大学卒業後、大手番組制作会社で、報道・ドキュメンタリー番組の企画・演出を手がける。野菜ソムリエ資格取得後の2009年、人と地域を野菜果物にまつわる情報でつなぐ日本初の「野菜ジャーナリスト」として独立。執筆、講演で情報発信を行うなど、様々な形で食企画に従事。「野菜の便利帳~伝統野菜・全国名物マップ」執筆。東京を軸に全国を取材しながら、野菜に魅せられるきっかけとなった信州の古民家で執筆や畑しごとをするデュアルライフを送っている。
▼アラフォー総研コラム
「野菜ジャーナリスト篠原久仁子のアンテナ」
スイーツのように甘くてほくほく、それでいて食物繊維が豊富な サツマイモ 。内側からキレイになりたい私たち女性には欠かせない秋冬の味覚ですよね。 実は、1月以降がますますサツマイモが美味しい季節だって知っていましたか? 今回は、サツマイモの魅力をおさらいしながら、サツマイモのテーマパーク、行列のたえない焼き芋屋さんなど、サツマイモ好きにはたまらない、大注目のスポットをご紹介します。 美味しさの決め手は、鮮度より貯蔵! サツマイモの魅力と言えば、美味しさと栄養価の高さでしょう。まず、美肌づくりに欠かせない ビタミンC が豊富。切った時に浮き出る白い液 「ヤラピン」 には、便をやわらかくする作用があるとされ、豊富な食物繊維とのタッグで、 腸内環境を整える 効果が期待できます。 また、皮の紫色には抗酸化作用の高い アントシアニン が含まれているので、よく洗って一緒に食べるといいですね。 併せて知っていただきたいのが、サツマイモの美味しさの決め手は、鮮度より 貯蔵 だということ。貯蔵することでデンプン質が糖化し、適度に水分も抜け、美味しさが凝縮されるためです。そう、サツマイモの真骨頂は年が明けてからなのです! 世界初! サツマイモの農業テーマパーク! では、サツマイモがますます美味しい今こそ満喫いただきたい、厳選スポットのご紹介に参りましょう。 まずは2015年秋、茨城県行方市にオープンしたばかりの体験型農業テーマパーク 「なめがたファーマーズヴィレッジ」 。 ここは日本有数のサツマイモ産地とあって、まさに「サツマイモのテーマパーク」です。東京ドーム7個分にもなる敷地には、体験農場やファーマーズマルシェ、「いっぱい食べるダイエット」がコンセプトのイタリアン、サツマイモと野菜を生かしたベーカリーなど、食と農にまつわるコンテンツが集結しています。 中でも目玉は、やきいものすべてを楽しく学ぶ知的体感型ミュージアム 『やきいもミュージアム』 。子供も大人も楽しめる工夫が凝らされた展示ゾーン、工場見学ゾーンで楽しく学んだあとには、太っ腹な試食ゾーンがまっています。カリカリほくほくの大学芋や、「やきいもレンガ」を使用した「やきいも専用窯」で焼き上げられたばかりのやきいもがいただけるので、食いしん坊にはたまりませんよ。 干し芋&お酒のマリアージュを提案するバー 施設内で、私がとりわけ注目したのは、熟成専門店「おいも熟成蔵」の一角にある 「干し芋BAR」 ! 干し芋とお酒の、意外すぎるマリアージュが楽しめるのです。 早速、 「熟成干し芋食べ比べセット」 と 「幻の丸干しセット」 を試してみました。熟成干し芋のセットは、スティック、スライス、丸干しと、珍しい燻製干し芋の食べ比べ。抹茶パウダーやブランデーパウダーを添えた時の味の変化も興味深かったです。 「幻の丸干しセット」は、ソフト、ミディアム、ハードという干し加減の異なる3種。中でも、BARでしか食べられない貴重品が、ハードとソフトです。ソフトは柔らかすぎて、美味しくいただける期間がとっても短いので流通させられない。ハードは、乾燥の過程で割れてしまうことが多い&生産量が少ないため、干し芋づくりをしている生産者さんだけが食べられるまさに「漁師飯」のようなものなのだそう。 行列のたえない究極の焼き芋屋さん 続いて、ご紹介するのは、私自身が手土産にいただいて以来、虜になってしまった焼き芋屋さん。たかが焼き芋と言うなかれ、焼き芋ってこんなに美味しい食べ物でしたっけ?! と、サツマイモの魅力を再発見させてくれたのが 「蔵出・焼き芋かいつか」 です。 