G-FREAK FACTORY、魂の叫びで締めくくった『山人音楽祭』10周年!最終日を最速レポート
Text:吉羽さおり(赤城)、荒金良介(榛名)、蜂須賀ちなみ(妙義/赤城・バックドロップシンデレラ、G-FREAK FACTORY)
Photo:HayachiN(赤城)、半田安政(榛名)、タマイシンゴ(妙義)
G-FREAK FACTORY主催フェス『山人音楽祭 2025』の2日目が、9月21日(日)、日本トーターグリーンドーム前橋で開催された。開催10周年のメモリアルイヤーである今年は天候にも恵まれ、夏に戻ったかのような晴天の下、2日目に突入した。続々とやってくる観客に場内が賑わうなか、最初に登場したのはやはりこの男。「山人」を愛し「山人」に愛されるラッパー・NAIKA MCだ。NAIKA MC渾身のフリースタイルラップ、「DAY1は最高だったが、昨日に負けないのがDAY2でしょ!」という言葉に観客が歓声を上げ、熱い1日が幕開けた。
バックドロップシンデレラ
11:10〜赤城STAGE
昨年、榛名STAGEのトリとして、G-FREAK FACTORYにバトンを繋ぐ大切な役割を託されたバックドロップシンデレラ。今年は赤城STAGEの2日目トップバッターとして登場だ。でんでけあゆみ(vo)が出てきてすぐ、人混みを左右に割るジェスチャーをし、カウントとともに強烈なサウンドが放たれれば……その後何が起きたかは言うまでもないだろう。
極彩色の音楽世界が広がるなか、観客は本能で踊り、でんでけはその上を転がりながら歌っている。あまりにも楽しい幕開けである。3曲目「フェスだして」では、豊島”ペリー来航”渉(g/vo)が「山人、赤城、出れたー!」と喜びを叫ぶ場面も。豊島が曲中に語ったのは、昨年G-FREAKの茂木から、「榛名の最も大事な時間帯を、最も信頼しているバックドロップシンデレラに託したい」と言われたこと。そして「俺たちは初赤城で、早くも伝説を作りたい!死ぬほどデカい声で歌えるか!」と伝説級のシンガロングを巻き起こした。その後も熱量の高い演奏が展開され、ライブ終盤では、でんでけが、落ち込んだときにG-FREAKの「らしくあれと」を繰り返し聴いて乗り切ったというエピソードを明かした。すさまじい盛り上がりで先輩への恩義に十二分に応え、「音楽は世界を変えるんじゃなくて、人を変えるんです」という言葉を地で行く生き様は、ここに集まった人たちを勇気づけるものだった。
BANYAROZ 11:50〜榛名STAGE
G-FREAK FACTORYのメンバー面々から「ライブやばいので観てください!」と言われていたので、筆者も楽しみにしていたバンドのひとつだ。
『山人音楽祭 2025』2日目・榛名STAGEのトップはBANYAROZ(バンヤローズと読む)である。ベースヒーローのKenKen(ds)、10-FEETの曲参加でよく知られているDOCTOR-HASEGAWA(tp/sax)に加え、BENE(vo/b)、POIPOI(mpc)からなる4人組。1曲目「夜の番人」でゆったり始まると、お昼とは思えない妖しげな雰囲気を解き放つ。
「ロマンスとピストル」に移ると、打ち込みとドラムによるビートを強調した演奏に吸い込まれていく。自然と体が揺れ動くサウンドなのだ、
「(『山人音楽祭』)10周年最高ー! 初めての人がほとんどだと思うけど、G-FREAK FACTORYに感謝! 文句は茂木さんに言ってください」とBENEは溢し、会場の笑いを誘う。キャバレー感漂う「ガーランボーイ」ではブレイクビーツを用いたアレンジが面白く、フロアで踊る人が増えていった。ラストは「ON THE TRAIN」、「マイウェイ」とカバー2連発でフィニッシュ。とはいえ、原曲のイメージに縛られない自由奔放なアプローチが最高。
ラフで、決まり事がなく、音楽本来の楽しさを謳歌しているようなメンバー4人の演奏にこちらの心も全開放されてしまった。
四星球 12:20~ 赤城STAGE
