQ』のワークショップに参加してきました。 私が参加したワークショップグループのメンバーは、「養護教諭」、「ユニバーサルデザインに関心がある建築家」、「企業のダイバーシティ推進室所属の会社員」、「当事者の発信者」、そして教育ライターの私の5人です。さまざまな立場の人が、それぞれの立脚点から、このトピックに関心を寄せていることがわかります。 質問に対して、グループのみんなで話し合い、その後、登壇者の方たちも、同じ質問に回答をするという形式で進められました。 ■LGBTQの子どもたちの苦しみとは 最初の質問は、「映画を見た感想を語り合いましょう」。 オーストラリアの映像作品でトランスジェンダーの少女(出生時男性→女性)が主人公の映画『新入生』(原題:First Day)を見たあと、グループに分かれてワークショップを行いました。 【映画『新入生』とは…】 トランスジェンダーの少女ハナーは小学生の時、男の子として過ごしていました。進学は本当の自分になるチャンスです。ところが、入学初日が近づくにつれて、ハナーは不安になっていきます。トランスジェンダーだということが他の生徒に知られてしまったらどうしよう? 登壇したそれぞれの方の「背景」が垣間見えたので、それを含めてご紹介します。 小林 りょう子(こばやし りょうこ)さん 子どもからカミングアウトを受け、性的マイノリティの子の親として、LGBT当事者や家族の支援活動を行っている。 小林さんの38歳になる息子さんは、出生時の性は女性でした。小林さんが映画の中で最もグッときたのは、ハナーちゃんが制服を着た時の表情だったそうです。息子さんに、 「男性の制服を着せてあげたかった」 と、涙ぐんでいらっしゃったのが印象に残りました。 浅沼 智也(あさぬま ともや)さん トランス男性(出生時女性→男性)。看護師。LGBTQであり、精神疾患や発達障害、依存症などの複合的な問題を抱える当事者のぴあサポートをしている団体カラフル@はーと代表。 浅沼さんは、「 自分は何も悪いことをしていないのに、トランスジェンダーということは隠し通さなければいけない と感じてしまう、その苦しさを思い出した」と。 浦田 幸奈(うらた ゆきな)さん トランス女性(出生時男性→女性)。 愛知県の中学校教諭。2017年、学級・学年・職員に性同一性障害をカミングアウト。2018年度より女性名・女性の装いで教壇に立つ。特定非営利活動法人ASTA所属。 浦田さんは、映画の中での、いわゆる「誰でもトイレ」の話に言及。「『男子トイレ(たくさん)』『誰でもトイレ(ひとつ)』『「女子トイレ(たくさん)』。 この『たくさん・ひとつ・たくさん』とあった時の、『ひとつ』を使うということは、 隅に追いやられている感じ がして、思った以上に孤独感を味わう」と。「映画の中では、ハナーの事情を知らない同級生が、『今度私もそこに行きたい!』言うのですが、その発言に歩み寄るというか寄り添う感じがした」とも。 知花 梨花(ちばな りか)さん トランス女性(出生時男性→女性)。ジェンダークリニックで看護師をしながら女優として活動。 ジェンダークリニックで性に違和感を抱える方のケアをされている実感として、「性別を移行するということは、世間体、家族、会社などとの関係性もあり、長い時間を要します。現実として、『女性ホルモン(男性ホルモン)を打てれば幸せなんです』と、外見の見た目は変わらないという人も多いです」と。 ■「無知」が多様な性を阻害している 次の質問は、 「多様な性を阻害しているものは、何だと思いますか?」 。 私たちのグループから出た意見は、 「無知」「世間体」「旧態依然とした制度」 の3つでした。登壇者の方からの意見も大別すれば、この3つのどれかに含まるのでは? と、感じました。 小林さんからは、「無知である」ということを象徴する具体的なエピソードとして、「文部科学省から2016年4月1日に教員向けの手引書が出されているのに、 現場の先生に浸透していない 」という問題が指摘されました。 手引書は、ネットで誰でも見ることができるので、ぜひご覧ください。 教育現場のLGBTQの子どもたちへの対応については、情報インフラがまったく整っていないと感じます。私が取材を通じて遭遇した教育現場の現実をいくつかご紹介しましょう。 ■共生社会をつくるには 「多様性を目指す教員の会」の勉強会に参加したときのこと。多様な性に関する教育現場などでの発信をされている中島潤(なかじまじゅん)さんのお名刺に、 「生まれた命が、生き抜ける社会を」 と印刷されていました。 