2021年12月7日 12:00
岡田将生、倉科カナ、麻実れいが描くいびつな家族像。上村聡史演出『ガラスの動物園』稽古場レポート
12月12日(日)より東京・シアタークリエほかで上演される『ガラスの動物園』の稽古場を取材した。1930年代、大恐慌下のアメリカに生きる家族を描いた『ガラスの動物園』は、テネシー・ウィリアムズの出世作にして、アメリカ文学の最高峰とも称される戯曲。1945年のブロードウェイ初演以降世界中で繰り返し上演され、のちの演劇・文学作品にも大きな影響を与えたこの作品を、今回は上村聡史の演出、岡田将生、倉科カナ、竪山隼太、麻実れいの出演で上演する。
物語はトム・ウィングフィールド(岡田将生)の回想から始まる。トムはこの物語は追憶の劇だと宣言する。そう語る姿はくたびれた風情だ。しかしどこか甘い香りが匂い立つようで、それは郷愁の甘さに加え、岡田自身の持つ少し悲し気で優しい雰囲気がそうさせるのだろう。バンドネオンが奏でる物悲しいBGMとトムの独白が、閉じられた、息苦しい、しかし懐かしい家の中に観る者を誘っていく。
麻実れい
ウィングフィールド一家の住むアパートの中には、アンティークの調度品が設えられ、舞台中央の机の上にはガラス細工の動物が置かれている。父親は16年前に家を出ていったっきり。この家の空気を司っているのは母親のアマンダ(麻実れい)