アディダスが、海洋環境保護に取り組むパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(Parley for the Oceans)とのパートナーシップを記念したコンセプトシューズを発表した。6月29日、国連本部では専門家や科学者、起業家やクリエイターを集めて海洋をとりまく現状などについて語り合うイベントが行われた。その中でアディダスは、パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズとのコラボレーションをきっかけに誕生したユニークな試作品を披露。海洋廃棄物や違法に設置された深海の刺し網より回収・再利用した糸と繊維のみで100%作られた世界初のシューズ・アッパーを発表した。使用された刺し網は、パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズのパートナー組織でもある海洋生物保護のための環境保護団体シー・シェパードが、非合法の密漁船を110日間にもわたって追跡し続けた結果、ようやく西アフリカ沖合で回収するに至ったものだ。今回発表されたコンセプトシューズは、今年下半期の発表が予定されている海洋プラスチック廃棄物を再利用した一般消費者向け製品に先がけて、アディダスとパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズが目指す方向性を示すものとなっている。パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズの創設者であるシリル・グッチ氏は「アディダスが私たちの掲げるミッションへの参加を表明し、その創造力をもって私たちのパートナーシップを支援してくれていること、海洋プラスチック廃棄物もクールなものへと変化させられると示していることを、私たちはこの上なく誇らしく思っています」とコメントしている。
2015年07月09日パイ インターナショナルは7月13日、海洋写真家・古見きゅう氏の写真集『THE SEVEN SEAS』(1,900円・税別)を発売した。古見氏は、独特な視点から海の美しさやユニークな生き物の姿を追い続け、『ナショナルジオグラフィック』誌などの雑誌や新聞で作品を発表しているという。その姿は、テレビ番組『情熱大陸』(TBS系)にも取り上げられた。同書では、インド洋や南太平洋、日本海、南極海など、同氏が旅した世界の9つの海洋を地域別に紹介する。同氏の集大成とも言える写真集となっており、サンゴ礁やアザラシなどの海洋生物、クジラやサメなどの姿も収録しているとのこと。また、8月1日には、「湘南 蔦屋書店」(神奈川県藤沢市)にて同書の発売記念トークとサイン会を行う。水中写真家の鍵井靖章氏を特別ゲストに迎え、互いの作品を鑑賞しながら対談するとのこと。開催時間は18:00~20:00。申し込み方法など、詳細は湘南T-SITEの公式サイトにて。
2015年07月03日AmazingLifeは18日、安価で散骨を委託できるサービス「シンプル葬の海洋散骨」の提供を開始した。料金は4万9,000円(税別)、追加料金は不要。同サービスは、遺骨の送料から粉骨、散骨の供養まで、全て含まれているパッケージプラン。インターネット、スマートフォンまたは電話で、沖縄、湘南(神奈川)、博多湾(福岡)の3海域から希望の海域を選択し、依頼後ゆうパック着払いで遺骨を送ると、後はスタッフが遺族に代わって散骨する。なお、散骨日時は不定期となる。自身の手で直接散骨を希望する遺族向けに「シンプル葬の合同海洋散骨」を用意する。料金は14万9,000円(税抜)。また、ペット散骨も人間同様の価格・サービス内容で受け付ける。近年、少子高齢化に伴い、墓の維持・管理が困難になっているとともに、宗教離れや価値観の変化などより、従来型の墓に入るという選択を取らない人が増加している。また、遺族が高齢者である場合、海洋散骨の要望を持っていても、実際に自身が乗船し、沖合まで行って散骨をするという事が難しい人も多く、委託型の海洋散骨サービスのニーズは高まっているという。このような時代の変化や、同社の火葬式・直葬サービス「シンプル火葬」や家族葬サービス「シンプル葬」の利用者からの要望に対応するために、今回、海洋散骨サービスの提供を開始することを決定したとしている。
2015年06月18日沖縄県の海洋博公園は6月27日、美ら海自然教室「ウミガメの秘密を探る」を開催する。○ウミガメの形態や生態、取り巻く環境を紹介同イベントでは、ウミガメについて形態や生態を紹介しながら、沖縄県内での産卵情報やウミガメを取り巻く環境の現状について、講師の鈴木瑞穂氏(一般財団法人 沖縄美ら島財団)がわかりやすく解説。現在、参加者を募集中。開催日時は、6月27日 10時~10時30分。場所は、総合休憩所(美ら海プラザ)。定員は40名。料金は無料。
2015年06月02日コラートの街中をブラブラする機会があったら、コラートの人々の敬愛するヤー・モーさんに是非お参りを。コラートのジャンヌダルク「タオ・スラナリ」タオ・スラナリ像(通称ヤー・モーさん)はコラートのジャンヌダルクとも言われ、コラートを守った女性としてとして敬愛されるスラナリ女史の像です。昔、隣国が攻め込んできたときに王様が留守中で彼女が敵軍を酔い潰して撃退したそう。「ヤー・モーさんの後ろの門をくぐるとまたコラートに戻って来られる」とか、「コラートの門を通ってぐるっと回って戻ると子宝に恵まれる?」とかローカルジンクスも色々ありますよ。にぎやかなスラナリ広場像は旧市街の真ん中の広場にあり、いつも絶えずお参りに来る人で賑わっています。週末や何か行事がある度にこの広場にも市場が出たり、ステージでダンスのショーが行われたり、若者がスケボーの練習をしていたりとローカルの生活感たっぷり。筆者もたまにこのあたりをブラブラしながら、タイ地方都市に暮らす人々の暮らしぶりを感じています。コラートの観光、グルメ、その他情報はこちら!
