あなたのともしび【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第30話】

職場に向かう東横線の中で桃香は旋律を組み合わせながら考えた。

あなたのともしび【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第30話】

画像:(c)avirid - Fotolia.com


冬馬と慎吾に対するもどかしさを、父親のように音にしたいと思った。周りを見るとむずかしい顔をしたサラリーマン、早起きは苦手で眠そうなOLがつり革を持って立っている。この車両にいる人達もみんな恋に悩んだ経験があるんだろうな、みなとみらいでデートしてる確率100%だろうなと想像する。恋物語を抱えるひとりひとり。そんな人たちが乗り込んでいる東横線は曲作りには最適の空間と思えて来た。

夜、作りかけた曲を部屋にある電子ピアノで弾いてみた。そして気持ちを上に乗せて言葉にしてみた。


「あなたを失うと今の世界の灯りが消える。私の足下をほんのり照らしてくれるあなたのともしび。あなたといると心がほのかに桃色に染まる。Loving you missing you…」

自分の名前と同じ桃色の光に包み込まれた気分になる。うす桃色の光が射す世界で微笑む「あなた」は慎吾だった。

クリスマスの前日、桃香は冬馬が働いているデザイン会社の近所のカフェで冬馬を待った。


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