時間がないからと、リハからそのままステージ上でいつもの法被姿に生着替えしてスタートした、四星球。会場であるこのグリーンドーム前橋が競輪場でもあることから、のっけから手製の段ボール自転車でまさやん(g)とU太(b)がフロアへと乗り出してレースを展開(スターターは群馬出身の布袋寅泰に扮したモリス)と、まだ登場のジングルすら鳴ってないがはじまりから次から次へと展開していくライブとなった。山人も常連の四星球だが、G-FREAK FACTORYと『ザ・ローカルズ』と題したツアーを行なっている間柄でもあり、「なんでもかんでもランキング」では、そんな四星球が知る“G-FREAK FACTORYのかわいいところベスト3”を発表し、その流れからG-FREAK FACTORYの茂木洋晃(vo)、原田季征(g)を巻き込んでAKB48「恋するフォーチュンクッキー」を演奏する四星球ならではの荒技で、会場を大いに盛り上げていく。「山人音楽祭10周年おめでとうございます。10年後が楽しみです。20周年のときあのふたり、60代ですからね。続けてください、続けてもらわないと困ります、10年後にはあの子供たちがここ(ステージ)にきますから」と北島康雄(vo)は語る。
またG-FREAK FACTORYとツアーを回ってできたような曲だと、新曲である熱い応援歌「あんぽんたん」も披露した。最後の曲の前に改めてジングルを流すドタバタ展開となったが、G-FREAK FACTORY、山人愛に溢れたライブとなった。
J-REXXX BAND 13:00〜榛名STAGE
榛名STAGEの二番手はJ-REXXX BANDが務め、曲が進むにつれ、会場をひとつにする掌握ぶりに圧倒されてしまった。オープナーの「INTRO」〜「最近の若い奴は」からレゲエ調の歌メロで観客を明るく照らす。「山人、もっと本気出してください。アウェイかもしれないけど、全然関係ない。ここからめちゃくちゃ激しい曲やるけど、好きにやってくれ!」とMCを挟み、「早口馬鹿」を披露。曲名通り、J-REXXXは機関銃のごとき早口ラップで捲し立て、フロアをガンガン焚きつける。
続く「Fastest of fastest」においてもラガマフィン・ボーカルは冴え渡っていた。アミシャツ好きを歌にした「アミシャツ」もすさまじい盛り上がりで、ステージにスタッフを呼び込んで、黒シャツを脱がせるとアミシャツを着ている仕込みもあり、エンタテインメント性溢れるステージングに魅了されっぱなし。ポジティブなパワーを振り撒く「MINORITY」を演奏後、「子供の前ではかっこいい大人でいてください。ライト照らしてよ!」と呼びかけ、「最後の一本」を披露。ケータイの光が灯る中、人間味溢れる歌で観客を牽引し続け、手拍子と掛け声で榛名STAGEはひとつになっていた。J-REXXXのヒューマン・パワーと呼ぶべきだろうか。彼の人間力が爆発した至福のパフォーマンスに酔いしれた。
上州弾語組合 13:00〜妙義STAGE
野外の妙義STAGEでは風が吹き、やわらかな日の光が降り注いでいる。
群馬の音楽家の集まりである上州弾語組合は、前日とは違うメンバーが出演。まずは、パーカッションの藤井トモカズによる軽やかなリズムに乗せて、高平悠が「ハレバレ」を歌い上げた。高平が声を張ると、観客も同じフレーズを続けて歌い、手に持ったドリンクカップを掲げる。そんな和やかな光景に、「飲んでるかい? 俺も飲んでるぞ!」と喜んでいたジュンペイは、ミドルバラード「旅に出ようよサリー」を披露。メロディに乗せて「山人のみんなの心に触れている気がします。どうもありがとう!」と伝え、充実感を滲ませた。さらに、茂木拳による「グッドラック」が続く。こちらは「グッドラックフォーユー」と繰り返し歌う温かなバラードで、観客一人ひとりの日常に寄り添った。