2015年02月19日遠いと思っていた旅先も、ルートの取り方によって案外、楽ちんに行けたりします。たとえば、タイのとあるビーチに行きたいと思ったら、通常、国際空港のあるバンコクを起点にアクセス方を調べるでしょう。それをちょっと視点を変えて隣国からアプローチしてみる。すると、カンタンかつ時短になるルートがあったりします。そんな裏ワザ的なアクセス方法をご紹介します。■リペ島(タイ)タルタオ海洋公園に属し、タイの最南端に位置するリペ島。バンコクからは国内線、陸路、海路と乗り継ぎ、ほぼ1日がかりの移動になるため、”秘島”や”最後の楽園”と言われています。が、マレーシアのランカウイ島からは高速船で約1時間+ロングテールボート約10分。リペ島のビーチには入国審査場とは思えないほど簡易な小屋が立っています。リペ島はボートで一周約1時間程度の小さな島。メインビーチは、パタヤビーチとサンライズビーチ。格安バンガローからデザイン系までステイ先が揃っています。そしてタイの島特有のゆるりとしたレイドバック感も上々な島です。—————————————————————テラガターミナルTelaga Terminal(ランカウイ島)—————————————————————■プエルトプリンセサ(フィリピン)フィリピン南西部のパラワン島中部にあるプエルトプリンセサ。通常マニラまたはセブから国内線で約1時間10~20分でアプローチします。裏ワザとしては2015年2月までの期間限定のクルーズをご提案。スーパースター アクエリアスのコタキナバル(マレーシア)―プエルトプリンセサの3泊4日クルーズでは、洋上のホテルライフを満喫しながら、アプローチできます。コタキナバルまで行く点はやや面倒かもしれませんが、そこからは船旅ですので、スーツケースの移動などの厄介はなし!プエルトプリンセサは「コーラルトライアングル」と呼ばれるサンゴや海洋生物が豊富な海域に面したダイビングスポット。そして世界自然遺産にして新・世界七不思議のプエルトプリンセサ地下河川国立公園への拠点です。鍾乳洞がにょきにょきと垂れさがった洞窟を進むアドベンチャー気分満点の体験ができます。—————————————————————スーパースター アクエリアスSuperStar Aquariusコタキナバル―プエルトプリンセサ3泊4日クルーズ期間:2014年11月8日~2015年2月8日出航料金:3万3700円~(1名あたり、諸税別途)日本での問い合わせ先:スタークルーズ日本オフィスTEL 03-6403-5188—————————————————————■ビンタン島(インドネシア)スマトラ島東のリアウ諸島に属するインドネシアのビンタン島。ジャカルタから行こうとすれば、国内線で約1時間30分。これは王道かもしれませんが、シンガポールからはフェリーで約1時間。搭乗待ちと乗船待ちでは、時間の長さも気楽さも違います。シンガポールからふらりと日帰りで訪れることもできます。ビンタン島はインドネシアとシンガポールの両政府が手を組み開発したリゾートアイランド。ゴルフコースやスパなどを備えたリゾートホテルもあります。©Banyan Tree Bintan—————————————————————ビンタン・リゾート・フェリーBintan Resort Ferries—————————————————————■ギリ3島(インドネシア)ギリ3島はロンボク島の南西に位置する3つの島。こちらは同じ国内の移動ですが、ロンボク島内を移動するよりも、実はバリ島のべノア港からギリ3島のひとつのギリ・トラワンガンへボートで直行した方が楽(複数社が運航)。ロンボク国際空港からだと、陸路1時間後に船で約10分。一方、バリ島べノア港からは約2時間30分。一見、ロンボク島ルートの方が便利そうに見えますが、ジャカルタまたはバリ島から国内線で渡ること、空港から車や船に乗り換えることを考えると、ダイレクトに船で行ってしまう方がストレスフリーなのです。ギリ3島はかつてバックパッカーに見出された絶景アイランド。トラワンガン、アイル、メノーの3つの島からなります。このうち、ギリ・トラワンガンにはブティック系リゾートも(とはいえ、ほとんどが海水や井戸水シャワーです)。より濃厚な熱帯の自然を求めるなら、ギリ・メノーへ!—————————————————————GILI PARADISEバリ島―ギリ・トラワンガン間のボート会社を紹介しています。—————————————————————(text: 古関千恵子)