中島さんは、「今年から、この文言を印刷しました」とおっしゃっていました。どんな現実があるのか、ぜひ今後、ウーマンエキサイトでもご紹介していきたいと考えています。 ▼性を揶揄する言葉が教室内で使われている 当事者の子どもたちは、性を揶揄(やゆ)する言葉で傷つくことが多々あるそうです。そうした言動を、 先生方が見て見ぬふり をしているというのは、LGBTQの子どもたちや保護者の集まりで必ず話題になる事柄だそうです。 ▼性に対しての配慮と合理的配慮の混同 LGBTQの子への配慮が合理的配慮と混同 され、診断書の提出を求められることが多いことも教育現場の混乱のひとつでしょう。 合理的配慮を受ける場合は、たしかに診断書が必要です。ただ、性に対しての配慮は、合理的配慮とは別物です。たとえば、「名前シールで、赤・青といった性別二元論ではない対応をして欲しい」というのは、けっしして「わがまま」という範疇の話ではないのです。 ■すべての子がありのままの自分でいられるために こうした教育現場の現実を踏まえ、最後の質問に突入します。 「すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を実現するために必要なことは?」 私たちのグループから出た意見は 「まずは、知ることなのでは?」 ということでした。私は今年に入ってから多様な性に関する記事を書くようになりましたが、正直なところ、いまだ「手探りで書いている」という状態です。2019年現在、 多様な性を知るための情報が、圧倒的に少なすぎる… 。 浦田さんは、「知ることで、できることが見えてくる。多様性を知ることを楽しみつつ、その人たちが笑顔になるために自分ができることを考える人が増えたらうれしい」と、おっしゃっていました。 ワークショップのチラシには、「目に見える違い、見えない違い、それぞれの人が 『人と人との違い』 にさまざまな思いを持ちながら過ごしています」と、書いてありました。 「知らないこと」に対しては、誰だって身構えてしまいます。そんな自分を、「だから悪いんだ」と思うのではなく、「何に対して自分は身構えているのだろう?」 そういったことから、ゆっくりと自分と対話を始めてみようと思いました。 知花さんが、「今日感じたことを、まずは、みなさんの言葉で伝えて、広げていって欲しい」と、おっしゃっていました。私が感じたことの何かひとつでも、皆さんの心に届くとうれしいです。 <参考サイト> ●文部科学省: 「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、 児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」 (教職員向け)[pdf] ●多様性を目指す教員の会: 公式HP DIVERSITY&INCLUSIONイベント第6弾 『LGBTQ』~すべての子どもがありのままの自分でいられる社会を目指して~
2019年12月01日子どもがちっとも言うことを聞かないと嘆く前に、子どもとの信頼関係が築けていることが大切と語るのは、カリスマ的な人気がある映画「みんなの学校」の舞台となった大空小学校の初代校長である木村泰子先生と、子育てスキルの解説に定評がある高山恵子先生。 そう言われても、そもそも「子どもに信頼してもらう大人」になるのが難しい! どうしたらいいですか? 引き続き、木村泰子先生と高山恵子先生の対談から筆者が探ります。 「子どもが言うことを聞かないのは、ママとの信頼関係に問題があった!」 の続きです。 ■大人が画一的な価値観を押しつけない ―子どもが信頼できる大人になるためには、何から始めれば良いでしょうか? 木村泰子先生 (以下、木村):自分が子どもに信頼してもらえているのか? それは、いわば、 子どもにとって自分が安全基地になれているのか? という問いです。言い換えれば、この問いは、「子どもにとって、自分が安全基地になるためには、どうしたらいいのか?」ということです。 これについて、私は何段階かに分けて考えました。いろいろと考えた結果、最終的に、子どもにとって自分が安全基地になるためには、大人が持っている『限られた画一摘な価値観』を、子どもに一方的に押しつけないということなんだと思い至りました。 高山恵子先生 (以下、高山):自分が受けてきた 過去の教育 や、 自分の親の育て方 が正しいと信じている方は多いですよね。 木村 :そう、そこが問題の「核心」とも言える点なんです。 