野外で歌うと風が吹きがちな“風女”だという鹿山音楽は、「わたしだけいい子」を届けた。力強さと繊細さを兼ね備えた歌声、エモーショナルな歌唱に、観客はグッと聴き入っている。そして山口貴大がリズミカルな楽曲「◎」でハッピーなムードを作り、ライブのエンディングへ向かっていく。「みなさんと出会えた今日が二重丸です。ありがとう!」と山口が笑顔を見せると、ラストは全員で歌う「バカにつける薬」。舞台袖で観ていたG-FREAK茂木も巻き込み、大団円となった。
竹原ピストル
13:30~赤城STAGE
「のんびりお付き合いください、竹原ピストルです」。そんな言葉で、「おーい!おーい!!」ではじまったライブだったが、1曲目にしてボルテージの高い、観るものの心も体も強く捕らえていく歌に、観客は硬直状態。その歌を浴び、言葉を飲み込んで言っているのが、じっと微動だにしない観客の頭からもわかる。大きなビジョンに映し出された竹原ピストルはすでに、絶え間なく顔から汗をこぼしている状態だ。「みんな〜、やってるか!」では一転、手拍子やコールアンドレスポンスも起き、ヘンテコなラブソングだと語った「I miss you...」でも歓声が上がる。この日はサウンドチェック時から何曲も聴かせてくれていた、竹原。「今日のお客さんはカバーが受けるなと思ったんですよね」と、ビートたけしの「浅草キッド」や、「Amazing Grace」を歌う。静かに、同時に未だ書きたてのような熱を帯びた歌を聴かせる「Amazing Grace」は、聴くたびに鮮烈に胸に飛び込んでくる。観客もまたそのエモーションに撃たれ、大きな拍手で応える。「山人音楽祭、大好きなんです」と笑みを見せ、「また次、出させていただけることがあれば、BRAHMANさんの隣の楽屋は嫌だって言いたいです、生きた心地がしないです」と冗談っぽく語ると、G-FREAK FACTORYに心からの友情の気持ちを込めて「Forever Young」を披露。朝から夜まで賑やかなバンドが続くこの赤城STAGEでひとり、穏やかな笑みとすさまじい熱気と気迫とを放つ、濃い時間を紡ぐステージとなった。
JUN SKY WALKER(S) 14:10〜榛名STAGE
有名曲の連発で駆け抜けたJUN SKY WALKER(S)のライブに狂喜乱舞した人がほとんどだったのではないだろうか。榛名STAGEには大勢の観客が詰めかけ、その期待を遥かに上回る渾身のステージングを披露する。「MY GENERATION」で幕を開けると、森純太(g)はTHE WHOのピート・タウンゼントを彷彿させる大車輪奏法(左手をグルグル回す)で観客の目を引きつける。イントロが鳴った途端にザワつくと、「歩いていこう」へ。宮田和弥(vo)が「セイ!」と呼びかけると、観客は「ウォー!ウォー!ウォー」の掛け声で応え、会場の熱気は高まるばかり。
「屋根あるし、天気は関係ないけど、いい季節の地下(榛名STAGE)はいいよね。地下に季節は関係ないから、この曲歌っちゃおう」とMCを入れ、ここでなんと「白いクリスマス」を解き放つ。ゆったりしたバラードに多くの人が聴き入り、静かな感動を巻き起こす。演奏後、「めちゃくちゃ気持ちいいな。ジュンスカ60歳を迎えました、これからもよろしく! 3曲、大ヒットナンバーをお届けします!」と告げ、「START」、「全部このままで」と繋ぎ、観客の声はどんどん大きくなっていく。ラスト曲「すてきな夜空」ではG-FREAK FACTORYの茂木(vo)がゲスト参加。「君の事好きになったから♪」の歌詞を「G-FREAKの事好きになったから♪」と変えて宮田は歌ったりと、豪華ツイン・ボーカルで聴かせる特別な演出に会場は最高潮の盛り上がりを記録した。
片平里菜 14:10〜妙義STAGE