2014年12月25日「海洋博公園・総合休憩所(美ら海プラザ)」にて、美ら海自然教室「魚の体のしくみ」を開催する。○身近な生き物「魚」を観察「海洋博公園」では、11月15日の13時30分から14時まで、総合休憩所(美ら海プラザ)にて、美ら海自然教室「魚の体のしくみ」を開催する。「標本の観察」を交えながら、ヒレやウロコ、体の構造や機能まで、身近な生き物「魚」をじっくり観察できる。参加料金は無料。ただ今、参加者募集中。申し込みは「海洋博公園管理センター」まで。「海洋博公園」は、沖縄自動車道許田ICより約50分。公園への入園料金は無料。「沖縄美ら海水族館」等、有料施設の料金案内は「海洋博公園」ホームページにて。
2014年11月04日沖縄県メモリアル整備協会とリウゼン、リンク&パートナーズはこのほど、沖縄での永代供養や海洋散骨を視察・体験できる2泊3日の見学ツアー参加者の募集を開始した。第一生命経済研究所の調査によると、自分の「お墓はいらない」と考える人は20.5%に達しているという(国民生活センター「国民生活」2014年8月号より)。お墓の束縛がなくなる中、自分の好きな土地やふるさとで永代供養や海洋散骨を望む声が高まっており、沖縄をその地として希望する人が増えている。沖縄県メモリアル整備協会が運営する永代供養墓「おきなわ霊廟」でも、最近では新規契約者のうち約1割を県外在住者が占めるという。そのような背景を受け、このほど沖縄での供養を望む人をサポートするためのプロジェクト「オキナワン・ライフエンディングステージ」の一環として同ツアーを実施する。羽田空港を出発し、沖縄の美しい海に面した永代供養墓の視察、クルーズ船に乗っての海洋散骨の模擬体験、終活カウンセラーによる相談会などを予定している。また、沖縄平和祈念公園や琉球ガラス村など沖縄名所の観光も組み込まれており、ツアー参加者同士の交流会も行う。ツアー日程は12月1日~3日(2泊3日)。価格は5万2,800円(税込/2名1室の場合)。羽田空港発だけではなく、関西空港発も予定している。
2014年10月29日海洋博公園は、10月18日13時30分より30分間、美ら海自然教室「ヤシガニ学習会」を開催する。○希少動物ヤシガニヤシガニは、オカヤドカリに近縁な陸生最大の甲殻類。日本では奄美諸島以南に生息し、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)とされている。学習会では、ヤシガニの置かれている現状や生態について、本物を観察しながら学ぶことができる。参加は無料。申し込みは海洋博公園管理センターのイベント・広報担当まで。「海洋博公園」は、沖縄自動車道許田ICより約50分。入園料は、無料(一部有料施設あり)。営業時間など詳細は、海洋博公園ホームページにて。
2014年10月17日レアアースの供給問題などで、日本独自の海洋資源が注目を集めています。この海洋資源は、しかし、簡単に利用できるようにはなりません。日本の海洋資源探査はどのように進んでいるのでしょうか。JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、金属資源技術部 運航計画課長の大岡隆さんにお話を伺いました。JOGMECは独立行政法人で、石油や天然ガス、鉱物資源となる鉱床の調査、開発、備蓄などの業務を行っています。■深海底資源には主に3種類ある――日本の海洋に眠る資源調査というのはいつぐらいから行われているのでしょうか?大岡課長1975年ごろから取り組まれています。初めは『白嶺丸』(ルビ:はくれいまる)という調査船で資源調査を始めました。経済産業省の指針でもともとは「マンガン団塊」の探査を主としていました。――マンガン団塊というのは何ですか?大岡課長深海底鉱物資源のひとつです。直径2-15cmぐらいの、楕円形の塊で、水深4,000-6,000mの海底の表面にバラバラとあります。その名の通り、マンガンを多く含んでいますが、銅を含んでいて、将来の資源として期待されています。――かなり大事な資源なのでしょうか?大岡課長マンガン団塊は深海底にありますが、陸上の鉱床に比べても引けを取らないほど銅などを含有しているので有望な資源です。