【エンタメCOBS】たばこ増税で気になる「角のたばこ屋」の秘密
私はかねてより「角のたばこ屋」のことが気になっていました。なぜ角にあるのか。実はそのことは以前にも記事にしていましたが、結論としては「よくわからない」というところに落ち着いていました(すいません)。しかし、ここに来てふいにそれを思い出したのには理由がありました。「たばこ税の引き上げ」方針の決定です。
引き上げが実施されれば、一本につき5円の値上げ。300円のマイルドセブンは400円へ……。日増しに高まる嫌煙の空気に追い打ちをかけるような衝撃でした。
こうなったら「たばこをやめるか……」と、思った方も多いのではないでしょうか。私も少なからず、そう思いました。
しかし、そうしてたばこが日に日に売れなくなることで、本当にやめなければならなくなるのは喫煙者ではなく、小さな「角のたばこ屋さん」なのではないでしょうか。角のたばこ屋はたいていお年を召した方がお店に立っている場合が多いですが、高齢化で次の世代の担い手もいないのかもしれません。そして、世の中がそれを存続させないでしょう。とすれば、いずれは「店に立つおばあちゃんの顔も見られなくなる」。私はあの疑問のことをふいに再確認しておきたくなりました。結論がどうであれ、まずはいい。
それは失われゆく文化遺産を見るような気持ちから突き動かされた、衝動的とも言える行動だったのです。
■なぜ、たばこ屋は角にあるのか
(角のたばこ屋:その1)
――こんにちは
「……(無言)」(おばあちゃん)
――マイルドセブンのエクストラライトください。
「300円」
――はい(300円を手渡す)。ひとつ聞きたいことがあるんですが。
「……(無言)」
――なんで角にあるんですか?
「……わからないね、うちはもう50年以上ここでやってるから」
――角のたばこ屋さんって多いですよね?
「……そうかもね。はい、(たばこ買ってくれて)ありがとね……」
――ははあ
(角のたばこ屋:その2)
――こんにちは
「……(人の気配がしない)」
――こんちわぁ!
「(奥の扉からおばあちゃんが出てくる)はいはい、待ってね……」
――こちらのお店っていつからやってるんですか?
「え?……年始は4日くらいかね。ほら、元旦から開けてもお客さんってこないでしょ」
――いや、あの創業何年ですか?
「え?ああ、だいぶ古いよ。で、なに?」
――たばこ屋さんが角にある理由を調べてるんです
「昔は隣近所にたばこ屋があったんだけど、そのお店がやめたからうちでたばこ売ることにしたの。
そんだけ」
――ははあ。特に理由はわからないということですか?
「ちょっとこの窓、立て付けがおかしいのよね(ガタガタする売り場の窓を直し始めるおばあちゃん)」
――……ありがとうございました
(角のたばこ屋:その3)
――すいません
「……はい?」(若い店主)
――たばこ屋さんが角にある理由を調べてるんです
「うーん……?」
――理由なんてないんですかね……。
「うちは昔から角でやってる酒屋で、途中からたばこも売り始めたんだけど、今でもたばこを扱っている個人商店というのは、元が何かのお店屋さんだったというのは多いよね。人目につきやすい角地でお店を始めて、その後にたばこを売り始めた人は多いんじゃないの?」
――元からたばこ専門のお店もそうですか?
「角がいいと思ったのは一緒じゃない?わからないけど」
――そうですか。じゃ、エクストラライトをください(二つ目)
「300円ね」
――はい。
私は自動販売機でたばこを買いません。その理由は「taspo(タスポ)」を持っていないからです。そしてこれからもきっと持つことはないでしょう。
なぜなら私はまだ「角のたばこ屋」の秘密を解き明かしてはいないからです。それがわかるまで、私は「角のたばこ屋」でたばこを買い続けるし、値上がりが実施されてもまた同じ行動を取り続けることでしょう。「おばあちゃんの顔が見たい」と言えば、きれいごとに聞こえるかもしれないが、どうにも気になることを私は無視することができないのです。角のたばこ屋が街から消える時、それは私がたばこをやめる時です。
(根岸達朗/プレスラボ)
※どうして根岸さんは角のたばこ屋に並々ならぬ情熱をそそいでいるのか、そのことのほうが僕は気になります。彼の前世は角のたばこ屋の店主だったのでしょうか。(編集部:梅田)
【関連リンク】
街のたばこ屋さんはなぜ「角」に多いのか?
ずっと気になっていることです
たばこ税の仕組み(JT ウェブサイト)
たばこは日本で最も税負担率の重い商品のひとつ
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