昼下がりの妙義STAGEには、初出演の片平里菜。最初に「女の子は泣かない」を歌った彼女は、ずっと出たかった『山人音楽祭』のステージに立った実感を「山を見上げて、山の風を感じながらやるフェスなんですね」と語った。セットリストは事前に固めず、観客と相対したときの感覚で歌う曲を決めているという片平は、2曲目に沖縄で制作した新曲「夏の祈りのなかで」を、3曲目に平和への祈りを込めた「Redemption song」カバーを披露。そして「みんなと同じように、山人に出ているようなロックバンドに勇気をたくさんもらってきました」というMCのあとには「ロックバンドがやってきた」を届けた。〈ひとりで挫けそうな日は/ライブハウスへ行こうと思った〉という共感必至のフレーズに、片平が「山人音楽祭へ行こうと思った!」と言葉を重ねて、出演者へのリスペクトを表現する。ラストは、山人を“帰る場所”にしたいという思いを込めた「Come Back Home」だ。楽曲の終盤では片平がマイクから離れ、ギターの音量を絞り、観客の歌声に耳を傾けながら笑顔。ここに相思相愛の絆が結ばれた。
ハルカミライ
14:40~赤城STAGE
「サンキュー! G-FREAK FACTORY!」と叫んで、橋本学(vo)がはじまりから客席へと乗り出し、「カントリーロード」ではそれに続くように関大地(g)も飛び込んでと、のっけからフロアをもみくちゃにして湯気を立たせていたハルカミライ。曲中で「めでてぇ、10周年ということなので」と1から10まで観客と数えて「10周年おめでとう!」と祝砲代わりとなるシンガロングを巻き起こす。会場中が歌っているような「春のテーマ」や、普段茂木さんを支えている人もいるだろうから安心だと観客に担がれるようにして歌い出す。「PEAK’D YELLOW」では「10周年という節目で俺らを必要としてくれて、誇りに思います。バンドだけじゃない、みんなもそうだよ。全員で山人を作ろうぜ」と観客の歌のボリュームを上げ、興奮で沸騰するフロアにさらに爆音で燃料を注ぐ。どこまでもハルカミライのライブだ。「余計に気持ちが入るよね」と語った橋本は、俺たちも与えられるバンドになりたいと、「アストロビスタ」での歌詞を《眠れない夜に俺たちG-FREAK FACTORYを聴くのさ》と変えて、ぐっとエモーショナルに歌い上げる。はちゃめちゃにステージで暴れ、心のままに歌を音を放つステージだが、今回のハルカミライはそこにG-FREAK FACTORYへのリスペクトが滲む。その歌を真っ直ぐに、目の前の人に、ここにいる人に大事に手渡す。ステージに立つ矜持がその姿に透けて見える。「G-FREAK FACTORYが背負う山人音楽祭と群馬に、全員で拍手」と会場を一体にした4人にもまた、大きな拍手が送られた。
山嵐 15:20〜榛名STAGE
ミクスチャー・ロックのパイオニア、山嵐が『山人音楽祭 2025』に初見参。まずはエレクトロと生バンドががっぷり四つに組んだ「涅槃」でスタート。ダイナミックなリズムで襲いかかる「PAIN KILLER」でフロアを揺さぶり続け、観客の心と体を覚醒させる。
「記念すべき10周年、我々、山嵐は初登場です。ここからも全力をぶつけるんで、ついてこい!」とSATOSHI(vo)は叫び、未発表の新曲「嵐山山」をプレイ。筆者も初めてライブで聴いたけれど、いままでとはまた異なる大胆不敵なストレートぶりで驚いた。ズクズク刻むヘビーさに「祭りだ♪」という歌詞が乗り、SATOSHI、KOJIMA(vo)のツイン・ボーカルに加えて、KAI_SHiNE(Maschine)も歌に参加したりと、ここに来てまた新境地を開拓したフェス仕様のアッパーな曲調だった。もう、正式リリースされる日が待ち遠しくて仕方がない。そんな新曲サプライズを挟み、「HANDS UP」、「Ride with us」、「Rock’n’ Roll Monster」とフィジカルを刺激する演奏で観客と一体化。そして、重低音ベースが轟くと、名刺代わりの代表曲「山嵐」(ハーフ・バージョン)に入ると、観客は火が付いたように大暴れ。そこに「BOXER’S ROAD」がトドメを刺す形となり、進化し続ける未曾有のサウンドに驚くばかりであった。
山人MCバトル×戦極MCバトル
15:20〜妙義STAGE
