頼りたい気持ち【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第27話】
15号線をひたすらまっすぐ走り、車は工業地帯へ着いた。京浜コンビナート。
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巨大な工場の群れに白いレーザービームのような灯りが点灯し、まるで宇宙の要塞だ。SF映画を観ているような無機質で不思議な景色だった。
「こんなところドライブしたの初めて。幻想的ね。停まって! ゆっくり見てみたい」
「いいよ。ちょっとマニアックな夜景だろ。
ツァーとか組まれてて、意外に人気らしいんだけど。女の子でも好きかな、こういうの。デートっぽくはないけど」
「どうしてここ知ってるの?」
「俺、父親の影響でスターウォーズ系が好きだからさ。おやじ、フィギアとか持ってんだよ。小学校の頃から、ビデオも一緒に観てた。で、ここ、夜通ったとき、宇宙の基地みたいだって思ったんだ。クールな景観だろ」
「そうね。連れて来てくれてありがと。
未来の世界にいるみたい」
道路の端っこに車を停めて、ふたりはまた高校の頃にタイムトリップした。図書館で大声で喧嘩して司書さんに怒られたこと、バスに乗り遅れた冬馬がかわいそうになってバスから降りて付き合ってあげたこと。
絵が得意な冬馬に似顔絵を描いてもらったけれど、あまりに似てなくて泣きそうになったこと。ふたりの共有できる思い出が泉のように湧き出てくる。