ちなみに、深海底鉱物資源というのは、大きく3つに分けられます。「海底熱水鉱床」「マンガン団塊」「コバルト・リッチ・クラスト」です。――「海底熱水鉱床」「コバルト・リッチ・クラスト」は、それぞれどのようなものですか?大岡課長海底熱水鉱床は、海底から熱水が噴き出す場所に金属成分が沈殿してできます。これは火山活動の活発なところで見られるものですね。日本の周辺では水深が700-2,000mくらいの海底です。銅、鉛、亜鉛などのベースメタルと呼ばれる金属や金、銀なども含んでいます。コバルト・リッチ・クラストは水深800-2,400mくらいの所にあります。マンガン団塊に似て、鉄、マンガンの酸化物ですが、海山の斜面や頂き部分を、厚さ数mm-数10cmで、まるでアスファルトのように覆っています。マンガン団塊よりもコバルトの品位が約3倍で、白金を含むのが特徴です。――なるほど。高品位かどうかも問題なのですね。当初、マンガン団塊の調査が先行して開始されたということは、マンガン団塊が最も有望だったのでしょうか?大岡課長そうですね。ほかの海底資源が当時まだあまり知られていなかったことや、水深4,000-6,000mの深海にあるものの海底の表面に転がっていますので採掘しやすいと目されたこともその要因ですね。1981年に就航した『第2白嶺丸』という船は、マンガン団塊専門の調査船でした。■資源量の推定は地道な作業!――深海資源の資源量の推定というのはどうやって行うのでしょうか?大岡課長まず調査する領域を方眼紙のようにグリッドで区切ります。そして、この縦の線、横の線の「交点」の部分を順番に掘削して、どんな鉱石が出るかを調査していくんです。そうすると、各交点で、地下何mで何が出たとか何もなかったとかという情報が集まります。すると、探査する領域の鉱床の3Dマップができますよね。そうして初めて全体の資源量の推定ができるのです。――それは、ものすごく地道な作業で、しかも時間がかかるのでは?大岡課長その通りです。――そのグリッドの目、つまり方眼のサイズはどのくらいなのですか?大岡課長それは鉱床の種類や調査の目的によっていろいろなんです。まったく見当もつかない場合の調査では、例えば5kmなどの間隔から絞っていくこともありますし、もっと細かく探査する場合には、200mあるいは100mとか50mなどの場合もあります。――では、鉱物の資源量というのは、そんなに簡単にわかるものではないのですね。大岡課長そうです。緻密(ちみつ)に調査を積み上げて調査内容を精査した結果、初めて言えるものなんです。――ということは、海底をすごく一生懸命あっちこっち掘らないといけないということですか?大岡課長そうなんですよ(笑)。実は私も先週まで『白嶺』に乗って、調査航海に同行していたんです。――『白嶺』というのはどのような調査に使う船でしょうか?大岡課長主に深海底鉱物資源の調査に使用しますが、岩石のサンプリング機能を主目的に強化した船です。日本で唯一隻の海洋資源調査船です。最新式の船で、2012年に就航したばかりなんですよ。■日本の技術の粋を凝らした『白嶺』――白嶺は最新の海洋資源調査船だそうですが、どのような点が優れているのでしょうか。大岡課長まず、『白嶺』は最初から、設計段階から海洋資源調査のために特化して作られた船だということです。例えば、船の形を見てください。船体の前半分に上部構造物(船の居室や研究室等)のほとんどを置いて、後ろ半分は探査用のワークデッキになるように設計されています。また船体中央にムーンプールがあります。ムーンプールというのは船体の「開口部」のことで、ここから掘削用の大型機材などを海底に降ろします。――船体に穴があいてるんですね。大岡課長ええ。普段は閉じておくことも可能です。このムーンプールが中央にあることがとても大事なんです。船が一番揺れないのは中央です。掘削機をできるだけ揺らさないで海中に降ろしたり、揚げたりするには、この配置が最適なんですよ。――『第2白嶺丸』よりも大型化したとのことですが?大岡課長ええ。それにも理由があります。最新の調査機器が電力を食うのと大型の機材を置くスペースがないんですね。小さい船体だと、エンジンも小さいので、そこから取れる電力も小さくなってしまうんです。ですから、必然的に船体を大きくし出力を大きくしなければならなかったんですよ。■「東に1m動く」ことも可能な白嶺大岡課長またエンジンがとても変わっています。