いま、自分がやっている子育てが、自分がもっている「画一的な価値観」を押し付ける行為になっていないか? そこに対して、 ママは主体的に自分の頭で考えてみて 欲しいのです 高山 :たしかに。そこを考え始めてみることが、今、一番大切なことですね。 ■子どもにどんな人になって欲しいですか? ―主体的に自分の頭で考えてみる…。なかなか、ハードルが高いですね 木村 :この話をしていたら、ある県の教員研修会に呼ばれた時のことを思い出しました。 そのときは、大きな体育館に先生方が集まって、映画「みんなの学校」の上映後、「何かお話しをしてください」と言われていました。 高山 :どんなお話しをされたのでしょうか? 木村 :新任の先生が最前列に座っていらしたので、新任の先生方に向かって、「ご自身がどんな先生になりたいか、言えますか?」と聞いてみました。みなさん、意気揚々と「僕に当ててください!」「私が話したいです!」という顔をされていました。 そこで、私は言いました。「そんなん、どうでもいいんです。自分が、どんな先生になるかなんて、どうでもいいんですよ。では、 どんな子どもを育てたいですか? はい、どうぞ!」と、言ったんです。そうしたら、誰も手を挙げませんでした。 高山 :ああ、本当に先生と気が合います。私は講演会の最初によく、「みなさんは、子どもにどんな人になってほしいですか?」という質問から始めるんです。 ■家でも学校でも、教育の目的はたったひとつだけ ―「子どもにどんな人になってほしいか?」…ですか? 木村 :たとえば、教員になる人たちは、教員養成課程で「自分がどんな先生になりたいか?」ばかりを勉強させられています。「子ども理解ができて、授業がうまくてなんとかかんとか…」と。 そうしたら、自分がそういう教員になることが、すべての「目的」になってしまい、 子どもは目的を達成する「手段」になってしまう んです。「目的」と「手段」が逆になってしまっているんです。 高山 :家庭でも、同じことが起きています。 木村 :「どんな親でありたいか、どんな教員になりたいか」ではなく、 「自分は、どんな子どもを育てたいのか」 ということだけを考えていればいい。 もっと、言ってしまえば、「家庭や学校での教育の目的とは何か?」という話です。家庭や学校での教育の目的は、 その子がその子らしく育つ こと。それ以外にありません。 高山 :おっしゃるとおりだと思います。私は、アメリカの大学院で、教授法には「教師中心法」と「生徒中心法」があると学びました。「教師中心法」は、文字通り、教師中心の教授法で、従来の日本の一斉教育のイメージですね。 一方で、生徒中心法は、子どもありきの教授法です。この「生徒中心法」の考え方が、これからの教育で、非常に大切なのだと私も思います。 ■親が変われば子どもも変わる ―大空小学校には、保護者の方、ボランティアで来て下さる地域の方など、たくさんの大人がたくさんいました。学校に多様な大人がいて混乱はありませんでしたか? 木村 : 私たち教職員がすごく大事にしていたのは、「私らが子どもを一番見ていて、わかってへんかったら、給料返さなあかんで」ということです。 「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」。そこを判断するのは、教員の仕事です。授業中に、地域の方がその子にとってプラスにならないような関わりをするときは、やっぱりキッチリ言わないと。専門家である私たちが、「いま、ちょっと邪魔やねん」と言う。それが教員の仕事です。 高山 :「この子にとっていい関わりか? いい関わりでないか?」を判断すると思えば、親も自分の感情に流されることは減るかもしれませんね。でも、そこまでキッパリ言って、気を悪くされる方はいらっしゃいませんでしたか? 木村 :そういうこともあるでしょう。「邪魔やねん」と言われて、「そんなん言われたし、もう行かへん」と思われる方は、それ以後、自らいらっしゃることはないでしょうね。 一方で、「邪魔やねん」と言われたときに、「あ、そうか。いまの私の関わり、あかんかったな」と学んでくださる方は、それ以後、同じような関わりはされません。 高山 :なるほど。その方自身を否定するのではなく、その方の言動がNGなのですから、そこを変えればいいのですね。 木村 :自分の意思で学びつづけようとする。そういう人が増えて、そういう方が、どんどん学んでいってくだされば、家庭や学校、ひいては地域全体の「学びの場」としての空気が変わっていくわけです。ですから、大空の校門には、こんな看板をかけていました。 ●大空小学校の校門の看板 木村 :大人が 「主体的な深い学び」 を行えるようになってくれば、子どもたちも自然に「主体的な深い学び」を獲得していきます。親が変われば、必然的に子どもも変わっていくんです。 高山 :本当にそうですね。それにしても、木村先生は、行動の人ですよね。 木村 :「誰が、いつやるか?」というだけの話なんです。私の話を聞いて、「いいのはわかっているんですが、私の現実はそうではないんです」ではなく、「そうするためには、どうしたらいいですか?」なんです。 「自分自身を、まず変えようよ!」 と。自分自身を変えることからしか、何も始まらないのです。 ■今、自分自身を変えることから始めよう! いかがでしたか? 筆者は、「私の生きづらさは、どこからくるのだろう?」 そんなことをよく考えます。私が子どもだった頃、「その子がその子らしく育つこと」を最優先に考える大人に囲まれていたのなら、「私は、私であっていい」と、力みなくストンと思えたのかもしれません。 そう思うのであれば、いま、自分が、そんな大人になればいい。「その子がその子らしく育つこと」を保障できる大人に、自分がなればいい。そんなふうに、考えるようになりました。 下記の対談本は、筆者が取材・執筆を担当しました。取材を通じて、木村・高山両先生と多くの時間を過ごさせていただくなかで、実践してきた人しか持ちえない、「言葉の力」を体感しました。本書を通じて、それが少しでも読者さまに伝わるとうれしいです。 <親の意識を変えるポイント> 1)自分が持っている画一的な価値観を子どもに押しつけていないかセリフチェックを! 2)教育の目的は、その子がその子らしく育つこと。それ以外には、ない 3)大人が主体的な深い学びを獲得すれば、子どもも自然とそれに続く ■参考文献 『「みんなの学校」から社会を変える: 障害のある子を排除しない教育への道』 (木村泰子・高山恵子 著/小学館刊 本体800円(税)) ●木村泰子(きむら・やすこ)先生 文部科学省特別選定にもなったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は、2015年2月に封切られてロングラン、今もなお全国の自治体などで自主上映され続けています。木村泰子先生は、この映画の舞台である大阪市立大空小学校の初代校長。2015年に退職後は、全国各地で公演活動を行っています。 》 「『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方」 ●高山恵子(たかやま・けいこ)先生 NPO法人えじそんくらぶ代表。保育所・幼稚園などへの巡回指導を通じて、子育ての現場支援に携わっています。著書に『しからずにすむ子育てのヒント(高山恵子/Gakken)』など、子育てのスキルをのわかりやすい解説に定評があります。「ママのストレスを少しでも減らしたい!」が、活動の原動力。 》 「ママのためのアンガーマネジメント」
2019年11月18日毎日、子育てをしていて、何となく不安…。それは、もしかしたら「子どもを育てる土台」が整っていないからなのかもしれません。 では、子どもを育てる土台とは、何なのでしょうか? カリスマ的な人気がある元小学校校長の木村泰子先生と、子育てスキルの解説に定評がある高山恵子先生の対談から筆者が探ります。 ●木村泰子(きむら・やすこ)先生 文部科学省特別選定にもなったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は、2015年2月に封切られてロングラン、今もなお全国の自治体などで自主上映され続けています。木村泰子先生は、この映画の舞台である大阪市立大空小学校の初代校長。2015年に退職後は、全国各地で公演活動を行っています。 》 「『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方」 ●高山恵子(たかやま・けいこ)先生 NPO法人えじそんくらぶ代表。保育所・幼稚園などへの巡回指導を通じて、子育ての現場支援に携わっています。著書に『しからずにすむ子育てのヒント(高山恵子/Gakken)』など、子育てのスキルをのわかりやすい解説に定評があります。「ママのストレスを少しでも減らしたい!」が、活動の原動力。 》 「ママのためのアンガーマネジメント」 ■「子どもが言うことを聞く」ために必要なこと ―子どもが全然言うことを聞きません! そんな時、どうしたらいいですか? 木村泰子先生 (以下、木村):子どもへの関わり方は、「手法」ではありません。