ここでは品種から栽培方法に至るまで、こだわり抜いたサツマイモを専用の貯蔵庫で 熟成 させ、独自のノウハウのもと、ひとつひとつ手作業で焼き上げた 熟成焼き芋 を1年中楽しめます。 サツマイモは適正な環境での熟成期間が長いほど甘みやねっとり感が増すので、同じ品種でも 時期によって味わいが変わる のがまた魅力。濃蜜な味わいがお好みの方は、とろける甘さが際立つ、5月以降の熟成焼き芋もお試しください。 焼きたてはもちろん、冷凍焼き芋もあって、お土産や贈答にできるのも人気のポイントですよ。 いずれもサツマイモがますます好きになること間違いなしの太鼓判スポットです。サツマイモを楽しみながら、ますますキレイな1年をスタートさせましょう。
2016年02月07日野菜ジャーナリストとして取材している中で、未来に伝えたい、と感じる 美味しい絶景 に出会うことがあります。今回ご紹介したいのは、自然と人の知恵が作り出した天然の和菓子とも言える 干し柿 づくりの現場です。 なかでも美しいことで知られる、山形県上山市にしかない 「紅柿」 の 「柿のれん」 が織りなす景色。その背景にあるストーリー、生産者さんに教えていただいた干し柿の意外な食べ方もご紹介しましょう。 紅色鮮やか&とろける食感の「紅干し柿」 干し柿は、先人が編み出した渋柿を美味しく食べるための 知恵 であり、 保存法 のひとつ。食べたことがあっても、地域によって柿の種類や作り方に個性があること、その背景に計り知れぬ手間がかかっていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。 山形県上山市は晴天の日が多く、「蔵王おろし」という寒風が吹く、干し柿づくりに絶好の気候風土に恵まれた土地。その上山市でしか育たないと言われるのが 「紅柿」 です。名の通り、朱色がかった紅色が美しい柿で、葉も真っ赤に紅葉するのだそう。 また、日本でも一、二とも言われる 渋さ をもつ渋柿で、その渋さゆえに干し柿にすると濃厚な甘さに。さらに繊維が細かいため、とろけるような食感で 極上の干し柿 として知られています。 美しさの影にある、手仕事の結晶が「紅干し柿」 11月末、 「はせ」 と呼ばれる干し柿専用の干し場に柿が連なる 「柿のれん」 が見られるタイミングに上山を訪れました。冠雪した蔵王を背景に、赤いカーテンが見渡す限り続く眺めはまさに絶景。でも近くで見ると、その繊細で途方もない仕事の凄みが迫ってきます。 というのも、干し柿づくりは細かい作業と熟練の技の連続。まず柿は縄に吊るせるように軸をT字に切りながら収穫、ヘタを取り、皮をむきます。それを紐に連ねる「連作り」をして、屋外の「はせ」で2週間ほど天日干し。その後、室内の 「むろ」 に取り込んで湿度や温度を調整しながらさらに乾燥させます。ここが干し柿の味を決める、熟練技の見せどころなのだそう。 その後、柿をもみほぐしながらタワシで磨き、「白粉(しらこ)」と呼ばれる糖分の結晶が出やすくします。白粉がふいたら結束作業をしてやっと完成です。 「むろ」を見学させてくださった干し柿名人の北澤さんご夫妻は言います。「40年以上やっても毎年環境は変わるから、理想に近づけるためには硬さを確認して、火加減の調整をしたり、寝るヒマもないのよ」。皮をむいてからの約2ヶ月間は、つきっきりなのだそう。特に今年は寒くなるのが遅かったため、乾燥する前に傷んでしまった柿も多く、とりわけ苦労が多いご様子でした。 硬くなってからも楽しめる! 干し柿の意外なアレンジ術 そんな「紅干し柿」もいよいよ12月中旬、完成の時を迎えます。やはり「できたてをそのままいただくのがイチバン!」だそうですが、産地ならではの「紅干し柿」アレンジ術も教えていただきました。 ▼硬くなってしまった干し柿を元に戻す裏ワザ! 緑茶をかけて、20~30分ほど置いてから、お茶の水気をきり、冷蔵庫で冷やすと、柔らかな干し柿に。そこにきな粉をかければ、簡単和スイーツが完成です。 ▼刻んでサラダに 酢の物に 硬くなった干し柿の良さを生かすなら、スライスして、食べる直前のサラダに和えてみましょう。