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寂しい猫の歌【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第29話】

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クリスマス1週間前、慎吾が電話をしてきた。



寂しい猫の歌【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第29話】

(c) inna_astakhova - Fotolia.com





「あのさ、クリスマスプレゼント渡したいから、24日は会えるかな。話したいことがあるし」



「慎ちゃん、わたし、慎ちゃんのことずっと見ててあげたいけど、もしかするとそれは鮎子と同じ気持ちで弟みたいに思ってるからかもしれない。そんな気持ちのまま会ってもいい?」



少し沈黙が流れた。



「それでもいいから会って欲しいんだ」



いつになく小さな声で慎吾が答えた。1時間後、今度は冬馬からメールが届いた。



「そろそろ答え聞かせてくれてもいいんじゃない? ぐだぐだ言わずに俺と付き合えって!」



桃香は背筋を伸ばして、窓の外の冬景色を見つめた。雲が低く、もしかすると雪になりそうな寂しそうな夜だった。
街灯の下に猫が1匹うずくまって震えていた。恋人もいないひとりぼっちの猫。横に身体を寄せ合う彼女がいたらきっとあったかいだろうに。寂しい猫の歌を桃香は口ずさんだ。



「こんな寒い夜は誰かとくっついていたいけど、僕には誰もいないんだ」



歌った息でガラス窓が曇り、猫の姿がぼやけて見えなくなった。



翌日、リビングで楽譜を書いていると、母の美里がめずらしくピアノを弾き始めた。



昔は仕事でジャズを歌っていたが今でも週に3日、友達のライブハウスを手伝いながら唄っている。


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