モテる男の破局は早い【彼氏の顔が覚えられません 第39話】
か、カノジョ!? 早い!! 年末に別れたばかりって思ってたら…。
「誰すか、誰すか!? ちょっと水くさいじゃないっすか。教えてくださいよ! ささ、早くトイレ出て!!」
「わ、ちょ、押すな! 押すなよっ!!」
顔をふくのも忘れ、先輩とトイレの外に飛び出す。と、そこで、見たことある顔の女性に出くわし、ぎょっとする。
「あれ…タニムラくん!?」
「え、ちょ、先輩…!?」
また、だ。相手は軽音部の先輩。部内恋愛禁止が聞いて呆れる。
「た、頼む、カズヤ! このことは、他の部員にはナイショにしててくれっ…お願いだ!!」
「あ、ハイ。
誰にも言いませんけど…」
逃げるように、俺の元から離れていく二人。その後ろ姿を見ながら、ボソッとつぶやく。
「自分たちでも、せいぜいバレないようにしろよ…まぁ、無理だろうけど」
年末に別れた女性も、結局バレたから破局したようなものだ。元・読者モデルだったとかで、何だかんだ女性ファンの多い先輩。部員の女子も、先輩のファンで入部したような輩がけっこういたりする。
そしてやつらは恐ろしいことに、誰か一人でも抜け駆けしようものなら総攻撃をしかける。タナカ先輩と破局させるどころか、退部にまで追いやる。
さっきの女性の先輩も、攻撃に耐えられそうなメンタルには思えない。
集団の中で、迎合してしまうようなタイプだ。どんな手違いで先輩とデキてしまったのかは知らないが、4月中に別れるのは目に見えている。もっと我の強い女性じゃなきゃ、先輩とは長続きしない。
そんな女性、いるだろうか…ふと思い出せるのは、高校時代の後輩のコモリ。あれくらい高飛車なやつなら、ひょっとしたらうまくやっていけるかもしれない。ただこの時点では、コモリが今年、うちの大学に進学してくるかどうかもわかっていない。
…なんて、人の心配より、自分の心配だよな。
俺はしっかり顔をふき、マナミの元へ戻る。
彼女に言うべきことがある。その内容は、もう決まっている。
(つづく)
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