ロン毛と中間テスト【彼氏の顔が覚えられません 第29話】

5月の下旬、まだ五月病は癒えない。「はぁ。やる気しない」そうつぶやく。

ロン毛と中間テスト【彼氏の顔が覚えられません 第29話】

画像:(c)Paylessimages - Fotolia.com


「何をおっしゃってるんですの、ヤマナシ先輩。中間テスト、赤点になっても知りませんわよ」

と、コモリに怒られる。スタバで文化人類学の勉強中。中間試験なんて、わけのわからないもののために。まるで中学か高校だ。


そもそもこの科目、『となりのトトロ』に出てくるお父さんみたいな、のほほんとした人がやる科目じゃないのか。期末とレポートで十分だ。なのに、なぜ金八先生みたいな熱血教師が教鞭を握っているんだろう。「いいですかー。人という字は…」って、やめてください、それウソですから! つい授業中に叫びそうになってしまった。

「いーよ。どうせ必修科目じゃないし。落としたって、別の教科で補えば」

挙げ句、ついこの間の私だったら考えられないようなことを口にしている。
タナカ先輩の悪い影響が出ている。コモリはバカにした感じで、はぁとため息をつく。それを悔しいとすら思えない。

タナカ先輩はと言えば。連休前に彼の過去を知って、自分でも驚くくらいまったく興味のない話で、やっぱり彼と仲睦まじくなるのはムリなような気がした。

結局、先輩はお金持ちの家に生まれて、将来も約束されていて。それなのにそのレールに乗ることから逃げてるだけの、ワガママな子どものように思えてしまったのだ。

一方コモリは、彼が読モ時代を「黒歴史」だと片づけても、やっぱり憧れは消えていなくて。
あれから、日々先輩のことを追っかけているらしい。

「早く押し倒して、キスとかしちゃえばいいのに」

ふいに言うと、コーヒーをすすっている最中だったコモリは漫画みたいにむせた。ぶっふぉっ、ぶっふぉっ。ふだんのお嬢様口調が台無しになってしまうような野太い咳こみ方だ。


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