音楽一家 【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第2話】
桃香は小さい頃から父親の影響でジャクソン5やMotownサウンド、アメリカンPOPを聴いて育った。
画像:(c)chikala01 - Fotolia.com
母親は趣味でジャズピアノを弾いていたので、ひと通り音楽の基本は教えてくれた。桃香は小さい頃、日常で起こったことをピアノに合わせて歌うのが日課だった。
「きょうのおやつはケーキだよ。小人と一緒に小さなスプーンでゆっくーり食べようね」
というような即興歌を小さい指で鍵盤を叩いて歌い、周りを楽しませた。父と母が桃香が歌うたびにハグして喜んでくれたせいか、歌手になりたいという小さな夢を持ったのもこの頃だ。高校時代はアメリカンPOPサークルに参加し、メンバー達とコピーバンドを結成した。
先輩に連れて行かれたライブハウスで自分が作った歌を歌った時、音楽関係のプロデューサーに声をかけられ、ちょっとハッピーなことが起こった。
プロデューサーと組んで仮歌でCD制作に加わるチャンスをもらったのだ。それ以降、若手のプロデューサー達からアルバム造りのたびに声をかけられるようになった。
恵まれた音楽環境の中で、いつかデビューしたいという夢が膨らみ続けた。大学に入ってからは月3回ボーカルスクールに通い、歌を習っている。自分の部屋にいる時は音楽を聴くか歌を歌うかのどちらかだ。たまに大きな声でサビを歌い、階下に居る母親の美里から注意を受ける。