既読スルーより切ないもの【彼氏の顔が覚えられません 第41話】


3月にLINEで送ったデートの誘いを既読スルーされるぐらいは、まだよかった。もともとイズミの返事は遅い。いまどきスマホじゃなくて、折り畳み式のガラケーだし。

だが、4月。学校の食堂で再会し、水をぶっかけられたのはさすがに堪えた。もう完全に破局じゃないか。原因を作ったのは、その日、隣の席にいたマナミだ。

「あ、イズミ…!」

なんて、あろうことか俺らの存在を、そばに座っているイズミにわざとらしくアピールして。
結果、顔から水を滴らせている俺と、びしゃびしゃになったカレーライスができあがった。

もともとマナミと一緒になんて食事してなかった。学校が再開して、一週間ぐらいはずっと一人で食べていた。

イズミは、食堂で俺とすれ違っても無視した。いや、気づかなかっただけなのだが。無視だったとしても、仕方ない。俺はそうされるだけのことをしでかしてきたのだ。

だが諦めの悪い俺は、イズミが座って飯を食う場所から椅子1個分空けて隣とか、正面から1個だけズレた前の席とか、いつも近くに座り、なんとか話しかけるタイミングを伺っていた。
そんな折りの出来事だった。

まぁ、またこんな風にグズってるのが悪かったんだろうな…。マナミのやつ「おっ待たせー」なんて、何の前触れもなくやってきたかと思うと急に抱きついてきて…だれも待ってねぇよ!

「これで完全にひとりぼっちね。いい気味」

にたぁ、と笑うマナミ。なんて嫌な女なんだ…。

目の前にある、まったく食欲のわかない水浸しのカレーライスを、ヤケ食いしながらそう思った。

(つづく)

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