「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

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「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

grapeでは、2025年9月からお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの書評連載企画を開始!

漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。

第9回目となる今回は、原作を久住昌之さん、作画を谷口ジローさんが務める『孤独のグルメ』を取り上げます。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

画像提供:吉本興業株式会社

『孤独のグルメ』の見どころをオダウエダ植田が熱弁


孤独のグルメを読んだのは多分高校の終わり、大学生になったどうかぐらいのタイミング。

2ちゃんねらー(現・5ちゃんねらー)であり、ニコニコ動画にどハマりしニコ厨と化していたネットサーファーは孤独のグルメにネットミームとして出会った。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

FUSOSHA MOOK『孤独のグルメ1』

グルメ漫画はネットミームになりやすい。

一話完結型で使いやすいからなのかも。

以前取り上げた『ドカ食い大好きもちづきさん』や『美味しんぼ』『昼メシの流儀』など。

グルメ漫画でストーリーものは大体バトル漫画、それでも結構ネットミームでみることが多い。


『お前はトリコ?』『出来らぁ!』『お前の料理なんて誰も食わねーよザマーミロ!』『ラーメンハゲ』など。

ご飯とネットは相性がめっぽう良いのである。

孤独のグルメは独特な言い回しとコマ割りが多い。

一番最初にネットで見たのは第一話で主人公の井之頭五郎が初めて入る定食屋さんで注文したご飯が届くシーン。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

『孤独のグルメ1』第1話東京都台東区山谷のぶた肉いためライス©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

五郎がぶた肉いためととん汁を頼んでしまったことを後悔している。

このシーン、届いた料理を俯瞰で映しているのも独特で、細かな注釈が入っているのも奇妙に見える。

今になっては孤独のグルメ特有の映し方として「これじゃないと」となるのだが、ご飯の在り方を加えようと思ったらいくらでも加えられる漫画的演出を一個も使わずにそのまま映していて妙に現実的。そう、孤独のグルメは妙に現実的。


とても懐かしく、かつての日本の様子を描写している。

が、知らないのである。

これが孤独のグルメの怖いところなのだが、私はそんな日本知らないのである。

経験してないのに、経験したかのような気持ちになる。

知らんのに知ってる気持ちになる。

なにこれ。

第一話だと、労働者の方がよく訪れるご飯屋さんで豚汁をお持ち帰りした労働者の方が、友達の家に行き、家の外から窓に向かって小学生のようにご飯一緒に食べないかと誘う。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

なんて望郷的。


いやそんな景色は見たことない。

労働者の方がよく訪れるご飯屋さんなんか高校、大学の時に行ったことがない。

定食屋さんっぽいのに豚汁とライスだけお持ち帰りなんてどういうことであろうか。

メインは食べないのであろうか。メインも沢山あるのに。

家の外から窓に向かって話したことがない。

私立のカトリックの女子校育ちだったものだからまず友達の家は近くにない。

マンションはあった。
でも外から話しかけることなんてない。

なのに見たことあるような気がする。

多分、孤独のグルメは我々の脳みそをいじってきているのだと思う。

ないものをあったように見せているのだと思う。

これも月島さんのおかげということなのだろうか。

一話では別のお店で多分食い逃げかなんか悪いことをしたであろうお客さんが外に追い出される描写がある。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

二、三コマに収められ、その後の展開には何も影響を与えない。

これもわざわざ描かなくていい描写である。


しかし、わざわざ描くことによって孤独のグルメの知らないのに知ってる、見たことがある気を起こさせる。

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©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA
孤独のグルメでは大阪の話もある。

新世界のところは、これは実際経験しているからなんとなくわかる。

ただ、ホテルの前のたこ焼きの屋台は全く知らない。

大阪に屋台でたこ焼き出してそこで食べられるシステムなんかあったん。

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『孤独のグルメ1』第7話大阪府大阪市北区中津のたこ焼き ©Masayuki Qusumi, PAPIER / Jiro Taniguchi, FUSOSHA

お持ち帰りだけできる屋台ならまだしも博多の屋台のようなタイプのお店があったなんて全く知らなかった。

知らない地元が描かれるのはなんとも不思議な気持ちがする。

恐ろしさがある。


なのにとても料理が美味しそうに描かれている。

料理を美味しく表すために物語のコマの細部まであえて描かなくていいものを描くぐらいこだわっている。

知らないのに知ってる、そこにかつてあった、いやこのページに確かに存在している、と思わせるからこそぶた肉いためととん汁、ライス、ナスのおしんこ、麦茶はそこに現れる。

五郎のモノローグも料理の邪魔をしない、むしろスパイスになっている。

大好きなシーンが沢山あるので是非読んでみてほしい。

五郎が店長にアームロックするシーンとか。

ドラマもいいですよ。

「これが怖いところなのだが…」『孤独のグルメ』で描かれる”恐ろしさ”をオダウエダ植田が熱弁【書評連載】

孤独のグルメ1 (扶桑社ムック)

久住昌之 (著), 谷口ジロー (イラスト)

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前回の書評:第7回『鋼の錬金術師』

[文/植田紫帆構成/grape編集部]

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