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【映画と仕事 vol.2】気になるあの映画の予告編、どうやってできてるの? 監督、宣伝チームの思いを90秒で形にする

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【映画と仕事 vol.2】気になるあの映画の予告編、どうやってできてるの? 監督、宣伝チームの思いを90秒で形にする

映画業界で働く人にとっても、実は知らないことだらけの映画業界のお仕事。そんな映画界の“中の人”の姿を紹介する「映画お仕事図鑑」。

連載第2回にご登場いただくのは、映画館で、TVで、スマホで、交通広告で…いまや誰もが日常的に目にする映画の予告編を制作する会社「バカ・ザ・バッカ」でディレクターとして活躍する土子智美さんです。

みなさん、普段、何気なく見ている予告編を「どうせ映画の本編映像をつなぎ合わせただけでしょ?」と思っていませんか? 予告編、そこには映画監督やスタッフ、宣伝チームの作品への熱い思いを背負い、それを数十秒の映像に凝縮するディレクターの職人技と映画への愛情が!

専門学校時代のインターン体験で知った予告編の奥深さ!



――そもそも土子さんが映画業界に足を踏み入れたきっかけから教えてください。

地元の茨城大学の教育学部に通っていたんですが、一方でずっと映画の仕事をしたくて悩んでたんです。それでも教師になって地元で就職するんだろうなぁと思ってたんですが、どっちもやりたくなって悩んで…悩むくらいなら一度、やってみようと2年間、専門学校に行くことにしたんです。

とはいえ、それをなかなか親に言えなかったんですが(苦笑)、運よく、おじの一家が東京に住んでいて「それならうちに住んで通えばいいよ」と言ってもらえて、学費は自分の貯金を崩して、大学卒業後に2年間の映画専門学校に通ったんです。

――映画業界の中で特にどんな仕事に携わりたいと思っていたんですか?

最初は「これ」というものもなく、本当に漠然と「映画がやりたい」って気持ちだけだったんですよね。
専門学校で映画を撮ったり、いろんなことを楽しんでいて、もともと国語科だったこともあって、書いたりするのは得意で、なんとなく「作る側」になりたいなとは思っていたんですが…。

実は、弊社の池ノ辺(直子/代表取締役社長)と地元が同じで、私が通っていた大学に、地元出身の人間の著書ということで、池ノ辺が書いた本が山積みになっていて、それを読んで「こんな仕事があるんだ!」と予告編制作の仕事を初めて知ったんですよね。専門学校に通い始めて1年半ぐらいした時に、ちょうどこの会社がインターンを募集していまして、それですぐに募集して、面接をしてもらい、半年ほどインターンとして採用してもらったんです。働いてみたら、この仕事が面白くてたまらなかったんですよね。自分に合っていたんでしょうね。予告編の制作って「作ること」+「宣伝」の要素が入っている特殊な業界なので、それが楽しくて。そのままこの会社に入社して、もう13年ほどになります。

デザインからキャッチコピーの創作まで! 予告編づくりには映画制作と宣伝の全てが詰まっている



――「バカ・ザ・バッカ」さんは基本的に映画の予告編制作会社ということですが、他にも映像に関わる仕事をされていると伺いました。


私は会社の中でもわりと特殊な方で、もともと趣味が多くて、ミュージカルや音楽、ドラマも大好きなんですけど、それを口に出して言ってたら仕事をいただけるようになったんですよね。ミュージカルやドラマのプロモーション映像や制作会見の映像の編集、ミュージシャンの事務所さんやレコード会社さんから、ライブ映画の予告編のお話をいただいたりして、映画以外の仕事もさせていただいてます。そんなことまでこの会社でできるとは思ってもなかったのでありがたいですね。

――具体的に入社されてからここまでのお仕事について教えてください。

最初はアシスタントでした。基本、うちの会社はディレクターがそれぞれ作品を担当するのですが、そのディレクターの下にアシスタントがついて、仕事を学んでいくという体制で、1から仕事を覚えていくという感じでした。

予告編の仕事って映像を編集してつなぎ合わせたものというイメージがあるかもしれませんが(笑)、もちろんそれだけじゃないんですよね。私自身、この会社に入ってから知って驚いたんですが、予告編のタイトルワークのデザインなどもこちらがやらないといけないんですよ。


