チューバと元カノ【彼氏の顔が覚えられません 第31話】
――そして、ライヴ当日。いよいよカズヤの出番だ。
出てきたのは、二人のフォークギタリスト。背の低いややぽっちゃり系の女性と、もうひとりはピンク色のウサギ。
そう、ウサギだ。頭にでかいウサギの着ぐるみをかぶったやつが現れた。首から下は、Tシャツとジーパンという格好。さすがに、体にまで着ぐるみにすると楽器が持てないからだろうが、すごくシュールなものに仕上がってる。
「えぇ…みなさん、こんばんはー。初めて舞台に立たせていただきましたー。"178(イナバ)ライダー"でーす」
しゃべったのは、ぽっちゃり系の女子。声でマナミだとわかった。“ずっとギター友達だよ”。いつかのカズヤのセリフがよみがえってきた。あの言葉、本当だったのだろうか?
ウサギの方は…たぶんあれがカズヤなんだろうけど、何にも言わない。「ご紹介しまーす。
私の相方の…というか、マスコットキャラクターの、178(イナバ)ちゃんですー。そして私が、キユーピー・マナミでーす。よっろしっくねー」ぜんぶ、マナミがしゃべってる。
どうしよう。178ちゃんはともかく、キューピー・マナミって。そのセンスどうなの。間柄はともかく、自分の知り合いが舞台の上で醜態さらしてるのって、恥ずかしくてどうしようもない。いますぐ帰りたい。
「へぇ、シノザキ先輩とユニット組まれたんですのね…」
と、コモリ。シノザキって…あぁ、思い出した。マナミの苗字…。
てか、あいつも付属かよ。
(つづく)
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