子どもが「この目の前の大人は、自分のために言っているよな」と感じるときは、「うるせぇな」などと表面的にどれだけ悪態をついていようが、必ず自分の身体のなかに、その言葉をトンと沁み込ませています。 子どもは、目の前の大人が、 「本当に自分のために言ってくれている」 と感じたときは、必ず大人を信用します。これはすべての子どもがもっている「本能」なんです。 高山恵子先生 (以下、高山):子どもに言うことを聞いてもらうには、まず 信頼関係 が基本です。「教える」という土台には、人間同士の信頼関係が大切です。「自分のことをわかってくれている人だ」と子どもが感じられることが基本なんです。 ■子どもが信頼できる大人の条件とは? ―では、子どもと信頼関係を築くには、どうすれば良いのでしょうか? 木村 :子どもが本当に困ったとき、 「信頼できる大人の条件」 って、どんなことだと思われますか? これについて、大空小学校の校長をしているときに「そこなのね?」と、衝撃的に学んだ事実があるのです。 高山 :ぜひ、伺いたいですね。 木村 :(他人を信頼していなかった子どもが校長である木村先生だけ信頼した理由を)「だってな、校長先生は最後までずっと横にいとってくれる」と、言ったんです。それだけです。 「ただ、横にそっとおるだけや」 という話です。助けてくれるわけでも、ためになる話をするわけでもないけれど、最後の最後まで横にいる。 高山 :たしかに「寄り添う」ということ、とても大事ですね。大人は、頭では理解をしていると思うんです。ただ、じつは、「子どものかたわらに、ただいる」って、すごく難しいですよね。 子どものかたわらにただいるということが、「すごく難しいこと」になってしまっているのは、ママたちが 「この子を、自分が正しく導かなければならない!」 という使命感をもっていらっしゃるからなんだと思うんです。 ―毎日、「子どもにやらせるべきToDo」に追われています 高山 :子どもに対して、いろいろなことをやらなければいけないという思いが強くて、ママたちは、なかなか「まず寄り添う」という気持ちになれないと思います。 だからこそ、 「寄り添う」 ということを 「意識して、やっていこう」 という気持ちが、大切だと思います。そうするうちに、だんだんと子どもに自然と寄り添い、評価せずにただ話を聴くことができるようになって、信頼関係も生まれていくのだと思います。 ■子どもと信頼関係を結ぶために知っておきたいこと ―おっしゃることはわかります。でも、なかなか、そう切り替えられません。 高山 :子どもが大人の言うことを聞く、つまりは子どもがスムーズに学ぶためには、 子どもの心身が安定 していないと難しいんです。これに関して、私はよく「マズローの欲求階層図」のお話しをしています。難しい理論のように聞こえるかもしれませんが、これは大学の教育系学部では必ず学ぶ、教育のベーシックな知識なんですよ。 ●マズローの欲求階層図 高山 :アメリカの心理学者マズローは、人間には基本となる欲求が5つあり、それは階層になっていて、下から順に満たされると良いと考えました。(上記の図参照) ここでのポイントは、「欲求には優先順位があり、下から順に満たしていくことが大切」という点です。どういうことかというと、人はまず図の①から④までの欲求が満たされてから、⑤の「自分の能力を発揮して何かを成し遂げたいという気持ち(自己実現欲求)」が起こる、という考え方なんです。 つまり、ママが子どもと信頼関係を結ぶことができれば、「②(安全欲求)」「③(所属・愛情欲求)」、「④(自己承認欲求)」が満たされます。そうして初めて、「子どもが言うことを聞く耳を持つ」状態になるんです。この理論が頭に入っていると、急がば回れ、子どもが言うことを聞くためには、 「親子関係の土台づくりから」 という気持ちになりませんか? いかがでしたか? ママは、溢れかえる育児情報の中で、ついつい「アレもコレも」と思ってしまいがち。けれども教育学の知識が少しあるだけで、情報を「間引き」するヒントになりそうです。 <親の意識を変えるポイント> 1)子どもは、信頼関係が築けている大人の言うことは聞く 2)子どもと信頼関係を築くには、「寄り添う」ことが大事 3)マズローの欲求階層図で、「子どもが言うことを聞く耳を持つ」までの過程を理解する ■参考文献 『「みんなの学校」から社会を変える: 障害のある子を排除しない教育への道』 (木村泰子・高山恵子 著/小学館刊 本体800円(税))
2019年11月17日