妊娠して徐々におなかが大きくなってくると、今までのような体勢で眠ることが難しくなるかもしれません。おなかが大きくなるにつれて苦しくなる体勢のひとつが仰向けです。ここでは、仰向けはいつまでできるのか、胎児に影響はないのか、また、妊娠中におすすめの寝方について紹介していきます。 妊婦の仰向け寝で起こる症状妊婦が仰向け寝をすることによって起こる症状の代表的なものに、仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)があります。仰臥位低血圧症候群は、妊娠によって大きくなった子宮が、背骨の右側をはしる下大静脈という太い血管を圧迫することによって心臓へ戻ってくる血液の量が減少し、低血圧となり、脈が早くなる(頻脈)、気持ちが悪くなる(悪心)、吐いてしまう(嘔吐)、冷汗をかく、顔色が悪くなる(顔面蒼白)などの症状を引き起こしてしまうものです。重症の場合は意識を失ってしまうこともあります。仰臥位低血圧症候群の症状が見られた場合は、体勢を左向きにすることで症状が改善します。また、仰向けになって寝る際には、頭を少し高くして寝た方が仰臥位低血圧症候群の予防にもなります。 また仰臥位低血圧症候群のほかにも、仰向け寝をすることによって坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛を起こす可能性もあります。坐骨神経痛の症状は腰から足にかけての痺れで、重症となると歩くときに痛みを感じます。 仰向け寝が母体に与える影響と胎児に与える影響仰向けで寝ることによって、母体や胎児にどのような影響を与えるのでしょうか。 母体に与える影響は、仰臥位低血圧症候群とその症状が影響します。特に仰臥位低血圧症候群が重度となり、ショックを起こす、あるいは気を失ってしまった場合は、母体の血流量が減少し、酸素供給量も減少してしまいます。また、母体の血流量や酸素の供給量が低下すると、胎児への酸素の供給量も減少します。そうすると胎児が低酸素状態となる可能性があります。低酸素状態が続くと、母児ともに悪影響を及ぼし、場合によっては命の危険も生じる可能性があります。 妊婦の仰向け寝はいつまで大丈夫?それでは、妊婦はいつまで仰向け寝ができるのでしょうか。人は睡眠中、ずっと同じ体勢で眠り続けることはなく、無意識に寝返りをうっています。寝るときの体勢を気にするあまり寝不足になったり、苦痛を感じるような体勢で寝たりするようになっては本末転倒です。 妊娠中の仰向け寝については具体的に何週までといった決まりがありません。最近では、仰向けで寝てもあまり問題はないという研究結果もあり、仰向け寝をした際の自分の体調の変化に合わせてみたほうが良いのかもしれません。 妊娠中の時期別のおすすめの寝方妊娠中の時期別おすすめの寝方について紹介します。 ・妊娠初期妊娠初期は子宮の大きさがまだ小さいため、寝方が母体や胎児に影響を及ぼすことはほとんどありません。そのため、好きな体勢で眠っても大きな問題はないでしょう。 ・妊娠中期妊娠中期に入ると早い人ではおなかが大きくなってきます。それに伴い、仰向けで寝ることが難しくなる場合もあります。そのため、横向きなど自分が楽だと思える体勢で眠りましょう。クッションなどを使用すると楽な体勢が見つかりやすいでしょう。 ・妊娠後期妊娠後期になると仰臥位低血圧症候群のリスクが高まります。そのため、なるべく仰向けを避けた体勢が良いでしょう。また、左向きで寝ると血液だけでなくリンパ液の流れも良くなるため、妊娠中期あたりからむくみに悩まされている妊婦さんにおすすめです。さらに、頭を15~30度ほど高めにしたセミファーラー位という体勢も仰臥位低血圧症候群を予防できる体勢ですのでおすすめです。 まとめ妊婦さんが仰向け寝をすることによって、仰臥位低血圧症候群を起こす可能性があります。もちろん、妊婦さん全員に起こるものではありませんが、仰向け寝をすると症状が出てくるという場合には注意したほうが良いでしょう。妊娠初期、中期は特に眠る体勢について決まりはありませんが、おなかが大きくなる妊娠後期に向けて楽に眠れる体勢を探しておいてもよいかもしれません。 監修者・著者:助産師 REIKO医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
2019年08月19日ある夜、ふと仰向けかうつぶせか、寝る姿勢で悩んで眠れなくなってしまう場合もあるかもしれません。どちらの姿勢がよいのか、という疑問に果たして答えはあるのでしょうか。仰向けで寝るといいと言われる理由とは?あなたはいつも決まった姿勢で寝ていますか?もし姿勢によって、睡眠の質が高まったり、より健康によいということがあれば、ぜひ実践してみたいものですよね。では、今回は両者の「言い分」についてみてみましょう。仰向け派からすると、背骨を正しい形に整える効果が期待できるようです。ご存知の通り背骨は体の後ろ側にありますから、仰向けで寝ることで関節が正しい形で固定されるというのです。一方、うつぶせの体勢では顔を左右のどちらかに向けなければならないため、背骨がまっすぐにはなりません。また、寝る姿勢は歯並びや噛み合わせに少なからず影響を与えます。頭の重さや体重の圧力によって歯や顎に6~9Kgもの力がかかるといわれるうつぶせの体勢よりも、仰向けのほうがその負担を軽減できるそうです。うつぶせ姿勢での睡眠が向いていると考えられるのは?長時間にわたるデスクワークやパソコン操作で姿勢が悪くなってしまうなど腰痛が起こりやすい条件は身近にたくさんあります。うつぶせの姿勢は、腰痛に悩んでいる人に良いようです。お腹を下にして眠ることで、背骨や背中全体へ体重がかかるのを防ぐことができるため、睡眠どきの腰への負荷が軽減されるというわけです。また、うつぶせの姿勢の方が、睡眠時の呼吸をするには良いという考え方もあるようです。舌が喉をふさぐということがなく、気道が確保されやすいためです。そのため、睡眠時無呼吸症のいびきや、寝覚めがすっきりしない、眠っても疲れが取れないといった症状の軽減にうつぶせ寝は効果があると言われています。でも結局はみんな睡眠中はいろんな姿勢をしている!いかがでしたか?特に意識していなかった人も睡眠どきの姿勢が気になりはじめたのではないでしょうか。でも結果的には、どちらの体勢も「アリ」なのです。なぜなら、私たちは睡眠中に何度も寝返りをうつからです。長時間同じ姿勢で寝ていると筋肉が硬直し温度調節なども必要になるため、うつぶせや仰向けの状態を維持できないのです。何より私たちは睡眠どきの姿勢を思った通りにコントロールすることはできませんよね。眠っているうちに、体勢が変わるのは自然なこと。もし姿勢が定まらず落ち着いて眠れないときの参考程度に、お役立て下さい。photo by wideeyedwonders
2014年10月31日