正しい復縁の方法など無い【彼氏の顔が覚えられません 第42話】
少なくとも、以前みたいな色仕掛けは使ってこない。代わりに、俺に対する暴力が後を絶たない。片思いの相手から、ただのサンドバックかよ…。
「6月、ライヴに出るわよ! 私と二人で。そこにイズミも呼ぶの。カズヤのホンキ見せて、もう一度アタックしなさいよ!」
ちょ、なんの前フリもナシかよ。
「なんで一緒に出なきゃなんねぇんだよ。お前と組んだら、またイズミに嫌われんじゃ…」
「逆でしょ。
むしろ、ちゃんと組んでやるべきよ。なんたって私たち、ただの"ギター友達"なんだし」
それは俺が言ったセリフ…よく覚えてやがる。
「でもお前、ギター弾き始めたばっかじゃ…」
言い終わるより早く、マナミはフォークギターをかき鳴らす。ゆずの「夏色」のイントロを。そのときのドヤ顔…一瞬、殴ろうかと思いたくなるようなふてぶてしい表情だった。もう、俺より上手いじゃないか…。
「私、元コンバス奏者よ。見くびらないでよね」
同じ弦楽器だし…って、そんな問題か? まぁ、ワンマンは無理だろうが、フォークライヴのいちアーティストとして出場するくらいなら、可能性アリかも。
それに、イズミにもう一度アタックするためのホンキの見せ場なんて、もう音楽しか無いじゃないか。
こうして、俺とマナミによるギターコンビが誕生したのだった。その名は"178(イナバ)ライダー"。名前の由来? そんなもの…あるわけないだろ。
(つづく)
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