連載記事:悪意のない加害者たち〜中川瑛のお悩み相談
過ちを犯した夫の償いはいつ終わる? 専門家の解答とは【悪意のない加害者たち〜中川瑛のお悩み相談 第1話】
質問をパラフレーズして回答すると…?
このように考えてみると、いただいた質問を言い換えると、以下のように言えるかと思います。
私は不倫をした。関係を続けることは許されたが、奴隷のような生活が続いていてこのままだと苦しい。許されるだけではなく、赦される日は来るのだろうか? それまでの苦しみを相手はわかってくれるだろうか?」
この質問に対し、大きく3つのことを述べて回答としたいと思います。
1つ目は、赦される日は来るかもしれないということです。しかし、それがいつになるのかは、実は被害者もわかりません。被害者の方からこんなことを聞いたことがあります。
「私だって、赦したくないから赦していないのではない。むしろ赦せるものなら赦したい。けれど、怖くてそれができない。そういう被害者の気持ちを知っておいて欲しい」と。
上述の整理を踏まえれば、非常に理解できることです。つまり赦すことは自らが幸せになっていいと思えること、人をまた信じられるようになることです。そうなりたくない人などいるでしょうか。
2つ目は、質問者の方ができること、した方が良いことは、
罰を受けて苦しむことではないことを理解することです。加害者が罰を受けて苦しむことは、究極的には(少なくとも許した被害者にとっては)目的ではありません。
このような局面で被害者が加害者に求めることは
「赦せるような、安心できるような、もう一度信じてもいいと思えるような」関わりを、もう一度作ることです。
一度裏切られた人をもう一度信じるより、他の人と0から関係を作った方が、簡単かもしれません。それでも、パートナーの方は、あなたとの関係をもう一度作りたいと思っています。
それは、苦しみです。質問者にとってではなく、信じようとする被害者の方にとっての苦しみです。裏切られた痛みに加え、今度は「それでもと信じた時間が丸ごと無駄になるかもしれない」苦しみの中にいるからです。
質問者の方は、いまパートナーが感じている苦しみが二重三重にもなっていること、そして質問者が苦しむこと自体ではそれが解決することはないこと、大事なことはパートナーや家族を幸せにしようとすることだと認識を転換することが必要かもしれません。
不倫によって傷ついた前後で、パートナーの方はどんなふうに変わってしまいましたか? 質問者に対する態度ではありません。
例えば趣味のことを楽しむ時間、笑ったり幸せそうにしている時間、そんな時間はどう変わってしまったでしょうか。
そして、それらの時間を増やすために質問者さんは活動できていたでしょうか? ただ怒られ、責められ、叱られ、罰を与えられた気持ちになっているとき、その心は自分に向いています。
でも、パートナーの方の喜びや安心に目を向けてみれば、実はもっとできることが見つかるかもしれません。「怒られないためにやる」のではなく、「安心してもらえるようにする」ことがきっとたくさんあるはずです。
その先に、パートナーの方の赦しが、初めてあり得るのだと思います。