直球の愛情【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第18話】
桃香が会社のパソコンの前でぼんやりしていると鮎子が小声で話しかけてきた。
「最近、仕事が上の空っぽいぞ。なんかあった? 慎吾が迷惑かけてない?」
「ううん、全然そんなことないよ。楽しくやってるよ。鮎子、給湯室行こうか。ここ乾燥しててのどがイガイガするから」
ふたりは、給湯室の壁にもたれかかり、立ったままあたたかい柚子茶をすすった。柚子茶を飲んだあと、カリン飴を舐めると、のどの調子がよくなる。冬は喉の乾燥に人一倍気を遣う。
急に歌入れの仕事が入ったときに声がかすれていると、迷惑をかける。桃香は喉をいたわっている。
「鮎子、慎ちゃん、元気そうになったよね。バイトとフットサル両方充実してるみたいで」
鮎子はにっこり笑う。慎吾と口元の感じが似ていることに、桃香は初めて気づいた。仕事中はポニーテールにして髪をまとめ、黒ぶちの眼鏡をかけているので、まじめなOLさんだ。週末になると。巻き髪にして派手な色のワンピースに着替え、リップグロスを盛り塗りし、横浜や自由が丘に繰り出している。