2日目も後半に差し掛かり、妙義STAGEでは、「山人音楽祭」の名物企画、山人MCバトル×戦極MCバトルが繰り広げられた。今年は、DOTAMA、bendy、KOOPA、GOMESS、溝上たんぼ、FCザイロス、risano、Sitissy luvit、歩歩、Armadillo、NAIKA MC、STILL BLUTOが出演。MCのK.I.Gの進行の下、DJのR da Mastaが提供するビートに乗って、ラッパーたちが8小節×3のバトルを展開し、観客の声援が大きい方が勝者となる。例年は司会を務めていたNAIKA MCの久々の参戦、小学生ラッパーFCザイロスと芸人ラッパー溝上たんぼの対戦、唯一の女性であるrisanoの登場など様々なトピックがあり、序盤から熱い展開が続いた。「山人」出演者のバンド名やそのバンドが主催するフェスの名前、曲名などを引用するラッパーもいて、このフェスへの愛も伝わってきた。トップ3に残ったのはDOTAMA、Sitissy luvit、NAIKA MC。くじ引きによってDOTAMAがシードを獲得すると、Sitissy luvitとNAIKA MCが準決勝戦を繰り広げ、「安室奈美恵」と「覚悟がちげえ」で韻を踏んだSitissy luvitが勝利した。そして決勝では、DOTAMAが「北関東のヒップホップを盛り上げてきたのは俺だ!」と吠え、若手急先鋒であるSitissy luvitが真面目にキャリアを重ねてきたDOTAMAのことを煽る。スキルと情熱と機転を兼ね備えた2名によるバトルは、接戦の末、延長。最終的にはDOTAMAが2年連続優勝となり、ウイニングラップでは「茂木さん、来年は俺をライブに出してください!」と快哉を叫んだ。
HEY-SMITH 15:50~赤城STAGE
Hump Back 16:30〜榛名STAGE
榛名STAGE内のキッズエリアが一段と混み合っている。しかも両親に肩車された子供の数がとても多い。メンバー全員が妊娠、産休期間を経て、復活したHump Backゆえに親子連れのファンも大挙して詰めかけたのではないだろうか。「(山人10周年にかけて)自分たちは10年前どうしようもなかった。超かっこいい人が超かっこいいフェスをやっている。呼んでもらえて、10年前の自分たちが報われるようです!」と林萌々子(vo/g)はMCを挟み、「tour」で演奏開始。「LILLY」、「オレンジ」と立て続けに放ち、ライブハウス同様のエネルギッシュな空間に変えていく。
「初めて山人に出させてもらいました。言葉選ばんかったら、ガキからジジイまで(笑)」と観客をイジリつつ、「拝啓、少年よ」では訴求力の高い楽曲をアピール。感情移入を誘う歌詞も大きなポイントで、フロアのノリは右肩上がりに上昇。「ティーンエイジサンセット」に入ると、演奏はさらにドライブし、スケール感が増す後半の展開にも惹きつけられた。「時代は作るものではない、歌うもの」と言った後に「僕らの時代」を披露。「自分たちの先輩が最前でやっているからサボれない。ウチらも30歳…中堅になったけど、FOMAREとか若いバンドに圧をかけようと(笑)。物騒な曲のタイトルやけど、死ぬまで遊ぼうぜ!って曲」と伝え、ラストは「明るい葬式」へ。歌を前面に出しながら、3ピースによるシンプルな演奏を轟かせ、観客に寄り添うアプローチでビシッと締め括ってくれた。
NakamuraEmi 16:50〜妙義STAGE
