俺の懺悔を聴いてくれ【彼氏の顔が覚えられません 第33話】

人は恋をするとき、相手のどこにホレるのだろう。顔が7割、心はたった3割だなんて話も聞くが、もし相手の顔がまったくわからなかったらどうなるのか。

俺の懺悔を聴いてくれ【彼氏の顔が覚えられません 第33話】

(c)tom1962 - Fotolia.com


そんな相手に好かれたとしたら、それほど誇らしいことはないと思っていた。純粋に、心だけを見て判断してくれているのだから。だけど今は、いろいろ悩みを抱えてしまっている。

俺の恋人、イズミはまさに人の顔を覚えられない。失顔症という、ブラッドピットなんかと同じ病を抱えているそうだ。

***

せまいライヴハウスの中、再び俺は客としてきてくれた彼女、イズミと対面することができた。


うさぎを脱ぎ捨てたタイミングは、少々早すぎたかもしれない。ガマンの限界だった。すぐにでも彼女に俺の姿を見せたかった。

だが俺が顔を出した瞬間、彼女は後ろを向いて逃げるような姿勢を取った。周りの客に阻まれ、実際にはどうすることもできなかったが、俺を前にしてイヤがっているのは明らかだった。

「一回、イズミに全力で嫌われてみたらいいのに」

半年前シノザキにそうそそのかされてから、今までいろんなことがあった。テキトーだと言われても、それこそが俺の生き方だと思っていたのに。そのテキトーさ加減にここまで絶望してきたことは人生で初めてだ。


けれどすべての失敗は、きょうこの日のためにあるのだと思う。これから彼女の心を取り戻してみせる。いま渾身のラブソングを彼女に捧げ、そして――。
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