■他人とわが子を比較していたら、親の愛情は伝わらない
©2017 FAR FROM THE TREE, LLC
これはなにもマイノリティに属する子をもった親に限ったことではないと思います。私自身を含め、一般的な親というのは、どうしても
他人の子とわが子を比較しがちとなっているように思えます。
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「●●君はできるのに、なんであんたはできないの!」とか、「その歳で、この程度のことはできないと恥ずかしいよ」なんて、ついつい口から出てしまう。ほかの子より勉強が遅れているように思えると、やみくもに追いつかせようとしたり、不得意なことがあると、人並みぐらいにできるよう求めたりしがちとなってしまったり。
「十人十色」という言葉があるように、子どもによって個性も違えば得意なことも違う。性格も違えば、考え方も違う。そんなことは言われなくてもわかっている。でも、実際は子どもがほかより劣っていることがあると敏感に反応してしまう自分がいることに気が付き、愕然とします。
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そうしてついつい冷たく、厳しく当たってしまう。でも、それは残念ながら、どんなに愛情があっても一方通行。
まずは、互いの意思を尊重して認め合う。子どももひとりの人格者。そこからはじめないと
親の愛情が伝わらないことを本作は教えてくれます。そして、違いを認めることで子どもを楽にできれば、じつは親の気持ちも楽になることを教えてくれます。
■「自分たちには直すべきところなんてない!」心を自由に
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ただ、この作品は、そうした親と子の関係で大切なことを伝えながら、そのさらに一歩先のメッセージをわれわれに届けます。それは、いまの社会にある固定観念のチェンジといいますか。ある意味で世の中の意識改革を求めるメッセージです。
低身長症のリア・スミスとジョセフ・A・ストラモンドはこう言います。
「自分たちには直すべきところなんてない」と。続けて、ジョセフはこう言います。「俺があんたなら自殺すると言い放ったやつがいる。
身体が不自由なら、心も不自由だと?」。
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自閉症で話すことのできなかったジャックは、ある医師によりタイピングで自分の言葉を伝えることができたとき、「僕はがんばっている。僕は頭がいい」と言います。
また、アンドリューは以前「同性愛は異性愛より劣ったもの」とずっと感じていたそうです。
ただ、ここにきて性的マイノリティに対する見方が大きくかわってきました。
病気だとみなされていた同性愛が、いまでは個性として認められることになった。ちょっと視点を変えただけで見方がかわる。そう彼は伝えます。
障がい=かわいそう。こういったマイノリティに対するネガティブな社会的なイメージは、そろそろ払拭(ふっしょく)したほうがいいかもしれません。障がいがあっても、マイノリティであっても、ごくごく一般の人間と変わらない。
別に自分の境遇を恨んだり、悔やんだりしているだけではない。自分なりに喜びも幸せも感じている。
「違い」はけっして闇ではない、考え方によっては大きな光になりうることを、ここに登場する親子のそれぞれの生き方は物語ります。このマイノリティや障がい者に対する意識の改革は、これからの社会を考える上で、非常に重要になってくる気がします。
少し飛躍した話にもなりましたが、よりよい親子関係のヒントを与えられるとともに、これからの社会の在り方について見つめるいい機会になることでしょう。
ドキュメンタリー映画
『いろとりどりの親子』
11月17日(土)新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
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自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなどの子どもを持つ6組の家族を取材したドキュメンタリー映画。困難を抱える子どもと、彼らと向き合う親たちが、自分たちのたどってきたこれまでの山あり谷ありの道のりと、決して苦難ばかりではない歓びの日々について語る。
作品中に出てくる言葉、考え方をひとつ変えるだけで「しあわせの形は無限に存在している」ことがほんとうに実感できる心温まる映画です。
公式サイト:
http://longride.jp/irotoridori/
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