妙義STAGEのトリは、『山人音楽祭』と同じくデビュー10周年のNakamuraEmiだ。『山人音楽祭』そして妙義STAGEの常連となりつつあるNakamuraだけに、オーディエンスとの心の距離は近い。1曲目「Don’t」の軽快な曲調に、観客の手も自然と上がった。G-FREAK FACTORYが各出演者の楽屋に用意している特製だるまとともにステージに上がったNakamuraは、「このだるまが家に何個もあること、誇りに思っています」と噛み締める。MCでは、G-FREAKへの感謝を言葉にしながら「こんなにフェスに呼び続けてくれる人、他にはいない」と恐縮していた。彼女は先日、生まれ育った神奈川県厚木市でライブをし、「地元でライブをするとこんな気持ちになるんだ」と実感。だからこそ『山人』に呼ばれ続けている喜びも、感謝も、募るばかりのようだ。そんなMCのあとに届けられたのは、自身のデビュー10周年に際して制作された感謝の楽曲「デイジー」。そこに、あるライブに出演した夜の心境を綴った「梅田の夜」を重ねたセットリスト、強い意志を感じさせるNakamuraの歌には、『山人』のオーディエンスに対する思いが確かに込められていた。そしてラストは「YAMABIKO」。2日目をまだまだ楽しむため、これから次のステージへ向かう観客にエネルギーを送った。
04 Limited Sazabys 17:00〜赤城STAGE
開口一番「久しぶりだな、山人」と挨拶をした04 Limited Sazabys。山人音楽祭への出演は8年ぶりになるという。「待ったな、本当にもう!」とボヤきながら、この間に積んだ経験値はダテじゃないところを見せたいと、前半からフルスロットルだ。グッドメロディが冴える「magnet」から、細やかなリズム展開でボルテージを上げる「knife」、そしてタフさを増したバンド感でサウンドの鮮やかさが際立つ「fiction」などで、フロアを熱気で満たした。疲れ知らずで跳ね回っている観客を眺め、「ただいまの気持ちでいっぱいです」といったGEN(vo/b)は、「さっきHEY-SMITH猪狩さんに、(会場)暑かったですかって聞いたら、暑い、あと臭いって言ってたけど。ここ上がったら臭くない。もっと臭くなりたい」と、中盤も観客に汗をかかせるように「Cycle」や「Galapagos」など、ポップで一筋縄でないフォーリミ節を聴かせる。変幻自在のビートやキャッチーでクセもたっぷりのギター、そこに乗る会場をまっすぐ突き抜けていくようなハイトーンのボーカルが冴える。先日体調を崩していくつかのライブをキャンセルしてしまったというが、「また喉壊すくらい頑張ります」とGEN。そこは大事にしてもらいたいが。改めてG-FREAK FACTORYとレベルミュージックであり続けるその姿勢へのリスペクトを伝え、ミュージシャンが平和を歌わなくなったら終わり、ちがいをぶつけ合うよりも前に進んでいきましょうと、「Keep going」から「monolith」へと続ける。会場には興奮と汗の香りと、笑顔がスパークする。その光景を焼き付けるかのように、予定にはなかった「Remember」で、8年ぶりの山人のステージを走り抜いた。
FOMARE 17:40〜榛名STAGE
ド頭からラストまで、榛名STAGEは特大のシンガロングに包まれた。いやもう、FOMAREのすさまじく気迫がこもった演奏はもちろん、それを迎え撃つ観客の熱量もとんでもなく、相思相愛のぶつかり合いに圧倒されてしまった。オープニングの「夢から覚めても」からフルスロットルで飛ばし、ガチンコでフロアと向き合う彼ら。「僕と夜明け」でもブルドーザーのごとく前のめりで突き進んでいくではないか。「山人どうですか?榛名はFOMAREが一番出てる。フロム群馬のFOMAREにしか作れないステージをやる!」とアマダシンスケ(vo/b)は宣言。その言葉通りに「愛する人」に入ると、肩を組んで輪になって踊る人たちがいる一方、手を挙げてジャンプする人もたくさんいて、収拾がつかない爆発的な盛り上がり。これが沸点かと思いきや、まだまだここから駆け上がっていく。
「人生で初めて遊びに来たのが山人で16歳のとき......2018年から毎年出ていて、山人にFOMAREがいないと成り立たないと思いませんか?」と問いかけ、演奏でそれを証明する今のFOMAREはカッコイイのひと言に尽きる。「Lani」、「Grey」、「Frozen」と続き、観客によるシンガロングは大きくなるばかり。