――ディレクターさんのクリエイティビティが求められるんですね。

カット編集だけだと思ってたら、1本の作品を作るくらいの感覚で、PhotoshopからAfter Effectsまでできないといけないし、デザインもキレイにできないといけないし、音楽の構成もこちらで考えるので、もともとBGMがない映画の場合、こちらで合うものを考えて、つけていかないといけないんです。宣伝チーム、宣伝プロデューサーから「こういうふうに見せたい」といった方向性は伺うんですが、それを形にしないといけないわけです。最初はどうやって先輩たちがやっているのかもわからず、レイアウトで「文字間が悪い」と言われても「文字間って何?」という感じで(苦笑)。最初の2~3年は会社にいながら勉強の日々でした。デザインの部分は本当に苦労しましたね、それまで全くやったことがない分野でしたから。

――そもそも映画の予告編を、本編の制作スタッフとは別の会社の方が作っているということも知らない人も多いと思います。

言ってしまえばひとりで監督、脚本、プロデュースまでをやって、90秒の映像を作るという感じで、私も驚きました。
でも、だからこそ自分の中にあった「作りたい」という欲求と、映画が大好きで「宣伝したい」という気持ちが重なる仕事だったんだなと思います。

――アシスタントを卒業し、ディレクターとして中心的に進めるようになった時期は?

入社して3年目くらいからですかね。アシスタントについていた先輩が忙しくなってきて、ちょうど私と仕事をしてみたいとおっしゃってくださるクライアントさんがいたこともあって、ある作品をひとりで担当することになったんです。

そういう機会がだんだん増えていき、その間もアシスタント業務は並行して行なっていたんですけど、ある程度、仕事の量が増えていくと、アシスタントの仕事ができない状態になってきて、そうなったら独り立ちということになります。そうなると今度は、自分がディレクターとしてアシスタントを育てる側になるんです。

――体制としては、何人ものスタッフでチームを組んで仕事をするのではなく、ひとりのディレクターがいて、その下にアシスタントがつくという形式なんですか?

いまの弊社の体制はそうですね。基本的にはディレクターひとりにアシスタントひとりという体制で、ある作品の始まりから最終的な納品まで作品単位で担当するという形です。

――ひとりのディレクターが同時並行で複数の作品を抱えるということも?

それはごく普通にありますね。
ジャンルの違ういろんな作品を同時に抱えて、切り替えが大変な時もあります(笑)。

――ひとつの作品を請け負ってから終わりまでの流れをご説明していただけますか?

作品の規模によっても違いますが、全国で公開されるような大きめの作品では、まず「特報」と呼ばれる30秒ほどの映像を作ります。最初に作品を見て、宣伝プロデューサーとの打ち合わせがあって「こういう感じにしたい」といった話し合いがあり、その意図をくみつつ2週間ほどの時間をいただいて形にします。

そこから、いろんな修正のやりとりがあるんですけど、邦画の場合、宣伝チームだけでなく本編チームの確認であったり、俳優さんの所属事務所のチェックなどもあって、修正作業を含めてさらに1か月くらいはかかるかな…? 洋画の場合も海外のチームに確認をとりますので、平均して2か月くらいで特報映像が完成します。

それが終わるとすぐに、今度は「予告編」の制作に取りかかります。特報の時と同じように制作と確認・修正などがあるんですが、その間にWEBやSNS関連のプロモーション映像の制作や試写会告知などの映像制作もあります。その作品が小説原作の場合、書店で流すための作品紹介の映像を作ることもあります。

そこでまた2~3か月がかかるんですが、それが終わると今度は公開直前にCMとしてTVで流れる「TVスポット」の制作に移ります。
他にもラジオCMもありますし、最近では初日舞台挨拶の映像を組み込んだ「大ヒット公開中」の映像を作ったりすることもあるので、映画公開のギリギリまで…なんだったら公開後も仕事をしています。昔よりも作るものの数は圧倒的に増えてますね。トータルで見ると、ひとつの作品に半年から1年弱くらいの時間、関わっていますね。

親や友達は「たかが30秒くらいの映像を切ってくっつけて作るのに、なんでそんなに忙しいの?」と思ってると思うんですが(笑)。

よい予告編とは――? 盛らず、ウソなく正攻法で観客の心に火をつけるべし!



