みなさん、こんばんは。ライターの大宮冬洋です。今回は都心にある個室居酒屋に来ています。
30歳前後の男女が合コンやデートをして、お会計は男性5000円・女性2000円でちょうどいい、といった若々しい雰囲気のお店です。
今夜のお相手は、イベント企画会社で企画職をしている吉田真弓さん(仮名、34歳)。
イラスト/ちゃず
ボブカットとキレイめのスウェット姿が大人っぽい印象を与えますが、よく見るとお化粧はほとんどしていません。吉瀬美智子風の顔立ちがもったいない、と僕は思います。
「今日は外回りがあったのでこんな格好をしていますが、社内だけで仕事が済むときはTシャツとパーカーです。
メイクは面倒臭いし苦手です。とくに、目の周りはすぐにかゆくなってしまいます。マツエクをしてもらったこともありますが、寝ているうちにかいてとれちゃった。カイカイカィーってなっちゃうんですよね」
カィーという表現が自分でおかしかったのか、エヘヘヘとあけっぴろげに笑う真弓さん。30代女性なのに美少年のような色気があります。
僕とは共通の知人がいて(その女性の紹介で会っています)、いい雰囲気の店でアルコールも入ったので、早くも気を許したのかもしれません。ちょっと危ない女性だなあ。
真弓さんは自らの恋愛を振り返って「ダメな女」「バカな女」だと自嘲します。
その原点は学生時代にあるそうです。
■10年たっても忘れられない、仏様のような元カレ
「仏様のような人格者の彼と出会い、4年間つきあいました。彼と結婚するつもりだったので、甘い物好きの私は製菓の専門学校に入り直し、ケーキ職人を目指したんです。『いずれ養ってもらうんだから、私は好きなことをやっていればいいんだ』という考えでしたね。
でも、あの頃は最高に調子に乗っていたし、就職したチェーンのケーキ店が安月給かつ忙しすぎて頭がフワッフワして、優しくしてくれた男性の家に泊まりに行ったりしてしまいました。
度重なるとさすがのホトケも許してくれません。つきあいきれない、と言われてしまいました。私は、10年たつ今でも彼のことを忘れられないバカな女です」
失恋と同時にケーキ店は退職し、現実を見つめられるようになった真弓さん。
学生時代にやっていたプロバイダーでのアルバイト経験をいかしてウェブ関連の仕事を見つけ、現在の職種にもつながるITスキルを身に着けてキャリアを重ねています。
挫折を経験し、押しつぶされてしまう人もいますが、真弓さんのように自分を鍛え直すきっかけにできる人もいますよね。少なくとも仕事面では立派な社会人になったようです。