「G-FREAK FACTORYが教えてくれたことをFOMAREなりに若い人に示したい!」と告げ、最後に「夕暮れ」をプレイ。「今はふたり(現在ドラムはサポート)になっちゃったけど、まだまだFOMAREは行くぜ!」と曲中に叫ぶアマダ。今日のライブを観て、バンドがふたり体制になろうとも心配なさそうだ。むしろ今が最強なのではないかと思わせる鉄壁のパフォーマンスを叩きつけてくれた。
BRAHMAN 18:10〜赤城STAGE
30周年の映像とアニバーサリーのロゴがビジョンに映し出され、会場が歓喜で湧き上がるなか登場したBRAHMAN。ライブは最新アルバム『viraha』収録の「charon」でスタートし、鮮やかに密度を増していくアンサンブルと熱を帯びていく歌とで観客を揺さぶっていく。「山人音楽祭、今年も開催おめでとう。そして呼んでくれてありがとう」の言葉でひと呼吸を置いた後は、怒涛の展開だ。「賽の河原」から「BEYOND THE MOUNTAIN」までひと息で駆け抜ける。その音楽に渦巻いている強力なエネルギーに引き込まれるように前のめりにコブシを上げ、歌とも叫びともつかない声をあげ続ける観客。また続けて、剥き出しのエモーションで観客を容赦なく掴んでいく「知らぬ存ぜぬ」、そして群馬という地だからこその選曲だろうか、BUCK-TICKのカバー「ICONOCLASM」を破壊的なパワーを持ったサウンドで投下。すさまじいドラミングは、観客を薙ぎ倒す勢いだ。じっくりと歌心を聴かせる曲を中盤に据え、また最新作からの「最後の少年」では、G-FREAK FACTORY・茂木がステージ袖から登場。年を重ねてきたふたりが歌うことでまた一段と、その歌詞が沁みる。ふたりの歌に、観客が“少年”のコーラスが重なることで生まれたエモーショナルな空気もまた、ぐっとくる。がっちり握手を交わして茂木を見送った後TOSHI-LOWは、それぞれ音楽的な形はちがえど根っこにあるものは同じだと、はじまりから熱を削ぐことなくレベルミュージックであり続けている同志について語る。また夢を諦めず研磨を続けてここにある、その思いを「順風満帆」に託して力強く打ち鳴らしていった。
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS 18:50〜榛名STAGE
2日目・榛名STAGEのトリとして、LOW IQ 01(vo/b)、渡邊忍(g)、フルカワユタカ(g)、山﨑聖之(ds)の豪華布陣を敷いたLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUSが登場。「Delusions of Grandeur」で始まると、まずは卓越した演奏力でご挨拶。フロアの様子を窺いつつ、「WHATʼS BORDERLESS?」で一気に斬り込み、観客のテンションをガンガン上げていく。ドラムのビートが加速する中で次は「Hangover Weekend」に突入。場内はハンドクラップで満たされ、榛名STAGEはパーティー会場へと様変わり。フロント3人が楽器を持ったままクルクル回るシーンもあり、エンタメ性に長けたステージングも見応え十分であった。中盤の「SNOWMAN」では赤城STAGEでライブを終えたばかりのBRAHMANのTOSHI-LOW(vo)がゲスト参加。LOW IQ 01に寄り添うように歌い、場をさらに盛り上げる。去り際は上半身裸のトランクス状態になったTOSHI-LOWに向かって、「安心してください、履いています」とフォローするLOW IQ 01。「SWEAR」を経て、「ここから飛ばして行きますよ!」と煽り、「SO EASY」では思わず行進したくなるリズムに会場も大騒ぎ。気づけば、肩を組んで回る観客たちで溢れ返っていた。「MAKIN’ MAGIC」で再びパーティー空間を作った後、「トリをやらせてもらいました。暴れろ!」と叫び、「LITTLE GIANT」を披露。LOW IQ 01はフロアにマイクを向けて「シンギン!」と焚き付け、さらにフロント3人による重厚な歌声やスリリングなインスト・パートで榛名STAGEを翻弄。隙のないプロフェッショナルなステージで観客を骨抜きにした。
