女性の社会進出に伴い、多くの企業にとっては女性活用の場を提供することが重要テーマのひとつになっています。これまでも、男女差なく女性に開かれた職場づくりは努力義務とされてきました。しかし一部の企業を除き、なかなか整備が進まない現実があるのも事実。福利厚生の充実や託児所を設けるなどの整備を手がけている企業もありますが、必ずしも一般的ではありません。もっと身近な取組みによって、職場環境を劇的に変化させる方法があるのです。「女性活用を考えるのであれば、女性の意見に耳を傾けることが大切です」。そう答えるのは、コミュニケーション力やリーダー力向上などの人財育成を手がける、沖本るり子氏さん。その秘訣は「会議」にあるといいます。ご自身が参加されている会議と照らし合わせながら読み進めてみてください。■会議は個人の成長を促すツール会議と聞いて、憂鬱な気持ちになる人は少なくないと思います。「いつも同じ人が発言していて会議の輪に入れない」「話が長くて、なにがいいたいのかがわからない」「脱線や迷走が多く、議論がなかなか進まない」「結局、声の大きい人によって結論がひっくり返される」など。心当たりはないでしょうか。このような会議は建設的な議論が難しくなるので、「時間のムダ」と思っても当然。結果的に、参加者の意識も希薄になりますから、「今日も、とりあえず出席していればいいか」「最後は部長が決めてくれるだろう」と姿勢も投げやりになってしまいます。会議は本来、ノウハウを知って正しく活用すれば、組織の問題解決や課題クリアに役立つだけでなく、個人の成長をも促すことができる素晴らしい「ツール」です。ところが、会議を効果的に活用できている企業は、残念ながらとても少数です。「会議には、さまざまなタイプの人が参加します。ある意味、会議の場は『会社の縮図』であるともいえます。参加者をよく観察して発言を聞くことで、志向性や組織内の力学を把握できます。そうすれば、会社内での人間関係をより潤滑にし、対応力をアップすることも可能です」(沖本さん)■会議をうまく進めるためのコツ自己中心的で自分の意見ばかりを強引に主張するタイプ、常にリスクやネガティブなことをいい出して徹底的に批判するタイプ、自分の意見は持たず、会議の成り行きを見て有利なほうにつこうとするタイプなど、出席者の個性もいろいろ。「会議が建設的なら問題なく議論は活性化するのですが、残念ながら建設的な会議はごく少数です。会議を建設的に進めるには、参加者のタイプを調整することも必要。対応次第では会議の質を高めることが可能です。または事前に会議の進め方ルールを徹底することも大切です」(沖本さん)参加者は、どのような意識で参加することが望ましいのでしょうか。会議の際に、悪影響を及ぼすのは「ネガティブオーラ」です。それこそ、重箱の隅を突っつくような人。しかしルールをつくっておけば、マイナス意見が出たとしてもマイナス面の対応策を考える時間を設ければいいだけ。議論がネガティブな方向に進むことはありません。「マイナス面を出しっぱなしにするのではなく、『では、どうすればいいのか』と全員で考えるのです。改善策、予防策を考えることができるので、建設的な議論が進めば問題になりません。会議によって参加者がリスク管理や危機管理能力を身につけることができるということです」(沖本さん)たしかに、男性よりも女性のほうが細かい点に気がつく視点をもっています。そのぶん、リスク管理や危機管理に長けていると考えることもできそうです。また、会議を通じ、物事の見方や考え方をプラス・マイナスの両面で捉えることは大切です。■バラバラな意見を収束する方法全員の意見が出尽くしたのち収束させるには、どのような方法が望ましいのでしょうか。一般的には多数決で、もっとも自分に近いと思われる意見に投票することが多いと思います。しかし、多数派の意見を採用することで、少数意見を抑圧する可能性があります。政治の世界ではなく会社ですから、周囲との軋轢は残したくないものです。「会議をまとめる際、どの案を採択するかを点数制で決めます。参加者の持ち点は1 、3、5、7、9、11、13点。いちばんよいと思うアイデアに13点をつけます。そして次々と各持ち点をつけましょう。優先順位をつけ、点数化して集計することで、公平性が保たれます」(沖本さん)優先順位をつけるやり方には、自分の案が採用されなかったとしても、否定されたわけではないので軋轢を生みにくいというメリットがあります。女性は周囲との共感やコミュニケーションを重視するので、女性視点を吸い上げることは大切です。女性が積極的に意見を述べて、参加意識が高い会議にするには、女性を動機付けるためのコツが必要になると思います。(文/コラムニスト・尾藤克之) 【取材協力】※沖本るり子・・・株式会社CHEERFUL代表。「5分会議」を活用した人財育成に定評。コミュニケーション力、リーダー力などを向上させる人財育成や組織活性化のコンサルタントとしても活動中。強み弱みではなく個人の個性を活かす内容に特徴。
2016年07月16日