他の食材やドレッシングの水分を程よく吸って、食べごろに。大根、酢と和えれば柿なますに。干し柿の甘さと酢のハーモニーは最高です。 ▼チョコレートとも相性抜群 産地でも人気のアレンジは、 「チョコとせんべいと干し柿と」 。食べやすい大きさに切った干し柿と、割った煎餅を、湯煎した板チョコレートでまとめると、干し柿の甘さとせんべいの香ばしさが後を引く美味しさに。 他に、 「干し柿の洋風揚げ」 という意外すぎる食べ方も。干し柿のヘタをとって、下半分に衣をつけて揚げ、食べる直前にマヨネーズをトッピングするのがポイントだとか。 上山の気候風土、先人の知恵、寝る間も惜しむ苦労、それらが折り重なって初めてできる「紅干し柿」は、ドライフルーツというより、モノを加えず「こと」を重ねることで作り上げられた、珠玉の和菓子。苦労を知って大切にいただくことが、上山にしかない「紅干し柿」づくりの景色を絶やさない一歩につながるのでは、と思いました。みなさんも上山だけの冬の味覚、味わってみませんか? ・「紅干し柿」のお取り寄せ先 山形農業協同組合オンラインショップ 取材協力/ ・山形県上山市
2015年12月15日わかってはいけるけれど、つい飲みすぎてしまう、わかってはいるけれど野菜不足になりがち…。そんなアラフォーのみなさま、身体に優しくて、美味しい、野菜のおつまみ 「ベジつま」 をご存知でしょうか? 最近では、食品メーカーも手軽に「ベジつま」が作れる調味料を開発したり、酒造メーカーさんがレシピページを公開したり、ブームの兆しをみせています。今回は、「ベジつま研究会」を主宰する 野菜料理 研究家の 新田美砂子 さんに、その魅力をたっぷりと伺いました。 そもそも「ベジつま」とは? おつまみだって野菜中心で美味しくヘルシーに! そんな考えのもと、数年前から「ベジつま」女子会やイベントなどを開催している新田さんは、「ベジつま」をこう定義しています。 ・見た目の 半分 以上が野菜(果物を含む) ・ 旬 の野菜を使う ・身近にあるもので作る 気軽に長く続けて欲しいから、ということで定義はざっくり。そもそも、新田さんが「ベジつま」を作りはじめたのは、「お酒を飲むと、どうしても肉・魚や揚げ物が多くなり、野菜が不足しがちだなぁ」と思ったことがきっかけ。 「歳を重ねても、 元気 に 美味しいお酒 を飲みながら、大切な人たちと楽しい時間を過ごしたい」。そんな想いを叶えるべく、レシピを創作し始めたといいます。「ベジつま」づくしの女子会に参加した人たちからは、「半日以上飲んで食べていたのに、次の日に残らない」「もたれなくて、体が楽」と好評で、新田さん自身も実感しているのだそう。 野菜メインのおつまみ、どう作る? 野菜メインでおつまみを作るには、ある程度の パンチ が必要です。“野菜そのまんま” ではちょっと弱いため、ひと工夫を。そのポイントをご紹介します。 ▼野菜 + α でおつまみ化 以下3つのいずれか、もしくは合わせ技を取り入れてみましょう。味にアクセントがつき、パパっと手軽に「ベジつま」が完成します。 (1) 油分(ゴマ油やオリーブオイルなど。コクを与えてくれる) (2) 塩分や風味(塩や醤油などの調味料やスパイス類) (3) うま味(肉、魚、乳製品、チーズ、卵、豆腐、油揚げなどのタンパク質) 「キャベツのお通し」など、居酒屋の定番メニューが思い浮かびますね。家にある野菜で簡単に作りたいとき、これらのポイントを思い出してみましょう。 ▼肉・魚料理を「ベジつま」化 肉や魚がメインのメニューをヘルシーな「ベジつま」にしたい場合、答えはシンプル。先程ご紹介した「ベジつま」の定義に合うようにすればよいのです。 (1) 半分、または全部野菜に 置き換え る (2) ちょい足し をする (3) いつもとは違った野菜の 使い方 をする 例えば… ・牡蠣のオイル漬け缶詰に ブロッコリーとグリーンオリーブ漬け を加える ・肉や魚にたっぷりと手軽なスプラウト野菜を多めに トッピング する ・いつもは 和風 の煮物にする里芋を、 洋風 の唐揚げにしてみる など。 ちょっと意識するだけで、野菜が多いヘルシーなおつまみに切り替わるので、是非試してみてくださいね。 