●回復基調にある各社のテレビ事業 - ソニーは2四半期続けて黒字を確保電機大手8社から、2014年度第2四半期(2014年4月~9月)の連結業績が発表された。8社合計の売上高は前年同期比2.4%増の21兆8,572億円、営業利益は12.0%増の6,945億円、当期純利益は2.7%減の2,331億円となった(※各社合計数値は億単位で切り捨て合算したもの)。本稿では前編に引き続き「テレビ」「PC」「スマートフォン」のカテゴリー別に、折り返し地点を過ぎた2014年度の各社の業績をみていく。○プラズマは諦めてもテレビは残すパナソニック - 各社とも4K化に注力地デジ化以後、長いトンネルに入っていたテレビ分野ではようやく回復基調がみられている。シャープは、液晶テレビ事業を含むデジタル情報家電で売上高が前年同期比0.6%減の3,327億円、営業利益が8.8倍となる75億円を計上。そのうち、液晶テレビの販売金額は2.5%減の1,891億円、販売台数は前年同期比2.4%減の360万台となった。シャープの高橋興三社長は、「液晶テレビについては、北米と中国で販売台数を伸ばしたものの、アジアの新興国や中近東における景気減速、政情不安、国内の消費税による駆け込み需要反動の影響から台数、金額ともに前年を下回った」としながらも、「4K対応やクアトロンプロなどの大型、高精細モデルの販売強化をする。中国では4Kビジネスが加速しており、欧州でも構造改革で体制が大きく変わったことで収益性が改善されるだろう」と期待感を示した。パナソニックはアプライアンス社の業績のうち、テレビ事業の売上高が第2四半期単独で16%減の1,031億円、営業利益が22億円の赤字となった。「PDP(プラズマディスプレイパネル)事業の終息によるテレビ事業の縮小や、欧州における競合他社の価格攻勢のマイナス影響があったが、4Kテレビの販売増加、米国におけるファクトリーダイレクトモデルによる流通改革効果、パネル調達の合理化といった成果が着実に出ている」(パナソニックの河井英明代表取締役専務)という。パナソニックにとって、赤字のテレビ事業は課題事業であることに変わりはない。パナソニックでは営業利益率5%を全社目標に掲げており、各事業部にも営業利益率5%の達成を課している。だが、パナソニックの津賀一宏社長は「テレビは残す」ということを明確にした上で、「テレビ事業では、5%の営業利益を確保するのは難しいと考えている。それにもかかわらず継続する理由は、パナソニックのテレビを必要とする人がいることと、家という大きな空間においてテレビのようなデバイスが不可欠であると判断したことにある。テレビ事業は、赤字と黒字のところをフラフラしているが、どうすればテレビが残せるのかということを考えている」と語った。ソニーは、テレビを含むホームエンタテインメント&サウンド分野の売上高が前年同期比5.4%増の5,681億円、営業利益は244億円増の156億円。そのうちテレビ事業は、第1四半期の売上高が2,050億円、営業利益が79億円。第2四半期の売上高は1,997億円、営業利益は49億円。2四半期連続での黒字は2003年度第3四半期および第4四半期以来、12年ぶりとなった。「製造コスト、宣伝販促費の見直しのほか、販売会社の固定削減効果もある。過去は量を追うフェーズであったことから、マーケットで値崩れを起こしていたのが原因。市場環境が悪いところにはモノを入れないという方針にした。今回、通期見通しを100万台下方修正して1,450万台としたが、これは中南米に代表される市場環境が厳しいところに対して、数を落としたのが理由」と、ソニーの吉田憲一郎CFOは説明。「2四半期連続の黒字を達成したが、テレビは過去10年間に渡り赤字だった事業であり、引き続き慎重にみている」とした。東芝はテレビ事業の売上高が前年同期比17%減の929億円と、1,000億円を割り込んだ。販売地域の絞り込みが原因だという。だが、テレビ事業は構造改革の成果もあり、大幅に収益が改善しているという。●PCはWindows XPサポート終了に伴う駆け込み需要の反動からの建て直しがカギPC事業に関しては、Windows XPのサポート終了に伴う需要の反動が影響し、第2四半期以降の落ち込みが激しい。そのなかで、収益確保に向けた取り組みが各社の課題になっている。東芝は、PC事業の売上高が前年同期並の3,323億円。「PC事業では、構造改革費用として200億円を計上している。第1四半期に続き第2四半期は、構造改革費用を除くといずれも黒字基調であったが、安定的かつ継続的に黒字を確保するために、9月には追加の構造改革を発表。PC事業で構造改革に伴う100億円の営業外損益も計上している」(東芝の前田恵造代表執行役専務)とした上で、「為替の影響もあるが、それよりもオペレーションを改善して新製品をタイミングよく投入し、高い価値を持った段階で売り切ることの方が業績への影響が大きい。