ガウチョパンツとUFO【彼氏の顔が覚えられません 第30話】
6月。「こんな雨の中、みんな来てくれてサンキュー!!」なんて、黄色いモヒカン頭の集団の一人がマイクを振り上げて言う。
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力強さを感じるパフォーマンスだけど、「サンキュー」の「キュ」のところで先走ってマイクを口から放したのはよくなかった。スピーカーから出た声は「サンキュッ…!!」と尻すぼみになってしまった。デニムのホットパンツを履いたお尻まで、きゅっ、と引き締まったように見えた。
カズヤから誘われたライヴハウスにいる。こぢんまりとして、30人くらい入ったらいっぱいになってしまいそうなところ。お客同士の体が密着するくらい近いし、ステージとの間も演奏者のツバがかかるくらい。
アットホームと言えば聞こえはいいかも。
入り口にたくさんのアーティストのライヴ告知ポスターが貼られていたけど、聞いたことのないアーティストばかりだった。ケジラミンとか、69セントとか、ボークビッチーズとか。どれもユニット名にイロモノ臭しかしないけれど、意外に顔は整って――つまり、私にはまったくのぺらぼうに見えた。
ちなみにカズヤの出番の一つ前のウッドストックみたいな頭をした連中は、スーパーマリオネットワールドとかいう名前だった。どのへんがスーパーなのか、マリオネットなのかということはぜんぜんわからなかった。まぁ、バンド名なんてみんなノリで付けてるんだろう。
で、そのスーパーマーケット…じゃない、パペットマペット…って、あれ、どれが正しいんっだっけ。
ともあれ、そんな感じのホットパンツ連中がはけた後で、隣のコモリが言った。