G-FREAK FACTORY 19:20〜赤城STAGE
『山人音楽祭2025』の2日間が、いよいよグランドフィナーレを迎える。トリを務めるG-FREAK FACTORYのライブは、原田季征(g)、吉橋伸之(b)、Leo(ds)によるセッション、茂木洋晃(vo)の言葉によって幕開けた。茂木の歌は魂の叫び。バンドのサウンドは生命の躍動。そんな音楽と対面する観客も同じく躍動するなか、茂木による「We are G-FREAK FACTORY!」の叫びが赤城STAGEにこだました。
これだけ魂のこもったライブを見せられたあとに、「ローカルフェスの最高傑作にようこそ」なんて言われたらもう堪らない。最初の3曲の時点でそう思わざるを得ないほど、今日のG-FREAKはすさまじかった。出演者や来場者やスタッフ、『山人音楽祭』に関わるすべての人の思いを背負っているからだろう。今年の2日間はトラブルなし。茂木は、ライブハウスもスポーツも元気がなくなり、悲壮感が漂う街の中で、“人”の力を信じてこのフェスを始めたと振り返りながら、愛と優しさでこのフェスを包み込んだ来場者に感謝を伝えた。そんなMCのあとに披露されたのは、壮大なバラード「Parallel Number」。喜怒哀楽様々な感情を鳴らしてきたG-FREAKだが、今日の彼らの音楽はいつになく光に満ちていた。
「Too oLD To KNoW」で茂木が「すべての音楽馬鹿ども、最高だ! 全員両手を上げろ!」と投げかければ、観客が大合唱で応じた。彼らの楽曲の歌詞には、生きるにあたっての理念が綴られている。その歌詞を空で口ずさめる観客に、伝わっていることはきっと多いはず。そして茂木の「なかなか上手にはできなかったりするけども、それでもみんながモラルとマナーを持って過ごしてくれたおかげで、来年もやる責任があるってそう思った」という言葉からは、疑うことから始めていた“あの頃”の自分を『山人音楽祭』のオーディエンスが変えたことを暗に語っていた。なんて美しい思いの循環。生命と気力の炎を絶やさないため、薪のくべ合う関係性。「俺たちはこうやって距離を縮めて、信じあうことができる。その確認ができる場所がライブハウスやフェスであってほしい。またライブハウスで待ってるよ。みんな一緒に歌おうな」――続く「ダディ・ダーリン」では、茂木がマイクを通さず生の声で「俺のじゃない、“俺たち”の歌だ」と伝える。そして2番に入ると、BRAHMANのTOSHI-LOWが登場。『山人』では珍しくないコラボだが、真心のこもった至上の名演。歌い終えたふたりが「今年もいい風景見せてくれてありがとう」「兄弟。平和は願うもんじゃねえ、作るもんだって教えてくれた兄弟」と肩を組んでいたのも素敵だった。
「すげえ景色だった。危なかった。バカ野郎」と笑う茂木は、きっと涙がこぼれそうだったのだろう。そしていよいよラストの楽曲「Fire」へ向かっていく。仲間による熱演とその連鎖、来場者の協力的な態度によって生まれた素晴らしい2日間を、茂木は「でっけえ火事みたいな火」と比喩。そして『山人』の火を大きくしてくれたあなたの心の中に灯る炎を「どうか消さないでくれ」と伝えた。さらにアンコールの「らしくあれと」では、ラストの歌詞が〈来年もここでやるから 隠れないで遊びにこいよ〉と変えられる。絶対の保証がなくても、今日、最高の一日を過ごしたという記憶があること。そして次への約束があること。G-FREAKの、そして『山人』の音楽に宿る熱は、日常に帰る観客の心をきっと温め続けてくれるはずだ。<公演情報>
『山人音楽祭2025』
2025年9月21日(日) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