厄介な女心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第26話】
桃香と冬馬は車に乗り込み、ふたりきりになった。
ハンドルを握りながら冬馬は黙り込み、桃香ははがゆいような複雑な気持ちになった。気分をまぎらわせようと歌を口ずさんだ。この前、カオル先生に褒められた恋の歌だ。慎吾が横目で見て笑った。
「こりゃいいや、ipodいらないな。便利だー。リクエストしたら何でも歌ってくれる?」
「ダメだよ。
カーオーディオじゃないんだから」
「あのさ、もうじきクリスマスだろ。だから決心したんだ。自分の気持ちにケリつけるにはいい機会だ。クリスマスでもなけりゃ、こんなこと言えない」
「ケリつけるって?」
「慎吾とおまえが付き合ってるのかどうかよくわからない。だったら、お前らがあやふやなうちに言ってしまおうと思って。早いもの勝ちだ。桃香、俺とつきあってくれよ。慎吾じゃなくて俺と」
「冬馬…」