福原遥インタビュー。新作『あの星…』は「これからの若い世代にも届くものになってほしい」
映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が本日から公開されている。本作は、2023年12月に公開された映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編で、福原遥が再び加納百合を演じている。
新作の舞台は前作から7年後で、百合は現在も“ある想い”を抱き続けているが、彼女が置かれている状況や感情のあり方は大きく変化している。時が経ち成長する過程で変化していくもの、どれだけ時が流れても変わらないものを福原はどう演じたのだろうか?
『あの花…』に登場した百合はまだ高校生だった。ある偶然から1945年の日本にタイムスリップした彼女は、特攻隊員の彰に出会い、同じ時を過ごす中で彼に惹かれていく。しかし彰は空へと旅立ち、百合は現代に戻ってきた。
現代を生きる若者の想いと、夢や希望を抱きながらも自由に生きることが許されなかったかつての若者の姿を描いた映画は大ヒットを記録。福原は「私にとって“学ばせてもらった”現場でした」と振り返る。
「これまでにない経験をたくさんさせていただくことができた作品です。当時は百合の魅力をどうやって伝えればいいのか本当に不安で、撮影前から(彰を演じた)水上(恒司)さんともたくさん話し合いましたし、みんなで百合という役をつくっていった印象があります。当時はいま以上に作品に関する知識がなかったので、どの演技が正解なのか、どの道を進んでいけばいいのかわからないまま、自分たちが思ったものを観てくださる方に届けたい、と必死になってやっていた記憶があります。
気持ち的にも苦しいシーンや難しい場面が多かったので、私だけでなくみんなが現場では静かに集中していて、常に緊張感のある現場でしたね。そこで描かれるのは、私がこれまでに感じたことのない、演じたことのない感情で、どうやってその感情にたどり着けばよいのか……本当に挑戦でしたし、百合を演じたことで、私自身も新しい扉が開けたと思います。そして何よりも、完成した映画を本当にたくさんの方に観ていただけたことはうれしかったですし、驚きでした」
映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。
』の舞台は現代で、百合は彰がなりたかった教師になっている。ある日、彼女の前に彰の面影を感じさせる青年・涼が現れ、百合は自身の彰への想いと、自身の未来に向き合うことになる。前作ではまだ若く、自分の想いをストレートにぶつけていた百合は、現在は自分の想いを“胸に秘めている”状態だ。
「そうですね。前作は悲しい時は悲しい、怖いときは怖いと言えましたが、今回の百合はみんなに本当のことが言えない。だから自分の中でも葛藤している部分があると思うんです。ただ、彰の想いを背負って、それを守っていきたい、伝えていきたいという気持ちは、信念というか“百合の軸”みたいなものでずっと持っている。ただ、それを周囲に伝えようとするとうまくいかないんです」
本作における百合の葛藤は複雑で多岐にわたっている。
まず彼女は自分がかつてタイムスリップしてさまざまな経験をしたことを、周囲には伝えていないし、伝えられない。だから彰への想いも胸に秘めたままで、彼と再会することは永遠に叶わないが、その想いは消えることはない。だからもし、目の前に惹かれる人が現れたとしても、自分の中の彰への想いとどう折り合いをつければ良いのかわからない。また百合は、彰への想いから、私たちの暮らす世界が戦争のない平和なものであってほしいという強い願いを抱いているが、自身が教える生徒たちにその気持ちをどう伝えればいいのか迷っている。
本作の百合はいくつもの場面で自分の感情に折り合いがつかず、自分の想いを周囲に伝えたいのに伝えられない状態。いつも”不安定”な場所に置かれているのだ。
「どの場面でも言葉を話していないシーンで百合が何を考えているのか、どんな想いでいるのかはいつも想像していましたし、自分の出した答えが本当に正しいのかはいつも不安ではありました。でもシーンを重ねていく中で見えてくるものがあったので、最初から細かく決め込まずに撮影をする中で実際にその場に立って見えてくるもの、感じたことを出していきたい、と思うようになりました。
シーンごとに湧き出る感情は変わっていきますし、相手役の方が変わることで感情も変化していくんです。
今回の百合は前作以上に周囲の想いを受け取る役なので、相手の役の方の気持ちを受け取って、その想いを噛み砕いて前に進んでいくことで、自分ひとりでは決して行けなかった場所に行けた気がします」
「複雑な気持ちや苦しさを、自分の中でどうやって受け止めて前に進んでいくのか?を考える時にこの作品から勇気をもらえると思います。それから戦争について学校で学ぶだけじゃなくて、この作品を通して当時の人たちがどんな想いでいたのかを近い場所で感じてもらえると思うので若い方にも観てもらいたいと思います。この作品がこれからもバトンのように次から次に受け継がれて、これからの若い世代にも届くものになってほしいです」
迷い、葛藤しながら自分の進むべき道を探して一歩ずつ進んでいく百合は、前作以上に不安定にも見えるし、不思議なことに同じぐらい強くも見える。
複雑な感情を単純化することなく、迷い続けながら演じた福原の演技と想いを大きなスクリーンで見届けてほしい。
『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』
公開中
取材・文:中谷祐介(ぴあ)
ヘアメイク:paku☆chan
スタイリスト:川﨑加織
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