お酒に合う「ベジつま」づくりのコツ ビールや焼酎の場合は、幅広い料理と合います。そこで、ワイン、日本酒、モルトウィスキー、それぞれとのマリアージュのコツを、新田さんに教えていただきました。 ▼ワイン 白ワインやスパークリングは、「ベジつま」のストライクゾーンはかなり広め。チーズなどを使った洋風のお料理はもちろん、和食でも合います。ただ、和食の場合、こってり甘辛い味付けより、白和えや鶏鍋、豆乳鍋や薄味の煮物など、 あっさり 系のものがベター。 「ベジつま」で赤ワインを飲むなら軽めのワインを。 トマトベース の「ベジつま」がオススメだそうです。たとえば、いつもの麻婆豆腐の豆腐をトマトに代えた麻婆トマトなど。また、こっくりした 醤油味の煮物 や 野菜の味噌炒め やソース味なども合います。 ▼日本酒 米からできているお酒ということもあり、 ごはんと合うもの がベストマッチ。やはり 醤油 など和の調味料との相性は抜群で、和食ならではの繊細な味付けのものはもちろんですが、コクやパンチを効かせるといいそうです。 新田さんのおすすめは、ゴボウのきんぴらにちょっとアンチョビを加えた 「アンチョビきんぴら」 に。いつもの惣菜からぐっと「ベジつま」度がアップします。また、洋風の食材に使われるホワイトアスパラガスも、おかか醤油がけにすることで、日本酒でいただく「ベジつま」に。 ▼ウィスキー・シェリー酒 個性が強いお酒で、どちらも香りが強いのでちょっと難関。こういったタイプには、お酒そのものを料理に使ってしまうのが手。一緒に ソース にしたり、和えたりするとウィスキーやシェリーに寄り添う「ベジつま」に。フルーツとの相性も良く、お酒と一緒に使うのもオススメ。 「豚肉のソテー ウィスキーとすもものソース」 は、ウイスキーとすももが入った醤油ベースのタレに漬けて焼いたもの。これからの時期ならオレンジや伊予柑などの酸味のある柑橘類でもできるとのこと。 ごぼうとセロリのきんぴらのレシピ では最後に、新田さんに教えていただいた、とっておきの「ベジつま」レシピをご紹介しましょう。 <材料> ・ごぼう 60g ・セロリ 50g ・セロリの葉 10g ・サラダ油 小さじ2 ・ごま油 小さじ1/2 ・砂糖 小さじ1 ・酒 小さじ1 ・みりん 小さじ1/2 ・醤油 大さじ1 ・出汁 40cc ・白いりごま 適量 <作り方> (2~3人分) 1) ごぼうは、たわしで泥を落として、縦半分にして斜めに薄切りにする。 2) セロリは斜めに薄切りにする セロリの葉はざく切りにする。 3) フライパンにサラダ油とごま油を入れ、中火でごぼうを2~3分炒める。 4) (3)にセロリも加えて1~2分炒める。 5) (4)に砂糖、酒、みりん、醤油、出汁を加えて4~5分炒め煮にする。 6) 煮汁がほとんどなくなったら、セロリの葉を加えてさっと炒める。 7) 皿に盛り付け、白いりごまをかける。お好みで七味をかけても。 実は、このレシピには野菜料理研究家でもある新田さんならではの、野菜を美味しく食べるコツも散りばめられています。 例えば、ごぼうの旨みが多い皮の部分を削ってしまわないように、たわしで泥を落とすこと。旬のごぼうにセロリを合わせていることにも理由があります。薫りが強いもの同士を一緒に調理すると マスキング効果 が働くので、食べやすくなるのだそうです。さらに、カロテンが豊富なセロリの葉も入れているのも 栄養価UP のポイント。また、炒め油にごま油を加えることでコクをだしています。 おつまみにも野菜を意識的に取り入れて、美味しくヘルシーにお酒を楽しみましょう。ぜひ、みなさんも気軽に「ベジつま」を始めてみてくださいね。 新田美砂子さん プロフィール 野菜料理研究家 べジつま研究会 主宰。畑、マルシェなど野菜の様々な現場を経験した野菜の個性を生かす料理は、食べた人を野菜好きにすると定評がある。メニュー・商品開発やコンサルタントも多数手掛けている。
