O型と穴開けパンチ 【彼氏の顔が覚えられません 第4話】

授業後の、カズヤのセリフ。聞いて、やれやれ、ってつぶやきたくなった。

B型だから、なんだっての。自分は寛大だ、って? 私も「O型の典型だね」ってよく言われる。理由は「よく人の顔を忘れるくらい、大ざっぱだから」。忘れるんじゃない、覚えられないのだ。

いつもそうやって、O型だからと差別されてきた。…なんて、大げさ? でもまぁ、そんな素朴な悩みさえ、これからは持たなくていい。
そう思えば、ちょっとは楽かな。ただでさえ、私の生活にはストレスが多すぎる。

ベッドから起きる。机まで向かい、引き出しを開ける。目的のものはなく、閉める。穴開けパンチ、どこ置いたっけ。テレビの下のキャビネットの引き出し。ない、ここにも。


うーん。

あ、思い出した。

カバンの中。いつも家で穴開けるのメンドクサイから、持ってってたんだ。結局、忘れてちゃ意味ないな。「イズミって、マメだね」カズヤからそう言ってほしかったのに。まったく、自分自身にやれやれ。

プリントに、パチン、パンチ穴を開る。
本棚の「心理学」って書いてるフォルダにファイリングする。で、パンチを机の引き出しにしまう。ん、完璧。

さて、お風呂にしよ。そう思って、床を見渡す。パンツやら、スウェットやら、洗濯して取り込んだやつと、ただ脱ぎ捨ててそのままのやつが散らばってる。雑誌とか、ピザ屋のチラシとか、本棚からあふれた文庫本なんかも。

バスタオルはどこかしら。


なんて思ってると、ケータイが鳴る。LINEメッセージを受信する音。

「今からサークル飲みの二次会。終電逃すー。たのむ家泊めて」

カズヤから。すぐに返事を送る。

「ごめんムリ」

今はまだそんな段階じゃない。つまりその、二重のイミで。


(つづく)

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