湯気の向こうの笑顔【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第23話】
脚は引きずっているが、前のように恥ずかしそうに歩いてはいない。どうどうとしている。
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胸の中ではもやもやが巻いていたが、桃香は明るく声をかけた。
「慎ちゃん、専門学校行くんだってね。聞いたよ。すごいじゃない。次の目標が見つかったんだね」
「ねえさんが言ってた? おしゃべりだなあ。フットサル部の先輩達が仕事とスポーツ両立して楽しんでて、いいなあと思って。
冬馬さんなんて、昼はデザイナー。夜はサッカー。そういうの、かっこいいし」
桃香はどきりとしたが、他の話題に切り替えた。
「紅茶、たくさんあるね。5種類くらい飲みたいよね。どんだけ味違うのかなあ。」
「違う種類頼んで飲み比べしよう」
顔を寄せ合い、メニューにずらりと並んでいる紅茶の種類を声に出して読む。ふたりはまわりから見ると仲が良い素敵なカップルだ。
「飲んだら、散歩しようか。
で、ランチさ、ナポリタンだと、白いセーター汚しちゃうからさ。ケチャップ系は今度にしよう。ちょっと自由が丘の端っこのほうに歩いて行ってみない? 奥沢駅に向かう道に小さなフレンチとかちょこちょこあるんだよ。新しいお店もたくさんできたの」