アンリが思うに、桃は柔らかで美しい果実ですが、種は硬く簡単には割れないところが、揺るぎない契りのようで、恋愛とクロスするのではないかと思うのです。
実は古くは古事記に、桃にまつわる話が存在します。日本の国生みの話で有名な男女神、イザナギとイザナミ。
不幸にも火の神を出産した際のやけどでイザナミ(妻)が他界してしまうのですが、イザナギ(夫)はあまりの悲しさからに妻を追って黄泉の国へはせます。
闇の中、一緒に帰ろうと言う夫、イザナギに対してイザナミは、一言言い残して闇の御殿に入ります。
「黄泉の国の食べ物を食べてしまい、こちらの住人になってしまったので、このままでは帰れない、黄泉の神に相談してみるので待っていてほしい。それまで自分の姿を決して見ないで」
本当は肉体が朽ち、醜態となった自分の姿を恥ずかしく思い、イザナギに見せたくなかったのです。
ところが、待ちきれない夫は、美しい妻の姿を早く見たいとの思いから火をともして現実を見てしまいます。
そのあまりに酷い姿に驚愕し、イザナギは黄泉の国を逃げ出します。