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朝ドラ
『半分、青い。』は、3週目に入り、少女期から主演の永野芽郁にバトンタッチされました。
主人公の楡野鈴愛(にれの・すずめ)は、小学校3年生のとき、病気のために
左耳を失聴。障がいを抱えたことに最初は戸惑いつつも、独自の感性でそのことを受け止め、前へと進んでいこうとします。そんなハンディキャップやコンプレックスを抱えた子どもに対して、親はどうやって向き合っていけばいいのか。朝ドラに登場するタイプの異なる二人の母の接し方から考えてみたいと思います。
■ハンディキャップがある子どもに親はどう向き合う?
鈴愛が失聴したとき、一番動揺したのは、いや、正確に言えば、動揺をそのまま感情として吐き出したのは、
母の晴(松雪泰子)でした。
晴は自分で自分を責め続け、泣き続けてしまいます。
もともと子育てに一生懸命なゆえに、ときには鈴愛をきつく言いすぎることもあった晴。鈴愛が自分の名前をからかわれたことを母親に言えず、それがもとで友だちとケンカし、晴にこっぴどく叱られたこともありました。一時は親子で大げんかとなりましたが、ケンカの理由が明かされたとき、2人の絆はより深いものとなりました。
晴が鈴愛に真っすぐな愛情を注いでいた分、娘の失聴を知ったときの悲しみははかりしれません。普段は能天気でおちゃらけキャラの夫・宇太郎(滝藤賢一)も、ここではユーモア封印で、晴をさとすことなく“聞き手”に徹します。
ショックで寝込んでしまった晴。鈴愛は怖い夢を見ると、すぐに晴のふとんに潜り込みに来ていましたが、このときばかりは、祖父・仙吉(中村雅俊)のふとんへ。
その後、宇太郎も同じ布団に潜り込んできたときには、ほっこりしました。家族のなかで、傷ついて立ち上がれない人がいたら、
周りがそっとフォローに回る。そういう寄り添い方の大切さをしみじみ感じました。
晴は、正論で突き進む母親タイプというより、ひたむきに奮闘しつつ、自分の感情を素直に出しながら、ときにはつまずいてしまう人。そして自分はダメな母親だと自分に烙印(らくいん)を押そうとする晴に、宇太郎は
「完璧じゃないくらいでいい。そうでないと息がつまる、鈴愛だって泣き虫なおかあちゃんが好きなんや」と慰めます。
母親というのは「がんばるもの」「泣かないもの」と言われがち。でも母が感情を素直に出してくれたら、そしてその感情が家族を思っての涙だとしたら、それはきっと家族が自分の気持ち以上にがんばりすぎず、自然でいられるのではないでしょうか。
この宇太郎の言葉は、いま現役ママたちもどれだけ助けられたことでしょう。
■コンプレックスを抱えた子どもを「受け入れる」ということ
晴とはまったく違うタイプで、良き母親を演じているのが原田知世。鈴愛の幼なじみである律の母・和子役ですが、貧しい楡野家とは違い、裕福な家の奥さまで、いつもこぎれいだし、手作りのおやつを作ってくれたりするすてきなママです。
でも、じつは律もぜんそく持ちで、彼自身がコンプレックスを抱えていることを和子は感じているし、晴と同じく病気の子どもを心配する親の気持ちも十分わかっている。だからこそ落ち込んでいる晴に会ったとき「母親としてしっかりして、笑顔でいよう」「
受け入れて、それと一緒に生きる。本人も、親も、家族も」と彼女を力づけようとします。でも、大人になってから完治することが多いぜんそくと、一生治らない鈴愛の失聴とは全然違うと、晴に言われてしまいました。
自己嫌悪に陥った晴ですが、宇太郎に励まされ、菓子折りをもって和子のもとを訪れます。
和子は「ううん」と笑顔で首を横にふり「私、たまに先生みたいな言い方するでしょ。律によく言われる。『ほーら、これから、いい話するぞ』って」と言って、金八先生のモノマネをして見せるんです。
まさに、晴の心を気遣うことができる和子のクレバーさ。余談ですが、この原田知世の金八先生のモノマネのクオリティも高すぎてのけぞりましたが(笑)。
和子の態度は、おそらく理想的なママなのだろうと思います。でもその裏で「受け入れる」を言えるようになるまで、どれほど悩み、苦しんだことか。そしていま、受け入れた子どもとママは、おそらくとても楽になったのではないでしょうか。