『白嶺』のエンジンは、ほかの船のように直接スクリューシャフトにはつながっていません。発電機につながっているんです。発電機から、電線を船首と船尾に伸ばして、船尾の2基のアジマス推進機、船首の3基のバウスラスターを動かします。このような船を電気推進船といいます。アジマス推進機は360度回転できますし、艦首3基のバウスラスターの内の1基は昇降式で、これも360度回転できます。この推進系のおかげで、『白嶺』は真横に動いたりできるんですよ。――バウスラスターって何ですか?大岡課長バウスラスターというのは、船首の船体を左右に貫通するトンネルを用意して、そこにスクリューを設置します。これを回転させて、左右どちらへも推進力を得られます。最近の船には付いていることが多い装備で、左右方向への移動を容易にします。――なるほど。これらの工夫はどんな時に役立つんですか?大岡課長掘削機を海底に下ろして作業をしている間、船は静止していなければなりません。日本の周囲には黒潮という非常に強い潮流があって、それに耐えてその場に静止しているのはとても難しいことなんです。この『白嶺』ではそれが非常に楽になりました。GPSと連動して、海図で示された1点に静止することを自動制御で行えます。これはこの推進システムがあるからで、例えば「東に1m」なんて指示でも、ジョイスティック1本でやってのけられるのです。――それはスゴイ!大岡課長このほかにもエコに留意した工夫をしています。太陽発電パネルを備えているのは官公庁の船としては初めてのことですし、船内の照明はLEDになっています。最初はコストが少しかかりますが、メンテナンスフリーであるためトータルの維持コストを低く抑えることができます。ほかにも「バラスト水の殺菌装置」を持っているのも官公庁の船としては初めてでしょう。■資源調査は、調達先の多元化のため――日本の海洋資源調査は現在どんな段階にあるんでしょうか?大岡課長平成21年3月に経済産業省が定めた「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の中の「海底熱水鉱床の開発計画」によりますと、2008年~2012年が第1期です。私たち、JOGMECが経済産業省から委託を受けて、資源量評価、環境影響評価、採鉱技術、選鉱・製錬技術の4つのテーマそれぞれに取り組んできました。間もなく第1期最終評価を完了します。――では、今その追い込み作業ですね。大岡課長ええ。ですので『白嶺』も大活躍です。1年の内300日も海に出ています。――第2期はどうなるのでしょうか?大岡課長第2期は2018年までで、「コスト計算と経済性の評価」を行い、海底熱水鉱床開発の商業化のメドを立てることを目標としています。――すると実際に海底鉱山として稼働するのはもう少し先になりそうですね。大岡課長そうですね。こういう資源開発というのは非常にハイリスクなものです。陸上でも鉱山を開業するとなると15年から20年程度がかかります。また閉山もそう簡単にはできません。環境のことを考慮して開発や後始末をしないといけません。――大変長い時間のかかる、またハイリスクな仕事ですが、海洋資源の開発にはどういう意味があるのでしょうか。大岡課長やはり日本は資源のない国ですから。資源を獲得するための努力を欠かすことはできません。調達先を複数用意すると言いますか、資源獲得を多元的に行うことが大事だと思います。もちろん自分たちのEEZ(排他的経済水域)内で調達できるに越したことはありませんから、そのために私たちは努力しています。日本の海洋資源は豊富と言われたりしますが、本当にそうなのかは、『白嶺』の活躍、それに乗り組んだ人々、調査・開発に従事する人々のたゆまぬ努力によって、これから本格的に明らかになるのです。楽しみですね。(高橋モータース@dcp)JOGMECのサイト*アジマス推進機……見た目はまるでマブチ製の水中モーターのような推進機。白嶺はこれを船尾に2基備えている。*バラスト水……船のバランスを取るために船底に重しとして積む水のこと。海水を取り込んで使うのだが、荷物を積んだ際には、この水は海へ放出する。しかし、これが現在問題になっており、このバラスト水の中に入った生物が外来種としてよその国の港、海で繁殖する原因になっていると言われている。バラスト水の殺菌装置は、そんなことのないように装備されている。
2012年12月23日