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赤ずきんちゃんと黒歴史【彼氏の顔が覚えられません 第27話】

ウーマンエキサイト
タナカ先輩を前にしたときのコモリの様子は、狼を前にした赤ずきんちゃんのようだった。椅子を引き、私の陰に隠れて、体をぷるぷると小刻みに振るわせていた。

赤ずきんちゃんと黒歴史【彼氏の顔が覚えられません 第27話】

画像:(c)Haramis Kalfar - Fotolia.com



先輩はそれを見つめながら、学食の具なしカレー(280円)をじつに食べにくそうにしていた。


「そんな怖がらなくても…べつに、とっつかまえて、こいつのトッピングにして食べてやろうと思ってるわけじゃないんだしさ…」


カレーをぐちゃぐちゃかき混ぜながらタナカ先輩は言う。いや、そこまで考える人間は先輩だけだろう…そんなこと言うから、コモリはいっそう身をこわばらせる。


「これ、たぶん怖がってるんじゃないんです。憧れていた人を前にして、緊張してるだけなんだと思います」


そうフォローしてあげると、彼女は無言で、ぶんっ、ぶんっ、と首を縦に振った。首を振るたびにおでこが前に出るから、軽くヘディングの練習をしているようにも見える。
なかなか面白いしぐさだ。


「なんか…照れくさいと言うより、恥ずかしいな…。まだ俺のファンでいてくれてる人がいるなんて」


先輩はほとんどドライカレーみたいになったやつを一口食べる。いささか神経質に混ぜすぎのような気がする。白いご飯をそこまで徹底的につぶす必要はあるのか。


このカレーの食べ方も、コモリの目には上品で美しいと映っているのだろうか。恋は盲目だとよく言う。そして、私はまだそんな風に盲目にはなれていない。


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