――担当する作品の本編は合計して何回くらい見るんですか?

人それぞれだと思いますが、私はかなり見る方で、合計10回以上は見ると思います。作業のプロセスの中で「抜き」という作業があって、要は映画の全てのカットとセリフをひとつずつ取り出していくんです。「このカットは使えそう」「これは使わないな」という感じでひとつひとつ選り分けていく時間のかかる細かい作業なんですけど。

その作業をやっているので、全てのシーンが手元にあり、本編全体を見直す必要はないんですけど、長くその作品に携わっていると、感覚が慣れちゃうんですよね。
そういう時に「いや、もっと違う方向性、角度があるんじゃないか?」ともう一度、最初から作品を見直すんです。

できる限り、一般のお客さんに自分の感覚を近づけて、初めてその映像を見ているかのような新鮮な気持ちで見るというのを心がけています。慣れちゃうと、こっちで勝手に思い込んで「これでわかるよね?」という心理でシーンを選んじゃったりするんですけど、何も知らずに初めて見る人にしてみたら「え?いまのカットって何の意味があるの?」と思ったりするものなんです。なるべくフラットな気持ちで見るようにしています。仕事してると「どうにかして記憶をリセットできないかな?」って思いますね(苦笑)。

――予告編づくりの具体的な作業としては、先ほど「抜き」というプロセスが出てきましたが、他にどんな作業があり、どのようなプロセスで作っていくのでしょうか?

これもディレクターごとに全く変わってくるとは思いますが、私はまず文字で予告編全体の「構成」を書きます。漠然と頭の中にある「こういう感じ」というのをきちんと整理して、枠を作るんです。

――いわば「設計図」ですね?

そうです。実際に予告編を作り始めてみると、なかなか設計図の通りにはいかないことも多いんですが、その“枠”を作っておくと、その後、修正が入った場合でも、何がダメだったのかが理解しやすくなるんです。

――予告編の中だけで使われるようなキャッチコピーやナレーションのセリフなどもありますが、そうした文言もご自分で考えるんですか?

宣伝プロデューサーさんからいただくこともありますが、必要に応じて自分で考えますね。「作ってください」と言われる場合もあるし、こちらから「試しに入れてみましたが、これでいかがですか?」と提案することもあります。だから、言葉を考える能力も必要なんです。同僚の中には「名コピーライター」と呼ばれている者もいますよ(笑)。

――話を伺えば伺うほど、1から10まで自分でこなさなくてはいけない、ものすごく奥の深い仕事ですね。

この会社に入って初めて知って、私も衝撃を受けました。やればやるほど終わりがないですね。私たちは決してアーティストではなく、あくまでも宣伝チームの意見を聞いて、それを具現化するという職人的な部分を求められる仕事でもあるので、それを度外視してはいけないんですけど、とはいえ、やはりクリエイティブな部分を磨いて、出していかないといけない要素もあるので、本当に不思議な職業だなと感じていますね。――土子さんは1年間で約何本の映画の予告編を担当されているんですか?

1年だと40~50本くらいになりますかね…?

――この仕事でいちばん難しいのはどういった部分ですか?

「この映画はここがいい」「この映画のよさはここ!」と私が感じた部分を予告編で出せない場合も時にあるんですよね。それは宣伝プロデューサーの狙いや宣伝の方針、監督の意図などにもよります。そういう場合、当然ですがこちらが先方の要望に合わせていくことになるんですけど、私が感じているこの作品のよさや面白さと、宣伝チームの方針のズレ、ギャップを埋めていく、寄せていく作業というのがいちばん難しいところですね。

もちろん、ウソをつくというわけではないんですが、時にあえてミスリードをしたり、作品本編とは異なるテイストの予告編にしなくてはならない場合もあります。ただ、それがあまりに度を超えてしまうと、こちらも苦戦しますね。

過剰に盛ったり、ウソをついたら絶対にバレるし、ましてやいまの時代、悪い評判なんてあっという間に広まってしまいます。ウソをついたってしょうがないから、本編の中にきちんと描かれているものを見つけて、伝えていかないといけないんですけど、それが実は難しいことなんですよね。

