キミがすきでも不釣り合い【彼氏の顔が覚えられません 第34話】
一瞬、意味がわからなかった。少しだけ頭を整理し、
「え、付属?」
「そう、付属高校。部活も一緒だった」
「…マジ? 吹奏楽? 楽器は」
「コンバスだよ、コントラバス。同じバスパート! いい加減思い出せコノヤロウ!」
顔面にベチョッとお手拭きを投げつけられる。うぅ…それでようやく思い出した。シノザキマナミ、たしかにそんな名前だった。
「シノザキって、そんなだったっけ…昔はメガネで、もっとこう、その、なんというか…」
「太ってた、って言いたいんでしょ? ダイエットしたの!」
えぇ…まだ少しポッチャリ感は残っているが、それでも記憶とはだいぶかけ離れていた。低い身長ながら横だけやたら広くて、ひょっとしたら100キロ超えてるんじゃないかと思うくらいだったのだ。
それに顔も、よくよく見るとイズミほどじゃないにしても整っている。ちょっと前に放送してた、マツコデラックスの痩せた姿が出てくるテレビCMみたいな感じ。肉が削げるだけでこんなになるとは。
「へぇ…人って、変われるもんだな…」
ついそんな言葉が口から漏れる。
「ふーん、タニムラくんはぜんぜん変わんないもんね。相変わらずチャラくてテキトーな感じが」
…。
はいはい、どうせ詐欺師みたいな顔だよ。新宿スワンならぬ渋谷スワンですよ。
話をもどす。
「結局シノザキが言いたいのは、そんなチャラい俺はイズミと釣り合わないって、そういうことか?」
「いや、言ってないけど。そう思ってるんでしょ? 自分自身で」
また閉口してしまう。いちいち人の心をえぐるようなことを言ってくるやつだ。確かに俺自身がそう、心のどこかでイズミにおびえていたのかもしれない。
クリスマスイブも、大晦日も、本当はイズミと一緒にすごそうと思えば可能だったのだ。それなのに、言い訳のように部活の集まりやバイトを入れてしまった。
まったくもって、ぜんぶシノザキが指摘する通りだ。
(つづく)
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