子豚ちゃんと時計の長針【彼氏の顔が覚えられません 第12話】
世の中って、とことんうまくいかないものだと思う。正月3日目の朝、ベッドで隣に寝てるのは、カズヤじゃない。
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「朝だよ」
隣で寝ている彼女に声をかける。この子が嘘を言ってなければ、彼女はきっと、ユイの友達のマナミのはずだ。顔は、例によってまったくわかんなかったけど。
マナミは寝息を立てている。起きる気配はまったくない。ときどき「フゴッ」という音を立てたりする。
ユイ曰く「整った顔立ち」に似つかわしくないように思えるけど、よくよく見ると鼻が少し上向きで、子豚ちゃんみたいだ。
記憶を整理しなくちゃならない。ベッドから抜け出し、机の上のノートとペンを取る。きのう、伊勢うどんを食べたとこまではよかったと思う。少し高かったけど、ちゃんとおいしかったし。フワフワして口の中でとろけるような食感や、黒くて濃いのに少し甘みのあるタレの味とかも新鮮だった。2年の先輩の家で食べたカップラーメンなんて比べものにならないくらいの。