予告編で煽ったり、盛ったり、ウソついたりして、お客さんが本編を見たら「全然違うじゃねーか。金返せ!」なんて時代は終わったのかなと思います。お客さんはちゃんと見る目を持ってますから、しっかりと本編に描かれていること、本編の魅力を選び出して、そこに“売れる要素”というのをしっかりと絡めてやっていけばいいんですけど、その兼ね合いがなかなか難しいところですね。「ウソついちゃダメ」だけど「売れないといけない」。いつもこの瀬戸際でやっています(苦笑)。

宣伝プロデューサーは、より多くの人に興味をもってもらうために宣伝の方向性を考えなくてはいけないですし、一方で、苦労して作品を作り上げた監督やスタッフの思いというのもあって、そのどちらの気持ちも痛いほどわかるんです…(苦笑)。それをまとめつつ、形にするのが私の仕事なので、いつもせめぎ合いながら作っています。

――ディレクターごとに得意な分野の作品、苦手なジャンルの作品などはあるんですか?

うちの会社に十数名のディレクターがいるんですが、コメディが得意な者もいれば、「恋愛ものはこの人!」というディレクターもいます。私はわりと好き嫌いなく何でもやりたいタイプですね。ただ、ヘビだけは苦手で(苦笑)、ネイチャー系のドキュメンタリー作品を担当したときに、他の動物は好きなんですけど、ヘビが出てきた時だけは……。ヘビって画的に強いので(予告編に)使わないといけないんですけど(笑)。

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――先ほど、WEBやSNS向けの映像を制作するという話も出ましたが、WEBが興隆してきたのは入社されてからですか

入社した頃はまだ全然でしたね。当時はフィルムが最期のときを迎えている時期で、予告編もフィルムでした。私はできませんでしたけど、同期に入社した人間の中には、専門学校で学んでネガ編集をできる人もまだいましたね。

「あと1~2年でそういうのもなくなるかもね」と言ってたら、本当になくなってしまって、私が入社して5年くらいでもう全てデジタルかDCP(デジタルシネマパッケージ)になってました。(移行が)早かったですね。それまでは大きなフィルムを抱えて運んでたんですけど、いまはほとんどデータでのやり取りです。

――作業工程も大きく変わったんですね。

昔はDVDもまだ普及してなくてVHSに映像を取り込んで、編集して、最終的にフィルムに焼いて映写機にかけていました。そういう意味で、ちょうどいい時代を過ごせたのかなとも思いますね。フィルムの最期の時期を見つつ、デジタルでの作業に初期から携わることもできました。いまは「現像って何ですか?」という人も多いかもしれませんね(笑)。

――デジタルへ移行し、WEBの興隆によって、予告編やプロモーション映像を、人々が目にする回数も増えて、その存在価値も大きく変わったと思います。

そうですね。何と言ってもスピード感が違いますね。フィルムの時代は現像にも時間がかかりましたけど、いまは作ってすぐ見れるようになりましたし、こちらが求められるスピードも変わりました。

――以前は映画館かTVスポットくらいでしか目にしなかった予告編をいまではスマホや電車の広告などでいつでも見られるわけですしね。
そういう意味で、レイアウトやデザインも大きく変わったと思います。以前は、劇場などの大きなスクリーンで見ることを前提で作られていて、そうすると文字などが大きすぎるとちょっとバカっぽく見えちゃったものなんですけど(笑)、それがスマホで見るとちょうどいいサイズだったりするんです。

考えることが増えましたね。WEBやスマホサイズで見せる上で、どうするのが一番いいか? 特にWEBでしか使用しないプロモーション映像の場合、アップのカットを多めに入れるようになったり。

今後、新しい世代の人たちがどんどん出てきたら、私たちの世代が想像もつかないようなカッティングや編集をするようになると思います。

――スマホネイティブの世代が今後、増えていく中で「この映画、面白そうだな」と興味を持たせる予告編がさらに求められるようになりますね。

普段から映画を見る人は、黙っていても映画館に足を運んでくれるけど、そうじゃない人たちをも巻き込んでいかないといまの時代、「大ヒット」とはならないですよね。より広い層に興味を持ってもらうためのプロモーションが大事になってくると思います。

先ほどの予告編づくりの難しさの話と重なるんですが、予告編でターゲットの“間口”を狭めることはたやすいんですよ。「あの監督の作品です」とか「あの脚本家」「あのキャスト」と強く押し出していけばいいので。

でも、そこだけに収まってたら、ヒットには繋がらないので、間口をより広げていくというのが宣伝プロデューサーさんの考えであり、それを私たちは予告編で形にしないといけないんです。

――いずれ、認証付きで“ネタバレ”を含む予告編が登場する時代になるかもしれませんね?

