【元懐刀が語る森保一の眼】第1回:指揮官が貫く「ブレない幹」と、初戦オランダ戦に潜む“一瞬の隙”|ワールドカップ2026

遂に幕を開けたサッカーワールドカップ。強豪ひしめくグループステージにおいて、日本代表を率いる森保一監督は、いかにして世界の列強に立ち向かうのか。

今回スポーツブルでは、森保監督がサンフレッチェ広島でリーグ連覇(2012・2013年)を達成した当時、分析担当コーチとして指揮官の“右腕”を務めた久永啓氏(現・岡山理科大学准教授)にインタビューを実施。直前に迫った初戦・オランダ戦の分析から、身近で支えたからこそ知る真の凄みまでを、全3回の連載で掘り下げていく。

監督室にこもらない。「ワンチーム」を作る徹底した姿勢


久永氏はピッチ内、そしてチームビルディングにおける森保監督のスタンスをこう振り返る。

「森保さんが初めて監督になられた時、やっぱ大事にしたいのは、監督だけ別の部屋とかっていうのはめっちゃ嫌だと言って。みんな同じコーチングルームの同じ部屋で机をくっつけて、島を作るじゃないですか。そういう感じで、みんなが向き合うような環境を作って、いつも喋る状態ができるようなのを作られたりとかしていて。
そういう、誰とでも話せるようなのを作るっていうのは、すごく大事にされてる監督さんでした」

当時、初めてトップチームで分析官を務めることになった久永氏。そんな彼に対しても、森保監督の姿勢は変わらなかった。 「俺も監督やるの初めてだから、一緒に頑張ろうよ」 そう飾らない言葉をかけ、一人の仲間として温かく迎え入れたという。


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広島時代から変わらない「サッカーの本質」


現在、かつてとは比べものにならないほど、ヨーロッパのトップ戦線で活躍するタレントが揃う日本代表。戦術の多様化が進む中で、久永氏は「森保監督の根本の軸は、広島時代から変わっていない」と強調する。

「森保監督はサッカーにおいて何が大事かって言うのを持っている。選手、スタッフに関わらずチームに貢献できる人間かどうか。泥臭さとか、球際とか、攻守の切り替えとか。
上辺だけの戦術やフォーメーションに頼るのではなく、そこは絶対に譲らなかったし、そこは絶対に緩めない強さを持っています」

当時、森保監督から久永氏が一貫して求められていたのは、「選手たちがピッチの上で自信を持ってプレーするための分析」だった。緻密なロジックはすべて、選手たちの「迷い」をなくすために捧げられているのだ。


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初戦オランダ戦、日本が突くべき“一瞬の隙”とは?


そんな森保ジャパンが初戦で激突するのは、優勝候補の一角でもあるヨーロッパの強豪・オランダだ。タレント揃いの相手に対し、元分析官である久永氏の「眼」にはどう映っているのだろうか。

「オランダは非常に強力ですが、映像を見ていると、前向きの攻撃からボールを失った瞬間(ネガティブ・トランジション)、中盤の選手たちの戻りが一瞬遅れる傾向があります。ファン・ダイクの個の能力が非常に高いために起こりがちな隙なのですが、日本にとってはここが大きな狙い目です」

日本が誇る伊東純也や前田大然といった快速アタッカー陣、そして中盤でボールを刈り取れる佐野海舟らの能力が活きれば、この一瞬の遅れを突いたショートカウンターから十分に得点のチャンスが生まれるという。

また、気になるスタメン予想について、久永氏は森保監督らしい“手堅い人選”を予想する。

「オランダだからって言うのはあまりないと思う。
初戦という重要性と守備から入る森保監督のやり方を考えると、左ウイングバックには中村敬斗選手のような攻撃的な選手を置くよりも、ユーティリティで守備の計算が立つ鈴木淳之介選手を起用してくるのではないか。まずは守備のベースをしっかり作り、失点せずに入ろうとする。いかにも森保監督らしい、着実なゲームプランで臨むと想像しています」

久永氏が予想するオランダ戦のスコアは「1-1のドロー」。まずは強豪相手に確実に勝ち点をもぎ取り、激戦のグループステージをサバイブするための足がかりにする、そんな緊迫した初戦になりそうだ。


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【元分析官のワンポイント観戦術】「正解」を探さず、まずはワクワクして観よう


今大会で初めて熱心にサッカーを観るというファンに向けて、久永氏は最後に優しいメッセージをくれた。

「僕が以前出会ったサポーターの方に、戦術は詳しくないけれど『スタジアムの一番前で、大好きな選手のアップ姿をカメラで追うのがとにかく得意で楽しい』というマダムがいらっしゃいました。僕はそれも最高のサッカーの楽しみ方だと思うんです。

ワールドカップだからといって、難しく戦術を語る必要はありません。
『この選手の顔がかっこいい』でも『このプレースタイルが好き』でもいい。自分なりの“推し”やワクワクする視点を一つ見つけて、まずはそれを純粋に楽しんでもらえたら、それが最高の観戦術だと思います」

(第2回「vsチュニジア戦プレビュー」へ続く)


(聞き手・文:スポーツブル編集部 坂東 岳)

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