BtoBへのシフトを明確化しているが、上期で見てもBtoB事業は10%程度成長しており、PC事業におけるBtoB事業の拡大は着実に進んでいる。この分野では東芝の強みを発揮できると考えている」との見通しを示した。富士通は、ユビキタスソリューションの売上高が前年同期比7.4%増の5,139億円と伸長。営業利益も前年同期の285億円の赤字から、96億円の黒字に転換した。四半期別にみると、昨年度第4四半期からの黒字を維持し続けている。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年同期比6.0%増の3,457億円となった。PCについては「第1四半期にはWindows XPのサポート終了に伴う買い換え需要が継続していたが、第2四半期は販売が減速した。だが、上期トータルでは国内外とも増収。価格の安定化やコストダウン効果、米ドルに対するユーロ高が進んだことで、欧州拠点での調達部材のコスト低減効果もあり、採算性が改善。2桁(10億円)の黒字になった」(富士通の塚野英博執行役員常務)という。だが、2014年度通期のPC出荷計画は、7月公表値に比べて30万台減の480万台とし、年間500万台の規模を切ることになる。塚野氏は「下期の厳しい需要動向を反映して下方修正した。PCは下期、2桁でも下の方の赤字だろう」とする。「だが、コンシューマ製品であるだけに振れも大きく、上振れする期待感もある」と、上方修正への含みも持たせた。●中国での苦戦にあえぐソニー、富士通は構造改革で増益 - スマートフォンスマートフォンは、各社各様といった様相だ。モバイル事業の改革が早急の課題となっているソニーは、モバイル・コミュニケーションの売上高が前年同期比5.5%増の6,227億円、営業損益は1,961億円減の1,747億円の赤字となった。損益悪化の要因は、営業権の減損として1,760億円を計上したことに加えて、販路拡大のためのマーケティング費用や、研究開発費が増加したことを理由に挙げている。また、今回発表した業績悪化の発表を背景に、年間の出荷台数見通しを200万台下方修正し、4,100万台とした。吉田憲一郎CFOは、「中国でのスマホ事業を大幅に縮小することを軸とした1,000人の人員削減、中国市場向けの専用モデルの開発、販売の中止など、普及価格帯の製品の減少が理由。中国は世界最大のスマホ市場であり、そこのビジネスを縮小していいのかという議論も社内ではあったが、いまは業績を立て直すフェーズであるとの認識のもとにこれを決定した。将来に渡って中国市場をやらないというわけではない」と説明した。一方、11月16日付でソニーモバイルコミュニケーションズの社長に、ソニー本社で業務執行役員SVPを務める十時裕樹氏が就任することについても言及。「平井(ソニー・平井一夫社長)の期待は、各国のキャリアとの関係強化や商品力強化によって収益構造を安定、向上させ、ソニーモバイルコミュニケーションズの変革を促すことにある。すでに変革プランの策定には着手しており、11月25日にもこれを発表することになる」とした。モバイルのトップに任命された十時氏は「モバイルの収益性改善にフォーカスしていく。業界全体が速いスピードで動くなかで、経営スヒードもあげていかなくてはならない。売れるという前提に基づくのではなく、すべての製品を合理的に作り、合理的にマージンを確保するといったことが大切である。ソニーはいい商品を作る力がある。これを丁寧に磨き上げていけば、収益力が高まると考えている」とコメントした。11月25日に明らかになるソニーのモバイル・コミュニケーション事業の変革プランに注目が集まる。シャープは、デジタル情報家電事業のうち、携帯電話の販売金額は前年同期比1.8%減の859億円、販売台数は0.5%減の241万台となった。「IGZO液晶搭載や、狭額縁デザインのEDGESTを国内3キャリアへ展開するなど、高付加価値スマートフォンの市場投入や、コストダウン推進効果が損益に寄与している。売上高は前年同期を割り込むものの増益を確保した。通信キャリアとの連携強化により特徴的な端末の創出を図る」と、シャープ・高橋興三社長は語る。富士通は、PCおよび携帯電話として合計の売上高を公表。先にも触れたように同部門の売上高は前年同期比6.0%増の3,457億円となった。「携帯電話は、らくらくシリーズなどのフィーチャーフォンが伸長したものの、スマートフォンの競争激化や新機種投入の減少などが影響し、減収になった。だが、構造改革効果や品質安定化に伴う対策費用の減少、コストダウン効果などにより、前年同期の3桁(100億円)の赤字から黒字転換。大幅に改善した」(富士通の塚野英博執行役員常務)という。黒字転換を図ったことで今後、どんな成長戦略を描くのかが注目される。スマートフォンでは、ソニーの回復の遅れが目立つが、シャープ、富士通は少しずつではあるが、トンネルから抜け出そうという気配が見られているようだ。
2014年11月07日