単位と食事デート【彼氏の顔が覚えられません 第23話】

先輩と話してる間に、履修届けのチェックを再び付け終え、もう決定ボタンを押してしまうことにする。単位を落とし、それでも進級はできた話を聞いて、気づいたからだった。いままでそういうことを一切考えず科目選びをしていたことに。

単位と食事デート【彼氏の顔が覚えられません 第23話】

画像:(c)Africa Studio - Fotolia.com


履修するからには、必ず単位はとらなきゃいけない、くらいに考えてしまっていた。べつに落としたって、来年また再履修すればいい。自由選択科目なら、諦めて別の科目で補うこともできる。まずは最後まで受けてみる。話はそれからだ。


そこで、悩みに悩んだ「文化人類学」という科目を履修登録することにした。2回ほど受けて、なんだか難しそうだけど、気になって仕方がなかったのだ。

決定ボタンを押し、履修科目確認画面に進む。登録する科目と、合計単位数が正しいことを3度、4度ほど入念に確認し、提出ボタンを押す。画面に「提出しました」の文字が出て、ようやく「ふう」と一息つく。

「お、登録終わった?」

登録を済ますまでずっとうなだれていた先輩が、顔を上げて言う。

「ええ、おかげさまで」

一応、先輩に対する感謝の気持ちを込めてみた。

「…じゃあイズミちゃん、夕飯でも食べに行かない?」

いきなり誘われる。


「えっ、夕飯、ですか」

「うん。あ、時間的にちょっと早いかな…でもまぁ、店探してるうちに7時ぐらいになんじゃないの…かな」

と言って先輩は腕時計を見ているが、そういう問題じゃない。

「ふたりで、ってことですか?」

「…あ、もしかして、誰かと食べる約束でもあった?」

「そんなことは」

ありません。ユイともカズヤとも別れた今、一緒に夕飯をとる相手なんていない。

「でも先輩、部活は?」

「…あ、ああ、べつにいいよ、行かなくても。部会のある日ってわけじゃないし…それに今、新入部員が多くて部室埋まっちゃってるしさ。ギターの練習なら家でもできるし…」先輩の台詞は理に適っているように思えた。けれど、なにやら違和感もある。
台詞が説明っぽい、というか、言い訳っぽい。


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