「こんな場所まできてしまった…」旅したなかで一番遠い場所 雨の音が教えてくれた自然の果てしなさ
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
アマゾンで雨の音を聴いた〜いちばん遠くへ旅した場所は
最近、旅のことばかりを考えています。どこに行こうか。どんな旅をしようか。
今年の4月にウズベキスタンを旅し、6月にはコロンビアのアマゾン、そしてバハマのビミニ諸島へ行ってきました。
辺境と言っていいのか、旅先としてはなかなかめずらしい場所です。
昨年はメキシコのユカタン半島、グアテマラ、そこからニューヨーク。
これもまた、よほどの目的がないと行かない場所かもしれません。
これまでで、いちばん遠かった場所はどこだろうと考えてみました。
自分の想像が追いつかない、自分のテリトリーから遠く離れるというのは距離だけではなく、知らない世界へ踏み出していくこと。
それは距離的な遠さだけではなく、未知のもの、未知のことへと踏み出していくことなのです。
30代の半ばだったか、ロンドンで車を借り、1週間かけてスコットランドのインバネスまで行ったことがあります。
3泊目からは行き当たりばったり、現地についてホテルを取るという旅です。
最果てのスカイ島で登山道なき山を登り、森の中で不思議な体験もしました。
湖水地方の丘の上はヒースの群生地で、強い風が吹いていました。
その風の音が渦を巻くようで、グレゴリアンチャントのように聞こえたことをよく覚えています。
イギリスは決して旅をするのに遠い場所でも困難な場所でもないですが、行き当たりばったり、思うままに車を走らせた旅は、自由を選ぶことを味わった旅でした。
コロンビアのアマゾンは遠かった。アマゾンの入り口の街、グアンビアーレまでは飛行機を3回乗り継ぎ、20数時間。
そこから密林までオフロードを四駆のジープで3時間。
目指す密林の中に残っている12,600年前に先住民たちが描き残した『岩絵』までは1時間、密林を歩き、登っていきます。
(こんなところまで来てしまった)
(なんでこんなところにいるのだろう)
そんな思いが胸の中を行き交います。
いま思い返してみても、本当にあの場所に立ったのか、わからなくなります。
『岩絵』は密林の中のテーブルマウンテンの山肌に赤色で描かれています。
先人たちからのメッセージは、驚くような鮮やかさでそこに残っていました。
石に腰掛け、しばらくぼーっと。気づくと雨が降っていました。川の流れの音かと思っていたのは、雨の音でした。
鬱蒼とした木々の葉に落ちる雨は、その一雫一雫が存在を主張しているようで、力強く。
森を潤し、地に浸透し、雨の雫たちは、長い旅を経てアマゾン川へ流れ込んでいくのでしょう。
それぞれの場所で、それぞれのものたちが時という遠い旅路を歩んでいる。
人も自然も、この地球も。アマゾンの密林に降る雨の音を聴きながらそんな果てしなさに思いを馳せたのでした。
いちばん遠くへ旅をしたのはどこだったか。
これからも未知の扉を開いていきたいと、どこへ行こうか考えを巡らせます。
アマゾンは遠かった。そして、密林で聴いた雨の音が、もっともっと遠い場所へ連れて行ってくれたのでした。
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※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美構成/grape編集部]