あり得ると思います。私が入社してからこの十数年だけでも「こんなにも予告編がわかりやすくなっていくのか!」と驚くくらい、予告編は大きく変化しました。以前はもうちょっと意味深で、想像を膨らませるようなものが多かったけど、ここ数年で、見て安心して映画館に行けるタイプの予告編が増えたと思います。

肌で時代の変化を感じますし、そこは私も年齢を重ねながら仕事をしていく中で、意識して時代に付いていかないといけないなと思っています。うちの池ノ辺が以前から「常にアンテナを張ってなさい」ということを言っていて、昔はその意味がわかってなかったんですけど、今になって「そういうことか…」としみじみと感じます(笑)。若い子たちのことを「わかりません」なんて言ってられないですよ。音楽にせよ俳優にせよ「いま、若い子たちが好きなのは何か?」ということは、意識して追いかけるようにしています。もともと、多趣味なのでそれが苦ではないんですけど。

結局、自分がろくに理解もせず、キライなままでは納得して仕事ができないですよね。自分が携わる映画だって、もちろん私自身の好みはありますけど、それをキライなままではいい仕事にならないので、まずはいいところを見つけるところから始めます。

――これまで携わった作品の中で、印象深い経験、忘れられない思い出などがあれば教えてください。

河瀨直美監督の『あん』で、ナレーション録りが必要で、主演の樹木希林さんとお会いすることができたんですね。撮影現場にお邪魔させていただいて、ナレーションのセリフで「どのシーンも『これが最後なのかな?』なんて思いながら頑張っています」という言葉もあったりしたんですけど、樹木さんは笑顔で「やるわよ」と引き受けてくださって。佇まいがすごくて…忘れられない経験ですね。

専門学校時代に下宿させてもらってお世話になったおじとおばが住んでいたのが東村山だったんですけど、撮影現場もちょうど東村山だったんです。「東村山で撮影があって、樹木希林さんとお会いできたんだよ」という話をしたら、すごく喜んでくれたんです。チケットをあげて、映画も見てもらえて…。もう、おじとおばは亡くなってしまったんですけど、あの時は少しは恩返しができたかなということで、私情も交じりつつ忘れられない作品になりました。この仕事をやっていてよかったなと思いましたね。

――仕事でやりがいを感じる瞬間について教えてください。

自分が担当している作品について、周りに話せないことが多いんですが、何も知らない友人が、私の作った予告編を見て「あの映画、すごく面白そうだよね」と言うのを聞くと嬉しいですね。あとはやはり、宣伝プロデューサーが喜んでくれた時も本当に嬉しいですし、その作品がヒットにつながるともっと嬉しいです(笑)。

――今後、お仕事でやってみたいこと、実現したいことなどはありますか?

作品のヒットにつながる予告編を作っていくことが仕事ですが、いまやっていることの延長線上で、私に頼んでよかったと思ってもらえるディレクターになっていかないといけないなと思います。新しいことをやりたいというよりも、いまできることを着実にやっていくしかないのかなと。その上で先ほども言いましたが、常にアンテナを張り続けて、新しいものをどんどん吸収していかないといけないなと思います。

ただ、基本的な人間の感動するポイントや「この映画、見たい」と思わせる要素というのは変わらないと思うんです。新しい時代に取り残されないようにしつつ(笑)、変わらずに地道にいい予告編を作っていけたらと思いますね。

――最後に映画業界を志す人たちへメッセージをお願いします。

この仕事、宣伝にも携わりつつ、作品づくりにも深く関係する総合的な仕事だなと思います。いろんなことができる仕事だと言えると思うので、狭い世界だと思わずに、興味を持ってもらえたらと思います。

(text:Naoki Kurozu)

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