恋の色【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第15話】
その出来事を冬馬から聞いとき、桃香は両手でガッツポーズをつくり、ピョンとジャンプした。
桃香は、残業や歌のバイトがないときは、フットサルの練習にできる限り付き合うようにした。幸い、会社はほとんど定時に終わる。歌の練習の時間が減るけれど、今は慎吾のために時間を使おうという気持ちになっていた。自分の夢を追うのも大事。でも、それと同じくらい夢を叶えてあげたい人、それが慎吾だ。
家で歌を歌っていても、ピアノを弾いていても、ときおりフっと慎吾のボールを追う姿が浮かぶ。愛の歌を歌う時は感情が入り込み、ひとり涙を流すこともあった。
それでも慎吾のことを恋人として好きなのかどうなのか、はっきりわからなかった。付き合おうとかいう言葉はふたりの間には出てこない。ただ、一緒にいてその時を大事にしている関係。桃香は、親友の鮎子の弟だからやさしくしてあげたくなるのかな、と思ったりもした。
ボーカルレッスンの日だった。講師のカオル先生に会うと、心が華やぐ。いつもその日の気持ちを表す色を、洋服やアクセサリーの一部に取り入れるおしゃれな先生。
「今日は空色の気分。
だから、ブルーのピアスとブレスレット」
と言って、つかみどころのない話題を提供してくれる。それがまた楽しい。
「空色の気分ってどんな感じですか」