2015年11月26日秋の味覚を代表する栗の旬がやってきました。さっそく栗拾いなど楽しまれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 でも、本当に栗が好きな方にオススメしたいのは、10月中旬以降の栗です。 熟成 させることで美味しくなるのはお肉だけではないって知っていましたか? 今回は、日本一の栗産地・茨城県の中でも栽培面積NO.1の笠間で教わった栗の最旬情報をお届けします。もちろん、栗と言えばの悩みにお応えして、手が痛くならない 皮のむき方のコツ もご紹介しますよ。 日本を代表するブランド栗産地・笠間 栗は、縄文時代から食べられてきたとされる日本人と縁の深い食べ物。茨城県では明治30年頃から本格的な生産が始まり、栽培面積、生産量ともに全国一位を誇る産地となっています。とりわけ笠間市は、栗農家さんが約900件もいらっしゃる栗の街。年間を通して穏やかで昼夜の寒暖差のある気候、肥沃な土に恵まれた平らな畑が、薫り豊かで上質なブランド栗を育むことで知られています。笠間の栗は全国の有名菓子店や加工品で使われているので、皆さんも知らず知らずのうちに口にしているかもしれませんね。 笠間市の農政課によると今年は、秋になって急に涼しくなったため、少し収穫時期が早めで、やや小粒が多めだそう。でも栗の大きさは味に影響しないそうなので、ご安心を。 栗も熟成がトレンド?! その笠間市が、栗の新たな価値として提案しているのが 貯蔵熟成 した栗の魅力です。熟成肉ブームはだいぶ浸透しましたが、野菜果物でいうと、デンプン質を多く含む、カボチャやサツマイモも収穫したてより、時間をおいてあげることで食味がよくなる食材。栗も適した環境で貯蔵することで、 デンプン質が糖分に変化する ということを栗農家さんは体験から知っていたのだそうです。具体的には、0度で約1ヶ月貯蔵すると 糖度が3倍 にもなることがわかっています。 笠間では、その特徴に注目して貯蔵環境を追求。厳選した大粒の栗を 「零度熟成」 させて商品化したのが究極の栗 「笠間の栗『極み』」 です。 貯蔵熟成された栗のシーズンは、10月中旬から12月にかけて。ゆで栗などで、凝縮された栗そのもの味わいを楽しむのがオススメです。「笠間の栗『極み』」の他、 「貯蔵栗」「低温熟成」「完熟栗」 などの表記も貯蔵熟成された栗の目安。一部、店頭で買える場所もありますが、栗農家さんからのお取り寄せの方が確実かもしれませんね。 渋皮まで一気にむける「ぽろたん」 また夢のような栗まで登場しています。鬼皮と渋皮が一緒にぽろっとむける大粒の栗、その名も 「ぽろたん」 。茨城県の試験場で生まれた期待の新品種です。栗の周りにキッチンばさみなどで切れ目を入れて、2~3分茹でるだけで、貝のようにパカッと口が開き、あとは手でむけてしまうからビックリ!皮をむく手間が食べる時の愛おしさにつながると思ってきましたが、やみつきになりそうな手軽さです。 もう失敗しない!むき方のコツ ただ夢のような栗「ぽろたん」は残念ながら、まだ生産量が少ないのが現状。手に入れやすい栗には、手間のかかる皮むきがつきものです。最後に、産地の方に教えていただいた、手が痛くなりにくいむき方のコツをお伝えします。 1)熱湯で2~3分茹でる 2)鬼皮が湿っているうちに両端を少し切り落とす。 3)ざらざらした底の方(座)から先端のとがった方にむかって引っ張るようにむく。 両端を切り落としておくことでむきやすさが格段UP!さらに、底の方を少し切り落として包丁がひっかかる部分を作ってからむくとさらにむきやすいですよ。 キッチン道具オタクでもある私は、 栗の皮むき鋏 を愛用しています。旬にしか使わないものとは言え、格段に作業を楽にしてくれるので、元がとれたなーと思う道具のひとつです。 今回の取材でとても印象に残った、農政課の方の言葉があります。 「栗は皮がかたいので丈夫そうに見えますが、 生きている栗のタネそのもの で、ナマモノなんです」 生き物だということを心して、他の野菜果物と同じように優しく接してあげたいですね。 無心になって栗と向き合う時間もなかなかいいものです。ひと手間もあえて楽しみながら熟成した栗の美味しさを体験してみてはいかがでしょうか。 取材協力/ 茨城県笠間市
2015年10月14日