約束とバスターミナル【彼氏の顔が覚えられません 第15話】

「恋って、いつか終わりがきちゃうって思っちゃうときがあるのよ。たとえどんなに幸せでも。ううん、幸せなときこそよけいに」

約束とバスターミナル【彼氏の顔が覚えられません 第15話】

画像:(c)Syda Productions - Fotolia.com


ユイがいつか言ってた。何ヶ月か前のカフェでだったかもしれないし、年末に新宿駅西口のバスターミナルでつきそってあげてたときかもしれない。シチュエーションは重要じゃない。スタバかドトールか、何番乗り場かなんてどうでも。言葉だけハッキリ覚えてる。

「イズミは恋愛初心者だから教えてあげる。
こんな恋、たいがい長続きしないから。そんなこと考えてる時点で、あきらめモードに入っちゃってるってわけ。ずっといっしょにいられるわけないっていう、ね。だから…」

“だから”、そのあとユイは、なにを忠告しようとしてくれていたのだろう。ちょうどそのタイミングで、店員が温められたベーコンサンドを持ってきたか、待ってたバスがきたかして、話が中断されてしまった。

続きをすぐにLINEで聞けばよかったのか。いつでも聞けると思ってた。いつもつながってるって思ってたから、いつのまにか関係が断ち切れたことに気づけなかった。


冬休みで地元へ帰っただけだと思ってたのに、ユイはあれから大学へは戻らなかった。LINEもブロックされていた。理由を知ろうにも、共通の知り合いはあのいやな子豚ちゃんしかいないし、仕方なく生徒課まで尋ねに行った。

「自主退学されてますね」

言われて、言葉が出なかった。

理由はわからない。大学に飽きたか、ほかにやりたいことが見つかったのか。あるいは、実家で何か不幸ごとがあったのかも…お父さんが亡くなって授業料が払えなくなったとか。いずれにしても、ユイは言ってくれなかった。
黙って私の元から去った。


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