応援団とチョコレート【彼氏の顔が覚えられません 第14話】

つい先日に冬休みが終わったばかりなのに、少しの授業とわずかのテスト期間を経て、再び春休みという長い長い休息期間が始まった。

応援団とチョコレート【彼氏の顔が覚えられません 第14話】

画像:(c)evgenij918 - Fotolia.com


この時期、大学はまったく別の姿をまとう。我々モラトリアムを享受する、緊張感のない在学生にとっての暇つぶし場所ではない。新入生候補である、緊張感しかない大学受験生にとっての激戦の舞台となる。

そんな危険地帯に、在学生の分際で忍び込む。入れるのは、事前に申請した一部の在学生だけなのに。キャンパス内に出ると、早速その「一部」の活躍が見られる。学ランを着て額に鉢巻きを巻き、ポーズを決めながら「受験生のみなさまのぉー、栄光を願ってぇー」と叫ぶ応援団各部活動の名前の書かれたのぼりを掲げ、ビラ配りをしている生徒も。
部活の勧誘競争は早くも始まっている。

受験生にしてみたら、そんな勧誘を受ける余裕のある生徒なんてほんの一握りで、多くは彼らに目もくれない。校舎や街路樹の壁に寄りかかって、あるいはベンチや階段に腰掛けて、あるいは歩きながら、周囲の情報をシャットアウトしている。

重そうな鞄を肩からかけ、手にした教科書やら赤本やら参考書やらをパラパラめくっている生徒も、薄い鞄を片手にスマホやタブレットをいじっている生徒も。勉強のスタイルは変わっても、張りつめた空気は変わらない。もちろん中には“記念受験”の生徒もいるだろうけど、表情の読めない私にその区別がつくわけがない。

(まぁ区別できたところで、何の得にもならないけど)

一年前の自分もあんな受験生たちの一人だったな、と懐かしく思う。当時の私は、どんな夢を描いてこのキャンパスに足を踏み入れたのだろう。
そのときの夢は、いくつ叶えられただろう。

いま私が胸に抱えているこれも、叶えられた夢の一つが形になったものなのだろうか。それともまだ叶えられず、必死でつなぎ止めようとしている祈りのような、もろく崩れやすいものの破片なのだろうか。


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